この幸せな世界の裏側で…   作:naomi

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第2話 秘密

「なんだ…このロボット」

 

対峙する6体の全長10m程のロボット。よく見ると頭部に国旗のようなマークが施されていた。

 

「あのロボットはこの国と隣の国で2種類あるのか?」

 

「いや、あのロボットは国の数だけ存在するよ、名前は『イシュタル』」

 

「『イシュタル』…」

 

「『ニュートロン・アクセラレーター』を搭載した戦闘用ロボットだ」

 

「『ニュートロン・アクセラレーター』ってこの国が開発した核エネルギー抑制装置だよな」

 

「そう。時の総理大臣『渡部善彦』が我が国の威信をかけて開発させ、【争いの無い世界】を達成させた。世界を救った装置だ。この装置のおかげで一部の国が保有していた『核兵器』を無力化し、『原子力発電』の危険性を大幅に下げ、安定して運用出来るようになりエネルギー問題が解決したんだ。」

 

「『渡部善彦』って確かその後国連事務総長になって、核兵器の撤廃に尽力した人だよな」

 

「そうだ。そしてこの世界の新たな仕組みを確立した人物でもある」

 

「新たな仕組みって…この施設もじゃあ『渡部善彦』が」

 

「そうだ。まあその説明はこの『戦争』が終わった後にしようでは無いか」

 

「あんた『戦争』って表現止めろよな、【戦争の無い世界】を作り上げた『渡部善彦』を侮辱してるみたいだ」

 

「侮辱…ね。そうだとも私は彼を軽蔑しているよ、何せ秘密裏とはいえ旧世紀の負の遺産ともいえる『奴隷制度』を復活させているんだからね。この施設で」

 

「………。」

 

「そんな過去の人物の話しよりも、今目の前で起きるこれからの事に集中しようではないか、後日君もあの場所に立つ日が来るのだから」

 

「俺があの場所に?」

 

旧世紀に使用されていそうなサイレンが鳴り響くと、6体の『イシュタル』が動き始めた。

 

「観たところ3対3のようだけど、これはルールなのか?」

 

「そうだ。事前に協議して『イシュタル』の数を同数にして『戦争』をしている」

 

「協議って誰と?」

 

「勿論。相手国だ」

 

「相手国…って」

 

「これは個人の戦いでは無い。【国の未来を懸けた戦争】なのだよ」

 

「いや意味…だから頭部に国旗のマーク」

 

「あぁどちらの国の『イシュタル』か識別する為にね。この戦いを『クリエイト』と呼んでいる。『クリエイト』は事前に相手国と事前に協議し場所、開始時間、『イシュタル』の数等のルールを決め、国連に申請する。国連から認可されたら正式に行うことが出来る『戦争』だ」

 

「…勝敗は」

 

「どちらかの『イシュタル』が全滅するまで。時間制限は無い」

 

「あそこにいるパイロットは生きるか死ぬかしか無いってことか?」

 

「そういうことだ、段々理解出来てきたようだね兄ちゃん」

 

「ふざけんな!人の命をなんだと思ってやがる」

 

「彼等は全員『犯罪者』だ。善良な人々を身勝手な理由で苦しめた者達の集まりなんだよ。彼等が再犯を犯すより、国の未来の為に戦い死ぬ。その方が犯罪者も社会に貢献出来ると思わないか?」

 

「どんな人間にも人権はあるんじゃないのか?」

 

「その『人権』という言葉に踊らされ、どれだけ再犯を犯した犯罪者に犠牲になった人々がいると思う。そんな人々にも兄ちゃんは同じことが言えるかい?」

 

「それは…」

 

「故に、一度『犯罪』を犯した者は形式的な裁判の後、強制的に全員ここに収容される、かつて殺人と呼ばれた重い罪から痴漢と呼ばれた比較的軽い罪関わらずな」

 

新は最早言葉を返すことも出来なかった。

 

「『イシュタル』についてもっと映像を交えながら説明するつもりだったが、終わったようだな。まあ『イシュタル』についてはこれから始まる訓練で覚えてくれたまえ」

 

「…どっちが勝ったんだ?」

 

「どうやら我が国が勝ったようだギリギリ1体残ってね。これで1つのお隣との問題が解決した。」

 

「どういうことだ」

 

「『クリエイト』は両国間で話し合った結果、解決出来ない又は出来なかった場合に適用する政治の手段だ。今回の場合は隣国と長年平行線だった南洋諸島の領有権争いについての『戦争』だ。これで正式に南洋諸島は我が国の領土となった。さらに一度『クリエイト』まで持ってかれた問題は再度『クリエイト』することは出来ない。つまりこの件はこれで一件落着という訳だ。」

 

「『クリエイト』は反故出来るのか」

 

「出来る。だがそんな国はまず無い。反故すれば国としての信用を失い。世界から孤立する、場合によっては国連から【世界の平和を乱す国】として制裁を加えられるからな」

 

「そうか」

 

「よし大方説明も終わったし移動しよう」

 

立ち尽くす生き残った『イシュタル』を目に焼きつける新。

 

まるで今後自らが経験するであろうその惨状を客観的に見せつけられたような気分となっていた。

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