片思いの代償~ボクはただ君をオモイ~   作:幽美 有明

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片思いの君

 恋焦がれる片思いは苦しく辛いものだ。

 

 そう誰かが言ったらしいけど、僕はそうは思わない。片想いは素敵なものだ。心の内に秘めたままでいれば、誰も傷つかない。幸せな恋だと僕は思うんだ。

 

「委員長、おはよう!」

「おはよう涙ちゃん」

 

 秋が終わり、冬本番になってきた一月の季節。教室の僕の机を挟んで彼女と話す。

 涙、彼女が僕の想い人。心の内に秘めた思いを告げることの無い相手。

 容姿も可愛いのだけど、それ以上に僕はその心に恋をした。その生き様に恋をした。

 小学校から高校まで一緒に過ごした、幼なじみで。涙が経験した多くのことを一緒に経験した。

 他人より、涙のことをよく知ってると自負してる。だからこそ好きになってしまった。愛してしまった。

 でも、それが叶わないことも知っていた。

 

「先輩彼氏とは最近どうなの?」

「あっ、それがね委員長。先輩ったら酷いの!」

 

 涙には彼氏がいる。彼女の二つ上の先輩。今年の春から付き合ってて先輩の方は今大学生らしい。

 付き合い始めたと聞いたのが、今年の春休みに入った頃。好きな人が出来たと聞いたのは、高校に入学してすぐの事だった。

 一番涙の近くにいて、一番涙のことが好きだった。なのに急に出てきた涙の一目惚れの男に、涙を奪われた。

 その時僕が感じた感情は、憎しみでも嫉妬でも悲しみでもなかった。

 僕がその時感じた感情、それは。

 

 嬉しさだった、喜びだった、歓喜だった。

 

 おかしな話だろう?

 好きだった彼女を奪われて、本来抱く感情とは真逆の感情を抱いている。

 抱くはずのない感情を抱いている。

 どうしてなのか理由ははっきりしてる。僕は、涙の幸せを願ってる。だから涙が幸せになるなら、それは僕にとっても嬉しいことなんだ。

 だから悲しみではなく、嫉妬心でもなく、嬉しいんだ。

 

「涙、結局それ惚気話になってるよ」

「え?」

「自分の家に先輩を呼んで、一緒に炬燵に入って、キスまでしたんでしょ。それは立派な惚気話だって気づいてる?」

「え、あ。あわわわ」

「自分で言って、思い出して赤くならないでよ」

 

 昔は僕だけに見せていた笑顔も、恥ずかしがる顔も、泣く顔も、怒る顔も。

 全部、全部。

 その先輩とやらに持っていかれた。

 でも、

 それでよかった。それが正しい選択だった。

 どうせ、その先輩は今の涙を見ることはできない。友達の僕にだけ見せてくれるこの顔を、見ることは絶対にできない。涙のこの姿だけは誰にも渡さない。

 涙の大親友のポジションは誰にも渡さない。

 今の所、涙の相談相手は僕だ。彼氏の先輩じゃない。

 もしかしたら、そのうち奪われるかもしれないけど。今はまだ僕のものだ。

 だから、

 

「涙、今日放課後遊びに行かない?」

「うん、行く!」

 

 だから、涙を独り占めにしたっていいだろう?

 

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