東方蒼魔塞   作:因田司

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すみません。最近リアルの忙しさに、更新ペースが乱れに乱れております。

今更ながら、小説を書いていてもう一年以上も経っていた事に気付きました。
此処まで良く続けられたな、と自分でも驚いています。

そんな今回はアリスを救出した、マステアに迫っていきます。
戦闘はありません。

原作とは大きく異なる点もあるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


二律背反の吸血鬼

REIMU

~蒼魔塞 5階

 

今の私には、二人の吸血鬼が視野にいる。

 

隣にいる一人は突然の自分の偽物の乱入に唖然としている。

目の前の一人は自分より体格の大きいアリスを悠々と抱えている。

 

一人はレミリア・スカーレット。今回の異変解決のパートナーだ。

そしてもう一人はマステア・アズール。異変の黒幕の側近、レミリアのそっくりさんだ。

 

でもよく見ると少し、いえ、かなりの違いがある事が判った。

 

側近の姿を見た私は思わず呟いた。

 

 

「サイボーグ……?」

 

 

アリスを抱える左腕、そして右脚が機械になっていた。

左腕は、さっきアリスの胸から『英知の結晶』を剥ぎ取った腕と同じだった。

どちらもアリスの胸に装着されていたのと同じ、黒色を主とした金属に指先の

細部まで走るラインが赤く光っていた。

 

良く見ると背中の翼の内、左の方も機械化されていた。

黒い機械の骨格の間を紅い結界の様な、透けた翼膜が張られている。

 

其でも顔はレミリアそっくりだ。

 

今のレミリアと同様、目、そして帽子から其のリボンまで完全に青色だった。

他の配下にはあった頬の紅い幾何学模様がない事もまるで今の本物の様かと思わせた。

 

 

でも顔に関しては、一つだけレミリアと異なる点があった。

 

 

右目が無い。眼球そのものが無い。

 

空いた眼窩の中には何もなく、黒い穴がぽっかりと口を開けていた。

 

 

『……マスィは、そんなに……人間味が残っていないもの……』

 

 

さっきへフェリーが死に際に言っていた言葉が頭に浮かんだ。

今やっとその言葉を理解する事が出来た。

 

 

「博麗霊夢、そして、レミリア・スカーレットね?

名前は外の世界で知れ渡っている」

 

「……外の世界を颯爽とひけらかしているわね」

 

 

私が返す。

 

 

「其より、配下が主人の邪魔をしちゃっても大丈夫かしら?

流石に仲が悪くても其処までは無いと思うけど……」

 

 

マステアは答えないかわりに別の言葉が飛ばしてきた。

 

 

「私が赤と仲が悪かった、とは雪から聞いたな?」

 

「!雪がバラしたってどうして判るの?」

 

 

そう訊ねると、

 

 

「赤の一番傍で仕えている以上、他の配下の性格云々は把握しておく必要が有るからね」

 

 

素っ気なく、そして側近らしい答えが返ってきた。其の後に一言呟いた。

 

 

「…気の毒だ」

 

 

私にははっきりと聞こえた。

 

 

「何が気の毒なのかしら?」

 

 

そう訊いても、何も聞いていなかったかの様にまた話題を無理矢理戻してきた。

 

 

「赤と仲が悪いのは、至極簡単だ。一部はヘフィから聞いた筈だ」

 

「へフェリーなら死んだわ」

 

 

今度は私が素っ気なく付け加えた。

 

 

「『赤色』で醜くなりながらね」

 

 

だが、

 

 

「……そうか、死んだのか」

 

 

其の一言に遺憾より、寧ろ安堵の響きが強い事に驚かされた。

 

 

「赤じゃないのね?貴方達なのね?」

 

 

次に来た其の質問の内容がさっぱり理解出来なかった。

仲が悪くても、やはり考える事には変わりが無いじゃない……

 

私達が答えなくとも事を察したらしく、マステアは溜息をついた。

 

すると、またポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「……事故だ」

 

「事故……?」

 

「其の通り、事故だ」

 

 

事故…此もへフェリーが同じ事を言っていた……何があったのかしら?

 

すると彼女は、抱えていたアリスを身体を出来るだけ慎重に床に下ろしながら

話し始めた。

 

 

「ある日此の要塞で突然伝えられた。身体の中に色素を過剰に取り込むだけで、普段自分には無い

特別な力を発現出来る…本当にそんな事が可能なのか?

赤の傍にずっと仕えていた時には、其に関する研究を一度もする様子を見せなかった。

最初は私も他の配下同様、赤から『赤色』を貰う事を楽しみにしていた。

お陰で其の頃から私に構ってくれる事が少なくなっていたが、そんな事は二の次に思えた」

 

 

私達は何も言わずに聞いた。

 

 

「そして其の日……他の配下達が頬に次々と異なる模様が浮かばせて喜ぶ中、

残った私にも順番が到来した。

私は、赤が紅い螺旋を自分の胸の中に静かに入れるのを見ていた。遂に私も、未知の力が手に入れられると思った……」

 

 

其処まで言ったマステアが口を閉ざした。

 

 

「……何なの?」

 

 

彼女は、血の気の無い顔で続けた。

 

 

「適合しなかった。『赤色』は事もあろうか、私の身体に対し拒否反応を起こした。各部位に蔓延していた『赤色』は炸裂した。そして今は……此の様だ」

 

 

そう言って、笑みを浮かべながら機械の左翼を振った。

其の声には自嘲的な響きがあった。

 

私は訊ねる。

 

 

「じゃあ、其の機械は…全部……」

 

「『英知の結晶』だ。赤曰く、ね。直後に私の為に緊急で造り、私の欠損部分を

止血、此を装着させられた」

 

 

そう言うと、突然其の顔から笑みが消えた。

 

 

「其以来、私は他の配下が赤から『赤色』を貰うように促しても断った。

二度とあんな目に遭うのは御免だったからのも有るけど……」

 

 

マステアは少しうつむき、窓からの外の光で其の顔に影を落としていた。

 

 

「私はあの女に殺されかけたが、同時に生かされもした。此の一連で確信した。

赤には私達配下を慈しむつもりは毛頭無い。只、玩んでいるんだ、とね」

 

 

次の瞬間、私は影になったマステアの右の窩に、吸い込まれそうな感覚を覚えた。

思わず身震いをしてしまう。

 

配下の主への遺恨……其は、此処まで深いものになるの……?

 

 

「私は敢えて『英知の結晶』の義眼を入れる事も、歩く事が出来れば十分、という名義で断った。

だが本当は……忘れたくなかったのよ。アイツが心底に大事に隠している、嗜虐性を……」

 

 

すると、マステアの様子が変わった。何かを警戒している。

 

 

「いけない……あまりにも時間がかかり過ぎた。急がないと赤が戻って来るかもしれない」

 

 

すっかり忘れていた。もう配下の半分以上が倒された今、さっきと同じ様に私達を

妨害してくる可能性が高くなっている。

 

 

「其に今の赤は私の帰還を知らない。其に『英知の結晶』の実証検査が失敗したと

判れば……私について来い。直ぐに近道で此処から離れよう……」

 

「待て」

 

 

突然レミリアが遮った。

自分と似ている配下に出会ったショックから大分立ち直っている様子だった。

 

そして其のままマステアの方に歩き始めた。

後ろ姿でも、相手と同じ蒼い目がギラギラしているのは手に取る様に判った。

 

 

「……私が自分の偽物を前にして、平然といられると思うか?

素直に従うと思うのか?そう簡単には引っかからないぞ」

 

 

其に対し、同じ声が返す。

 

 

「……私はもう奴の指示を受けるつもりは無い。相手は私達を玩び、お前達からはアイデン

ティティーともいえる『赤色』を奪い、好き勝手に利用している女だ

其に、互いに霊力を空費したくは無いでしょう?」

 

 

正論をぶつけられ、レミリアはグウの音も出なくなった。

 

 

「レミリア…残念だけどマステアの言う通りよ。相手も、私達を利用しようと

している訳でも無さそうだし……」

 

 

そう言った私が驚いた。私が、敵に同情している言葉をかけるなんて……

 

レミリアの首がうなだれた。考えている、すぐに其が判った。

 

双方の利害一致によって自分の偽物と共闘するか……

其とも、己のプライドに任せて偽者と対峙するか……

 

どちらを選ぼうか悩んでいる。

でも、どちらにしても彼女が良い気にはならないのは目に見えていた。

 

 

 

 

やがて顔を上げ、マステアに言った。

 

 

「……判ったわ。でも此の異変が終わらせた後に、必ずお前を殺す」

 

「……紅魔館は、良い主を持っているわね」

 

 

紅魔館の名前が出るなんて……やっぱり、家出感覚で蒼魔街と外の世界を

行き来していただけはあるわね。

 

 

 

 

 

「ん……」

 

 

すると二人の足下でアリスが小さく声を上げた。気が付いたのね。

 

マステアが屈んだ。右の瞼は閉じている。

 

 

「大丈夫か?」

 

 

アリスが薄目を開けて声をかけた彼女の方を見た。

 

 

「!?レ、レミリア……!??」

 

 

慌てて両腕で上半身を立てた。

レミリアとは明らかに違う事に気付いている。

 

 

「『赤色』は個人差で益にも害にもなる。暫くは安静にしていた方が良いわよ?」

 

「アンタ……!?何……何なの……!??」

 

 

マステアの弁解でますます離れようとするアリスだったが、反対側のレミリア

とも目があった。

其の動きが止まり、只でさえ驚いていた其の目がますます丸くした。

 

 

「~~レ、レミリアが……ふ、ふ二人……!???」

 

「とりあえず理由は後にさせてくれ。今は時間が無い」

 

 

マステアの言葉に少々苛立ちが見えていた。

 

アリスは暫くは其の姿勢のまま唖然としていたが、また床に倒れた。

 

今度は気絶……本当に面倒くさいわね……

まぁ、同じ人物がいきなり二人もいれば、混乱もするだろうけど。

 

するとマステアが、思い出したかの様に私の方に顔を上げた。

 

 

「実はだけど此の階に、配下はおろか、私達側近でさえも立ち入りが禁じられている場所がある」

 

 

私は耳を疑った。

 

 

「其、本当?」

 

「ええ……だが、其処は鍵だけでなく、どうも厄介な結界が仕掛けられていて通れない。

赤が外出している間、何回か試したが無駄だった……」

 

「結界なら私に任せて。結界破りは御手の物よ!」

 

 

マステアが私を見た。

 

 

「やはり、博麗の者か……外の世界での噂は、やはり伊達ではなかったのね」

 

「当たり前よ、私を誰だと思っていたのよ?」

 

「おべんちゃらは良いから、さっさと其処に案内してよ」

 

 

レミリアが焦れったそうに言った。

 

 

「なら、アリスはどうするの?」

 

 

私は倒れている彼女を指差した。

 

 

「私が抱えていよう。幸い、『赤色』は身体から完全に抜けている。すぐに目を覚ますわ」

 

 

マステアが其の下に両腕を滑り込ませ、再び軽々と持ち上げた。

其でも、やはり体格の差があるのかアリスのブーツの踵が、金属の床に付いていた。

 

 

 

 

 

 

赤……まだ何かあるのね。さっきアリスをけしかけた時から、様子が変だとは思っていたけど……

なら今度こそ化けの皮をはがして、文字通り赤っ恥をかかせてやるわ!

 

 

謀反者について行きながら、私はそう思った。

 

 

 




如何でしたか?

急展開の連続でした。
レミリアのサイボーグ版……そして突然の加勢……そしてそしてアリスの混入……
一見シリアス回ですが見方を変えるとネタ回の様にも見えてしまいますね。

次回からはマステア、そしてアリスも新たに行動を共にしていきます。
そして新たな配下も登場していきます。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪
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