『怜、いるか?』
寮の談話室に入りながら声を掛けるも、談話室には誰もいなかった。
(おや…?タイミングずれたかな)
少し首をかしげながら談話室の扉を閉めようとしたときに、怜がちょうどこちらに向かってきた。
「マネージャー?どうしたんですか?」
怪訝な表情で問う怜に、一枚の紙を見せる。
『怜が前々から希望してたダンス系の仕事のオファーだ』
「ホントですか!?」
早速食いついてきた。
『…とはいえ、怜が踊る方じゃないけどな…すまん」
申し訳なさで少し視線を下げてしまう。
「…とりあえず、どんな内容か教えてください」
『怜はD.leagueって聞いたことはあるか?』
「…いえ、残念ながら」
『D.leagueってのはダンスのプロフェッショナルを生み出す、そして育成していくことを目的とした日本…いや、世界初のダンスリーグだ。これのゲストジャッジのオファーが届いた』
「葵は…受けなかったんですか?」
『それなんだがな…葵はあまりにも感覚的に過ぎてな。おそらく評価を上手く言語化しきれないだろう。以前チラッと話したことがあったかもしれんが…どれだけ難しい内容であろうと、普通にやってればできるよ、なんて言ってしまうのが見えてるからな…それであれば、きちんと理詰めで評価や表現の出来る怜の方が向いている…と俺は判断した』
ここで一度言葉を切り、怜の表情を伺う。実に真剣な眼差し…いい表情だ。
『さらに言えば、このD.league、さまざまなジャンルのダンスに一気に触れることが出来る。つまり』
「つまり…?」
身を乗り出してくる怜。
『怜が見たことのないダンスも見られる、特に男性主体のチームのダンスはいつも怜がやっているようなダンスとは方向性も違うだろう。他にもメンバーのフォーメーションや音楽の合わせ方とか、色々と初めて見るもの、聞くものが多くあるはずだ。だからこそ、怜のダンスがさらに上手くなるきっかけになる…と、俺は信じてる』
「…わかりました、やらせてください」
『ありがとう、怜なら引き受けてくれると信じてたぞ。詳しくはこの資料に目を通しておいてくれ。後で参考用の動画が入ったディスクも渡すから、事務所に来てくれると助かる』
怜に資料の紙束を預ける。
怜なら安心して依頼できる。ダンスに一家言あるだけではなく、自分でどうすれば良いのかを言葉にする能力がある。
この仕事で、きっと怜のダンスは一段上の世界に行くはずだ。星見のダンス上手は葵だけではない、怜もいる…これを強くアピールしなくては。
改めて調べてたらAKBの子がジャッジに撰ばれてたので一安心。
つまり、アイドルがジャッジに入っても問題はなかった。