東方蒼魔塞   作:因田司

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前回のマステアの尽力により、霊夢達が赤の秘密を知る為の道が開けました。

しかし、今回は其の道中でイベントが起きます。
其のイベントを、アリス視点で御送り致します。

原作とは大きく異なる点もあるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


蒼月の下で……

ALICE

~蒼魔塞 5階

 

私は今、いろいろと吃驚している。

 

目を覚ますと、レミリアが私を抱えている。

 

でも、どこか変だった。半分機械的で…何も喋らずに前を向いている。

しかも自分より明らかに重い筈の私を抱えているのにビクともしない。

 

私、こんな人形、作った覚えは無いけどな……いや、絶対に無いわ。

 

そしてレミリア似の彼女が見ている方に首を曲げると、霊夢が大きな扉を前にして

足下に術式を展開しているのが見えた。

片手の指を二本立て、其を縦に、横に振っているのも見える。

 

 

何か封印をしているの…?其とも解印をしているの…?

私には、さっぱり状況が理解出来なかった。

 

 

すると扉の表面に紅い幾何学模様が浮き出てきた。

 

 

「!?……」

 

 

そして其の模様が直ぐに扉の表面にこびり付いた泥が落ちる様に、上から下に消えていった。

同時に霊夢の足下に張り巡らされていた術式も消滅した。

 

其処で彼女は息を一つついて、額の汗を拭い、

 

 

「……じゃ、開けるわよ?」

 

 

背中越しに私達にそう言うと袖の中から鍵を取り出し、扉にある穴に差し込んで回した。

 

すると扉の中で大きく、鈍い金属音が響いた。

 

 

「……解錠成功ね」

 

 

そう言いながら振り向く、霊夢と私の目があった。

 

 

「!アリス…!気が付いてたの!?」

 

「!目が覚めたか……」

 

 

突然上からも声をかけられ、慌てて見上げた。

 

レミリア…に似た少女が私を見下ろしていた。

剥き出しの右目の窩が、恐ろしかった。

 

 

「!!イヤ……!!」

 

 

すっかり気が動転した私は一刻も早く離れようと、彼女の腕の中でもがき始めた。

 

 

「落ち着きなさいよ?で…また気絶しないでよ?」

 

 

其の声を聞き、其方に首を曲げた私はまた驚いた。

 

私を抱える彼女の隣に、もう一人レミリアがいた。

其の彼女が溜息交じりに私に言ったのだ。

 

機械的ではない。今度こそ本物のレミリアだ。私には判った。

 

あわあわと声をにならない声を上げていた私は、其のまま質問をした。

 

 

「~~どうして、どうして、レミリアが…二人……???」

 

「其は、私が説明するわ」

 

 

そう言うと霊夢が私達の方に歩いてきた。

 

 

「立てるか?」

 

「え、ええ……」

 

 

私は霊夢と今まで抱えていたレミリア似の少女に助けられながら立ち上がった。

少し足がふらついたけど、其も何秒かで慣れる事が出来たわ。

 

 

「でも其の前に、さっさと此の扉をくぐるわよ?」

 

 

大きな扉の片方を押し開けながら本物のレミリアが言った。

 

 

「そうね。誰かに見られたら面倒ね」

 

 

私は霊夢に誘導されながら、其の扉をくぐった。

レミリア似の少女が私を護衛するかの様に、其に続く。

 

 

 

 

 

 

ALICE

~厳守された連絡通路

 

 

「成程……そう言う事ね」

 

 

鉄の橋を渡りながら、私は霊夢から聞いた事情に納得していた。

首に巻いている、蒼く変色したリボンを手に持って眺める。

 

 

現在、此の幻想郷では赤色を含むもの全てのものから赤色を抜かれ、

青くなっているという異変が発生している。其の元凶は私を誘拐した、八雲赤という

紫そっくりの双子の姉だという。

 

其の赤自身が提案した異変の解決手段は、彼女に従える、霊夢達が紅霧異変に戦った者に

そっくりの配下を計九人全員殺して彼女を説得するというものだという。

霊夢達いわく、既に五人殺しているとの事。

 

で、さっきまで私を御嬢様抱っこをしていて、今は目の前で歩いている

半レミリア、半サイボーグのコイツはマステア・アズール。

赤の側近、つまり霊夢達が殺すべき彼女の配下の一人だった。

 

どうして殺さないのかというと、彼女には赤との確執があって其が理由で

此方に協力してくれているという。だから、赤に兵器として利用されていた私を

介抱してくれたのね。

 

現在は、異変の解決も視野に入れつつ、赤が持つという秘密が眠る場所に向かっているという事

らしかった。

 

 

私も何回かは魔理沙と異変解決をして来たけど、此ほど異質で酷な解決方法は

初めてだった。

 

 

「…にしても、大図書館の時と変わらない鉄橋ね。秘密にする事無かったんじゃ

ないかしら?」

 

 

霊夢が言った。

 

突然横から強い風が吹いてきた。思わず目を細める。風が吹き止んだ後、私は

橋の手摺越しに下を見た。

塔の周りにある、蒼い建物の屋上が小さく見える。

 

こんな高い処に連れて来られていたのね、私……

 

 

「!誰か倒れているわ…!」

 

 

突然レミリアが声をあげるのを聞き、私は橋の上に視線を戻した。

確かに誰かが、橋向こう岸にある月のモニュメントの前に倒れている。

 

 

「誰かしら?」

 

 

霊夢が目を細め、其の人物が誰かを確かめようとしている。

 

すると、

 

 

「!……まさか!!」

 

「マステア!?」

 

 

マステアが其の倒れている人物に走っていった。

以外の二人が慌てて彼女の後を追った。

 

訳が判らず私も後を追う。

 

 

先に辿り付いていたマステアは、橋に寄り掛かっていた其の身体を抱えていた。

私を今まで軽々と運んでいただけに今回も容易そうに持ち上げる。

 

 

やっと私も追い付き、先に着いていた霊夢達の後ろから其の人物を見た。

 

 

「!!?」

 

 

眉間、腕、胸、足には無数の穴が開き、其処から流れる血が服や肌を青く染めていた。

 

恐怖で開かれた目が虚ろだ。死んでいる。

 

 

「雪……!雪…!!」

 

 

マステアが名前を呼んでいる。人の名前かしら?

 

 

「酷い……!」

 

 

霊夢が呟いた。

 

 

「霊夢、コイツは…?」

 

 

私は霊夢に訊いた。

 

 

「赤の配下で、藍 雪。此処の門番をしていたのよ。勘違いだったけど、私達に

此処を親切に案内もしてくれたわ」

 

 

確かに見てみるとさっき説明された通り、其の服装、其の髪型。色は違えど

紅魔館にいる門番、紅 美鈴に酷似していた。

他の配下も、誰かに似ているという事なのかしら……?

 

すると其の顔を見ていたレミリアが何かに気付いた。

 

 

「!頬や右腕の菱形模様が無くなっている……『赤色』が抜かれているわ」

 

「?模様?『赤色』?」

 

 

私はまた訊いた。霊夢がまた応える。

 

 

「赤の配下には身体に紅い模様があるの。其の模様は、言ってみれば持っている者に

強力な力をもたらすのよ」

 

 

 

 

すると門番そっくりの姿が、青く変色していった。

 

 

「!何……?」

 

 

思わず驚いて声が出た。

すぐに蒼く染まった身体はボロボロと塵となり、崩れ始めた。

 

 

「!あぁ……!」

 

 

マステアは声をあげたが、塵は風に煽られ、夜空を舞いながら彼女の腕の中から

離れていき、そして完全に姿が消えた。

 

私は夜空を舞っていく塵を視線で追い、其の先に上る、大きな蒼白い月を見上げた。

 

星空の中に居座る其は魔理沙と一緒に解決した、永遠亭の異変の時よりも大きく感じた。

 

其が地上に降らす蒼白い光に、私は初めて悲しさを覚えた。

 

 

「あぁぁ……雪ぇえ……!!!」

 

 

マステアが両膝をついた。右の機械の足が橋に擦れて金属音が響く。

 

 

「……………」

 

 

霊夢は泣きそうな目でマステアの背中を見ていた。

レミリアは両目を閉じてマステアから目を背けていた。

 

どちらも言わずに黙っていた。

敵の配下とはいえ、此処へ導いてくれたという恩義を感じているのかもしれない。

 

 

「赤だ……アイツが殺したに違いない……!!」

 

 

マステアが呟いた声は、震えていた。

 

 

「きっと……罰として、殺されたんだわ…」

 

 

霊夢が言った。

 

 

「私達を此処に招き入れた、失態を犯したから…」

 

「だからって……何も……殺す事は……!!」

 

 

彼女達のやり取りを聞いていた私は、思わず唇を噛みしめた。

何処であれ、配下の間にも事情と言うのがあるのかしら……

 

紅魔館で言えばレミリアと言う主の下で、咲夜と美鈴、パチュリーや小悪魔…

命蓮寺で言えば白蓮と言う住職の下で、ナズーリンや星、ぬえやマミゾウ…といった

いくつもの繋がりがあるのと同じかもしれない。

 

今回も側近とはいえ、配下は配下。マステアと雪にも其があったに違いない。

 

でも、其に関わらず失態をさらした配下は容赦なく殺す……

其だけではなく、赤の他人である筈の私でさえも霊夢達の妨害の為に

無理矢理利用しようとした……

 

幻想の大妖怪の姉って、本当に恐ろしい奴なのね。

 

 

「赦さないわぁ……!赤ぃい………!!」

 

 

私は、マステアが右手のに残った僅かな青い塵を、握りしめるのが見えた。

 

 

「赤ぃいぃ………!!!!」

 

 

見るに耐えられず目を上げ、目の前にあった紅い扉を見た。さっきくぐり抜けた扉と全く同じだった。

紅い月が彫刻されていた。

 

上空の蒼い月を思い出す。やはり悲しかった。

 

 

 

 

 

 

 

「マステア」

 

 

するとレミリアが座り込んだマステアに近付き、其の肩に右手を置いた。

 

マステアが顔を上げ、レミリアを見た。眼球がある左目から涙が溢れている。

蒼い月に反射して光っている。

 

 

「何としても……赤を、倒すわよ」

 

 

そう素っ気なく言うと、肩から右手を離し、代わりに左手を彼女に伸ばした。

 

私でも判る。私達から偽者に対しての同情を隠している。

 

レミリアにとって、雪が、美鈴と重なったのかもしれない。

自分の配下が殺される様な不快感を覚えたのかもしれない。

 

 

「………ええ」

 

 

マステアが其の手に向かって同じ様な華奢な手を伸ばす。

が、先にレミリアが其の手首を握り、わざと乱暴に引っ張り起こした。

 

霊夢が真っ先に扉に近付き、其の片方を手で押した。

扉が軋むような音を立てて開いた。

 

 

「鍵は……かかっていない様ね」

 

 

そう言うと其の隙間から中を覗き込んだ。私達も其に倣う。

 

扉の先には暗い廊下が続いている。でも、両端の紅いライトが二列、其の足下を

照らしていた。

 

 

「いよいよね……行くわよ!」

 

 

今度は両方の扉を全部押し開けた霊夢に続き、私達は其の中に入っていった。

 

 

赤がいったいどんな人物か……私も興味が出てきた。

 

是非とも其の凶悪な性分を晒して、私を利用してくれた分……魔理沙を心配させた分……

弄ばれているという彼女の配下の分……

 

そして何より、幻想郷に異変をもたらした分のツケを払わせてやらないと……!!

 

 




如何でしたか?

霊夢達が初めて他人の手で、其も主の手によってもたらされた
配下の死を目撃した回でした。

ですが皮肉にも、マステアに嫌悪感を抱いていたレミリアが彼女と
ある意味の和解をした、そしてアリスにも赤を倒す気を起こしたきっかけにも
なったと言えるでしょう。

次回こそは、遂に赤の秘密の部屋に侵入します。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪
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