明朗生活までの1歩 ─心見暁の空腹─   作:桜桃 

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第4話

「単刀直入に言います」

「う、うん」

 

 真剣な眼差しで、彼はそう話を切り出す。その雰囲気に飲まれつつ、凪絆は出された紅茶を両手で持ち口をつける。

 

「俺は──半分人間じゃないです」

「…………ん?」

「へ?」

 

 真剣な表情で何を言われるかと身構えていた2人は、その言葉で肩に入っていた力が抜け、変な声を出してしまった。

 

「だから、俺は半分人間じゃないです」

「えっと。嘘は良くないよ?」

「嘘をつく意味がわかりません。逆に、今ここでこんな嘘をついて、俺に何か得ありますか?」

「わかんないけど……」

「なら、信じて欲しいんですけど。そもそも俺、嘘嫌いなんで」

 

 その言葉に、凪絆は何かを感じたのか、彼をじっと見ている。

 莉津が何言ってんだこいつみたいな顔を浮かべているが、暁は気にせず話を進めた。

 

「とりあえず話を進めます。俺の食料は、君達が普通に食べている()()()()と、人の心に住む()()()()──邪心(じゃしん)と呼ばれている物です」

 

 簡単にそう言い切る暁だが、内容があまりに非現実的すぎるため、凪絆と莉津はぽかんと口を開け、間抜け面で彼を見ている。そんな目線など気にせず、暁はリンゴパイを頬張った。

 

「い、いやいや。そんな話を信じろと言われても……」

「あんたには信じて貰えなくても構いません。俺が用事あるのはこの人だけなので」

 

 莉津の言葉に対しそう返し、凪絆に目線を送る。

 

「な、なんで私?」

「あんたの周りには、俺の大好物がウヨウヨいるんですよね。食料に困らない」

 

 当たり前というように口にしているが、それでも凪絆は全てを信じることが出来ず、頭を抱えてしまう。

 

「暁君だっけ? 半分人間じゃないってことは、一体なんなの?」

「そうですね。それも言った方がいいか……」

 

 莉津の質問に暁は頷き、最低限の自己紹介をした。

 

「俺は心見(しんけん)暁。さっき言った、半分人間じゃないっていうのは──俺には、江戸時代の妖怪画集に記述がある日本の妖怪、覚の力が受け継がれているんです」

「覚って、人の心を読むって言う?」

「それです。まぁ、完全なる覚って訳じゃないので、普段から読める訳ではありませんよ。訳があって今は力を封じこめています。なので、安心してください」

 

 その言葉に嘘は感じられず、2人は顔を見合せ、なんと返答しようか考えている。

 

「えっと。その話がもし本当なのなら、私は何をすればいいの?」

「簡単ですよ。貴方の近くにいるお友達を、空き教室に案内して欲しいんです」

「え、空き教室に? しかも、友達って?」

「最近よく話しているじゃないですか。なんか、ギャルっぽい女子……」

 

 その言葉に凪絆はハッとなり、顔を青くした。

 

「も、もしかして──麗葉さん?」

「へぇ。あの人、そんな名前なんですね。まぁ、どうでもいいです。とりあえず、その人を空き教室に案内していただき、少しだけ時間を稼いで欲しいんです。簡単でしょ?」

 

 確かに、内容的にはすごく簡単なものに思える。だが、それは今までの話が全て本当ならの話だ。

 今までの話を全て鵜呑みにして「協力します」と言えるものでは無い。そのため、2人は頷くことが出来ず、かと言って否定もしないで、そのまま考え込んでしまう。そんな2人を他所に、暁はリンゴパイを食べ続け、1人分をぺろりと平らげてしまった。

 手についてしまったパイのカスなどを舐め取り、手を拭いた後、紅茶を飲む。そんな彼の様子を見て、2人は呆れ気味にため息を吐く。

 

「…………とりあえず、その話は保留にさせてもらってもいいかな」

「お腹すいてるのに……」

「せめて明日まで待って。少し頭を整理したいから」

 

 凪絆のお申し出に、渋々と言った感じに暁は頷き、「分かりました」と口にする。

 それからは何も話さず、リンゴパイと紅茶を楽しみ、カフェを後にした。

 料金は3人分、しっかりと暁が支払い、凪絆達はお金を返そうと財布を取り出すが、気にせず彼は「いい返事を待ってます」と口にし、帰ってしまった。

 

 その小さな背中を2人は、唖然とした表情で見届け、困惑した頭のまま自分の家へと歩みを進めた。

 

 ☆

 

 次の日の朝。

 凪絆が教室に入ると、自身の机と椅子が無くなっていることに気づきため息をつく。

 

「はぁ。またか」

 

 周りを見回し机と椅子を探すと、掃除用具が入っているロッカーの前に投げ出されているのを発見し、凪絆は鞄を置き、机を直そうと動かし始めた。その様子を麗葉は、くすくすと笑いながら見ている。

 

「ねぇ、机と椅子がないってことは、ここに貴方の居場所はないってことなんだけど? 何普通に戻そうとしてる訳?」

「居場所がないのではなく、居場所を奪ったの間違いでしょ? 言葉を間違えないでくれると助かるんだけど。修正もめんどくさいし」

 

 直しながら凪絆はそう口にする。その口調には、少しの怒りが込められており、鋭くとがっていた。

 その言葉に苛立ち始めたのか、麗葉は椅子から立ち上がり、彼女へと近づく。そして、椅子を直そうとした途端、足で動かせないように押さえつけた。

 

「ちょっと。邪魔なんだけど」

「調子乗ってんじゃねぇぞゴミが。なんでも出来るからって、人のもんに手を出すとかありえないんだけど」

「人のもん? 何の話?」

 

 麗葉は腕を組み、凪絆を睨みつける。その目の意味を彼女は理解できないらしく、睨み返していた。

 

「人のもんに手を出したアンタが悪いんだから。せいぜい抗いなさい」

「あんたじゃないんだから。人のものに手を出すわけないでしょ。意味わかんない勘違いしないで」

「取ったじゃない。颯人君は、私のものなのに」

 

 最後のその言葉に、凪絆は目を丸くし、麗葉を見続けた。

 

「絶対に許さない。颯人君を奪った罪は、重いから」

 

 低く、脅すような言葉を凪絆の耳元で囁き、そのまま自身の椅子へと戻って行く。

 その言葉を聞いた凪絆は唖然としてしまっており、先生が来るまでその場で立ち尽くしてしまった。




ここまで読んでいただきありがとうございます
次回も読んでいただけると嬉しいです

出来れば評価などよろしくお願いいたします❀.(*´▽`*)❀.
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