かつて東京の不良達を束ね『東京制覇』を成し遂げた男達がいた…。そんな男達を彼らは『
(…めんどくさ…。)
ナリタタイシンは今の状況にとても困っていた。目の前には3人のチンピラが立ちはだかっている。何故こんなことになったのかをナリタタイシンは思い出していた。
———
今日は朝から機嫌が良くなかった。理由は分かりきっていた。前日に行われた模擬レースの結果が良くなかったその一言に尽きる。アタシがトレセン学園に入学してからそれなりに時間が経った。すでに何度か行われているの模擬レースの結果はそんなに悪いとは言い難く、時には1着も取った。だがアタシに声をかけるような物好きなトレーナーはいなかった。こんなすぐに機嫌悪くして憎まれ口叩くような素直じゃないウマ娘だから当然だと思った(アタシがトレーナーだったとしても声はかけないと思う。)そこで自分からトレーナーに声をかけれるようなコミュ力があれば今の時点でアタシにはトレーナーがついて友達もたくさんできていたことだろう。さらにアタシを焦らせるのがチケットとハヤヒデに最近トレーナーがついたことだった。唯一のライバルにして友達(口には絶対出さない)だと思っている二人がアタシだけを残して先に行ってしまった、そんなふうに思った。だから模擬レースの為にいつもよりも練習量を増やした。それこそ夜に寮を抜け出して練習したりもした。トレーナーなんていないから止める人もいない。そして迎えたレース当日アタシは後ろから二番目の11着でゴールした。ゴールした後チケットとハヤヒデが心配そうに近寄ってきた。
「タイシン大丈夫!?」
「少し無茶をしすぎじゃないか?」
二人がアタシの事を純粋に心配してくれているのはすぐに分かった。おそらく二人ともアタシがオーバーワーク気味に練習していることも知ったうえで心配してくれている。それが分かっていてもアタシの口から出るのは———
「…うるさい。アンタ達には関係ないでしょ!!」
そんな二人を傷つけるだけの言葉だった。アタシはハッとなって二人の顔を見る。いつもよりも強い拒絶の言葉に二人は驚いた顔をしている。チケットに関しては耳が垂れて顔が歪み今にも泣き出しそうな顔だった。
「…っ!!」
アタシはその場から走って逃げた。その日は部屋に戻ってからも同室のクリークさんと一言も話す事なく布団にこもっていた。
そして、今朝起きて学園に行く気にもならず何の考えもなく街に出た。そして気分転換にゲーセンに向かって着いたのはいいものの入り口近辺で肩が当たってしまって絡まれたというわけだ。
———
「嬢ちゃん、ぶつかっといて何の挨拶もなしか?あぁん!?」
「シカトぶっこいてんじゃねぇぞ!」
アタシを威圧しながらチンピラのうちの一人が持っていた飲み物の空き缶を投げ捨てる。目の端でクレーンゲームをしていた男の頭にその空き缶が当たったのが見えた。
「おいおい、よく見るとこの子ウマ娘じゃね!?」
「嬢ちゃんダメだぜ?嬢ちゃんみたいに可愛くてちっちゃい子が一人でゲーセンなんて来たらこわーいお兄さん達に捕まっちゃうぜ〜?」
下品な笑い声が聞こえる。いつもだったら怒っているはずのところだけどアタシは声が出せなかった。…怖い。意識するとアタシは震えていた。
…アタシはこれからどうなるんだろう。チケットとハヤヒデはどうしてるかな。頭の中をどんどんと覆っていくのは…後悔だった。このまま喧嘩別れみたいな感じで終わってしまうのだろうか。
「さーて嬢ちゃん。お兄さん達と「おい…。」…っあ!?」
気づいたらクレーンゲームをしていたはずの男が隣に立っていた。
「テメェら、男三人で女の子寄ってたかっていじめやがって。…それによ、どうしてくれんだ?」
そういって男はクレーンゲームを指さす。
「テメェらのせいで失敗したじゃねぇか!最後の百円だったんだぞ!?」
「あぁん?何いってやがるテメェ!?」
「訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇぞ!?」
三人のうちの二人は謎の乱入者に強気に当たっているが最後の一人は体を震わせながら「あっ…あっ」と声にならない声を出している。
「とりあえずこっちは早く嬢ちゃんと遊びてぇんだ。…邪魔すんなら…死んでくれや!!!」
そういうと最初に食ってかかっていった二人が同時に男に飛びかかった。思わずアタシは危ないと叫びそうになった。でもそんなアタシの心配は杞憂に終わった。ドゴォと大きな音がして気づけばチンピラ二人は吹っ飛んでいた。
「おいそこのお前もまだやるか?」
「ひっ!」
最後に残った一人は声をかけられると飛ばされた二人を置いて逃げていった。
「おい、大丈夫か?」
男がアタシの方を向いて声をかけてくる。アタシは返答はせずに頭を縦に振った。
「なら良かった。子供一人で来んのは危ないから今度からは誰かと一緒に来いよ?」
男は手を軽くあがながら去っていく。アタシは気付けば男を引き止めていた。
「っ、まって。」
「ん?どうした。」
「アンタ名前は?」
「そんなこと聞いてどーすんだよ。」
「いいから。」
「はぁ、『梅宮音弥』だ。これで満足か?」
右手で頭をかきため息をつきながら男は自己紹介をする。これが『最強の一般人』梅宮音弥とアタシの出会いだった。
第一話終了〜