An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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邪な願いは

 

「で、なのは。そのフェイトは今日来るのね?」

 

「うん、アリサちゃん。フェイトちゃんは現地で合流するって」

 

なのは、アリサ、すずかの仲良し3人組は、すずかの姉である忍の運転する車でプールへと向かっていた。月村家のメイドのノエルやファリン、なのはの姉の美由希も一緒で、結構な人数である。

なのはは決意に満ちていた。事前にちゃんとフェイトも誘った。抜かりは無い。後は、なのは自身が臆する事なく話せるかどうかである。

 

(ちゃんとみんなに紹介しなきゃ。‥‥‥‥‥‥私の大切なお友だちのフェイトちゃん、って)

 

そんな意気込みの、力の籠ったなのはの隣に座るアリサと、その隣のすずかは、そんななのはを複雑な表情で見ていた。

 

「ねえ、すずか。最近、なのはって変よね?いつも上の空っていうかさ」

 

「フフフッ。アリサちゃん、なのはちゃんはやっぱり恋してるんじゃないかな?」

 

アリサは「はぁ?」と声を洩らす。ハラハラしたり、にやけたりと忙しい表情のなのはを横目で見て、溜め息をつきながら「まさか、例のフェイトに?」とすずかに洩らす。

 

「うん、きっとその子だと思うよ?」

 

「ふーん。いいわ。そのフェイトって子がなのはに相応しいか、アタシが見極めてやるわ!」

 

相変わらずにやけたり不安になったりと忙しそうななのはを乗せた一行は、そんな車での道中を終え、プールに着く。

 

《フェイトちゃん、何処?フェイトちゃん?》

 

使われず錆び付いていた筈のなのはのリンカーコアは活性化し始めているようで、既にデバイスの補助無しに念話を使い、フェイトを呼ぶなのは。周りから見れば、声は出さずにキョロキョロと辺りを見回しているように見える。

 

「ねえ、なのはちゃん。何してるの?」

 

疑問に思ったすずかの問いかけに、慣れないせいか、なのはは「フェイトちゃんを呼んでるんだけど、お返事がないんだ。まだ着いてないのかな?」と、ついつい答えてしまった。

 

「え?なのはちゃん、携帯も使わないで、声も出さないでどうやって?」

 

「‥‥‥‥‥‥あ‥‥‥‥‥‥えっと」

 

なのはが答えに詰まり、口籠っている所で漸く念話が返って来る。

 

《なのは、入口の側にいるから》

 

《フェイトちゃん!!分かった、直ぐに行くね!》

 

表情が急に明るくなったなのはは、「すずかちゃん、きっと入口に居るよ!」と半ば強引にすずかの手を引いて走った。

 

フェイトは入口近くのベンチにちょこん、と腰掛けていた。その姿を見付けたなのはは、体育の授業でも見せないような勢いで、すずかを引っ張って駆け寄り、声を掛けた。

 

「フェイトちゃん!」

 

「うん、なのは。それに、す‥‥‥」

 

危うく「すずか」と言いかけて、フェイトは口を閉ざす。言葉が途中で切られた事を不思議に思ったすずかが、「す?」とフェイトに聞き返す。

 

「すっ‥‥‥すごく良い天気だなって。初めまして。フェイト・テスタロッサです」

 

「月村すずかです。宜しくね、フェイトちゃん」

 

どうにか誤魔化してその場を凌いだフェイト。自分の口で紹介出来なかった事に少しだけ不満げななのはの隣で笑顔を向けてくれるすずかに笑みを返しつつ、他のメンバーの元へと歩く。

 

「なのは~、すずか~!」

 

歩いていた3人の元へと、アリサが走ってくる。今度こそ、と意気込んだなのはが、フェイトよりも先に口を開いた。

 

「アリサちゃん。この子が、私のフェイトちゃん!」

 

「‥‥‥‥‥‥は?」

 

なのはの言葉に口をポカンと開いたまま停止するアリサ。自分の発言のせいだとは微塵も思っていないなのはと、その隣でアリサ同様固まって、頬を少し紅くしているフェイト。笑顔を浮かべたままのすずかが、固まった空気を壊すべく話し出す。

 

「なのはちゃん?私の『お友だち』が抜けてるよ?」

 

「‥‥‥そうよね、ビックリさせないでよ、なのは。『私の』なんて言い出すからどうしようかと思ったじゃないの!」

 

フリーズから解放されたアリサが、なのはをどつく。なのははなのはで発言の意味を理解したのか、恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めて「ふえぇぇぇぇ!?」と叫んでいた。

 

◆◇◆◇◆

 

「まっ、まあまあね。フェイト、なかなかやるじゃない」

 

「ありがとう、アリサ」

 

プールサイドで並んで休憩しているアリサとフェイト。フェイトは先程迄、すずかと25m競争したり、アリサと潜水勝負をさせられたり。

 

(綺麗だし、運動はできるみたいだし、何より性格良い子じゃないの‥‥‥。なのはってば、こんな子と仲良くなっちゃって)

 

アリサはそんな事を思いながら、難しい顔をしながらフェイトをチラチラと見る。

 

「どうしたの、アリサ?」

 

不思議そうにアリサを見るフェイトの純粋そうな瞳を直視出来なくなり、アリサはスッと立ち上がる。

 

「ちょっと泳いでくるわ。フェイトはもう少し休んでなさい」

 

 

 

誤魔化すように泳ぎに行ったアリサ。今度は美由希と競争しているすずかに視線を移したフェイトは、その様子をボーッと見ながら、アルフ、ユーノと念話を交わす。

 

《アルフ、ユーノ、見つかった?》

 

《ああ、近くには感じるけど、まだ見つからないよ。さっさと終わらせてアタシも水浴びしたいよ、全く》

 

《こっちもまだ見つからない。確かに二つ分感じる。アルフともう少し探してみるよ》

 

このプール周辺から、ジュエルシードの魔力を感じる。やはり神社で発動しなかった分が此方に回って来ているようだ。フェイトは膝の上に乗せている両手の拳を握り締める。

 

(今度は、なのはが取り込まれないように守らないと)

 

隣にちょこん、と座った人物に気付き、フェイトは視線を向ける。瞳の先には、笑顔のなのは。

 

「フェイトちゃん、運動得意なんだね。私はちょっぴり苦手なんだ」

 

「大きくなれば、克服できるよ」

 

フェイトはつい数年前の、六課時代の在りし日のなのはを思い浮かべる。かなり運動音痴も克服し、人並み以上にアクティブだったなのは。その姿を思い出し、瞳の奥が熱くなる。

 

「そうかなぁ。私、運動できるようになれる気がしないんだけど。あ、そうだ、フェイトちゃん。お姉ちゃんがね?最近水着泥棒が出るみたいだから気を付けてって。‥‥‥‥‥‥フェイトちゃん?」

 

どうやら瞳が潤んでいたのが見付かったようで、なのはが心配そうに覗き込んで来る。フェイトは瞳を閉じて首をフルフルと小さく振り、「何でもないよ」と誤魔化す。

 

丁度その時。ユーノの作った結界が周辺に展開する。発動に気付き、ハッとして立ち上がったフェイトは瞬時に魔法陣を展開した。

 

「バルディッシュ!セーット、アーップ!」

 

金色の光に包まれ、バリアジャケットに身を包んだフェイトは、「なのはは、此処に居て!」と一言残して飛び立った。なのはは頬を染めながら、その様子を見ていた。

 

(やっぱりフェイトちゃんカッコいい‥‥‥)

 

◆◇◆◇◆

 

「ユーノはなのはを!行くよ、アルフ!」

 

なのはの保護をユーノに任せ、フェイトとアルフはジュエルシードと対峙した。蒼白の、人型のシルエットが二つ。

 

「今度はニンゲンの真似かい?随分と色んな事が出来るんだね」

 

ジュエルシードが核となっている二つのシルエットを睨み、アルフが憎まれ口を叩く。その隣に浮遊するフェイトは、アルフとは違い、驚きの表情を見せる。

 

「‥‥‥まさか」

 

「どうしたんだい?フェイト、アイツ等知ってるのかい?」

 

輪郭だけしか無く、服の様子や表情等は全く見られない、大人であろう大きさのシルエット。だが、フェイトには充分過ぎる程、その二人が誰なのか理解出来た。

 

(まさか、なのはと私‥‥‥?私の思念を取り込んだの‥‥‥?)

 

そう。その輪郭は見間違いでも何でもなく、紛れもない六課時代のフェイトとなのはのシルエット。エクシードモードであろうなのはと、真・ソニックフォームであろうフェイトのシルエットには、ご丁寧にレイジングハートとバルディッシュのシルエットも見てとれる。

 

「アルフは、あっちのツインテールの方を。多分高火力の砲撃型だから、気を付けて!」

 

「了解だよ、フェイト!」

 

なのはのシルエットをアルフに任せ、自身はザンバーであろう物を構えたフェイトのシルエットと対峙する。

 

フェイトが魔法陣を展開するよりも早く、シルエットが魔力弾を放ってくる。雷属性こそ付いていないものの、その形は間違いなくプラズマランサーそのものだった。

 

即座にシールドを張り、ランサーを凌ぐ。フェイトは一度離れて、ランサーを展開。シルエットに向けて放つ。

 

(やっぱり、私の‥‥‥)

 

魔力の威力からして、六課時代のリミッター時相当の、AAランク程度か。フェイトは一度深呼吸をして、バルディッシュに魔力刃を展開する。

 

「はぁぁぁ!」

 

ランサーが全弾当たったのを確認し、シルエットに向かって行く。煙が晴れて見えてきたそのシルエット目掛けて、フェイトはバルディッシュを振り下ろした。

 

‥‥‥が、金色の魔力刃はシルエットの目前で空を切る。驚いている無防備なフェイトに、ザンバーが振り下ろされる。

 

辛うじて反応し、魔力刃でそれを受け止めはしたが、後方へと吹き飛ばされるフェイト。

 

(確かに間合いに入ったのに、どうして?)

 

タイミングも完璧。確かに間合いに入ったのだが、今のフェイトには決定的に足りないものがあった。子供時代の、大人よりも短いリーチに慣れていなかったのだ。大人の姿のままならば間違い無く貫いていた筈の魔力刃は、その短いリーチの為に届かず、空を切ったのだった。

 

「クッ」

 

フェイトは弾幕を張るシルエットに、螺旋状の軌道を描いて近付く。今度はキチンとリーチを気にして振り下ろしたバルディッシュがガキン、という音を立ててザンバーと交錯する。

 

二度、三度とぶつかり合い、大きく距離を取り、プールの上に浮かぶフェイト。やはり大きく下がって戻って来たアルフと共に、シルエットを睨む。

 

「アルフ、大丈夫?」

 

「ああ。けどさ、アイツ砲撃タイプの癖にちょこまか動き回るし、防御は固いし、厄介極まりないよ、全く‥‥‥フェイトも、大丈夫かい?」

 

「うん。何とか」

 

自分達の思念体にしては動きの良いシルエットの2体。フェイトが思っていた以上に正確に記憶を読み取ったらしく、油断は出来ない。

 

(私となのはの弱点は‥‥‥)

 

睨みながら思考を巡らせていたフェイトの視界に、二つの魔法陣が見えた。それが何を意味するのか理解したフェイトは叫び、シールドを展開する。

 

「アルフ!全力で防御を!」

 

フェイトの言葉に慌ててシールドを張るアルフ。直後、シルエットの2体から強力な一撃が放たれた。

 

(やっぱり、ブラスト・カラミティ!)

 

二人の展開したシールドに、魔力流がぶつかる。どうにか耐えているフェイトに、『なのは』の叫びが届いた。

 

『駄目っ!フェイトちゃん、足元!』

 

「え?」という声を洩らした直後、右足首を水の塊に掴まれたフェイトは、そのままプールに引っ張られた。二人が展開していたシールドが二つに別れ、アルフが押され始める。

 

「フェイト‥‥‥お、押される‥‥‥!」

 

「アルフ!水がっ‥‥‥嫌っ‥‥‥」

 

首までプールの中に引き摺り込まれたフェイトは、慌ててバリアジャケットを左手で押さえる。マントは外されたが、何とか胸の辺りで引っ張り堪える。

 

(この水‥‥‥私のバリアジャケットを脱がそうと‥‥‥!)

 

フェイトのバリアジャケットを剥ぎ取ろうと絡み付く水に抵抗し、恥ずかしさで真っ赤になりながらも何とか死守しているフェイト。そうしている間にも、アルフのシールドにはヒビが入っていく。

 

 

『不味いよ、ユーノ君!アルフの援護を!』

 

ユーノはレイジングハートになのはの保護を託し、直ぐさまアルフの元へと走った。

 

 

 

 

 




なのはちゃんの暴走は続きます。

フェイトちゃんはいろんな意味でピンチの回。
フェイトちゃんのバリアジャケットの形を見て、プールの水さんはそれを水着だと認識した模様です。
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