東方蒼魔塞   作:因田司

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今回はとんでもない事をしていた赤との対面を、紫視点で御送り致します。

原作とは大きく異なる点もあるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


紅月を囲う紫雲~RED、BAD、MAD~

YUKARI

~蒼魔塞 紅月の研究所 最奥部

 

 

霊夢達はよくやってくれた。

見事に赤のやっていた、生き物としてやってはいけない所業を私なしで突き止めた。

 

配下の大量生産…様々な罪が重ねてられ、成し遂げられる禁忌だった。

 

そして……

 

 

 

「赤……!!」

 

 

 

其の当事者が目の前にいる。

 

正体がバレるのを想定してか、私の二つの服装に当てはまらない、新たな服装だった。

 

爪先も見えない程の真っ黒なロングのワンピースの上から白衣ならぬ、血に染まった様な赤衣を着ている。如何にも悪の研究者だという風貌だ。

 

紅い角縁眼鏡は変わらないが帽子も外し、髪の結び方も誰かに酷似していた。そう、誰かに……私は後ろにいた

皆の内の一人に目を向けた。

 

右手には銃が握られている。銃身が短く、グリップが袖の中へ伸びている事から主に暗殺に使われる『暗器』の一種だと判った。

 

 

「!知流!!」

 

 

其の左手は裏切り者に見事に騙された偽咲夜の遺体の髪を握っていて身体を金属の床に引き摺っていた。

暗器に一発撃ち込まれたらしく、額の穴から蒼い血が肌を伝っていた。

 

すると加害者が紅い飛沫で濡れている其の顔を、気味悪く歪めて笑った。

 

 

「!?」

 

 

右手の指がゆっくりと動き、撃鉄を起こす。

 

あの表情……マズい!

 

 

「皆、来るわよ!!」

 

 

私が銃を知らない後ろの皆に警告を発した瞬間、

 

 

 

 

 

バァン………!!!!!

 

 

 

 

 

 

銃声が響いた。

 

 

「!!!………」

 

 

思わず私も息を詰まらせた。注意喚起をしていてスキマを開く暇が無く、隙を突かれて撃たれたかと思った。

銃声が木霊の様に金属の部屋に反響していき、やがて聞こえなくなった。

 

だが、自分の身体に痛みが無い事に気が付いた。後ろからも呻き声が聞こえない。

 

じゃあ何処に撃った…?私は後ろを見ていた為判らなかった。何に向かって撃った……?

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、すぐに判った。

 

 

「……………」

 

 

赤の足下に、首の無い身体が落ちた。

 

 

「!!」

 

 

そして赤も髪を握っていた首も其の近くに投げ捨てた。

 

 

「……失敗したなら、作りなおせば良い」

 

 

駄目押しに首を穿たれた偽メイド長の残骸は蒼い塵となって消えていった。

 

 

「此処まで侵入を赦していたとは……やはり瀟洒な性格は欠かせない様ね。次からのには組み込む事にしよう……」

 

 

其の言葉に私は反応した。

 

 

「な……何によ!?」

 

 

霊夢の震え声が後ろから赤に投げられた。

 

赤は血で濡れた眼鏡を赤衣で吹き始めた。上目遣いの私似の視線は此方に向けたままだ。

 

 

「……此処まで来たのなら判る筈よ?何?お前の目は節穴か?ソイツみたいに?」

 

 

ソイツ……私達といる、レミリアの偽物に違いない。

 

 

「で、其の結界どうするつもりだったの?」

 

 

其の言葉を聞いて私は後ろを向いた。

 

霊夢達の正面から、蒼い結界が消えていくのが見えた。

……霊夢が仕掛けたのかしら?銃弾を反射させて培養槽のガラスに当てようと言う算段だったの?

 

……しっかり対策を取っていたというのに……私は、自分の心配をした方が良かったかもしれないわね……

 

 

「……残念、其は計算上不可能に等しいわね」

 

 

赤は血を拭い終えた眼鏡かけ直しながら、言ってもない算段を否定する。

そして足元にある元配下の蒼い塵芥をしっかりと踏んでいきながら培養槽に歩み寄り、ガラスに優しく手を添え、うっとりと其の中を見た。

 

其の視線の先でまだ体内が透けている胚が、何かを探す様に手足を動かしながら浮かんでいる。

 

 

「此は防護性に優れていてね……例え妖怪界隈の攻撃でも、私の『英知の結晶』でも、そう簡単には傷は付かないのよ」

 

 

蒼い液体の光に反射する赤の血濡れた顔には、一種の狂気を感じた。

 

 

「最近、人間の里で人間の女性が行方不明になっているのよ……其も、妊娠した女子ばかりが」

 

 

切り出した私の言葉に、赤の眉が微かに動くのが見えた。

 

 

「……殺して手に入れたモノをそんなにも守りたいの?」

 

 

そう言う事だった。マステアが言い渋っていた、もう一つの理由だ。

 

後ろから息を呑むのが聞こえた。誰かは判らなかったが、今までの言動から察するにアリスの可能性が高い。

 

 

「不完全な人間には、不完全な人間を排出するだけなのよ……だから正す。何が悪い?」

 

 

赤は胚から目を離し、まるで不純物を見るかの様に顔をしかめながら私達を見た。

 

 

「嘘を付くな!!単に忠実な偽者の配下を創る為だろう!?」

 

 

レミリアなのか、マステアなのかは判らなかったが、自分の偽者を創られたレミリアの方が若干可能性は有った。

 

…さて、そろそろ出していっても良い時だろう……

 

 

 

「……たくさん偽物を作るのはスペア兼、完璧な配下にする為の踏み台にする為……」

 

 

私は言った。赤が言い返す。

 

 

「DNAを構成するゲノムが織り成す人格には必ず欠けている部分が出る。其処を私好みに、そして良い方向に改造していけば良いだけ……」

 

「詭弁ね……欠陥を埋めようとしても必ず別の部分に新たな欠損が生まれる……また其を埋めても、また新たな欠損……いたちごっこなのよ」

 

 

今度は論破されない。

 

 

「そして…『次の』彼女は、既に別の場所で作業を開始している」

 

 

下見をしていた際、私は二か所に知流の姿を確認していた。

さっき殺した咲夜の偽物は、マステアに出し抜かれるかなり前から用済みと判断されてたんだろう。

 

もったいない。アワアワした咲夜は、需要があるかもしれないのに……

 

そして………

 

 

(此を言ってみようかしら……?)

 

 

私は一つ息をしてから言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうじゃないかしら?妖怪もどきの『人間』?」

 

 

 

 

 

「!え……!?」

 

 

後ろから霊夢達の驚く声が聞こえた。

 

 

「どういう事……!?」

 

 

一方、赤は眼鏡が傾き、激しく狼狽している。

 

 

「ゆ、紫……!!貴女…ま、まさか……!!」

 

「そもそも、お前みたいなろくでなしの妖怪を姉に持った憶えは無い」

 

 

私は即座に突き放す様に言葉をぶつける。

 

 

「でも驚いたわ…妖怪の力を機械で擬似的に再現するとは……私の能力までも見事にね」

 

 

赤の表情が凍っている。

 

 

「…『英知の結晶』で空間に傷を付け、スキマを開けているんでしょう?」

 

 

私は更に続ける。

 

 

「其に、外の人間の世界で『クローン』の制作は禁止されている。だから此処で試した……違うかしら?」

 

「胚は十分に足りていた……でも、対象のDNAだけは足りなかった。だから自分の計画を実行したのは……一部の妖怪以外が寝静まる時、夜だった」

 

「!もしかして……私達が酒を飲んで寝ていた時に……!!」

 

「生命体を無防備にする……腑抜けにさせる……頭の思考回路を破壊する……」

 

 

霊夢の言葉を遮る様に、赤は吐き捨てる様に言葉を並べた。確実に落ち着きがなくなっていた。

 

 

「私は酒は大嫌いなのよ」

 

「アンタの思考回路は、とっくに壊れてるわよ!」

 

 

アリスが私が言おうとした事を叫んだ。

 

 

「じゃあ、妖怪の一種の魔女が私みたいな人間如きに捕まるなんて!

人間から成り上がりの魔女と、一緒に酒を飲んでいるからそうなるのよ」

 

 

赤が言い返した言葉にアリスは何も言えなくなったのか、黙ってしまった。

 

完全に自己中心的な発言だった。自分を守る為、正当化に他の者を攻撃している。

八つ当たりしている。完全に人間だが、不完全な人間だった。

 

赤は自分が取り乱した事に気が付き、すぐに苦虫をかみつぶしながら眼鏡を指で押し上げた。

 

 

「……まぁ、良いわ……此処まで来たなら、新作も試さないと」

 

 

そう言い終わらない内に、何処からかくぐもった水の流れる音が聞こえた。

そして間髪入れずに勢い良くガラスが割れる音が響いた。

 

 

「!……元気いっぱいね」

 

 

防護性に優れているガラスを破る者を目覚めさせるとは……完全に殺しに来ているわね……何処から来るのかしら……?

 

すると赤の右の方、培養槽の合間を縫いながら、何かが此方に飛んできた。

 

 

「!今度こそ、来るわよ!!」

 

 

そして通路に飛びだし、赤の目の前に来て止まった。

 

見た目は裸の子供……人間でいえばちょうど5歳にあたる年齢の体格をした蒼白い肌の少女だった。

 

浮遊している身体に付いていた培養槽内の蒼い液体が滴り、足元に溜まっている。

 

髪の両側には白いリボンのついた三つ編みが結ってあり、髪の色は半分藍、半分が金色で分かれている。

 

御多分にもれず右太ももには、

 

 

『RC-04×07』

 

 

と赤色で刻まれている。

 

 

「不甲斐無い配下の遺伝子を強制的に組み合わせれば、御利口さんになってくれるかしら?」

 

 

不甲斐無い配下……四番目と七番目、紅魔館の門番とメイド長の改造したゲノムを組み合わせたDNAを胚に組み込んで育て上げた、といった感じかしら。

 

 

「雪と知流の分は、此の娘で勘弁してあげるわ……だから……」

 

 

そう言っている其の右手には、赤い線の塊が縦に螺旋と作り始めた。

あれも『英知の結晶』で作り出している偽りの能力ね……人間の悪あがきとも言える。

 

其を子供の背中に押し付けた。ソレは泣く事もなく、『赤色』が身体に入っていくのを待つ。

 

やがて身体の各所に赤い血管模様が浮かんできた。

目は瞳まで真っ赤になり、血の様な涙が流れ始めた。

 

 

「だから……玩具としてたっぷりと遊び殺されなさい」

 

 

其の声と共にけたたましい音が響き始め、培養槽に次々と金属のシャッターが下り、やがて中の胚が全て見えなくなった。

 

流石の赤もガラスが割れる事を恐れたのだろう。其は此の人造人間の攻撃は驚異的だという事を示した。

 

赤は自分のスキマを開いた。赤い放電と共に私のとよく似た偽のスキマが開く。空間を無理矢理開けているだけあって、私よりも開くタイミングが少し遅い。

 

 

「!待て…!!」

 

 

二人の吸血鬼の内のどちらかが後ろから呼び止めたが、既に人工のスキマに入り、赤の姿は消えていった。

 

同時に幼児型の実験体の周りに、緋色のナイフのような物体が浮遊を始めた。

 

 

「なら、私がやる……!」

 

 

レミリアのクローン、赤の側近の生物兵器……マステアが私の前に進み出た。

同時にアタッチメントへと改造されている左腕の肘から先が変形を始めた。前腕部が二つに分裂し、其が更に二つに分裂した。

 

 

「殺ってやる!!」

 

 

其の四つに分かれたそれぞれの前腕部分から畳まれていたクローを拡げた。軸に当たる中央には小型の回転式のガトリングも付いていた。

 

私は肩越しに霊夢達を見た。

 

 

「……赤を追うわ。霊夢達は彼女の援護をしてて頂戴」

 

「判ったわ!此方は任せて!」

 

 

私は頷き、スムーズにスキマを開けた。開けた空間は赤のスキマだった。

私の紫のかかったのに対し、此方は赤みがかかり、数多もの真っ赤な瞳が浮かんでいる。

 

 

「……また、後で合流しましょう」

 

 

そう言い残すと、其の中に入り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

YUKARI

~緋なる亜空間

 

 

「皮肉ね……赤」

 

 

私は、赤のスキマの中を飛びながら呟いた。自分の失敗作に計画を妨害されるなんて……

『赤色』に適合しなくても、可愛がってもっと接してあげればこんな事にはならなかったのに……

 

すると、前方に逃げる赤の後ろ姿を発見した。慌てているように見える。

足か赤い炎が出ているわね……『英知の結晶』を履いてるのね……

 

何にせよ、此以上あんな非道な事はさせないわ……其に、私は其方の秘密を握っている……

 

 

幻想郷の創始者の一人として、必ずお前の計画を潰す。

私は全速力での飛翔で赤を追いかけていった。

 




如何でしたか?

紫から見えた赤は、きっと幼稚に見えていたのかもしれませんね……
そして紫は、赤の秘密を知っている様ですが……

次回はマステア達と、雪と知流の混合した生命体との戦闘が開始します。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪
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