ザビ家成り代わり   作:くずみ@ぼっち字書き。

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【成り代わり】another ORIGIN 謀略の"ギレン" 15【転生】

 

 

 

 ダルシア・バハロがやってきた。例のムンゾ大学立て籠もり事件の数日後のことである。

「虫の良いことだと思われるとは存じますが」

 ダルシアは、そう云って眉を下げた。

 議事堂の控室で、マツナガ議員と談笑――と云えるのかどうか――している時だった。件の立て籠もり犯である議員たちの、本人不在の弾劾裁判が、この後はじまる、と云う頃合いである。

「かれらには、ほとほと愛想が尽きました。まさか、大学で立て籠もり事件を起こすとは……」

「そのお気持ちは痛いほどわかりますが――それで、何故私のところに?」

 目の前の男をじっと見る。

 謹厳実直を絵に描いたような男、に見える。が、そればかりでないのは、ザビ家崩壊後のムンゾ、すなわち原作軸のジオン共和国初代首相を、この男が務め上げたことでもわかっている。いるかどうかわからない息子・モナハンのことも含め、油断のならない男だと思う。

「閣下が、ムンゾやコロニーのために尽力しておられることは承知致しております。理念の合わぬところがあるのは承知の上で、閣下の他にひとがありません」

「……貴殿の野心はどうなる」

「は?」

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔、さて、これは本物か、あるいはフェイクなのか。

「政治家を志すならば、野心のひとつやふたつはお持ちだろう。私の許に来られると云うことは、ザビ家の配下に入ることと同義だ。貴殿は、ご自身の野心や野望を、ここで断念なさるのか」

 もちろん、“ひとまずは”と頭につくのだろうけれど。

「私の野心――と云って良いものかはわかりませんが、それは、ムンゾをもっとも繁栄したコロニーにしたいと云うことです。そのためにもっとも適切な指導者が閣下ならば、それに賭けるのもひとつの道だ」

「貴殿が先日まで拠っていた会派のものたちは、ムンゾの繁栄とは無縁のように思われるがな」

 マツナガ議員が、意地の悪い声で云う。

 ダルシアは、わずかに顔を赤くした。

「そこは……お恥かしい話ですが、それこそ野心のようなものがあったようです。私が今から独自の会派を作るには、既に出来上がっているものを崩して再編するしかない。それよりは、烏合の衆に近いところを取りこむ方が容易いと考えたのです。――浅知恵でした。結果が、ご覧のとおりです」

 かるく両手を拡げる。道化じみたポーズ、だが、その底にあるのは自嘲よりも怒りなのではないか。

「それに、今回の事件で改めて、ザビ家の強さを思い知らされました。まだ士官学校のガルマ殿ですら、もう、事態をどのように動かすかをご存知だ」

 と云われて、渋い顔にならざるを得ない。

 件の立て籠もり事件の後、犯人たちの取り調べの最中に、かれらが別の事件も計画していたことが判明したのだが、それが、“ガルマ・ザビ襲撃計画”だったと云うのだ。“ガルマ”のスケジュールがどこからか漏洩し、その情報を入手した“馬鹿手議員”どもが、襲撃を画策していたというのだが、

 ――“ガルマ”だな。

 スケジュールを洩らしたのは。

 “ガルマ”まわりの人間たちは、気の毒に、ドズルらに問い詰められているようだが、こちらはタチ・オハラから報告が上がっている。しかも、漏洩のために“伝書鳩”を使ったことまでだ。

 どうやら、“ガルマ”は今回の事件に関しては完全にノータッチで、むしろ自らの方をこそ事件を誘発する材料として播いたと云うことだったようだ。ジンバ・ラルを巻きこんだことで、シャアの方を優先することになり、“ガルマ”は難を逃れた――と云って良いのか――ことになる。

 まぁ、実際に“ガルマ”が襲撃された場合は、“ザビ家が軍を私物化”云々が証明されてしまうことにもなりかねなかったので、そのあたりは僥倖だったと云うべきだろうが。

「……あれについては、あまり良いように取られると、後で面倒なことになりますぞ」

 としか云いようがない。

「ギレン殿はこう云われるが、実際大したご一家だよ」

「買い被りですよ。例え個々の能力が高くとも、結束が強くなければどうにもならない」

「傍から見れば、充分以上に高いと思いますぞ」

「そう、あらまほしいものですな」

 このやり取りに、ダルシア・バハロはわずかに目を見開いた。

「これでも足りぬとおっしゃる?」

「足りぬでしょう。自分の望む先行きが、他の兄弟のそれと同じ方向とは限らんのです。しかも、兄弟は皆、無駄に優秀だときている」

「優秀さに、無駄も何もありますまいに」

「だが、見ている方向が違うのに、馬力ばかり大きな馬が引くなら、馬車は転覆してしまう――ほど良い愚かさも、まとまっていくためには必要と云うことです」

「……なるほど」

 ダルシアは頷いた。何やら、思うところがあるようだ。

「ですが、賢しいつもりの愚者に率いられた、愚者どもの集団よりは、遙かにましではありませんか。そう云う輩は、先にあるものも見えぬのに、まっすぐに崖へと突き進む――ちょうど、今回の事件を起こしたものたちと同じように」

「あれは、一部の暴発だったのでは?」

 問うと、ダルシアは首を振った。

「事件そのものはそうですが――ガルマ殿を襲撃する計画は、残りの面々も賛同しておりました。多分、かれらもいずれ、議員資格を剥奪されることになるでしょう」

 なるほど、それが、ダルシアの“手土産”と云うわけか。

「それは、補欠選やら何やらで、ムンゾ全体が慌ただしくなりそうだ……」

 既に逮捕されているあたりだけでも結構な人数であるのに、その上残りの面子まで、となると、両手の指の数どころではない。かれらの選挙区すべてで補欠選挙を行うとなると、その費用たるや。

「サスロの渋い顔が目に浮かぶな……」

 もちろん、反ザビ家の勢力が議会からほぼ一掃されることについては、サスロもキシリアも喜ぶだろうとは思う――キシリアは、複雑と云うか、微妙な気持ちではあるだろうが。

 しかし、こと経費の問題となると、三十名にも及ぶ議員の失職と、それに伴う補欠選挙と云うのは、まったく国費の負担でしかなかった。まぁ、クーデターが成功したよりは、少ない支出で済むだろうが、それにしても。

「まぁ、世間はキシリア殿とシャア・アズナブルの婚約で、お祭り騒ぎでそれどころではありませんからな。そこが、不幸中の幸いでしょう」

 と云ってマツナガ議員が振り回したのは、キシリアとシャアの婚約を知らせる記事の載った、タブロイド紙の束だった。

 そう、つい先日、シャアはキシリアに正式に結婚を申しこんだ――年齢の差や、家柄や立場など、諸々の障害があったはずなのだが、何しろ世間の後押しがある。

 そもそも、ザビ家としても、まだ学生で、確固たる地位もないシャアを慮って婚約を止めていただけだったので、それ自体に否やはなかったのだが――勢いと云うのは侮れない。

 シャアは、事件の事情聴取が終わるや否や、花屋に駆けこんでアマリリスの花束を買い、その足でキシリアの執務室――!――に赴き、部下たちの面前でプロポーズをやってのけたのだと云う。その日は大変な騒ぎでしたと、後で補佐官のひとりは云っていたそうだ。顔を赤くして挙動不審になったキシリアは非常にレアだったから、後々までも語り種にされるのだろう。

 “父”も、ここまで騒がれることになったのだからと、もう早々に婚約発表を決め、そして数日を経た今、TVやタブロイド紙は、二人の婚約で大騒ぎだった。

「ザビ家の力は、いよいよ盤石になったと云うことですな」

 マツナガ議員は云うが、あまり“盤石”になったとしても、反感が地下水脈のように、見えぬところを滔々と流れていると云うのも困る。適度に空気抜きをしてくれる“穴”が必要だったのだが、さて、それは今後、どのあたりが担ってくれるのか。

 ともあれ、今後は“伝書鳩”の存在が、一層重要になってくるだろう。諜報機関は大切だ――特に、自分の耳に正確に情報を伝えてくれるものは。

「盤石、とは参りませんが、まぁそれなりには」

 驕る平家は久しからず。それは、もちろん平家ならずともあてはまることだ。

 さりとて、身内のこともきちんと気にかけておかなくては、結局はそれで続かなくなることもある。

 この時間軸では、キャスバルと云う後継があるから良いものの、それとても、その後が続かなければ意味がない。鎌倉の源氏将軍は三代で途絶えた。室町幕府は、五代・義量以降は、実質的にはあってなきがごとしだった。徳川将軍家のように、初代の得た力を、兎にも角にも十五代継承し得ると云うのは、実は中々に稀なケースなのである。

「ギレン殿は、本当に慎重派ですな」

 マツナガ議員の言葉に、ダルシア・バハロが頷いた。

「まさかこれほどとは、思いもよらぬことでした。私も慎重な方だと考えておりましたが――とてもとても」

「私は迂闊な人間なので、用心し過ぎるほどで丁度良いのですよ」

 と云うと、二人は破顔した。

「またまた、そのような」

「ギレン殿は、冗談がお好きなようだ」

 と云うが、

「いや、本当の話です」

 何と云うか、“できそうに見える”と云うのも良し悪しだと思う。

 何度も云うようだが、こちらは“ギレン・ザビ”本人ほど知能が高いわけではない、本来的に、迂闊なところも多いのだ。

 であるからには、とにかく用心するに越したことはない。自分ひとりのことならまだしも、今のこの身には、ザビ家のみならず、ムンゾの命運がかかっている。連邦との戦いをぎりぎりまで回避し続けるためには、どれほど用心しても、し足りないと云うことはないだろう。

「国運を、多少なりとも背負っているからには、迂闊さはあるべきではない――連邦との間が良好とは云い難いのであれば、なおさらに」

 隙を見せれば、つけこまれる。それは、“昔”から幾度も経験したことだった。

「……私は、本当にギレン殿を見誤っていたようだ」

 ダルシア・バハロが、ゆっくりと云った。

「閣下の目指されるものは、私のものとそう大きく変わるわけではなかったのですな。ムンゾの独立と、スペースノイド、ニュータイプによる人類の革新――閣下のお心はわかりました」

「私は、ジオン・ズム・ダイクンの遺志をそのまま継ぐもの、と云うわけではない」

 この男がジオニストならば、これだけは云っておかねばならぬ。

「ジオンの理想は崇高だが、あまりにも過激すぎる。私としては、もう少しだけ現実に近いかたちで軟着陸させたい、それだけのことだ」

「それがわかれば充分です。ジオンの理想を忘れた輩に用はありません。私も、閣下の麾下に加えて戴きたい」

 ――さて。

 どこまで本気で云っているのか――確かに、原作の“ギレン・ザビ”よりは穏健だが、その時間軸でこの男がデギン・ソド・ザビ寄りであったことを考えると、その言葉をすべて信じるのは危ういような気がするが。

 だが、

 ――毒を食らわば皿まで、か。

 ここでこの男の手を取らなければ、強い敵を新たに作ることになるだけだ。それならば、潜在的な敵であっても手許に置いた方が、見張ると云う意味でも良いか。

「――わかった」

 肚を決めて、ひとつ頷く。

「宜しければ、貴殿も新しいムンゾ――私の目指す“ジオン共和国”の建国にご参画戴きたい。……宜しくお願いする」

「……こちらこそ、宜しくお願い致します」

 握手をかわす。その様を、マツナガ議員は微妙な表情で見守っていた。

 さて、これが吉と出るか凶と出るか。

 ともあれ、ダルシア・バハロはザビ家の勢力に加わった。当面の障害はなくなったわけだ。

 兎にも角にも、これでやっと、一年戦争に向けての体制を整えることができる。意外に強い掌を握り返しながら、胸中密かに溜息をついた。

 

 

 

 弾劾決議は滞りなく出され、これで“馬鹿手議員”どもの失職は決定された。立てこもりに参加しなかった輩についても、警察の操作状況を見て、議員辞職勧告を出す運びになっているので、これでひとまず山は越えたことになる。

 さてしからば、ドズルとの話で出てきた“宿題”を終わらせなくてはなるまい。

 流石に、学期半ばのキャスバルを、表向きの理由なしにズムシティへ来させるわけにはいかないので、中間地点まで呼び出す。つまりは、ガーディアンバンチの宙域まで船を出し、その船内で顔を合わせると云う寸法だ。これならば、キャスバルはものの半日もあれば戻れるので、学業に問題は出ないだろう。

 と思っていたら、キャスバルのみならず、“ガルマ”までもがついてきたと、デラーズが弱りきった顔で告げてきた。

「キャスバルひとり呼び出して、何かあったら許さないと息巻いておられます」

「……つまり、ともに連れてきた、と」

「……有体に申し上げれば」

 仕方ない、あれが云い出したら、物理で拘束できない限りは、どこまでもついてくるのだろう。

「――仕方ない、“ガルマ”は一室に籠め、椅子に坐らせて、そのまわりをお前の配下四人で囲ませろ。戸口に“伝書鳩”二人を張りつかせるのも忘れずにな」

「……そこまでなさいますか」

「あれは、それくらいしないと乗りこんでくる。お前の配下だけでは、舌先三寸で騙されるだろうが、いつも迷惑を被っている“伝書鳩”なら、それにも引っかかるまいからな」

 デラーズは微妙な顔になったが、しかし、多少は察するところもあったのだろう、敬礼して部屋を出ていった。

 ややあって、キャスバルひとりを伴って戻ってくる。

 キャスバルは、緊張した面持ちでデスク――と云うか、コンソール――の前に立った。

「お呼びと伺いました、ギレン」

 “シャア・アズナブル”の鳶色ではない、かれ自身の青い瞳が、こちらを見る。

「うむ。――また、“ガルマ”がぞろ暗躍したようだな」

 そう云うと、緊張が一層高まったようだった。

「そ、れは……」

「“伝書鳩”から報告は上がってきている」

 云い訳は不要だ、と云ってやると、力の抜けたような、だが緊張は持続したままのような、微妙な空気が返ってくる。

「今回の件については、コルヴィン・シスの元同僚が、シャアのスケジュールや警備体制について、あちら方にリークしていた、と云うことは把握した」

 コルヴィン・シス――数年前の狙撃事件の時に、自分の代わりに死んだ男。遺族に対する補償はしていたが、まさかそれ以外から、“仇討ち”をしようと云う輩が出てくるとは思わなかった。しかも、自分の警護対象者を囮にまでして。

「あの男については、既に懲戒解雇が決定している。そちらはそれで終わる、が、問題はもうひとつの方だ」

「――ガルマ襲撃計画ですか」

 この件については、既に新聞沙汰にもなっている。キャスバルが知っていても不思議はない、が、これは恐らくそう云うことではあるまい。

「そうだ。――スケジュールを流したのは、“ガルマ”本人だな?」

 問うと、キャスバルは、驚きと諦めがないまぜになったような表情で、のろのろと頷いた。

「そうです。その……かれは、自分を囮にして、反ザビ家の勢力を燻り出すつもりだったようで」

 結局は、シャアが拉致されたのが先で、そちらは出番がなかったようですが、と云う。

「まぁ、あれのやることだ、そんなところではあるだろうな」

 自分の身を囮にすることで道が拓けるのなら、それを躊躇するようなタイプではないのだから。

「……僕は、知らされなかったし、止めることもできなかった」

「まぁ、あれを止めるのは、至難の業だな」

「あなたは! それで良かったと云われるんですか!」

 キャスバルの掌が、デスクの表面を強く叩く。

「あれは、そう云うモノだ」

「ものじゃない!」

 青い目が、こちらを睨みつけてくる。強いまなざし、心地良いほどの激情。

「ガルマは――僕にとっては兄弟も同然だ! それが、あんな危ない橋を渡るような真似……」

「だが、ムンゾにとって重要なのは、お前の方だ、キャスバル」

 指を組んで云うと、きつい視線がこちらを刺し貫いた。

「それは、自明のことであり、そうあるべきものでもある。お前はダイクンの子だ、それは、“ガルマ”と立場が違うこととイコールでもある。ある意味においては私もまた、お前の歩むべき道を整える、露払いのようなものでしかない」

 ガンダム世界、この宇宙世紀においては、キャスバル・レム・ダイクンこそが“メシア”であり、待ち望まれた“来たるべき救世主”なのだ。

 “赤い彗星”と呼ばれた男、“シャア・アズナブル”、つまりはキャスバル・レム・ダイクン――それは、“ガンダム”と云う長大なサガにおける英雄であり、燦然と輝く星である。

 この時間軸において自分がやっていることは、例えるならパプテスマのヨハネのような、“来たるべき主の道を整える”ことなのだ。

 いずれ、原作とは違うかたちではあるにせよ、キャスバルは、スペースノイドの救世主として、コロニー社会に姿を現すことになる。その前に地を平らかにするのが、自分の役目であると了解している――それは、多分“ガルマ”も同じことであるだろう。

 立ち上がり、コンソールをゆっくりと回りこむ。

「お前は、いずれわれわれザビ家の兄弟を使いこなし、ムンゾの、コロニー社会の頂点に立つ。そのためには、多少の非情さも必要となってくる。――私の云うことがわかるか」

 キャスバルは、目を見開いていた。

「わ、わからない……」

 呟くように云うが、“わからない”と云うより、“わかりたくない”が本当のところだっただろう。

「お前の双肩に、スペースノイドの命運がかかることになるのだ。私や“ガルマ”は、それを支えるものでしかない。賢いお前には、よくわかっているはずだな、キャスバル」

「わからない、わからない!」

 激しく首が振られる。

「父の跡を継げと云うのならわかる、だけど、スペースノイドの命運? 僕に、そんなものが背負えるわけがない! 無理だ、無理だよギレン!!」

 子どものよう、あるいは、『the ORIGIN』のガルマ・ザビのように、キャスバルは云った。

「無理ではない。お前にしかできないことだ」

 耳許に唇を寄せ、囁くように云う。

「現に、“駒”はほとんど揃ったではないか。アムロ・レイ、マリオン・ウェルチ、フロリアン・フローエ、ゾルタン・アッカネン。連邦に取られもせず、かれらがムンゾに集まったのは、お前の足許を支えるためだ」

 フォウ・ムラサメやロザミア・バダム、カミーユ・ビダンは、現在進行形で“伝書鳩”たちに探させている。サラ・ザビアロフやパプテマス・シロッコも、どこかに生まれているはずだ。そして、シャリア・ブルも――かれらがムンゾに味方するかはともかくとして、連邦の研究所などに買い取られる前に、こちらが押さえておかなくてはならない。強化人間として無理矢理覚醒させるのではなしに、ゆるやかに、ニュータイプとして覚醒させることができたなら。そうすれば、かの強化人間の悲劇は存在しなくなるはずなのだ。

 キャスバルは、濡れた目を大きく見開いた。

「ギレン、それは……」

「その顔ならば、心あたりはあるようだな?」

 あるいは、アムロと交流するうちに、ニュータイプとしての覚醒が訪れたものか。

「わかっているだろう、ムンゾは、われわれは、ニュータイプを戦場に出すことになるだろう。MSに乗るパイロットとして。かれらを戦場に送り出すのは、お前の役目になる――今のお前に、それができるのか?」

 上に立つものの孤独を、キャスバルはまだ知らない。家族ではなく、国を、組織を、何よりも優先させねばならないこと、それをなすために孤独であらねばならぬことを。

「“ガルマ”を、今の学友たちを、お前は、自分自身は後方に控えていながら、戦場に送り出す立場になる。もちろん依怙贔屓は許されない、そんな指揮官についていく兵卒はない。――今のお前に、それができるか?」

「ぼ、僕、は……」

 キャスバルの唇が戦慄く。泣き出しそうにも見える顔。そうしていると、確かにシャア・アズナブルと瓜二つなのがわかる。

 ――甘やかし過ぎたな。

 原作軸の妙な自信のなさは払拭されたが、その分、お坊ちゃんらしい傲慢さと、この平和が続くのだと云う、根拠のない無邪気な確信を植えつけてしまったのかも知れない。

 だが、上に立つからには、そろそろそれでは困るのだ。幾万の将兵の生命を預かる身としての自覚と、その重圧に耐え得る強靭な精神――いい加減、それを培ってもらわなくてはならぬ。“赤い彗星”の強さの何割かは、孤独そのものに育てられた部分があっただろうからだ。その孤独が、キャスバルには圧倒的に足りていない。

「――お前は、独りであることに慣れねばならん。そして、数多の将兵の屍を踏みしめて、スペースノイドを新たな世界に導くのだ」

 云いながら、苦笑がこぼれる。

 これでは、パプテスマのヨハネと云うよりも、荒野の誘惑におけるサタンのようだ。

 だがまあ、仕方あるまい。今の自分は、正しい道を勧めるのではなく、修羅の道へとキャスバルを押し出すものであるのだから。

 キャスバルが息を呑み、震える唇を、ゆっくりと引き結んだ。

 と――

 いきなり扉の外が騒がしくなった。まさかと思うが、“ガルマ”が包囲網を躱して、ここまで来ようとしているのか。

「……ガルマ」

 キャスバルが呟く。

「……それはよせ」

 誰かと会話しているように――多分“ガルマ”と。

 ――なるほど?

 どうやらこの二人、何らかのかたちで精神が“繋がって”いるようだ。“ガルマ”がニュータイプであるはずはないが、まぁ“人の類”であるからには、人智を超えた何かでそうなることもあり得るだろう。“三日月”の時にも、さっさと阿頼耶識に馴れてしまったくらいなのだし。

 騒ぎは、部屋のすぐ近くまでやってきたが、やがてじりじりと離れていき、ついにはまた、元の静けさが戻ってきた。

「――何があった」

 外のデラーズに問いかけると、弱りきった声が返ってきた。

〈申し訳ありません、ガルマ様が……〉

 なるほど、六人体制の見張りを躱して、ここまで来たか。

「六人では足りなかったな。人数を増やして留め置け。邪魔をされては敵わん」

〈は〉

 そうして、キャスバルに向き直る。

 “ガルマ”が近くまできて、落ち着きを取り戻したものか、キャスバルは、先刻までより平静な顔になっていた。

「わかるか、キャスバル。“ガルマ”はやりたいようにやる。誰がどう止めてもだ。それを少しでも回避したいのなら、お前がきちんとあれの手綱を取れ」

「……ガルマの手綱なんて、取れるのですか」

「完全に取るのは無理だろうし、強引に繋げば、鎖を切って逃げるだろうな。――あれを繋ぐのは、際限なく伸びるゴム紐で良い。但し、その端はきちんと握って、どちらへ走ったかは知っておけ。さもないと、とんでもないところで騒ぎが起きることになるぞ」

 溜息まじりに云ってやると、青い目がまっすぐこちらを見つめてきた。涙に濡れてはいるが、もう狼狽えてはいない。強いまなざし、こちらの言葉を漏らさず聞き取ろうとするように。

「あれをただ野放しにすれば、お前の踏みしめる将兵の屍が増えるだけだ。回避し得るものは回避し、仕方のないものは甘んじて受け入れろ。ムンゾを、その国民を、活かすも殺すもお前次第なのだから」

「――ガルマが……何故?」

「あれの守るものは、自分が守ると決めたものだけだ。国としてのムンゾそのものが含まれるわけではないし、“敵”であろうと庇護対象になると考えれば守る。それを、こちらが捕虜にしようとすれば、あれが暴走するだけだ――今、お前に対してそうしているように」

 そして、下手に兵卒に人気が出るからこそ、“ガルマ”が上に反抗した時に、それが内乱の発端ともなりかねないのだ。それに近いことは、実際“昔”幾度も起こりかけたのだし。

「……やっぱりよくわからないけれど」

 キャスバルは、注意深く云った。

「でも、ガルマのことはわかった。やり過ぎないように、コントロールする。完全には不可能。そう云うことですね」

「あぁ、そうだ」

 キャスバルがその意識を持つだけでも、多少は違ってくるだろう。

「ドズルも、あれには手を焼いている。それには、お前も一枚咬んでいるようだが――この際、それは不問としよう。ガーディアンバンチの駐屯部隊と、今、これ以上の揉めごとを起こさせないよう、よくよく“ガルマ”を監督しろ」

「……“今”と云われるのなら、“その時”であれば問題ないのですか?」

 聡い子だ。こちらの言葉尻を逃さず捉え、そのようなことを云ってくる。

「あぁ、“その時”であれば。――あれが、それに備えているのはわかっているが、無駄も多い。無用の揉めごとで、突発的に戦いに引きずりこまれたくはない。見極めて、よく監督するように」

「……はい」

 ようやく、キャスバルは納得したようだった。

「では、戻れ。あれを回収して、間違いなく制御してみせろ」

「わかりました。では」

 下位の士官がするように敬礼して、キャスバルは部屋を出ていった。少し引かれてしまったかな、と思う。

 ――これで、多少なりともおとなしくなると良いのだが。

 “ガルマ”もキャスバルも。

 “暁の蜂起”まではあと一年――それまでに、他にことが起きれば前倒しだが、MSはともかく、サイコミュシステムに目鼻もついていない今の状況で、戦いが起きれば面倒だ。

 まして、原作とは異なり、あれが起きれば、開戦まではすぐであるだろう――ムンゾは今、あまりにも連邦から危険視されている。せめて、MS-04ブグがMS-05ザクにならなくては、戦うどころの話ではない。

 そろそろニタ研の凍結も解除し、フラナガン博士にも研究を再開してもらわなければ――もちろん、人体実験等に関する監視は続けるにせよ。

 戦いの前の地固めを終えて、本格的に戦時への移行を考える時がきたようだ。

 何をするにも、これからは慎重に、慎重の上に慎重を重ねるくらいの慎重さで、ことにあたらねばならぬ。火薬庫は満たされている。少しの間違いで、それが吹っ飛ぶ可能性もあるのだから。

 

 

 

 ズムシティに戻ってすぐに、“ガルマ”以外の兄妹で顔を合わせる。ドズルはガーディアンバンチなので、通信での参加である。

「いきなり呼び出すなんて、何があったの、ギレン」

 最近はメディアに追いかけられてばかりのキシリアが、やや疲れた顔で問いかけてきた。

「そうだぞ。しかも、ガルマ抜きで――お前は、そんなにあいつが疎ましいのか?」

 サスロが云うが、

「あれにとっては、既に知ったことだからな。あれにとって既定のラインであれば、改めて知らせる必要もない」

〈それで、ガルマは承知するか?〉

 ドズルも云う。

「心配であれば、ガルマには、終わった後で云ってやれ。――連邦とのことだ」

 途端に、三人に緊張が走った。

「動きがあったか」

 キシリアが云う。

「いや。だが、もうじき動く。そうだな、あと一年、“ガルマ”が士官学校を出る、その時を目安に、戦時体制に移れるよう、密かに準備を進めてくれ――MSも、ニュータイプ研究もだ」

「根拠は」

「云えん。流動的な部分もあるからな。だが、正式な開戦は、少なくとも“ガルマ”が卒業するまでは、最大限引き延ばすつもりだ。逆に云えば、“ガルマ”が卒業すれば、いつ戦いがはじまってもおかしくないと云うことだ。そのつもりで、それぞれ準備を進めてもらいたい」

「何故、ガルマの卒業後なの?」

「あれが、ザビ家の最大火力だからだ」

「あの子を戦場に出すと云うの!?」

 キシリアが、デスクを激しく拳で叩いた。

「あんなに身体が弱い子を――指揮官としてですらなく、戦場に!? お前には、人の心がないの!?」

「あれは、戦場に置いてこそなのだ」

 システムは違えど、ガンダム・フレーム――バルバトスに乗っていたのだ。MS戦には慣れているし、元々“昔”から、いつでも戦場では前線に立っていた。後方に留め置く方が、“ガルマ”にとっては我慢ならないことだろう。

「あれには、MSを駆る能力がある。戦術指揮もとれるのだ、今の学友たちも含めて、小部隊を作らせ、遊撃隊として前線に出す」

「ギレン!!」

〈……やっぱり本気なのか、ギレン〉

 ドズルが云う。

「本気だ。かつてテム・レイ博士を迎えた時に、お前には云ったはずだな、ドズル。“ガルマ”は、あるいはキャスバルも、MSに乗せて、前線に出す。シャア・アズナブルは、元々そのための影武者のつもりだった」

「キャスバルも!?」

 流石にサスロが目を剥いた。

「ダイクンの子をか! 正気か、ギレン!?」

「正気も正気だ。あの二人には才能がある」

 原作で明らかであるように。

「“ガルマ”など、お前たちからMS計画の概要を受け取った後、テストパイロットたちに顔見せに出向いたそうだぞ」

〈聞いてないぞ!〉

 ドズルが吼える。

 が、

「事実だ。“伝書鳩”が巻きこまれてな。報告が上がってきた。例の、ガイア、マッシュ、オルテガの三人と接触している」

〈ダークコロニーには来ていないぞ!〉

「休暇中で、ズムシティに出ていたところを摑まえたようだな」

「あの資料を渡したのは、三年も前の話じゃないの! 十五にもならなかったあの子が、そんな危ないことを!?」

 “弟妹”たちは驚愕しているが、こちらとしては想定の範囲内のことだ。

 大体、“ガルマ”は中身だけなら老人もいいところである。体感年齢的には百ニ、三十歳くらいであるはずだし、賢くはならないが、悪知恵と悪賢さには磨きをかけているはずだ。見た目に騙されたら失敗するのだが、どうもザビ家の面々は、“ガルマ”がきゅるんとしてみせるのに、簡単に騙され過ぎるきらいがある。タチ・オハラをはじめとする“伝書鳩”たち、あるいは最近ではデラーズたちも、あれの本性に気づきつつあると云うのにだ。

「だから、お前たちはあれに騙され過ぎていると云うのだ」

 と云ってやるが、三人とも、どうにも承服し難いらしい。

「“ガルマ”とキャスバルは、ガイアたちに挨拶に行ったのだそうだ。自分はいずれパイロットになるので、その時には宜しく頼むとな」

「馬鹿な!」

 キシリアは叫んだ。

「あの身体の弱い子が、そんなことを! お前が何か吹きこんだのではないの、ギレン!」

 それには、肩をすくめるしかない。

「私が吹きこんで動かされるようなタマか。あれが望んだことだ。だが、純粋に個人の戦闘能力を云々するなら、確かにあれは、ザビ家一だと思ってはいるがな」

 システムは違えど、実際にMSに乗ったと云う経験は大きい。

 もちろん、宇宙世紀のMSは、エイハブリアクターとやらもナノミラーアーマーとやらもない。ビーム兵器も有効であるから、その戦いは、鉄オル世界でのそれとは大きく異なってしまうだろう。

 それでも、対艦隊戦ではなく、限りなく白兵戦に近いMSでの戦いは、“ガルマ”のポテンシャルを最大限に活かすものになるはずだった。

 その上、ザビ家の人間として、また士官学校を出た士官として、作戦指揮にもあたることになるだろうから、戦局全体をドズルと共有しつつ動くなら、連邦何するものぞと思えるほどではあったのだ。

「……だが、親父が納得するとは思えんぞ」

 サスロが云う。

「そこは、“ガルマ”本人に説得させる」

 何しろ、こちらに断りもなく――事実上、こちらの思惑をすべて蔑ろにして――“黒い三連星”に接触したくらいなのだ。その熱意で、“父”を是非とも説得してもらわねばなるまい。

「親父が賛成するとは思われんが」

「だが、説得できるのはあれくらいのものだろう。ザビ家の男として戦場に出たいと“ガルマ”自身が云えば、“父上”とて無下にすることはできるまい」

 キャスバルの方は、最悪シャア・アズナブルを――“父”に対しても――影武者にするとしても。

「父上は、お前にも説明を求めるのではないか?」

 キシリアが云う――それは、シャアのことを考えているからか。

「そうだとしても、“父上”にも納得して戴かなくては――何のために士官学校にやったかと云うことになってしまう」

「……私は反対だわ、ガルマ、あの弱い子を、戦場に出すなんて」

「俺も、賛成はできんな。あまりにもリスクが大きすぎる」

「……お前はどうだ、ドズル」

 沈黙している“弟”に問うと、ドズルは苦虫を噛み潰したような顔になった。

〈サスロ兄やキシリアの危惧もわかる、が……正直、あの統率力は、後方にやるには惜しいとは思う、な……〉

「何を云うの!」

〈いや、聞いてくれ。ガルマは、必ずしも虚弱ってわけじゃない。この間も、二年次の演習で、二〇km行軍を見事に踏破したからな。キャスバルにしてもそうだ。あの二人を中心に、今の二年生はよくまとまっている。恐らくは、来年予定されている連邦駐屯部隊との合同演習でも、良好な成績を叩き出すだろう。――あの二人の統率力を見るにつけ、後方に留めるのは……いかにも惜しい〉

「それほど、あの子にカリスマがあると云うの」

〈キャスバルのようなものじゃないがな。下のものたちからは、妙に好かれているようだ。“野生の御曹司”なんぞと揶揄する輩もあったが、それこそこの間の演習で捻じ伏せたようだった〉

「それで、本人は、MSに乗る気だと」

〈そうでなきゃ、三年も前に、MS計画の資料を見たいなぞとは云わんだろうな〉

 それを聞いた二人は、深い溜息をついた。

「絶対に揉めるぞ……」

「父上が激怒なさる姿しか思い浮かばないわ……」

 まぁ確かに、“ガルマ”には甘過ぎるほどに甘いデギン・ソド・ザビであるからには、それはそれで想定内ではある、が。

「“父上”とて、戦いの気配は感じておられよう。その状況で、末子とは云え、士官学校まで出たザビ家の子が、ただ守られているわけにはいかんのだと、そう申し上げるより他あるまい」

 原作のガルマ・ザビも、地球侵攻時には前線に立った――それは、多分にシャア・アズナブルへの対抗心からではあったのだが。

 それでも、ガルマ・ザビは地上に降り、カリフォルニアあたりを拠点に軍事作戦を遂行し――そしてイセリナ・エッシェンバッハと恋に落ち、シャアに計られて戦死したわけだ。

 今回は、イセリナとのラブロマンスに出番はない――何と云っても、“ガルマ”には、アルテイシアと云う婚約者がいるのだし――が、まぁ、何があるかはわからない。“暁の蜂起”の“後始末”も、キャスバルが“シャア・アズナブル”でない以上、どう変わってくるか知れたものではないのだし。

「それに、今後の状況如何によっては、いろいろ考え得る展開も変わってくるからな。とにかく、慎重に流れを見定める必要がある」

「……本気で連邦をことを構えるつもりか」

 サスロが云うが、そんなものは、こちらの都合でどうこうできる話ではない。

「コロニー同盟を志した段で、道筋はつけられていた。連邦も、もはや後には退けまい。われわれにできるのは、どれほど少ない犠牲で終戦まで持っていくことができるか、そのための手段を講じることくらいだ」

「回避はできないのか」

「私が狙撃された時に、その機は既に逸していたさ。後は、どちらが有利なかたちで開戦に持ちこめるか、それくらいだな」

 キシリアとサスロ、そしてモニターの向こうのドズルも、皆が唾を呑むのがわかった。

「……いよいよ、と云うことか」

〈この時のために、準備は進めてきたが……〉

「あぁ。いざとなると、やはり……」

 三人ともに、表情が硬い。

「まさか緊張しているのか?」

 まだ、一年は先の話だと云うのに。

〈まさか。武者震いと云うヤツだ〉

 ドズルは云って、震える掌をぐっと握りこんだ。

〈これで、今まで雌伏させてきた奴らにも、陽の目を見せてやれる。奴らのしてきたことが、無駄ではなかったと知らしめてやれるんだ――そして、ミノフスキー博士やテム・レイ博士の技術にしても〉

「計画は順調か」

 問うと、ドズルからは、力強い頷きが返された。

〈ああ。じきに、MS-05が量産に入れるようになる。パイロットの育成は途中だが、徐々に戦闘機からMSに、軸を移しているところだ。一年後には、MS部隊が実働に入れるようになるだろう〉

「よし。――キシリア、お前の方はどうだ」

「フラナガン博士には、研究室の再開を告げたところよ。サイコウェーブの研究については、私には何とも云えないわ――博士の方は、手応えを感じてはいるようだけれど」

 仕方がないけれど、実験が制限されるから、どうしてもね、と云う。

「そちらは、後々のためにも、甘んじて受けてもらおう。期待していると、フラナガン博士には伝えておいてくれ。――サスロ、お前はどうだ」

「ムンゾの財政は、悪くはないな、今は。――だが、本当に連邦とやるとなれば、やれて一年、欲を云うなら半年程度で終わらせて欲しいものだな。中世紀の世界大戦のように年単位で引っ張ることになれば、その後の復興にも差し障りが出てくる可能性はある」

「――充分だ」

 コロニー落としがない以上、人類の半分が死滅するような戦いになることはない。第二次世界大戦における原爆のように、“あれがあったからこそ戦いが短く終わった”と云われる可能性もあるが、後々のことを思えば、もちろんコロニーを落とすメリットは少ない。ムンゾを、そんなことで“人類の敵”にするつもりはない。

ザビ家の、ムンゾの戦いを正当化するには、特にこの時間軸では、もっと違う選択肢もあり得るので、そちらから攻めていく方が得策だろう。

 ガンダムのない連邦が、どのような戦い方をするかはわからないが――泥沼化する前に和平交渉に入り、早期に戦いを集結させる。今回は、当然コロニーレーザー“ソーラーレイ”も存在しなくなるので、和平の緒を見出したら、即それを掴まねばならない。そのためにも、議会や内閣と、軍の掌握は必須である。太平洋戦争時の東條英機のように、兼務する軍の役職に、ずるずると引きずられるようなことがあってはならない。

「開戦から時が過ぎるほど、我らの勝機はなくなってゆく。短期決戦を旨として、それこそ半年で蹴りをつけるつもりでいくぞ」

 そう云うと、“兄妹”三人は力強い頷きを返してきた。

 

 

 

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