ザビ家成り代わり   作:くずみ@ぼっち字書き。

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【成り代わり】another ORIGIN 謀略の"ギレン" 41【転生】

 

 

 

 しかして、ザーンである。

 1バンチ、シャングリラの宙港に降り立ったのは、出発から数時間後のことだった。

 ザーンとムンゾの距離が一番短くて済むダイヤグラムで、この航路は組まれているらしい。つまり、便自体は日に一度と云うことである。遠距離のサイド間を繋ぐシャトルなど、そんなものなのだろう。

 幸い海賊の襲撃もなく、また、途中建造中の“資源採掘衛星”ア・バオア・クーを遠くに眺めることもできた。あの要塞の名をつけたのが、原作軸で誰と云うことになっていたのかは知らないが――原作とバートン卿、そしてホルヘ・ルイス・ボルヘスに敬意を表して、あの名前に決めさせてもらった。なかなかできない経験だったと思う。

 まぁ、かの怪物の物語からすると、あれは願望の未達成の象徴のような名であるようだったから、別の名にするべきだったのかも知れないが――ある程度は原作に沿わせたいと思うのは、ファン心理と云うものだろうと思う。

 ともかくも、ザーンは『ZZ』とは違って、古びてはいたが、活気のあるコロニーだった。

「良い旅を!」

 宙港の係員も割合に気さくで、何となく気分が上がる。

 まずは荷物を下ろそうと、当座の宿泊先へ向かった。よくあるタイプのビジネスホテルである。

 フロントに荷物を預けようとすると、部屋を案内したくれた。チェックイン時間前だと云うのに、人が良いのか、あるいは人手がないからか。

「まぁ、安宿ですからね。でも、飯は不味いが、サービスはまぁまぁです」

 とは、部屋に入ってタチが云ったことだ。

「だから、朝食はつけてません。どこかのパン屋で調達するか、いっそ外で食べましょう」

「よく、ここは使うのか」

 朝食の評価までできるのなら、頻繁に泊まったことがあるのではないか。

 そう問うと、タチは首を振った。

「いいえ。私が使ったのは、一番最初のお使いの時だけです。ただ、部下たちからも似たような話しか聞きませんので」

「ははぁ」

 なるほど。

 しかし、それはともかく、

「何故ダブルの部屋に?」

 シングルを二部屋取るとか、せめてツインルームとかあるだろうに、よりにもよってダブルとは。

 家族ではなく友人ですらない――“オルガ・イツカ”と“ビスケット・グリフォン”は、同僚であって友人ではない――相手と、何が悲しくてダブルルームに泊まらねばならないのか。

 と云うと、最近なじみになりつつある渋面を向けられた。

「私が何のためについてきたとお思いです。護衛ですよ護衛! それなら、寝る時も同室でないと」

 あと、このホテル、ツインはほとんどないんです、と云われれば、両手を挙げざるを得ない。確かに、“ギレン・ザビ”として泊まるならばスィートルームだろうし、そうなれば、寝室は違えど、警備のものも同室に泊まることになる。

 とは云え、フロントの係員の生ぬるい視線を思い出すと、何とも云えない気分になるのは否めなかった。

 つまりあれだ、この旅行中、“オルガ・イツカ”と“ビスケット・グリフォン”はゲイカップルとして扱われると云うことだ。

「お前とカップルかよ……」

「うるさいですよ!」

 まぁ、旅先で、一夜限りのアヴァンチュールと云う気はまったくないので、楽と云えば楽なのかも知れないが。

 とりあえず、街中を歩いて、ついでに議会や行政府の様子も見ようと、外へ出る。こちらは革のジャケットにブラックデニム、重たいブーツで、指にはメリケンサックよろしく指輪を幾つもつけている。タチの方は、ジャンパーとチノで、キャップをかぶって、ボディバッグと云う恰好だ。まぁ、“休日の警備員”らしいのだろうか――鉄華団は参考にならないので、何とも云い難い。

 微妙に避けられつつも、まぁこんなものだろうと、思う存分観光客気分で歩く。

「流石にサイド1、街並がクラシカルだな」

 ムンゾもそれなりに重々しい建物が多いように思うが、ザーンは何と云おうか、ナチュラルに古い。奈良京都と云うよりも、神戸や横浜の古い建物を見るような感覚だ。多分、その当時は最先端だったのだろうなと思わせる、そう云う古さである。

「――ズムシティもそうですが、密閉型のコロニーは……独特の雰囲気がありますね」

 タチは、“タメ口”をすっかり忘れたようだ。まぁ、それで即こちらの正体が割れることはないと踏んでのことだろうが。

「結構、開放型のコロニーに行くことも多かったので――この、閉塞感みたいなものは、どうにもこうにも」

「密閉型でも、“空”はそれなりに高いと思っていたんだが」

 それはもちろん、地球で見る空とは違うにせよ。

 飛行機の飛ぶのが、上空一万数千mならば、コロニーに換算すれば、最低でもシリンダーの直径は十五kmほど必要だが――実際には、シリンダー型コロニーは、直径六kmとのことであるから、半分にも満たないと云うことになる。

 その低い“空”に人工太陽など浮かべたりするものだから、それは閉塞感も出ると云うことか。

 地球で見る空は、対流圏、成層圏、中間圏、そして熱圏まで続く、一千kmほども厚みのある大気圏が作る青なのだ。その天然の色は、確かにコロニーで人工的に作ることはできないだろう。

「――“空”が違えば、人間も変わってくるものかな」

 薄青い“空”を見上げて、呟く。

 シャア・アズナブル――本人の方――のような、ある種抜けたような、どこか楽天的な性格と云うのは、開放型の、宇宙までが見通せるコロニーで育まれたところがあるのではないか。

 そして、原作ラインのザビ家の面々、特にギレン・ザビのファナティックな性格は、密閉型故の閉塞感によって培われたのかも。

 ――まぁ、戯言の類だが。

 人格と云うのは、遺伝半分、環境半分とのことらしいから、まったく影響がないとも云い切れないが。

「地球に行ったことがないのでわかりませんがね、やっぱり違うんじゃないですか」

 タチは、おのぼりさん宜しくきょろきょろとあたりを見回しながら、そう云った。

「月なんか、コロニーよりも“天井”が低いですからね。その上、工場やらハブ基地やらが多いせいか、閉塞感は半端ないですよ。何と云うか、頭の上から押さえつけられてるみたいな気がします。それを思うと、地球に住みたくなるのは仕方ないことだと思いますね」

「火星のテラフォーミングなんぞ、まだまだ当分先の話だろうしな」

「今の調子じゃ、夢物語のような気もしますがね」

「――確かにな」

 極地の氷のほとんどがH2Oだったとして、それを巧く融かし得たとしても、火星の低重力――地球の1/3――下では、水が地表に留まり続けることは難しいかも知れない。

 重力までいじれるテラフォーミングなら良いが、宇宙船内やコロニーと違い、自然物である惑星の改造は厳しいものがあるだろう。大掛かりな装置を使って重力をコントロールするとなると、それはそれで膨大なコストになる。

 また、極地の氷で水が賄い切れぬとなれば、人工的に水を作るプラントなども必要となってくるかも知れない。

 いずれにしても、人類が、地球上でと近いかたちで火星で生活するためには、まだまだ乗り越えなくてはならないことが山のようにあるのである。

 宇宙世紀も後半の、『F91』やクロスボーン・バンガードの時代になると、オールズモビルとやら云う“ジオン残党”が火星にいることになっている――キシリア派だそうだ――が、まぁ、概ね火星よりも木星の方が注目される、それが宇宙世紀なのだろうと思う。

 まぁ、火星よりも木星の方が、資源には溢れているように思われるので、仕方のないことか。大きさもかなりの違いがあるのだし。

 ともあれ、ここはコロニーで、“空”は人工の青、そして人工の太陽に占められている。その閉塞感と、原作ラインの一年戦争後の荒廃の中から、どうしてジュドー・アーシタのような逞しい子どもが出てこれたのかは、謎と云うか、ある種奇跡のようなものだったのかも知れない。

 ともあれ、一年戦争開始までまだ数年を残すはずの今現在、ザーン、そして1バンチ・シャングリラは、まだまだ活気のある場所だった。

「――新鮮だな」

 コロニーと云うのは、一年戦争あたりには、もう頽廃しきり、その倦んだ空気が、ギレン・ザビにブリティッシュ作戦を敢行させたのかと考えていたのだが――流石に『ガイア・ギア』の頃ほど酷くはなかったようだ。

 その活気の幾分かは、ジオン・ズム・ダイクンの唱えたニュータイプ理論が関係しているのだろうなと思う。

 お題目はどうあれ、宇宙移民は、大部分の実態は棄民であるに違いない。

 まぁ、元々のあれこれでも、地球温暖化に伴う気候変動やら何やらで、山火事が頻発したり、豪雨による土砂災害があったり、農作物の収穫量や漁獲量が激減したりと、様々にあった。

 畢竟、人間は地球を食い潰す生きものなのだろう。

 だが、希望もないわけではない。

 今いる子どもたちに、充分な問題意識――それは、決して一方的な“教育”であってはならない――を植えつけておけば、いずれかれらが大人になった時に、地球について、またスペースノイドの置かれた境遇について、きっと活発な意見交換をしてくれるだろうと思うのだ。

 それは、トミノが『Gレコ』に託したのと同じ希望ではあるだろうが、しかし、こちらは権力を持っているので、その分だけいろいろと強いとも云えるのである。

 まぁ、蒔いた種が花咲くところまでを見届けることは難しいだろうが、そのあたりは、なるように任せるべきであるだろう。もしかすると、『UC』のオカルティズムのように、よくわからぬ“実”がなることもあるかも知れないが、それとても、歳月が淘汰していくのだろうと思う。

 それと、つらつら考えるうちに思いついたことがある――ジオン・ズム・ダイクンのことだ。

 ジオン・ズム・ダイクンのニュータイプ理論と云うのは、実は単に、宇宙へすべての人類を上げるために作り上げた、架空の理論だったのではないか?

 “宇宙へ上がった人間は、過酷な宇宙環境に進出・適応し、生物学的にも社会的にもより進化した新人類であるニュータイプへと進化する”――それは、虐げられたスペースノイドを慰撫するための夢物語であったのかも知れないが、それと同時に、そのような夢物語でもって、地上に留まり続けるものたちを宇宙に上げ、人類の環境破壊をもたらすような活動を、すべて地球上から消し去るためだったのではないだろうか。

 穿ち過ぎた見方だろうか。だが、元々は連邦議会にいたと云うジオン・ズム・ダイクンならば、連邦議会に対するアプローチのひとつとして、そう云う言説を弄した可能性もあるのではないか。人間は、己に利のあると思われる言葉には、割合よく耳を傾けるものである。だからこそ、どれほど報じられていようとも詐欺師の口にする甘い話に乗ってしまい、結果詐欺被害者が増えることにもなるわけだが。

 そして、その口車に乗って踊ってしまったのが、原作におけるギレン・ザビ、及び“シャア・アズナブル”であったと云うことか。

 その二人が、宇宙世紀の中ほどあたりを掻き回したのかと思うと、ジオン・ズム・ダイクンの影響力の強さを噛みしめずにはいられない。

 まぁ、こちらはお題目だけ拝借している感はあるが。

 と、タチが、声をひそめるように呟いた。

「私は何回か来ましたが――何となく、以前と空気が違うようにも感じます」

 その言葉に、思わず片眉を上げる。

「違うって、どんな風に」

「――後にしましょう。今はちょっと」

 あたりを憚るよう、さて、ネガティヴな話なのか。

 促されるままにそこを離れ、そこから議事堂、首相公邸、コロニーで一番古いアーケードなど、所謂観光名所を回った後、手近なダイナーに入りこんだ。

 

 

 

「――先刻の話ですが」

 店の奥まった一角、ボックス席のようなテーブルに通され、酒と料理をそれなりに注文すると、タチはおもむろに口を開いた。

 強面がいるからか、あまり表の方ではなく、奥の目立たない席に案内されたのは幸いだった。時間が早いせいか店内に客は少なく、この一角はなお少ない。内密な話をするのにはもってこいである。

「雰囲気が違うって云うのは、まぁあくまでも感覚ですよ感覚」

 だから、あまり鵜呑みにしないで下さいよ、と云うが、こちらはそもそもザーンは初めてなのだ。それに、“伝書鳩”の長の肌感覚と云うものは、なかなかに侮れぬものがあるだろうと思う。

 無言で先を促すと、タチは、テーブルに据え置かれたデキャンタの水を注ぎ、一息に飲み干した。

「少し……何て云うんでしょうね、人心が、こう緊張してるって云うか、ぴりぴりしてるって云うか――前回私が来たのは、それこそ五年くらい前のことですから、違って当然かも知れませんが」

 それにしてもね、と云う。

「もしかして、ルウムの件が影響してるのか」

 いくらザーンか連邦寄りとは云え、それはあくまでも自治体としての姿勢でしかないだろう。つまり、ザーンの市民たち個人個人は、連邦寄りとは限らないのだ。

「つまり、市民感情と政府の思惑が、乖離してる可能性があるってことだな?」

「まぁ、そうですね」

「コロニー同盟の力、ってことか……」

 コロニー同盟が、連邦に対して要求を突きつける――それが通るかどうかはともかくとして――ようになってから、ムンゾ以外のコロニーでも、スペースノイドの権利問題について敏感になってきたように思う。

 これまでは、要求することすら諦めているようなところがあったのが、徒党を組むことによって、やや気が大きくなったのだとも云う。まぁ、これまで半世紀以上、アースノイドの圧倒的優位に膝を屈するしかなかったのが、少なくとも、要求することは可能になったわけだから、そうなるのも仕方ないところはあるが。

 ともあれ、連邦と対等に話をする、と云うチャンネルが開かれた以上、市民たちとしては、何故いつまでも連邦に唯々諾々と従わねばならぬのか、と云う気分になってくるのは、当然の流れだった。

「しかし、となると、連邦がザーンにあれこれ働きかけようとするのも、無理もない話だってことになるな」

「あるいは、行政府と市民たちの分断を狙っているか、ですね」

「敢えて暴動を起こさせるのか?」

「同盟がある以上、ムンゾはザーンに出ていかざるを得なくなるでしょう。そこを叩きたい連中があるのかも知れませんよ」

「……レビルとかか」

 声を低くして云うと、頷きが返ってきた。

「何かあるなら、そのあたりでしょう。まぁ、あちらは人数が多いですし、“敵”の派閥がひとつとは限りませんが、大きいのはやはりそこだと思います」

「どこでも、戦争をしたがる連中ってのはいるもんだな……」

 戦争にかかる金の額、買っても負けても無傷ではいられないこと、戦後の荒廃で経済がどれほど圧迫されるのか――すべて一顧だにせず、勇ましい言葉を振りかざして戦争に突入したがる輩の、何と多いことか。

「つまり、頭が悪いってこった」

 あるいは、自分だけはその陥穽に陥ることはないと考えるような自信家か。

 まぁ、頭が良くない人間ほど、己の実力を過剰に評価すると云う、ビジネス系メディアの調査結果があったようだから、つまりはどちらにしても同じことなわけなのだが。

「……アンタが云うと、洒落になんないんですよ!」

 タチは、そう云って酒のジョッキをテーブルに叩きつけた。

「おい、割ったり壊したりしたら、弁償だぞ」

「それくらい、アンタのポケットマネーで出して下さいよ!」

 酔っているのか、しかし、まだ二杯目に手をつけたばかりのはずで、かつタチはそこまで下戸でもない。

「絡み酒か?」

「いい機会なんで、心ゆくまで絡ませてもらいます」

「そうきたか……」

 それは、酒が入っていようがそうでなかろうが、絡みまくってやると云う宣言ではないか。

「お手やわらかに頼むぜ」

「さてね」

 云いざま、ジョッキの中身を一息に乾す。酔いに任せたと云い張って、今まで溜めたものを一気に吐き出してやろうと云う目論見か。

 追加のジョッキがくると、タチはまた、一息に半分ほどを空にした。

「思うんですけどね、アンタはちょっとばかり、凡人のことも理解しようとするべきです! 世の中は、結局凡人がうごかしてるんですからね!」

「云いたいことはわかるが……」

 しかし、それで凡人や、況や“愚民”のことなど理解できるとも思われぬ。

 こちらも決して“賢者”ではあり得ないが、しかし、己の頭で考えようとすらしない輩を、“愚民”以外の何と呼び得ようか。ひとは、自分の歌しか歌えぬとは云え、歌うことを考えもせず、己の生きる場所を見渡しもせぬでは、その後どのような事態に巻きこまれようと仕方ないところはあるではないか。

 民主主義国家に生きるのであれば、己の意思は表示すべきものである。それもせずに“社会が良くならない”の何のと云うのは、本末転倒だ。ものごとを動かすためには、自らもまた動かねばならぬ。沈黙は現状の追認に他ならず、それが長々と続くなら、腐敗の温床ともなる。

 デモをやるの、選挙活動をするのだけが意思表示であるとは思わぬが、それにしても、与えられた機会にすらそれをせぬのならば、流石にそれは、義務も権利も放棄した“愚民”以外に呼ぶべき名などないだろう。

「“愚民”ってのは、知能云々じゃねぇ。自分の頭で考えようとするかどうかだ。そう云う意味では、あいつも“愚民”になる部分はあるかも知れねぇな」

「誰のことですよ」

 問われて、流石に名前を口にするわけにはいかないので、唇のかたちだけで答えてやる――“ガルマ”と。

 タチは、その“ガルマ”のように目をかっ開いた。

「えっ!? あれだけ悪辣だの邪神だの云っておいて!?」

 とは云うが、それは行動規範やら何やらの話であって、当人の社会や世界の立ち位置的に云えば、“愚民”のうちに入ってしまうだろうと思う。“昔”にも、知己にくどいほどに云われていたのだ、“自分の頭で考えろ”と。

 それでも、今はかなりましになった方だが、視界が身の回り半径三〇センチだったものが、二メートルくらいにまで広がったくらいのものだろう。

 基本的には、自分ではなく、決定権を委ねた誰かの思惑に沿って動く、それが“ガルマ”なのだ。

 と、そこで思いつく。

 ――なるほど、今回あれが面倒なのは、決定権を半ばキャスバルに委ねているからか。

 面倒臭い男に決定権を委ねたなら、それは本人の行動も面倒臭いものになるだろう。まぁ、かと云ってこちらが簡単な――扱い易い――人間かと云えば、まったくもってそうではないのだが。

「知恵や賢さの使いどころの問題だな。あれのは、悪知恵とか悪賢さとか云うヤツだ」

 つまり、“賢人”の知恵ではない。まぁ、“賢人”は概ね生活力がないものなので、世界が“賢人”だらけになっても、それはそれで問題なのだが。

 しかし、“愚民”と雖も頭を使わなくては、その愚かしさで、己の身ばかりか、隣人たち、己が子孫までをも破滅させかねない。かと云って、妙に小賢しい“凡人”も、それはそれで害悪にしかならぬのだが。

 必要なのは愚直さなのだろうか。そうかも知れぬ。

 “愚民”の心のわからぬ人間にできる“愚直さ”となると、それこそ未来に種を蒔き続けること、くらいしかないのではないか。

 つまりは、

「――めんどくせぇ……」

 と云うことだ。

「面倒臭いも何も、アンタの蒔いた種でしょうが」

 タチはつれないことを云って、運ばれてきた料理に手をつけた。じゃが芋のサラダ、と云うかマリネである。ごろごろに切った芋をドレッシングに浸けたあれだ。

 その他に、マッシュルームのアヒージョ、鶏軟骨のフライ、アラビアータ風のショートパスタ――つまりはよくある居酒屋メニューである。

「こう云うところは、どこも変わらねぇもんだな」

 マッシュルームを突き刺して口に放りこみながら云うと、タチがかるく肩をすくめた。

「昔はコロニーも、出身地ごとの“植民地”みたいなもんでしたでしょうけどね。宇宙移民がはじまって、もう五十年以上になるんです、そりゃあ住人も雑多になるでしょうよ」

「そんなもんか」

 しかしまぁ、確かにそのようなものなのかも知れない――だからこそ、カイ・シデンの母親のように、諜報活動に従事する人間があちこち彷徨いても、そこまで奇異な目で見られることがなかったのかも。

「そうですよ。だから、こうしてわれわれが、休暇を愉しめるんじゃないですか」

「違いねぇな」

 ほど良く酔いが回ったところで、店を出る。リーズナブルな価格だと思うのは、最近あまりダウンタウンなどに出向いてなかったからか。

「あの店は、あの手の店にしては高めですよ」

 とタチは云うが、ザーンの物価などを考え合わせれば、まぁまぁの額なのではないか。

「高給取りは、おっしゃることが違いますねー」

「お前だって、結構もらってるだろうが」

「あれで薄給だったら、割に合いませんよ!」

 こちらの無茶振りに応えたり、“ガルマ”の言動に振り回されたりか。

「まぁ、確かにそうだな! ……ところで」

 声をひそめて問いかける。

「先刻から、つけてきてるヤツがいるな? ――“鳩”か」

「……いえ」

 と、タチも声を落として否定してくる。ジェスチャーにしないのは、尾行者を警戒してのことだろう。

「“鳩”はもっと後ろにいますし、あんなにわかり易いつけ方なんかしませんよ」

「なら、ザーンのヤツってことか?」

「か、連邦でしょうね。どっちにしても、素人に毛の生えたくらいのもんですが」

「俺はそんなに怪しいかな……」

 いや、“オルガ・イツカ”が怪しくないとは云えないが、公権力の一端であるものに、後をつけられるほどではないと思うのだが。

「何か、勘違いされてるのかも知れませんよ。アンタが怪し過ぎるから」

「そこまでじゃねぇだろう。むしろ、怪しまれてんのはお前じゃねぇのか」

「私は、アンタほど胡散臭くはないですからね」

「どうだか」

 “オルガ・イツカ”よりも、“伝書鳩”の長であるタチの方が、胡散臭さとしては上ではないか。

 ともかくも、

「つけられんのは好きじゃねぇな。いっそ捕まえてみるか?」

「それ、やるのは私ですよね!」

「頼むぜ“ビスケット”」

「まったくもう」

 文句を云いながらも、タチはこちらの袖を引いて、路地に素早く入りこんだ。

 かつて行ったことのある、ヴェネツィアの路地に似た石畳の上を、足早に歩く。食事の間に“雨”でも降ったか、それは濡れて夜灯にわずかに光っている。少し滑りそうになりながら歩いていくと、慌てたような足音が、誤魔化しもせずに後を追ってくる。

 ――素人だな。

 そうでなければ、こんなに派手な足音を立てて、尾行したりはするまい。

 夜のダウンタウンは迷路のようだ。どの道も同じように思え、ずっと続く外壁は、ミノスの迷宮の壁のようにのっぺりとして見える。

 細い路地をほとんど小走りに進んでいると、不意に、さらに狭い建物と建物の隙間に押しこまれる。

 ややあって、追いかけてきた足音の主を、タチが捉えて壁に押しつけた。

「何ものだ、こちらに何の用がある?」

「え、あ……」

 明らかに狼狽えた風でタチを見たのは、“ガルマ”やキャスバルとあまり変わらぬ年頃の、まだ子どもと云いたくなるような若者だった。

 

 

 

 若者は、ヤン・アンデシュと名乗った。十九歳、ここシャングリラの大学生らしい。茶色の巻毛と青い瞳だが、アムロよりも『ZZ』の主人公でここシャングリラ出身のジュドー・アーシタに雰囲気は似ている。尤も、あの明るさの中に強かさを兼ね備えたようなジュドーの雰囲気とは、まるで違う。何と云うか、まぁ割合普通の若者だ。

「あなた方、ムンゾのひとでしょう?」

 ヤンは、タチに押さえつけられながら、そう云ってへにゃりと笑った。

「訛りでわかった。――僕ら、有志の学生連合で、コロニー同盟に積極的に参加すべしと主張しているんです。昨今の連邦の暴虐は、目に余ります。ザーン政府は、コロニー同盟よりも連邦を重視しているようですが、もはやそれでは連邦に呑みこまれるしかない!」

「……そんなことを、こんな道端で大声で云い立てていいのか?」

 いくら路地裏とは云え、壁に耳ありとやら、不穏な科白に聞き耳を立てる輩もあるだろうに。

 そう指摘してやると、若者ははっとした様子になり、次いで赤面した。

「す、すみません。僕らに恥じるところはないですけど、あなた方には迷惑ですよね……ムンゾの方に外のお話が聞けるかと思って、つい……」

 と俯きがちになる。まるきり、青臭い理想を掲げるばかりの学生運動家だ。

「……私たちは確かにムンゾの出身ですがね、今は仕事で、火星が居住地なんですよ。アンタたちのご希望に沿えるような話ができるとは、とても思えませんがね」

 ドライな大人らしい口調で、タチが云う。

 と、若者は、ぱっと顔を上げた。

「そんなことはありません! 僕らはまだ学生なので、ザーンの外に出ることもなかなかできないんです。新聞や雑誌、ネットなんかでも、情報は入ってはきますが、ああ云うのって、情報操作とかあるじゃないですか。それに、こう、メディアによって、連邦寄りだったりそうでなかったりして、それで報じる内容も違ってきますから……何を信じたらいいのか、よくわからなくなって」

「俺たちだって、外にいたってだけで、情報量はそう変わらねぇと思うがな」

 と云うと、若者は慌てたように首を振った。

「そ、そんなことはありません! 僕らは井の中の蛙だ、外の話が聞けるだけでも、僕らにとっては充分以上なんです」

「お前らが当局から目ぇつけられてるんなら、俺たちにとってはかなりリスキーな話になる、ってのは、承知で声をかけてきたんだろうな?」

「え……」

 ヤンと名乗った若者は、目をぱちくりとした。思ってもみなかったと云わんばかりの顔だった。

「と、当局って、警察とかそう云うことですか? そ、そんなこと……」

 もごもごと云う。

 が、それではいそうですかと頷くような人間では、もちろんない。

「学生運動だろうが何だろうが、政府に反対するようなことをぶち上げてりゃ、当局からしたら反政府活動家のレッテルを貼られたっておかしかねぇ。お前ら、そう云うのに、見ず知らずの他サイド人を巻きこんだら、どんな騒動になるのか考えてやってんのか?」

 “伝書鳩”もそうだが、元々の方面で云えば、公安警察、CIAやSIS、SVRなど、各国の諜報機関は、反政府的な思想の持ち主をチェックし、盗聴や盗撮などによって個人の情報を入手する。それにより、かれらの行動を監視、チェックし、反政府的行動があると目したなら、ありもしない犯罪をでっち上げて投獄してしまうこともあるのだ。

 もしも今、ヤンと名乗るこの若者が、ザーン政府当局から“テロ行為も辞さない過激な反政府活動家”と目されていて、かつ監視者が張りついていた場合、かれと話をしたこちらの方も、やはり反政府活動に携わる人間だと目されて、ザーン出国前に拘束されるかも知れない、と云うことだ。

 捕まって調べられたからと云って、ボロの出るような作りのIDではない――本当のIDではないが、発行元はムンゾ政府で間違いない――が、それとザーン当局が疑いを持たないかと云う問題とは、また別の話である。つまり、少々不愉快な事態に陥らないとも限らないと云うことだ。

 尤も、満足に尾行さえできず、また“鳩”の尾行にも気づかないのなら、当局に目をつけられるどころの話ではないのかも知れなかったが。

 ちらりとタチを見る、と、小さく頷きが返った。とりあえず、“鳩”以外の尾行はないようだ。

「――どうすんだ」

「……え」

「俺たちの話が聞きたいんだろ。どうすんだって訊いてんだよ」

 まさか、この寒空の下で立ち話、ってわけでもねぇんだろうが、と云うと、若者は、張子の玩具のようにこくこくと首を振った。

「僕らが会合に使ってる場所が、この近くに――え、でも、いいんですか」

「今さらだろ」

 肩をすくめてやる。

「お前と話してる段で、何かあれば宙港でとっ捕まるさ。まぁ、毒を食らわば皿まで、って云うしな」

「……いいんですか、“オルガ”」

 タチが、確かめるように云う。

「まぁ、いいだろ」

 悪いと云ってもどうしようもない。ないつもりのムンゾ訛りに気づかれた段で、こちらの負けである。

「……あんまり訛りはねぇと思ってたんだがなぁ」

 思わずぼやくと、若者に得意気に胸を張られた。

「僕、そういうの得意なんです。ザーンの中の訛り違いだって聞き分けられますよ」

「そりゃあ……」

 相手が悪かったと諦めるよりないか。

 タチの目が、レンズの奥でわずかに光った。“伝書鳩”要員にとでも思ったのだろう。

「長いことムンゾを離れてたから、かなり抜けたと思ってたんだが」

「確かに、そんなにきつい訛りじゃないですけど」

 と、先に立って歩き出しながら、若者は云う。

「でも、単語単語にあるんですよね、こう、ムンゾ特有のイントネーションとかが。それがなかったら、ほとんどわかんないと思いますよ」

「三つ子の魂、ってヤツだな」

「何ですか、それ」

「子どもの頃に身についたものは、死ぬまで変わらねぇ、ってことらしいな」

「それが訛りってことですか」

「も、あるな」

 あるいは、幼少期に刷りこまれた価値観や考え方なども然り。生まれ育った環境が、その後の人生の半分以上を決めると云っても過言ではないのではないか。

「だがまぁ、同じ場所に生きていたって、話し方は生まれによって変わるもんだ。俺みたいなのや、上流階級の方々みたいなのや」

「あなた方は、ムンゾではないところで暮らしておられるんでしたっけ」

「仕事ですよ仕事!」

 タチが云って、手を振った。

「われわれは、火星の建設現場で警備の仕事をしてるんです。食い詰めてなきゃ、あんなとこにゃ行きませんよ」

 そのもの云いに、資料で見た火星の建設現場の風景を思い出す。

 テラフォーミングが進んでいた鉄オル世界とは違い、空気もほとんどない、乾ききった赤い大地の上に、建設資材の山と巨大な重機、そしてノーマルスーツに身を包んだ作業員たちの姿があった。鉄オルの砂漠よりもさらに荒涼とした風景に、何とも云い難い気分になったのを憶えている。

「火星かぁ……遠いんですね」

「そうですよ! 休暇で、やっと人間世界に帰ってきたとこなんです。余計なことはさっさと終わらせて、早く休みに戻りたいですよ!」

「す、すみません」

 若者はぺこぺこと頭を下げていたが、やがて、一軒の店の前で立ち止まった。

「ここです」

 と云って示されたのは、学生街によくあるような、古い構えの飲食店だった。クラシカルで良い、と云うのではなく、ただ単純に古い、しかも入り難そうな雰囲気の店である。強いて云うならカフェ、だろうが、常連以外相手にしなさそうな、何とも云い難い空気が漂っている。まぁ、学生運動家たちの溜まり場には似合いかも知れない。

「おはよーございます」

 バイトの出勤のような挨拶とともに、ヤンと云う若者は扉を開けた。

「おぉ、ヤン」

「おせーよ、はじめてんぞ」

「あれ、誰それ」

 そう広くもない店内は若者でいっぱいで、うち何人かが、そう声をかけてきた。

「ごめん、ムンゾの人がいたから、声をかけたんだ。外の話が聞けると思って」

 ヤンが答えると、若者たちの人垣が開いてゆき、一番奥に皇帝のように坐るひとりの男の前まで道ができた。

「――ヤン」

 落ち着いた声だ。すわべかみきしんか、あるいはマクギリスの中の人か。美声、と云うべきなのだろう、若手の声優風ではない、やけに迫力のある喋り方。

「フィオ」

「そいつらは」

「ムンゾの人たちだよ。外の話が聞けるかと思って」

「……ふぅん」

 男は、じろじろとこちらを見回した。

 お返しのように、こちらもフィオと呼ばれた男を睨め回す。

 癖のある黒髪と深い青の瞳、陰鬱と云うかアンニュイと云うか、あまり学生運動家らしくはないが、ある種の“王様”然とした雰囲気が、若者たちに担がれる要素になっているのだろう。面相は良い。美形のうちだ。まぁ、キャスバルには負けるだろうが。

「ムンゾの人間が、何でザーンに?」

 顎を上げ、身を反らすようにして云う。こちらを睥睨しようと云う意志の表れか。

「生まれはムンゾだが、今生活してるのは火星だ。建設現場の警備員でな。ザーンに来たのは、単に観光だ。休暇中でな」

「名前は」

「人に名前を聞くんなら、てめェから名乗るのが筋じゃねぇのか」

 そう云ってやると、男はかるく鼻を鳴らしたが、

「マガバンだ、フィオレンティーノ・マガバン」

「へぇ、花の女神ならぬ、ってヤツか。俺はオルガ・イツカ、こっちは同僚のビスケット・グリフォンだ」

「てめぇこそ、女名前かよ」

「曲がりなりにも客で、歳上の人間に、てめェ呼ばわりはどうかと思うぜ」

「……歳は」

「俺は四十だよ。お前は」

「……二十三」

 不本意そうな声。二十三で学生なら、浪人か留年か、どちらにしてもややドロップアウト気味と云うことか。

 ともあれ、

「ま、学生ならそんなもんか」

 肩をすくめると、男はヤンに噛みついた。

「おい、何でこんなの連れてきたんだ!」

「だって、フィオがムンゾのことが知りたいって」

「火星住まいだって云ってるじゃねぇか!」

「でも、“外”の大人だろ」

 ヤンは云った。意外に肚が据わっているようだ。

「ムンゾだって火星だって“外”じゃないか。僕らとは違う情報があるんじゃないかって、思うだろ」

「おーい、揉めるなら、帰ってもいいか」

 タチが、腕組みして云った。口調が、ですます調ではなくなっている。

「われわれにも予定がある。期日までに火星に戻らなきゃならないのに、無駄に時間を食ってる暇はないんだよ」

「す、すみません」

 ヤンは謝ったが、マガバンと名乗った男はまた鼻を鳴らしただけだった。

 若造がいきがっているだけなのはわかっていたが、こうも馬鹿にした態度では、つき合ってやろうと云う気持ちも失せる。

「じゃあ、帰るか“ビスケット”」

 そう云って踵を返す。結構な外れに連れてこられた気がするが、大通りにさえ出てしまえば、別段迷うこともあるまい。

「ま、待って下さい!」

 ヤンは呼び止めてきたが、肝心の男の方は、動く気すらないようだった。

「火星帰りにゃ用はねぇんだろ。いいぜ、きちんとしたムンゾの人間を見繕えよ。ま、そいつらがここまで足を運ぶとも思えねぇがな」

 こちらも、ザーンの一般市民の様子を見たいと思っていたからこそついてきたので、普通の商用などで訪れた人間が、学生運動家たちにつき合うなどとは、とても思われなかったが。

 ヤンは唇を噛みしめた。

「すみません、僕がきちんと説明できてれば……」

「いや、そこのガラクタの上の“王様”が聞く耳持たねぇのが悪いんだろ。お前のせいじゃねぇよ」

「ガラクタだと!?」

 揶揄の言葉に、男が激昂した。

 それを、鼻先で嘲笑ってやる。

「違うのか? ガキを集めて、その上でふんぞり返るしかねぇ、チャチな“王様”。てめェの行末は、ムンゾの駄目な政治屋連中よりなお悪いぜ。そんなヤツに、聞かせる話なんざあるわけねぇだろ」

「貴様!!」

「――“オルガ”」

 タチが袖を引いてくる。

「挑発してどうするんです。と云うか、本当にこいつらにつき合ってやるおつもりで?」

 小声の問い。

 それに、小さく肩をすくめてやった。

「さぁな。そりゃ、俺じゃなく、あの“王様”次第だろうぜ」

 そう云って向けたまなざしの先、マガバンと云う男は、歯噛みする風であった。

 ヤンをはじめとする“臣下”たちは、はらはらした顔で“王”の様子を窺っている。

 マガバンは唸り声を上げたが、結局、背に腹は代えられなかったようだった。

 暫の沈黙の後、

「――……わかった、てめェらの話を聞く」

 のろのろと口にされたのは、事実上の敗北宣言だった。

 若者たちの唇から、安堵のものだろう溜息がこぼれ落ちた。どうやら、“臣下”の束ねは、あのヤンと云う若者であるようだった。それは、“王”と“宰相”――“臣下”の頭――が揉めるのなら、他のものたちにとってはありがたい話ではあるまい。

 男は、折れはしたものの、不平不満があることを隠しもしない目つきで、こちらをじろりと睨んできた。

 それもまた心地よく思える。

「いいぜ。じゃあ、何から訊きたいんだ?」

 にやりと笑って云ってやると、男がいかにも悔しげに、唇を噛みしめる様が目に入った。

 

 

 

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