この幸せな世界の裏側で…   作:naomi

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第1話 この世界の裏側

ここは、世界中から『戦争』を無くす事が出来た世界。

 

国際連合いわゆる『国連』を中心に話し合いによって、世界はこれまで抱えて来た問題の多くを解決出来るようになっていた。

 

それによって多くの人々が自身の幸福を追求する事が出来きるようになり自然と『犯罪』と呼ばれる悪事も減少傾向にあった。

 

そんな世界で1人の青年が、自身の幸福を棄てようとしていた。

 

「止めて、新(はじめ)もういい、それ以上はいいから」

 

「黙ってろ夏(なつ)。こいつが居たらこいつはまたお前を不幸にする。」

 

あるアパートの一室に男が2人と女が1人…揉め事が起きていた。

 

「いいの、私の事はいいからそれ以上はダメ」

 

「へっ、被害者ヅラしやがって夏。お前が俺の言う事をしっかり守らなかったからただ罰を受けてただけなのにな」

 

「罰だ!ふざけんな、夏が何かしたからってこんなにもボロボロにして良い訳ねーだろ」

 

「ハッ!どの面下げてそんな言葉を吐いている。原因はお前にあるんだぞ」

 

「なんだと」

 

「お前と出会うことさえなければ、夏は永遠に俺のモノだったんだ」

 

「てめえ、仮にも妹を『モノ』扱いかよ…やっぱり許せねぇ」

 

新の力強い拳が男の頬に捻り込まれ、男は身体が飛び壁に叩きつけられた。

 

「新…やり過ぎよ」

 

「うるせー。お前ももうちょっと自分の意思を見せて抵抗しろ、たまたま様子を見に来たから今回は防げたけど、また…やられんぞ」

 

「うん…今日はありがとう」

 

「オウ…まぁ帰るは、また明日な」

 

「うん…また…新!」

 

夏の叫び声に振り向くと、男が刃物を持って全速力で新に迫っていた。

 

「てめえ!」

 

「夏は俺のモノなんだ、俺のモノをこれ以上お前の好きにさせるか」

 

勢いあまり扉は破れ新の身体は柵に打ち付けられる。

 

「くっそ」

 

「止めて兄さん、新」

 

「なんだうるさいな」

 

「また隣の兄妹…って、えぇちょっと警察、警察を呼んで!」

 

「バカヤローなになってんだお前ら」

 

あまりの騒ぎに隣人達が悲鳴を上げる。

 

「このやろー」

 

警察のワードで一瞬力が抜けた男の隙を付き、新は刃物を取り上げる。しかし男は刃物を取り替えそうとし2人の身体が宙に舞う。

 

「新ーーー」

 

(痛ってー、あの男いったい何考えてんだ。あー身体中が痛いし、なんか変な温かさを感じる)

 

新の視界がうっすらと開く。起き上がろうとするが身体が動かない。気がつくと男が覆い被さっており、新の手は赤く染まっていた。

 

「ハッ?なんだこれ、…おいお前いつまで人の上に寝転がってるんだ」

 

身体をどかすと男の胸に刃物が突き刺さっていた。

 

「嘘…だろ」

 

「新ーーー」

 

隣人達にその場で取り押さえられた新は暫くして現行犯で逮捕された。

 

 

 

 

「…以上が被告、渡(わたり)新が被害者宮地晴信を殺害した際の全容で間違い無いのだな」

 

「はい。」

 

「…判決は数日後に言い渡す、本日の法廷は以上で閉廷する」

 

護送される新に同乗していた男が話しかけてくる。

 

「まあ、災難だったな恋人を守る為とはいえ、その兄を図らずも殺してしまうとは」

 

「この場合は正当防衛って扱いになるんでしょうか?」

 

「…正当防衛?なんだそりゃ」

 

「いや…自分が襲われて不可抗力で相手を殺害した場合って正当防衛ってのが適応されるんじゃないんですか?」

 

「…正当防衛なんてもう30年近く聞いてなかったな、そんな言葉あったな、ハハハ」

 

「いや、笑い事じゃないんですが」

 

「兄ちゃんいつの時代の話ししてんだ。正当防衛なんてとっくに法廷じゃ死語だ」

 

「なっ、そんな訳あるかよそんなデタラメあるもんか」

 

「まぁそうだよな、普通に生きてたらそんな事知ってる訳がないもんな」

 

「あんた…なに言ってるんだ?」

 

「裁判も後は判決だし、もう話していいか…兄ちゃんよもうこの国…いや世界中で裁判なんてただの世間向けのパフォーマンスだ」

 

「さっきから何いってんだよあんた。頭湧いてるんじゃねぇーのか」

 

「まぁ…信じられる訳が無いわな。実はな兄ちゃんこの世界の仕組みはあんたが学んできた教科書の仕組みとは既に全く別モノになってるんだよ。兄ちゃんは『犯罪』を犯した時点で強制的に今までの日常には戻れなくなっちまってるんだ」

 

「意味わかんねーよ、どういうことだ」

 

思わず胸ぐらを掴む新。男は淡々と話し続けた。

 

「犯罪を犯した時点で今のご時世、犯罪者は罪の重さに関係無くある施設に送られる。」

 

「ある施設だ?」

 

「そうだ、基本的に犯罪者は今後日の光を浴びること無く永遠に国に奴隷のように扱われるんだ」

 

「なんだって…」

 

「兄ちゃんは今、その施設に移送されて…丁度着いたみたいだ」

 

車から降りると既にそこは男の説明する施設の中であった。

 

「どこだよ…ここ」

 

「ここは国が『ある目的』の為に管理、運営している施設『パラティウム・テネブラエ』通称『パラテネ』」

 

「『パラテネ』…聞いたことねーぞ」

 

「当たり前だ、『パラテネ』は【この世界に存在しない組織】ってことになってんだからな」

 

「なにする場所なんだよ、ここは」

 

「言ったろ、ここには犯罪者しかいない。ここはその犯罪者達を国の奴隷として教育する施設なんだよ」

 

「国の奴隷って…ふざけんななんで俺がこの国の奴隷にならなきゃいけねーんだ。こんなの世界が知ったらこの国もお仕舞いだな」

 

「お仕舞いも何もこの施設…いや『パラテネ』は【国連に認可されている】んだ。世界中の国の政府が知ってるよ」

 

「なん…だと、世界中が認めている奴隷施設…って国は俺に何をやらそうとしてるんだよ」

 

「それは…おっ丁度良い説明にお誂え向きの『戦争』の始まりだ」

 

「『戦争』…だって」

 

新が男に誘導されて観始めた映像。そこには6体の10m程のロボット達が対峙していた。

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