霊夢視点で御送り致します。
原作とは大きく異なる点もあるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。
それでは、ゆっくりしていってね♪
REIMU
~蒼魔塞 紅月の研究所 深奥部
私は廊下を歩いていた。
最初は赤い光が強く、まともに目も開けなったが今は白い光になり、幾分はマシになった。
「……………」
後ろを歩く紫は扇を口元を隠して黙ってしまっている。
彼処までキレた紫を見るのは私も初めてだった。だから、其の目を見た時怖くなってしまった。紫の本気の殺意を見た気がした。
此から先、私達が真実を知るまで一切口をきいてくれないに違いない。あくまで私達の為
なんだろうけど……
紫が其処まで怒る理由はいったい、何なのかしら……?
赤はどんな、紫を怒らす様な事をしでかしているのかしら……?
すると、いつの間にか光の色が変わっている事に気が付く。
「!…赤の次は、蒼かしら…?」
白から水色、そして完全に蒼くなった光は先にある部屋から漏れていた。
「……廊下も終わりね、入りましょ」
其の時、アリスが身震いと共に止まった。
「!何……?」
私達が立ち止まった。視線がアリスに集まる。
『赤色』が抜かれた顔が蒼い光が相まって更に蒼く見える。
其の傍では上海人形が寄り添い、一言呟いた。
「……ヤバインジャネーノ?」
……演技なのが見え見えだった。
「そんなもん、私達も感じているんだから!んな時間稼ぎは良いから!
此処まで来たら最後まで行くわよ!!」
私は人形の首を引っ掴み、アリスの首に巻かれた蒼いリボンを引き摺って行った。
今更ビビってどうするってのよ……!?
……部屋の入り口で、私達は立ち尽くしていた。
さっきとは真逆で、勢いを完全に失った。
アリスが感付いていたものを、どうして私は見逃したんだろう?
「何よ……此処……?」
REIMU
~蒼魔塞 紅月の研究所 最奥部
其処は博麗神社の敷地程の大きさの部屋で、網目状の通路の間ごとに
沢山の筒状の機械が等間隔に並び、蒼い液体が溜められているのが見えた。
私達は慎重に足を踏み入れ、一番近い場所に置かれた其の一つにゆっくりと近付いた。
機械に蒼い液体の中に、よく見ると、毛の無い鼠みたいな生物が小さく丸まった状態で浮かんでいる。
「……コイツ、何……?」
私とレミリア、そしてアリスが顔を近づけて其をよく見ようとした。
すると、途中で三人とも顔面に何かにぶつかった。
何にぶつかったのかが判らず、驚いたのとぶつけた痛さとで一斉に其から離れた。
「~~近付けられないわ……!」
鼻の頭を押さえながら持っていた御祓い棒を構えた。
「結界でも張ってるの……!??」
「違う」
今度はマステアが其の容器に近付き、機械化していない右手で其の機械の表面を触った。
「此はガラスだ。中のものを見る事が出来る。結界ではないから触っても問題無い」
「と…透視出来る物質な訳……!?」
アリスが私と同じく鼻を押さえて言った。ぶつけた痛さからか、目には涙まで浮かんでいる。隣ではレミリアも鼻を押さえ、顔をしかめて悪態をついていた。
「そうだが、結界程堅くは無い。破られると中のものが漏れ出てしまう」
脆いと聞いたなら突き破ろうかと思ったが、漏れた液体で何か罠が作動するのは
マズいと思い、踏み止まった。
其の液体を覗き見るマステアの片方だけの瞳が、信じられないとばかりと小さくなっている。
「だが……こんなものがどうして……?」
「此等は何なの……?『英知の結晶』なんでしょ…?」
私はマステアに訊いた時、
「ねぇ……」
レミリアが私達を呼んだ。
彼女はアリスと共にマステアが触っている二つ先の機械の中を覗いていた。
「どうしたの?」
二人の処に歩いて行った。
私達の到着を確認したアリスが、液体の中を指差して言った。
「其の……中の生き物………だんだん…大きくなってない?」
確かにさっき見ていたものと、中間のもの、そして今見ているものを見比べると、其の
身体は大きくなっていった。
其の時、其の違いを見たマステアが声を上げた。
「!まさか…成長過程か……!?」
「?……成長過程?何の……?」
其の顔を此方に向けていた。小さく泡を立てた蒼い液体の光に反射した顔は
引き攣っていた。
「……間違いない……」
普通のレミリアでは見られない、怯えた表情だ。
側近も、まさか此処までの事をしているとは予想していなかった様だ。
「此は……胚だ」
「!……胚?」
其の単語を繰り返したが、私には困惑して聞き返した言葉の様にも聞こえた。
「簡単に言うと、母親の胎内から生まれる前の子供……胎児だ」
「!胎児ですって……!?」
アリスの言葉に無言で頷いたマステアは今度は其の表面を右手で触れる。
「此は培養槽……中に生命体を入れて育てる、人工的な母胎と言っても良い……」
「!母体と胎児……!まさか……!!」
「……此等が成長すると、人間になるだろう……例外もあるが」
マステアが培養槽から目をそらし、代わりに其の中を私が覗き見る。
「でも、此程の大量の胚をどうやって……?」
「思い付く方法は二つある」
腕組みをしたマステアの其の額には、汗が流れ始めていた。
「体外で人工的に受精させ、此処まで細胞分裂を起こさせて成長させたか…或いは………」
其処でマステアは黙ってしまった。
「……或いは……何なの?」
私は訊いたが、一点を見たまま何も言わない。口をきゅっと結んでいる。
其の時ガラスに薄く映った紫が培養槽の中の生命体達を一瞥し、私達の後ろを
通りながら先に言ったレミリアやアリスの後をついて行くのが見えた。
マステアはやっと口を開いたが、
「……言えない。恐ろしい事は流石に言えない……あまりに、酷な事だ」
声は小さく、震えていた。
「……私も良いわ。何を言おうとしてるのか判ったし」
いつの間にか彼女の隣に戻って来ていた、レミリアも言った。
其の顔はマステアとは違い、ツンとしていて冷静さも漂っていた。
私は御祓い棒を袖の中にしまいながら、改めて周りを見渡した。
「見渡す限りに続いている……此処までの数を……」
何処も、青い液体が満たされた人工的な母胎が並んでいる。
どれにも生き物のもととなる生き物が眠っていると考えると、私は全身の毛が逆立つのを感じた。
顔を自然としかめてしまう。生々しい……其の一言に尽きた。
「!!キャァ……!!!」
突然アリスの悲鳴が部屋の遠くで聞こえた。
私達は声がした方に向いた。
部屋の一番奥、壁に並ぶ培養槽からアリスが後ずさりしていた。其の後ろでは
紫も、身じろぎはせずに其等を見ていた。
「どうした!?」
私達は其処へと走って行った。
「こ、此……此……!!」
アリスが振り返りもせずに震える指で横に配列された培養槽を指差した。
私達も其の先を辿り、培養槽を見上げた。
「!!此は……!!」
レミリアが声を漏らした。
其の中の生命体達はネズミの様な尻尾らしきものが無くなっていた。
そして小さくもなく完全に私達とほぼ同じ大きさの、人間の少女のに形まで成長していた。
髪の毛も完全に生え揃っている。
蒼い液体に浮かぶ、とっくに母胎からは出ている筈の其の姿は………
「ゴーラ……ウォルモ……!?」
かつて戦った、赤の配下達だった。
白銀の髪のルーミア、黒髪のチルノ……
其の中間には、赤髪の大妖精が浮かんでいた。フェアリーロードに違いない。
「!雪……!!」
其の更に隣は、先程死んだ筈の美鈴似の門番の姿もあった。
藍色の髪の毛が蒼い液体の中で波打っている。まるで液体の青色を吸収している様にも見えた。
「シファー……!ヘフィ……!知流……!!」
其の横には今までで出会い、そして殺した偽の小悪魔やパチュリー、今生きている筈の
金髪の偽咲夜まで液体の中で姿を並べていた。
そしてやはり後ろには幾多の通路を挟み、気が遠くなる様な数の培養槽が並び、
縦一列ごとに同じ人物が中に浮かんでいる。
そして全員が胸の前で両腕を交差させられ、右太腿の付け根に、
『RC-SAMPLE』
と言う模様が横に赤く刻まれていた。『赤色』に違いない。
「どうしてこんな……」
其処まで言いかけた私は気が付いた。
何奴も紅霧異変で戦った、其の相手の偽物ばかりだ。
只、其の中でも、レミリアとフランがいない……
つまり………
!!!
「マステア……!!」
慌ててマステアを見たが、彼女は機械化していない手で顔を覆っていた。
其の隙間から見える片目の瞳孔は激しく揺れている。
「~~~~~~!!」
自分の正体を知った衝撃が、重く伸し掛かっているのが判った。
「紫……!!」
私は後ろにいた紫の方を見た。紫は黙って目を瞑り、扇子を閉じ、ゆっくりと首を振った。
「そんな………私は………!」
マステアの呟きが私の背中に降りかかる。
「私は………まさか……!!」
両目を閉じ、歯ぎしりが漏れる。まさか、此が………
「私以外は、正しくは無い……」
突然声が聞こえた。
「!!」
同時に金属の床を鳴らす、足音も聞こえた。
其等を耳にした私達は、すぐさま臨戦態勢に入った。
神具を持ち、光の槍を持ち、人形達を武装する。
「……人間も……何もかも……失敗ばかりを繰り返す……」
其等は紫の後ろから聞こえた。
「なら……作り変えて正しくすれば良い……」
カチッ…………
今の紫がする筈のない発言を、紫の声で発せられる。
其の声と足音に混じり、金属で何かを弾く音が聞こえた。
紫は扇子をしまいながら再び険しくした其の目付を、ゆっくりと首を曲げ後ろに向けた。
「そうよね……マステア・アズール?いや……」
「『RC-08-B〈レッドクローン・エイト・バッド〉』………私の粗悪な側近吸血鬼?」
全身を『赤色』に染めた、狂気の黒幕がいた。