ザビ家成り代わり   作:くずみ@ぼっち字書き。

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【成り代わり】another ORIGIN 謀略の"ギレン" 20【転生】

 

 

 

 案の定、子どもたちは大騒ぎした。

 執務室に乗りこんできての大暴れである。

「ギレンさん、ガルマを連邦軍に連れて行かせたって、本当!?」

 アムロを筆頭に、子どもたちがなだれこんでくる。

「何で!? 何でガルマが地球に行かなきゃなんないんだ!?」

「ガルマが地球にって、どうして!?」

 一番暴れたのは、当然ゾルタンとミルシュカだったが、年長のアムロも、不満をいっぱいに湛えた顔で、こちらをじっと睨みつけていた。

 だが、

「納得いかねぇ!!」

 それ以上に大荒れだったのは、実はカイ・シデンだった。

 カイは、“ガルマ”に距離をおいていたようなところがあったと思ったのだが、意外に懐いていたのだろうか。それとも、口下手なアムロの代弁をしているのか、あるいは将来ジャーナリストを目指すが故の、相手を選ばない正義感か。

「何で、唯々諾々と連邦の云うとおりにガルマを差し出したんだ! アンタ、撃たれて気が弱くなったんじゃねぇだろうな!?」

 こちらがまだ腕を吊っていたからだろう、殴りつけてこそこなかったが――怪我人でなければ、拳を打ちつけられたのだろうな、と思うような怒りぶりだった。

 それにしても、カイ・シデンの科白には、少々見縊られたものだと思う。

「随分、われわれの決断を軽く見てくれたものだな、カイ・シデン?」

 すこしばかり声にドスをきかせて云えば、一瞬怯むが、すぐにぎっと睨みつけてくる。

「決断とか云うけどな! ムンゾは納得してねぇ! ガルマを犠牲に、戦争を回避するなんてな!」

「“戦争”は既にはじまっている」

「は」

「はじまっているのだ、カイ・シデン。“ガルマ”は戦場に出ていったのだ」

「詭弁かよ!」

「違う」

 まだ若い少年には、了解は難しいのかも知れないが。

「武器を取るばかりが戦争ではない。“ガルマ”は、そう云う“戦場”に出たのだ。あれは、人質になりに行ったのではない、戦いに行ったのだ」

「……政治ってことかよ」

 アムロも、じっとこちらの会話に耳を傾けている。それに何かを感じたのか、ゾルタンも、そしてミルシュカも。

「政治、とは違うな。“ガルマ”は政治を理解しない。あれがしに行ったのは、有体に云えば悪戯だ」

 但し、連邦軍そのものを手玉に取るような。

「悪戯? 悪戯って、戦争なの?」

 アムロが首を傾げる。

 まぁ、普通は違うだろう。だが、

「やりようによってはな」

 “ガルマ”の“悪戯”は、戦争におけるゲリラ戦のようなものにもなり得る。元々が悪辣なのだ、“そのつもりで”やれば、結構な攪乱戦法になるだろう。

「“ガルマ”は、連邦軍のジーン・コリニー中将に呼ばれていった。だが、向こうに着けば、それ以外の将校たちとも会うことになるだろう。――ところで、ムンゾでもそうだが、連邦も、決して一枚岩と云うわけではない。それはわかるな?」

 保守派、改革派、中道、日和見――ひとつの議会や軍の中でも、振れ幅は結構あるものだ。そして、同じ保守派や改革派の中でも、各人スタンスは異なるものである。例えば、割合行動を共にしていても、自分とマツナガ議員、ダルシア・バハロの立ち位置が異なるように。

「例えば、アムロと“ガルマ”の間にカイが入って、“実はアイツ、お前のことが嫌いだって云ってたぜ”とでも囁けば、その誤解が解けるまで、二人の間はギクシャクするだろう?」

「カイはそんなこと云わないし、僕もガルマのこと疑ったりしないよ」

 アムロが云う。

 そう云えば、“ガルマ”はなんちゃってニュータイプだった。意思の疎通が直接できるなら、確かにそのとおりだろう、が。

「喩えだ。それなら、サスロと私でもいい。――誤解が解けるまでは、お互いちょっと引き気味になって、仕事も滞るかも知れないな?」

 子どもたちは、ようやくこくりと頷いた。

「――つまり、アレか、ガルマの“悪戯”ってのは、そう云う不和の種って云うか、疑心暗鬼にさせるようなのをばら撒いてくる、ってことなのかよ」

 カイが、むすっとしたままでそう訊いてきた。

「そうだ。“ガルマ”の被った猫の皮は厚いからな、まさか、無邪気っぽい子どもが、そんな悪辣なわけはないと思うだろう。それが、“ガルマ”の強みでもある」

「そりゃ、ひでぇ“悪戯”だな……」

 気が抜けたような顔と声で、カイは云った。

「俺はまた、てっきり……デギン首相とキシリアさんが激怒してたって聞いたからさ……」

「あー……それはまぁ、本当のことではあるな」

 通信が切れた後、“父”からはひどく叱責されたし、キシリアも同じだった。サスロは、まぁ微妙な顔ではあったが、理解はしてくれたと思う。

 それから、婚約者を人身御供に出されたアルテイシアにも、少しではなく恨み言を云われた。

 一方、タチ・オハラとエギーユ・デラーズは、“本当にガルマ様を野放しになさるんですか”と、戦慄したように云ってきた。この二人は、“ガルマ”の本性をよく知っているから、まぁそう云う反応になったのだろう。

 似たようなことは、ランバ・ラルからも云われた――“あいつを、歯止めも何もなしに地球へやったのか”と。まぁ、あの男も“ガルマ”のことはよく知っているから、当然と云えば当然の反応だった。

 本当なら、巻き添えを食いそうなゴップやブレックス・フォーラあたりには、一言警告してやるべきなのかも知れないが――まぁ、“ガルマ”をと望んだのはジーン・コリニーであるのだし、何かあったら恨み言はそちらへ向けてもらいたいものだと思う。こちらは、望んで出したわけではないのだし。

「どうも、“父”やキシリアは、あれがどんなものなのかわかっておらんようでな。ひ弱で甘ったれでやさしい子どもだと思っているようなのだ」

 冗談ではない、悪知恵と悪辣さを撞き混ぜて固めたようなものが“ガルマ”だと云うのに。

 バスク・オムに念押ししたのも、半分は、“ガルマ”が何をやらかしても責任は持たない、と云いおくため――残りの半分は、無論“ガルマ”の箍を外すため――だったのだから。

 キャスバルからは、あの後“本当にガルマを野放しにするつもりですか”と云われたが――せっかく連邦にやるのだから、せいぜいかき回してきてくれなくては。

「……ガルマが、アンタが云うほど悪辣だとは思わねぇけど、ひ弱で甘ったれはねぇなぁ」

 やさしくないわけじゃないのはわかってるけどさ、と云う。

「そうだろう? “ガルマ”は戦いに行ったのだ、弾丸飛び交うのとは異なる戦いに、な」

 だから、“鎖”をすべて外して出したのだ、と云うと、カイは微妙に疑わしげな顔になった。

「それで、ガルマが無事帰ってくるって保証はあるのかよ?」

「帰ってくるさ」

 鉄オル世界での、ちょうど一期と二期の間の二年間、“ガルマ”は――“三日月”は、仲間の許を離れ、獲物を求めて彷徨っていた。ほぼ音信不通で、宇宙世紀よりも通信も交通も不便なあの世界の中で、獲物を見出して張りつき、それとともに還ってきた。

 ――“鉄華団よ、私は帰ってきた”!!

 『0083』の、アナベル・ガトーの名言とともに。

 まぁ、今回はそれができないのはわかっている。そもそも“ガルマ・ザビ”は対外的にはそう云うキャラではないし、そもそも大本のアナベル・ガトー本人が、士官学校にいるからだ。

 “ガルマ”やキャスバルの二年下、つまりは今期の新入生にその名を見つけた時には、“ガルマ”の執念が実を結んだのかと戦慄した。あの二人の“薫陶”は、下級生にも及んでいるらしく、今やすっかりザビ家とダイクンの過激派らしいと聞いている。

 ともかくも、“ガルマ”は連邦においても十二分に戦えるし、戦わせてやるべきだろう。予定より少し早いが、好きにさせる機がやってきたと云うことだ。

 “父”や“弟妹”は、こちらを冷徹だの酷薄だのと批難するが、親子兄妹で殺し合ったザビ家にしては、随分と生ぬるい話ではないか。

「あれは、もっと酷い状況から戻ってきたこともある。だから、必ず戻ってくるさ――その前に、向こうの気に食わない連中に、盛大にやらかして見せてからな」

「ぅわぁお……」

 カイが、天を仰いだ。

「そいつは大変だ。ガルマって、結構いろいろやらかしてるって聞いたぜ?」

「……どれのことかな」

 この時間軸に入ってからだけでも、古くはローゼルシア・ダイクンの足下にネズミを放ったこと――お蔭で、老女が心臓発作を起こしかけて、大騒ぎだった――から、近くは先日の“襲撃”まで、“ガルマ”のやらかしたことは枚挙に暇がない。

 ひとつ前の鉄オル世界や元々のあれこれ、幾つもの“昔”までも勘定に入れれば、百や二百ではきかないだろう。直接的な暴力から、情報を駆使した嫌がらせまで、タチや“伝書鳩”が見たら戦慄か絶望するしかないようなことばかりだ。

「士官学校の合同演習で、連邦の連中をコテンパンにしたって」

「……あぁ」

 それは、“やらかした”と云う枠ではない気がするが――しかし、一応向こうが格上であることを考えると、“やらかした”と云うのも間違いではないのか。

「あと、アンタを襲撃しに、わざわざガーディアンバンチから戻ってきたとか」

 なるほど、そこも知れていたか。まぁ、そうだろうとも。

「……まぁ、君が知る以上に、“ガルマ”はいろいろやらかしている、それだけのことだ。だから、私もそれほど心配していないと云うことさ。鎖も枷も、全部取り払ってやったからな」

 連邦では、様子を見ながら、やりたい放題やるのだろうから。

「え……ガルマ、あれで好き勝手してなかったのかよ……」

 カイが、呆然と呟く。

 “ガルマ”がいたら見せつけてやりたかった。そう、あの言動は、世間一般から見れば、充分以上に“好き勝手”だったのだと。

「あれでも、とてもとてもとても抑制されていたのだが」

「マジかよ……どんだけなんだ、あのひと……」

 呆然とした口調、そう、これが普通の反応と云うものだ。

「だからこそ、口を酸っぱくして“自重しろ”と云ってきたのだが――まぁ、連邦の、しかも軍の動静を盾にとって、無理矢理人質を取っていくような輩には、遠慮や気遣いも必要あるまいと思ってな」

 好きにやってこいと云って送り出したのだ、と云うと、カイはさも厭そうに顔を顰めた。

「ガルマもガルマだけど、アンタも大概だよな……」

「それは褒め言葉だと思っておこう」

「……褒めてねぇよ」

 とは云ったものの、先刻までの激昂は、少年の中からはすっかり抜け落ちてしまったようだ。

 そして、カイが納得したようなのでアムロが落ち着き、アムロが落ち着いたのでゾルタンとミルシュカもおとなしくなった。どうやら、“説得”には成功したようだ。

「半年、待て。“ガルマ”は、キャスバルにそう約束していた。だから、“ガルマ”は半年で帰ってくる。それまで、おとなしく待っていられるな?」

 そう云って、アムロの茶色い髪をくしゃりと撫でると、アムロは少しばかり考えて、やがてこくりと頷いた。それにつられたように、ゾルタンとミルシュカも頷く。

「良い子だ」

 カイ・シデンが、呆れたような顔になったが、まぁとにかく半年待つと云ってくれれば良いのだ。

 こちらもその間に、着々と“準備”を進めなくてはならないのだから。

 

 

 

 子どもたちを説得することはできたが、そうはいかないのがムンゾ国民である。

 何しろ、面と向かって対話できるわけでもない、しかも、狙撃事件に続いての“ガルマ”の地球行きである。

 過激派のみならず、“連邦許すまじ”の声は、日に日に大きくなるばかりだった。

「このままいくと、せっかくガルマが作ってくれた猶予が、フイにもなりかねんぞ」

 自宅の執務室――と云うか書斎――を訪ねてきたサスロが、難しい顔で云う。

「収めるのは難しいか」

「難しいな。お前の後にガルマだろう、どのメディアを見ても、論調は反連邦一色だ」

 フェデレーション・ポストですら、連邦に対して苦言を呈するような風だったからな、と云う。

 なるほど、連邦系メディアですらそれならば、ムンゾ国内のメディアは云うに及ばずだ。

「国民に、実情を語るわけにいかんのが辛いな……」

 まさか、“着々と戦いの準備は進んでいる、独立まであと僅か、それまで耐え忍べ”などと云うわけにはゆくまい。云えば、駐屯軍どころではなく、連邦軍の本体が、ムンゾを制圧しにやってくるだろう。

「とは云え、世論の望むように連邦に抗議したとしても、行きつく先は開戦だからな。ガルマを取られている現状では、それも回避したい」

「そうだな。まぁ、いいように使われる“ガルマ”ではないとは思うが」

「……いつも思うが、お前の見ているガルマは、一体どうなってるんだ」

「見たままだと思うがな。――キシリアは」

「毎日ガルマを案じて嘆いているらしいぞ。シャアが、甲斐々々しく慰めていると聞いた」

「なるほど」

「父上は、未だお前におカンムリだ。“何をしようと関知しない”なぞと云うからだぞ」

 責めるように云われ、思わず眉が寄る。

 “父”は、あの後ずっと怒りが収まらぬようで、ここのところは公邸にこもり切りである。よほどこちらの顔を見たくないのだろう――ある意味、原作の再現となったわけだ。

 だが、こちらにも云い分はある。

「云っておかなくては、あれがやらかした後に、コリニー中将から苦情を云われることになるだろう」

「……何でやらかす前提なんだ」

「やらかさなくては、開戦前に帰ってくることはできるまい?」

「……それはそうかも知れんが」

「まぁ、“ガルマ”はなるようになる。今の問題は、デモ隊をどうやって沈静化させるかだろう」

「まぁな」

 ふと目をやれば、モニターには、反連邦とムンゾの旗を掲げてデモを行う市民たちの姿が映し出されている。ムンゾ国軍が警戒にあたっているが、今のところ、市民が暴徒化して商店を襲撃したりと云うことはないようだ。そのような事態になれば、ムンゾ国軍としても、催涙弾を使用したり放水したり、少々手荒にならざるを得なくなってくるので、まだ平穏であると云えるかも知れない――あくまでも、“今のところは”でしかないのだが。

「政府も議会も軍も動かん、弱腰だ! と云う連中ばかりときている。まったく、われわれの都合もわからずに!」

 とは云うが、

「機密であるからには、わかるわけもあるまいよ」

「わかっている!」

 サスロは、苛立たしげに手を振った。

「だが、俺が腹立たしく思うのは、一部の議員どもが、デモ隊の尻馬に乗るようなかたちで、政府や軍の不手際だと云い立てていることだ! 彼奴らめ、有象無象に過ぎんくせに、政府批判だけは一人前に……」

「馬鹿ものどもは、以前のあれで一掃されたかと思ったのだがな」

「あいつらが消えたら、今度は別の連中が、実は馬鹿ものだとわかったってことだろう」

 まだしも、親連邦の連中の方が、黙ることを知っている、などと云うが、さてそれは本当に賢明であるからなのか。

 まぁ、デモなどと云うものは、ある種日常の憂さ晴らしを政治的行動としてやっている部分はあるのだし、暴徒化しなければ好きにしろと思わぬではない。

 ただ問題なのは、サスロの云うとおり、そのデモを、自らの政治力に利用しようとする一部の議員があることだ。デモ隊が、自らの主張を政治に反映させるために、政治家に近づく、と云うのはよくある話だし、それ自体をどうこう云うつもりはないが、自らの勢力拡大のためだけに、そう云った政治行動を行う連中に、政治家の方が擦り寄っていくと云うのは、政治倫理的にもいかがなものかと思わずにはいられない。

 もちろん、それが当人の政治理念と合致するが故の行動であるのなら、こちらの心情は措いて、納得せざるを得ないところはあるのだが――昨今散見される一部の政治家は、それまでの自らの主張を擲って、デモを行う団体の主張に擦り寄る風なので、余計に見苦しさが際立つのだと思う。

「しかしまぁ、その“馬鹿もの”どもは、いずれも小物でしかないだろう。もちろん、動向に注意は必要だが……」

「甘いぞギレン!」

 サスロはテーブルを叩いた。ドズルと云いサスロと云い、ザビ家の兄弟は、何かを叩かずには話ができないのか。

 眉を顰めるが、サスロには通じなかったようだった。

「あのような軽佻浮薄な輩が、暴動を起こさせるのだ! こちらの計画にも差し障る、何かあれば、奴らを即、拘置所送りにしてくれる!」

「が、連中も尻尾は掴ませんのだろう?」

 そう云ってやると、いかつい肩が、がっくりと落ちた。

「そうなんだよ……あいつらめ、鼠だか狐だか、ちょろちょろするくせに尻尾を出さん」

「もとより、デモを行っているのは市民たちであって、政治家が裏で糸を引いていたと云うわけでもないからな」

 政治向きの話で云えば、現状、連邦とことを構えたいと考えているものなど、ほとんどありはしないのだ。幾ら市民運動が盛り上がろうとも、戦争には機と云うものがある。少なくとも互角以上にやれると確信できる兵力、技術、情勢が揃わなくては、恐ろしくて戦争などできるものではない。もちろん、威勢ばかり良い愚かものもなくはないが、議会内ではごくわずかでしかない。

 原作においては、ムンゾ――ジオン公国は、サイド2、ハッテを攻撃し、その第8バンチ――アイランドイフィッシュを地球に落下させた。世に云うブリティッシュ作戦である。

 コロニー落としは、そこに住まう住民の生命をも刈り取り、かつ地球上にも、二次災害を含めた甚大な被害を与えたと云う意味で、“歴史”に残る事件だった。元々の方でも、人類が宇宙に進出し、そこで戦争になったとしたら、『ガンダム』を思い出して似た作戦を決行するものが出るかも知れない。それほどに、インパクトの強い“事件”だった。

 原作軸のムンゾ――ジオン公国、そしてギレン・ザビは、あの作戦とMS、そしてソーラ・レイを切札に、連邦と云う巨人に戦いを挑んだのだ。

 だが、ブリティッシュ作戦はやはり人道的には戴けないものであり、後々ムンゾとそれ以外のスペースノイドの間に深い溝を作ることにもなった――宇宙世紀で幾つも語られた、ジオン残党の戦いを思い出すが良い――から、想定せずに戦うことを考えるべきである。まして、コロニー同盟などを成立させ、力を合わせて連邦と戦うと約したのだから、なおのこと。

「だが、糸はなくとも、絡んでいく輩はあるぞ。特に、自分の現状に不満のある奴らは、ぶつけどころを探しているところがあるからな。そう云う輩は、手っ取り早いぶつけ先として、反連邦を叫ぶわけだ。面倒くさいことこの上ない」

「確かにな」

 元々の方でも、老人や低収入の人間などに、勇ましい言葉や自国中心主義に歓喜するものは多かったように記憶している。身近なところにぶつけて、挙句DV、とならないだけましなのかも知れないが、かれらの小さな“運動”が、いずれ国そのものを、戦争と云う巨大なうねりに投げこむことになると思えば、軽視するわけにもいかない。面倒なことである。

「ともかく、議会の方を抑えこんで、かつメディアも軌道修正させるしかなかろうな」

「それで抑えられるか?」

「それ以外に、何ができると云うのだ」

 武力行使に出るわけにもゆかず、デモに迎合するわけにもゆかぬとなれば、できることなど限られてくる。

「せめてお前が撃たれていなければ、もう少しやりようがあったんだがな……」

「繰言か、サスロ。お前も年寄りじみてきたな」

「誰のせいだと!」

 とは云うが、少なくともこちらのせいではない。

「敢えて云うなら“ガルマ”か、あるいは連邦のせいだろうな」

「……くそ」

 などと吐き捨てられても、どうなるものでもない。

「繰言に費やす暇などあるまい。“ガルマ”が稼いでくれた時間は半年だ。場合によっては、それより短くなる可能性もなくはない」

「……あぁ、わかっている」

 とにかく半年、半年こらえて“ガルマ”が戻ってくるまで開戦を回避することができたなら、こちらにも勝機、とまではゆかぬにせよ、戦いを有利に進める可能性も出てこようと云うものだ。

「――新型MSの生産状況はどうか」

「MS-06は、そろそろ量産体制に入れるかと云うところだな。このままいくと、MS-05は、出番もないままお役御免になりそうだ」

 まぁ、それほど作らないうちに新型に移行できるんだから、コスト的にはそこまでひどいことにはなっていないが、と云う。

「新型機が主力になったとしても、MS-05は、引き続き訓練機として使うのだろう?」

「まぁな。それに、量産体制に入ると云ったって、すべてのパイロットに即新型を与えてやれるわけじゃない。まずは新旧入り混じっての運用になるだろうな」

「そうか」

 まぁ、せっかく作ったものを、一度も運用せずに廃番にするのは胸が痛む。MS-05、所謂“旧ザク”が、日の目を見るのは喜ばしいことだと思う。

 それに、今現在MSの訓練を受けているパイロット、乃至はパイロット候補生たちにとっては、馴染んだ機体の方が良いのかも知れないのだ。

「新旧の別はともかく、今の目標は、すべてのパイロットにMSを充てがうことだ。そうだろう?」

「そうだな。――今は、どれくらいのパイロットに、MSを行き渡らせることができるのだ?」

「正確な数値はわからんが、新旧取り混ぜても、恐らく四割にいくかどうかじゃないか」

「四割か……」

 それは、まだまだ足りない。足りな過ぎると云ってもいいくらいだ。

「少ないな、七割、せめて六割には供給できるようにしたいが」

「新型の方が、生産ラインとしては楽だから、半年あればもう少し稼げると思うが――七割はどうかな」

「急がせろ。さもなくば、われわれに勝機はなくなるぞ」

「……わかった」

 ムンゾが勝利、乃至は有利な状況で停戦に持ちこむためには、だらだらとした戦いではなく、短期決戦にする必要がある。

 そして、純粋な数では連邦に敵うべくもない以上、MSが圧倒的な“新技術”であるうちに、決着をつけなくてはならないのだ。

「――とにかく、“ガルマ”の帰還までに、こちらも準備万端調えておかねばな」

「あぁ」

 半年。

 “ガルマ”がキャスバルに約束した半年と云う期間のうちに、戦争に耐え得る体制を作り上げておかなくてはならぬ。それが、後を守るものに課せられた義務なのだから。

 

 

 

 しかし、数々の操作にも拘らず、反連邦の動きは、一向沈静化の兆しが見えなかった。

「ガルマが行って、まだ一月にもならんのだぞ!」

 サスロは叫ぶが、まだ一月にもならないからこそなのではないか。一月では、衝撃が薄れるにはまだ早い。

「それだけ、国民にとってはショックだったのだろうな」

 と云えば、強く睨みつけられた。

「他人事のように云うな!」

「そうだぞ、ギレン」

 キシリアが頷く。

 “ガルマ”が地球へ行ってから、泣き暮らして憔悴している、との専らの噂だったが、噂は噂でしかなかったと云うことか。見事なほどにいつもと変わらない。あるいはそれが、“氷の女”たる所以なのか。

 珍しく、三人揃った休日の午後である。キシリアは、シャアを伴ってはいなかったが、それは大学の課外授業のせいであるらしい。しかも、生徒の立場ではなく助手として駆り出されたのだそうだ。教授に気に入られたとかで、キシリアとしても悪い気分ではないらしい――少しばかり淋しそうな顔はしていたが。

 まぁそう云うわけで、士官学校長として忙しいドズルを除き、久し振りの兄妹でのティータイムとなったわけだが。

「お前が、ガルマをどうにでもせよと云わんばかりに送り出したので、父上はひどくご立腹だ。国民には、お前のもの云いは知られてはいないが、知れれば父上と似たりよったりの反応になることは、想像に難くないな。――お前、この後一体どうするつもりでいる?」

「どうするもこうするも」

 肩をすくめてやる。

「私に、何かやりようがあると思うのか。下手を打てば、連邦軍がデモ隊を踏み潰しにやってくるぞ」

「だから、下手を打たせん方策をと云っているのではないか!」

 サスロの拳がテーブルを打ち、カップが跳ねてがちゃんと鳴った。中の紅茶はこぼれなかったが、少々動作が荒過ぎるのではないか。

「落ち着け、サスロ」

「これが落ち着いていられるか!!」

 短気な“弟”は、ぎりぎりと歯を軋らせた。

「これで連邦の介入を許すようなことがあれば、ガルマは何のために地球へ行ったのかと云うことになるではないか! コリニー中将とやらの高笑いが目に浮かぶようだ……!」

「まだ、連邦軍が介入すると決まったわけではあるまい」

「悠長なことを!」

 とは云うが、連邦軍が介入するとなれば、それこそデモ隊が暴徒化して、近隣の商店などが襲撃されるくらいの事態にならねばならないだろう。

 それとも、デモ隊の中に不穏な動きをするものがあって、そのものの煽動で、市民が暴徒化しかねないとでも云うのか。

 そう問えば、

「ないとは云い切れんだろう!」

 と怒鳴られた。一応“長兄”のはずだが、どう云うことだ。

「ない、とは確かに云い切れんが、それとても、よほどの事態にならなければ、ムンゾ国軍の管轄になるはずだ。議会が占拠されるなど、よほどの非常事態でない限り、連邦軍は手を出してはこれんさ」

 ただの暴徒化ではなく、それこそ民主主義の根幹を揺るがす事態にでもならない限りは。

「ただまぁ、国民が納得せねばこの騒動が収まらんと云うのは、確かにそうだろうな。そしてそれに関しては、メディアをもう少し穏当な報道に軌道修正させるくらいしか、打てる手はない」

 政府の公式見解など、色眼鏡で見られるしかないのは、どの時間軸でも同じことだ。そして、それを補強するような報道に軌道修正させれば、“政府の圧力だ”などと批難されるのも。

「どうしたところで、政府に対する批判が減るわけではないのだ。まぁ、姿勢を低くして、今の熱量が沈静化していくのを、じっと待つより他ないだろうな」

「落ち着くと思うのか」

「“ガルマ”の身に何か起こると云うような、新しい“燃料”が投下されるならわからんが、そうでなければ、人間はそう長く怒りを保持することは難しい」

 怒りと云うのは、かなりエネルギーを消費する感情なのだ。思い出して再燃することはあるが、ずっと同じ熱量で怒りを抱き続けるのは、経験則から云っても不可能である。そして、大体の人間は、怒りを再燃させたとしても、最初と同じほどの熱量にはならないものだ。

 つまり、時が過ぎゆけば、大抵のことは沈静化せざるを得ない。それまでに、例えば連邦軍の艦船が事故を起こすなどの、新たな燃料さえ投下されなければ。

 今回に関して云えば、こちらが撃たれたすぐ後に、“ガルマ”を地球に、と云う話があったので、矢継ぎ早に“燃料”を投下された感はあった。これで、さらに何やら事故でも起これば、完璧な構図が完成だ。陰謀論者たちが喜びそうな流れである。

 だがまぁ、仮にこの流れのすべてが陰謀だったとして、それに乗ってやらねばならぬ義理がどこにある?

「私は、そこまで案じてはおらんよ。とにかく、今のところは、開戦論をあまり抑えこむのは、逆効果でしかない。多少は発散させてやれ。連邦が出てくるような事態になるなら別だが、そうでなければ、抑えつけた分だけ酷いことになるぞ」

「そうは云うが、あまり野放しにもできんだろう。既に、警官隊との衝突で、怪我人も出ている」

 サスロの言葉に、キシリアも渋い顔になった。

「確かに、これで死者が出ようものなら、大変な騒ぎになるな。自業自得になるとは云え……」

「死傷者が出るのが、デモの参加者や警官隊からだけとは限らんからな」

「……確かにな」

 だが、現状で連邦軍が介入してくるには、それこそムンゾ国軍がデモ隊と組んで、連邦政府の事務局や連邦軍兵士たちを襲撃するくらいの出来事が必要である。あるいは、デモ隊によってムンゾ国軍や議事堂、首相官邸などが襲撃されるくらいの。

 と思ったところで、扉が忙しなく叩かれた。

「ご歓談中失礼致します。ギレン閣下にご報告が」

 タチの声だ。

「どうした」

「デモ隊に、怪しげな煽動者がある模様。デモの進路をこちらに――このお邸に向かって進めている模様です!」

「なに」

 途端に、サスロとキシリアからまなざしが飛んでくる。

「どうするつもりだ、ギレン」

 などと云うが、ここは公邸ではなくザビ家の私邸である。これで“父”がいる時ならば、様々な問題になりそうだが――いや、一応ここにいるのも、政府や軍の要人枠ではあるか。

「……これで警備のものに排除させても、大事になるだけだろう」

 そこから乱闘になって、機動隊やら軍やらが出てくることになると、それはそれで面倒だ。

「では、どうする」

 見つめてくる、二対の目。

 さて。

「……とりあえず、話してみるしかないだろうな」

 あまり自信はないが。

「代表者とか?」

「きちんと対話になるとは思わんよ」

「ならばどうする」

「さて」

 “本来の”ギレン・ザビが得意な分野で勝負できるかどうか。

「どこへいく?」

「着替えてくる」

 ゆるゆると茶を飲んでいた衣服のままで、いきり立つデモ隊と対峙できるとは思われない。

 扉の外でタチを掴まえ、諸々の準備をするよう云いおいて、クローゼットへ向かう。

 怪我が回復し、腕を吊るさなくなっていたのは幸いだった。着替えのような日常動作も楽にできるし、見た目もよい。

 軍服ではなく、議会に出席する時のようなスーツに身を包むと、それだけで、多少引き締まった気分になる。

 必要なのは、戦争への道筋ではなく、デモ隊の感情を抑える理性である――今はまだ。そのことを、全身で、見えるように示してやらねばならぬ。

 背筋を伸ばし、鏡を見る。その中にあるのは、まさしくギレン・ザビの姿だ。ここ数年は自身の顔として見てきたが、紛れもなくガンダムにおけるジオン軍総帥、天性のアジテーターとして知られた男の顔貌が、鏡の向こうからこちらを見つめてきた。

「――力を貸せ、ギレン・ザビ」

 ムンゾの、スペースノイドの勝利のために。

 瞑目して何とも知れぬものに祈り、廊下へ出ると、タチが近づいてきて、準備ができたと報告してきた。

「残念ながら、ここから脱出することは適いませんが――デモ隊は、完全にこのお邸を取り囲んでいる状態です。“頭”は、正門前に固まっているようですが」

「中へは入れていないだろうな?」

「当然です!」

 憤然と云いながら渡してくるものを受け取り、襟元につける。

「警備のものもおりますので、流石に門扉や塀を乗り越えてくるようなものもありません。……ただ、ザビ家の方々のいずれかが出てこない限り、包囲を解くつもりはないなどと息巻いている輩がおりまして……」

「まぁ、そうだろうな」

 云いながら、バルコニーに続く部屋の扉を開ける。

「――子どもたちは」

「フロリアン・フローエやカイ・シデンも含め、奥の安全な部屋に。メイド頭がついていて、部屋の前には警備のものを」

「そのまま、騒動が終わるまではおとなしくさせておけ」

「はッ」

 掃き出し窓を開け放って、バルコニーに出る。

 警備のものの居並ぶ先、門扉の向こうにデモ隊が群れ集まっているのが見える。かなり厚い層になっているようだ。あの調子で、ぐるりとこの邸を取り囲んでいるのなら、確かに大した人数だろう。千、二千は下らないかも知れない。

 そのものたちの耳を、こちらに向けさせることができるかどうか。

 ――力が試される時がきたと云うわけだ。

 胸許のマイクのスイッチを入れ、声を張り上げる。

「いかなる用があって、この邸へ来たのか!」

 マイクがそれを拾い、スピーカーを通じてデモ隊の耳に届ける。

 デモ隊は、てんでにあれこれ叫んでいたが、やがて、代表者かそれに近しい位置の人物が、拡声器片手に門扉近くに進み出た。

〈われわれは、ギレン・ザビ狙撃事件及びガルマ・ザビ略取に関して、連邦へ抗議することを求めている! われわれの嘆願を容れ、抗議案を議会へ提出して戴きたい!!〉

 割合に若い、だが、充分な教育を受けたとわかるような、理性的な話しぶりだった。

 しかしながら、それで連邦へ抗議を、とは、喋り方の割には現状認識が甘いのではないか。抗議すれば、ムンゾ内で反連邦運動が加速し、それに背中を押されるようにして開戦へと突き進むことになる、そのようなことは、目に見えた話ではないか。

「……愚かな」

 その呟きを、無駄に高性能なマイクが拾い上げたようだった。

〈愚かと云うか! 撃たれたのはあなた自身ではないのか、ギレン・ザビ! にも拘らず、弟であるガルマ・ザビを、連邦の云うがままに差し出したのは何故だ! 臆したと云われて然るべきではないのか!!〉

 そうだそうだ、と、デモ隊から声が上がる。

 気を良くしたのか、男はそのまま高らかに叫んだ。

〈われわれの要求はただひとつ! 連邦への抗議と、場合によっては開戦である!〉

 ――尻尾を出したな。

 しかも、要求はひとつではない。

 正面にいるデモ隊の中には、開戦まで要求するとは思っていなかったのか、明らかに当惑う気配があった。が、それ以外は、言葉が正確に届いていないのだろう、同意の声を上げるものばかりである。

 ザビ邸のまわりを取り囲んだのは、中の人間を逃さないと同時に、雰囲気だけで同意の声を上げさせるためだったか。なるほど、よくできたことだ。

 ムンゾ国内の主戦派か、あるいは連邦の手のものか――いずれにしても、あの男が“頭”であり、また入りこんだ“蛇”でもある。

 ちらりと横へまなざしをやると、バルコニーの影にうずくまったタチが、心得た顔で頷いてきた。そのまま身を引いて、密やかに部屋から出ていく気配。

 大きく息を吸い、口を開く。

「――諸君!」

 声を、代表の男ひとりに向けてのものではなく、デモ隊すべてにむけたものへと変える。

「諸君らは、今ムンゾがどのような状態にあるか、本当に理解しているのか! 諸君らの行動如何によっては、連邦が諸君らを、このムンゾを踏み荒らしにやってくると、わかってそのような要求を口にするのか!」

 弱腰のものが何を云う、と叫ぶものがあり、またそれに同意する声も上がる。

「弱腰、弱腰と云うか。……良かろう、私はそれで良い。だが諸君! それでは“ガルマ”の意志はどうなるのか!」

 喧騒が、ほんの少し静かになる。

「わが“弟”、諸君らがそうして案じてくれている“ガルマ”の意志は! ……“ガルマ”は、連邦軍の介入を防ぐのと引き換えに、地球へ向かったのだ。ムンゾを、諸君らを、連邦の軛の下に置くには忍びないと考えて。――その心を、諸君らは何とする!!」

 バルコニーから、デモ隊を睥睨する。そのまなざしが届いたわけでもあるまいが、ざわめきはさらに静かになってきた。

「諸君! “ガルマ”はただ人質となりにいったのではない! “ガルマ”は、戦いに出たのだ! 戦艦も砲弾もない、だが、確かな戦場に!」

 この言葉尻を捉えられるのは拙いなと思わぬではなかったが、また、これ以上にデモ隊に響く言葉を、残念ながら思い浮かべることができなかった。

「そう、それはムンゾを、諸君らを守る戦いである! われら、ムンゾに残るザビ家のものは、“ガルマ”の銃後を守るものなのだ! “ガルマ”が守らんとするムンゾとその国民を、われらはさらに防衛しようと云うのだ! すべては、諸君らを踏みにじらせぬためのことである!」

 一息おいて、またデモ隊を見回す。既に、野次や罵声は鳴りをひそめ、真剣なまなざしばかりがこちらに向けられていた。

 ――よし。

 手を拡げ、最後につけ加える。

「われわれは耐え忍ばねばならぬ、この試練を――古来、過誤が永遠に支配を続けた歴史はない。現在の苦難を耐え忍び、真の“刻”を待つのだ! そのための時間を、“ガルマ”は稼いでくれたのである! その選択を、“ガルマ”の選んだ戦いを、諸君、どうか無にしないで欲しい!!」

 街区に響いた谺が消え、一瞬の沈黙が落ちる。

 次の瞬間、

「……ムンゾ万歳!」

 誰かの声が、沈黙を小さく切り裂いた。

「ガルマ・ザビに祝福を! ザビ家万歳!!」

 ごく若い、子どものような青年の声。

 ざわめき、の後。

「……万歳」

「ムンゾ万歳!」

「ガルマ・ザビ万歳!」

「ギレン・ザビ万歳!」

 口々に叫ぶ声はやがて、まとまり、うねりのようにザビの家名を呼ぶものとなった。

 ザビ! ザビ! ザビ! ザビ!

 それに呼ばれたか、両側にサスロとキシリアが立った。

 歓声がまた大きくなり、今や声は、ズムシティそのものを揺るがすかのようになった。

 両脇のふたりを見やると、ちらりと笑みが返される。

 そして、屋内の陰になったところから、タチが頷くのが見えた。あの代表者らしき男とその仲間を、どうやら巧く確保できたようだ。

 ――とりあえず、勝った。

 少なくとも、この勝負には。

 内心で胸を撫で下ろし、半ば苦笑しながら、歓呼の声に手を振った。

 

 

 

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