リアルが忙しく、同時にお盆休みから気分も抜けきれずにいました。
頑張って調子を取り戻していこうかと思います。
今回から新章突入です。戦闘はありません。
原作とは大きく異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。
それでは、ゆっくりしていってね♪
赤き気炎
HUCHI
~蒼魔塞 5階 赤の部屋
その時私は、自分の部屋から窓の外を見ていた。
太陽の形をした図書館が墜ちていくのを見ていた。
『赤色』の力の副作用を被った、魔法使いの醜悪な姿も……
「……だからあれほど言ったのに」
そう言って視線を上げ、蒼白の満月を見上げた。
かつてあの月も赤く、そして美しく染まった。確か、紅霧異変の時だったわね……
「でも今は、月には用は無いのよ……」
そう言って目を細める。
夜明けまであと二時間十五秒……夜が明ければ、遂に……
「……………」
後ろに誰か居る……そう直感した。
でも振り返らずとも、直ぐに誰かは判っていた。
自然と笑みが顔に浮かんだ。どんどん拡がる。
此程口の端が拡がったのは久しぶりかもしれないわね……
「……そうはさせないと、来る事は判っていたのよ……」
そういって後ろを見た。
「そうよね……紫?」
私の後ろで、私そっくりの女性が立っていた。
此方を見ながら通ってきたスキマを閉じている。
今の私と同じ道士服を着ていたが、赤色であるべき場所が紫色になっていた。
そして、髪に結ばれているリボンの紐の太さも違っていた。
大きな穴が出来る程の細さの私のリボンに比べて紫のリボンは其の穴が見当たらないほどの太さだった。
彼女の口が動いた。でも其処から言葉を発せられる前に私は言葉を挟む。
「言わなくても判っているわよ。どうせ……」
「『お前の様な姉は、私にはいない』……そうでしょ?」
「判っているじゃない」
どうやら、機嫌が良くない様だった。
私を見る顔をしかめている事から一目瞭然だった。
「外から来た私の偽者……勝手に八雲の名を使われると困るのよ」
外から来た者……其は、私が、幻想郷の者ではない事を示していた。
「貴方の式も勝手に名前を付けてる癖に。其の式には名字も無いじゃない」
紫の式である八雲藍、橙をあげて切り返した。
論破には慣れていた。其に、私の方が賢いのに……
「八雲の名なんてあって無い様な物よ」
「お前は幻想郷に自分の居場所を作ろうと、屁理屈を正当化して捩じ込んでいる
だけなのよ」
紫の口調は、まるで保護者が小学生の娘に留意事項を言い聞かせるようなものだった。
ぴくりと自分の眉が動いたのが判った。
「屁理屈なのは其方じゃない?」
私は再び平然と言い返した。
「今まで此処で起こった異変だってそう……其も他人を顧みず、自分の為にと身勝手な理由ばかり……
だから私も幻想郷を落ち着けようとしているのよ」
「じゃあ聞くわよ?」
すると紫が、質問を投げてきた。
「貴方は、屁理屈を吹聴して集めた幻想郷の妖精を、何匹モルモットにした?」
「!え……?」
頓狂な声が出てしまった。
「何の事かしら?」
「何匹で結果を得られたのかしら?」
言葉が詰まった。が、何とか答えは出す。
「……アバウトだと一万匹以上。正確には……覚えているけど教えてあげないわ」
「其だけで結構よ」
正確な数値は実際に覚えていた。11235匹……ちょうどフィボナッチ数列と重なった事に驚いた。
紫が続ける。
「利己的な理由で異変を起こす……貴方も、例外じゃなさそうね。
まさか、『赤いは酒の咎』って言い逃れはしないわよね?」
……………
反論の手を探していると、
「此を聞いたら霊夢……悲しむでしょうね」
其の言葉に思わず目を見張った。
まさか……もしかして………あの事を??
「一応此の要塞の下調べはしているのよ」
そう彼女が言うと、
「今まさに分離され、崩落した太陽の反対側……月を模したモニュメント……」
「此処とは別の、貴方の研究室……違う?」
……図星だった。
でも、どうやってあの部屋に……??
鍵をかけ、強力な結界を張り、誰にも……そう、自分の配下や側近にも
近寄らせない様にしていたのに……
「私の能力は『境界を操る程度の能力』」
紫は無表情で言った。思っていた事を読まれた。
「結界という境界を設けても其は無意味よ。霊夢にも結界を破る力がある。
あの程度の小さければ、直ぐに暴かれるでしょうね」
今度は逆に自分の顔が引きつっていくのが判った。
その時、紫の傘を握る手がかすかに動いた。当然其を見逃さなかった。
「貴方のスペルは私に通用しない……御存知でしょ?」
今の紫には赤い部分がない。
霊夢達と一緒に私の能力に巻き込まれたに違いない。
髪に結んでいるリボンも全て青色になっていた。
其に喋っている口の中も蒼かった。
霊夢達もそうだったけど、血の気のない様な顔といい、まるで幽霊になった様にしか見えず滑稽に思えた。
「服の下で身体に巻いてる、精密機械を叩き割れば済む事よ」
想わずムッとした。
「単純にまとめるな。『英知の結晶』と言って貰える?」
「ガラクタをなんと言おうが関係はないわ。其に……」
「垢にまみれた貴方に指示されるほど、私は甘くは無いわ」
!!!……………
「………今、何と言った?」
「!御免なさい。赤の間違いだったかしら?」
私は直ぐに右手を横に伸ばした。
バジジィィ……!!!!
手の先に赤い放電と共にスキマを開き、両手を突っ込んだ。
其処から『英知の結晶』であるガトリングを取り出し、安全装置を外して素早く銃口を紫に向けた。
だけど向けた先には既に紫は居なかった。
「逃げた…!」
息を荒げながら想わず舌打ちをした。赤いラインの入ったガトリングの銃口を下ろす。
私の身長のより長く重そうな見た目に反し、極限なまでの軽量化を施してあった。
「『赤色』を馬鹿にして……!次会ったら顔をぶち抜いてやるわ……!」
ガトリングを出してから開けっ放しにしていたスキマの中に、ガトリングを投げ戻した。
あの中を見られた。なら私の、一番の秘密も見られたに違いない。
気が付くと額にとめどなく汗が流れていた。
誰も解除できないであろうと、ありったけの『英知の結晶』の力で仕掛けた結界を
まさか破って来るとは思いにも寄らなかった。
詰めが甘かった。自己嫌悪に陥ってしまいそうになったが堪えた。
こうなれば紫は絶対に霊夢達に話すだろう。
其の事が他人に露呈する事は、此の計画の一番の最大の要にして最大の弱点を暴露され、此の計画が失敗するという事を意味していた。
一気に焦りと危機感が私を覆った。
知られてはいけないわ……少なくとも、霊夢にだけは…………
でもそう思った途端、もう一度ハッとした。
今まで紫と話していた時間から計算すると、霊夢達はとっくに塔の中に戻っている。
そして、もうすぐ此の階に上がってくる筈……
「急いで此の階から離さないと……!」
私はもう一度スキマを開け、其処に飛び込もうとした……
「!赤様……!?」
が、声が聞こえ、咄嗟に声が聞こえた方に首を曲げた。
「……知流ね?」
部屋の入口に紅魔の館で悪魔に仕えるメイド、十六夜咲夜にそっくりのメイドがいた。
だけど色は違い銀髪の筈の髪の色は金色で、蒼ではなく赤いメイド服を着ていた。
そして咲夜の様に、淡々とこなす瀟洒な一面は……なく、オドオドしていた。
名前も違った。名前は待宵 知流(まちよい ちる)。
「何か用?」
「も、もの凄い……物音が聞こえたので……」
ガトリングの安全装置を外した音に違いない。
「ええ……ありがとう。心配をかけたわね」
そう平静を装っていた私の頭は、平静など存在していなかった。
「私は下の階に行ってくる。其の間に貴方は所定位置についてくれるかしら?」
「!!え……!?」
知流が面食らった。同じ事を繰り返し言いながら大慌てしている。
手をパタパタさせている。
「~~し、しかし……!!」
「………急いでいるのよ」
「!!!~~か…かしこまり……ました………申し訳…ございません……」
だがスキマに入ろうとした時、私の頭の中に思い付くものがあった。
スキマから一旦体を離し、
「一つ良いかしら?」
「!?な、ななな………!?」
「『彼女』は今、どうしているの?」
最初は『彼女』が誰かが判らないらしかった様で、直ぐに気を落ち着けて考えていたが
しばらくすると思い出したかの様に、
「!は、はい……お薬で、よくお眠りになられています……」
私は直ぐにお礼を言い、今度こそスキマに入り、墜ちていった。
HUCHI
~蒼魔塞 6階
私はスキマを開き、ある部屋の中に着地した。
電気が点いていないのか、部屋は真っ暗だった。
位置を記憶していた壁にあるスイッチを、押しながら私は考えていた。
視線は私の懐に向けていた。
完成はしていないけど……データを取る為に使うしかない……
何よりあの秘密の漏洩を阻止する為なら……
電源が点き、部屋の中が明るくなった。
そして其の奥には、少女がいた。近づいて様子を見る。
椅子に座ってぐっすりと眠っている。
私は懐から黒い胸当て型の『英知の結晶』を取り出した。
中央の赤いコアがあり、其処から血管の様に赤いラインが広がっていた。
もう一度少女を見た。
金色の髪の下の目は、当分開く事は無さそうね……
蒼い目も見ずに済みそうだし……
「必ず……成功させてみせるわ……赫郷計画《プロジェクト・レドランティカ》……」
そう呟き、『英知の結晶』を少女の胸に取り付け、起動した。
如何でしたか?
赤にいろんな疑惑が浮上してきた回でした。
彼女が一体何者なのか、大きく一歩近づけたけど、危険な一面も垣間見えた……
そんな回となりました。
次回からは其処を踏まえつつ、霊夢達が彼女の配下達と戦っていきます。
それでは、次回もゆっくりしていってね♪