「単刀直入に言います」
「う、うん」
真剣な眼差しで、彼はそう話を切り出す。その雰囲気に飲まれつつ、凪絆は出された紅茶を両手で持ち口をつける。
「俺は──半分人間じゃないです」
「…………ん?」
「へ?」
真剣な表情で何を言われるかと身構えていた2人は、その言葉で肩に入っていた力が抜け、変な声を出してしまった。
「だから、俺は半分人間じゃないです」
「えっと。嘘は良くないよ?」
「嘘をつく意味がわかりません。逆に、今ここでこんな嘘をついて、俺に何か得ありますか?」
「わかんないけど……」
「なら、信じて欲しいんですけど。そもそも俺、嘘嫌いなんで」
その言葉に、凪絆は何かを感じたのか、彼をじっと見ている。
莉津が何言ってんだこいつみたいな顔を浮かべているが、暁は気にせず話を進めた。
「とりあえず話を進めます。俺の食料は、君達が普通に食べている
簡単にそう言い切る暁だが、内容があまりに非現実的すぎるため、凪絆と莉津はぽかんと口を開け、間抜け面で彼を見ている。そんな目線など気にせず、暁はリンゴパイを頬張った。
「い、いやいや。そんな話を信じろと言われても……」
「あんたには信じて貰えなくても構いません。俺が用事あるのはこの人だけなので」
莉津の言葉に対しそう返し、凪絆に目線を送る。
「な、なんで私?」
「あんたの周りには、俺の大好物がウヨウヨいるんですよね。食料に困らない」
当たり前というように口にしているが、それでも凪絆は全てを信じることが出来ず、頭を抱えてしまう。
「暁君だっけ? 半分人間じゃないってことは、一体なんなの?」
「そうですね。それも言った方がいいか……」
莉津の質問に暁は頷き、最低限の自己紹介をした。
「俺は
「覚って、人の心を読むって言う?」
「それです。まぁ、完全なる覚って訳じゃないので、普段から読める訳ではありませんよ。訳があって今は力を封じこめています。なので、安心してください」
その言葉に嘘は感じられず、2人は顔を見合せ、なんと返答しようか考えている。
「えっと。その話がもし本当なのなら、私は何をすればいいの?」
「簡単ですよ。貴方の近くにいるお友達を、空き教室に案内して欲しいんです」
「え、空き教室に? しかも、友達って?」
「最近よく話しているじゃないですか。なんか、ギャルっぽい女子……」
その言葉に凪絆はハッとなり、顔を青くした。
「も、もしかして──麗葉さん?」
「へぇ。あの人、そんな名前なんですね。まぁ、どうでもいいです。とりあえず、その人を空き教室に案内していただき、少しだけ時間を稼いで欲しいんです。簡単でしょ?」
確かに、内容的にはすごく簡単なものに思える。だが、それは今までの話が全て本当ならの話だ。
今までの話を全て鵜呑みにして「協力します」と言えるものでは無い。そのため、2人は頷くことが出来ず、かと言って否定もしないで、そのまま考え込んでしまう。そんな2人を他所に、暁はリンゴパイを食べ続け、1人分をぺろりと平らげてしまった。
手についてしまったパイのカスなどを舐め取り、手を拭いた後、紅茶を飲む。そんな彼の様子を見て、2人は呆れ気味にため息を吐く。
「…………とりあえず、その話は保留にさせてもらってもいいかな」
「お腹すいてるのに……」
「せめて明日まで待って。少し頭を整理したいから」
凪絆のお申し出に、渋々と言った感じに暁は頷き、「分かりました」と口にする。
それからは何も話さず、リンゴパイと紅茶を楽しみ、カフェを後にした。
料金は3人分、しっかりと暁が支払い、凪絆達はお金を返そうと財布を取り出すが、気にせず彼は「いい返事を待ってます」と口にし、帰ってしまった。
その小さな背中を2人は、唖然とした表情で見届け、困惑した頭のまま自分の家へと歩みを進めた。
☆
次の日の朝。
凪絆が教室に入ると、自身の机と椅子が無くなっていることに気づきため息をつく。
「はぁ。またか」
周りを見回し机と椅子を探すと、掃除用具が入っているロッカーの前に投げ出されているのを発見し、凪絆は鞄を置き、机を直そうと動かし始めた。その様子を麗葉は、くすくすと笑いながら見ている。
「ねぇ、机と椅子がないってことは、ここに貴方の居場所はないってことなんだけど? 何普通に戻そうとしてる訳?」
「居場所がないのではなく、居場所を奪ったの間違いでしょ? 言葉を間違えないでくれると助かるんだけど。修正もめんどくさいし」
直しながら凪絆はそう口にする。その口調には、少しの怒りが込められており、鋭くとがっていた。
その言葉に苛立ち始めたのか、麗葉は椅子から立ち上がり、彼女へと近づく。そして、椅子を直そうとした途端、足で動かせないように押さえつけた。
「ちょっと。邪魔なんだけど」
「調子乗ってんじゃねぇぞゴミが。なんでも出来るからって、人のもんに手を出すとかありえないんだけど」
「人のもん? 何の話?」
麗葉は腕を組み、凪絆を睨みつける。その目の意味を彼女は理解できないらしく、睨み返していた。
「人のもんに手を出したアンタが悪いんだから。せいぜい抗いなさい」
「あんたじゃないんだから。人のものに手を出すわけないでしょ。意味わかんない勘違いしないで」
「取ったじゃない。颯人君は、私のものなのに」
最後のその言葉に、凪絆は目を丸くし、麗葉を見続けた。
「絶対に許さない。颯人君を奪った罪は、重いから」
低く、脅すような言葉を凪絆の耳元で囁き、そのまま自身の椅子へと戻って行く。
その言葉を聞いた凪絆は唖然としてしまっており、先生が来るまでその場で立ち尽くしてしまった。
ここまで読んでいただきありがとうございます
次回も読んでいただけると嬉しいです
出来れば評価などよろしくお願いいたします❀.(*´▽`*)❀.