マステア視点で御送り致します。
原作とは大きく異なる点もあるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。
それでは、ゆっくりしていってね♪
RC-08-B MASTEMA
VS RC-04×07 ヴェルメリオ
~蒼魔塞 紅月の研究所 最奥部
私は、目の前の生き物の幼体にしてはおぞましい敵と対峙していた。
半分雪、半分知流を組み合わせた様な子供だ。青白い身体には先程赤に投与された『赤色』が
血管の様に鮮明に浮き出ている。
本来、此の幻想郷の何処かで普通の赤子として生まれる筈だった命。
だが其は叶わず、狂気の下で無残に母体から引き摺り出され、兵器にされてしまった命。
私の基も、その一人………私はとっくに自分が他人のクローンであるというショックから
立ち直っていた。
身体の各所が破裂したあの時、何故赤が私を見殺しにせずに生かしたのかが今なら説明が出来る。
決して憐れんだのではない。吸血鬼のDNAがあまりに貴重かつ、人間の胚と適合し辛いから
そう簡単には何人も作れなかったからだ。其は私だけではなく、妹のマドゥにも当てはまる。
だから、知流の隣にあった二つの培養槽…私とマドゥが入るものにも何もなかった。其は、
現在の私とマドゥだけがそれぞれの唯一の成功例である事も示していた。
そして欠損していなければ、目の前の敵と同じく、右脚の太ももに番号が振られていた筈……
私は目だけで機械の右足を見下ろした。
いや、今は其どころではない……狂者が生み出した、此の世にいてはならないモノを殲滅する
事が先だ。私は変形させた左腕を構えた。
だが其の時、相手の身体から赤い霧が噴き出してきた。
「!此は……」
即座に口と鼻を右腕で覆う。
私は前に、ウォルモが赤から力を貰い、紅い霧を出してフェアリー・ロードと
はしゃいでいたのを思い出した。
だが此は…そんなものとはまるで違う。比べ物にならない危険を秘めている。
「霊夢!此の霧、私が出してたのより数十倍濃いわよ!!」
レミリアが後ろで叫んだ。後ろを見ると霊夢のすぐ目の前にまで紅い霧が立ち込めてきた。
「!クッ……夢符『二重結界』!!」
霊夢が結界を張り、たちまち姿が見えなくなった。霧が結界に沿ってアリスのところまで拡がる。
そうか、かつて此処で起きたといわれる紅霧異変でレミリアが出した霧……
人が中に入ると長くは持たないあの霧か。右腕を顔から離した。
結界の中に侵入してはいないだろうか…?
たちまち部屋中が紅色に包まれていった。
「アリス!守っててくれ!!」
アリスは其の指示に頷き、霊夢の前に立ち、周りに数体の武装させた人形を配置した。
私は過去に異変の他にも住民についても赤から教わっていた。其の中にはレミリアの配下、十六夜咲夜…知流のオリジナルについても含まれている。
彼女の代表する能力、『時を操る程度の能力』。時を止めて移動し、違う場所で再び時を動かす。
其の一連の動作が私達からすると、まるで瞬間移動したかの様に見える。
彼女のDNAを基にした、知流の遺伝子が血に混じっているなら其を使用する可能性は十分に
あった。
そして霊夢は現在身動きが取れない。不意に攻撃を集中されると結界を維持出来ない事を計算した
上での判断だった。
「マステア!行くわよ!!」
「言われなくても其のつもりよ!!」
まだ子供だからって油断はしてはいけない…赤は間違いなくゲノムを操作して無理矢理力を
引き出している。
「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」
「神槌『ハンマ・ザ・ミヨルニル』!!」
アタッチメントを展開していない右手に蒼い光の槌を出現させ、握った。レミリアも私と同様に
右手に蒼い光の槍を握る。
「!ハンマー…?」
レミリアが私の方を見た。私は其に応える。
「とある神話で実際に使用された神の武器……お前のと同じ由来だ」
「成程……其の槌でアリスの『英知の結晶』をへこませたのね…?」
其の会話の最中、敵が浮遊させていた紅いナイフ型の『赤色』を殺到させてきた。
「レミリア!!」
私はレミリアの前に素早く回り込み、機械の左翼を大きく展開して自分の前にかざした。
半透明の翼膜の様な紅い電磁バリアが、私達を『赤色』から防いだ。
「本当に便利ね……其の身体……!!」
「呪われた身体だ……」
翼を戻すと同時に光の槌の柄を伸ばし、其を右から左へ振った。リーチが急に伸びた槌の
口の部分が敵の脇腹を捉えた。
だが叩かれても大して飛ばず、浮遊する位置が大きくずれただけだった。
今度はレミリアが後ろから敵に青い槍を投げつけた。槍は真っ直ぐ飛んでいったが、
到達する直前で突き刺さらずに消滅した。
今度は私も槌を投げつけた。
蒼い光の槌は回転しながら、敵の方に飛んで行った。敵も空中を横に滑るように移動し、
攻撃を回避した。
「甘いわ……!」
光の槌は天井ぎりぎりにまで接近した後、突然角度を変え、ブーメランの様に弧を
描きながら戻って来た。其のまま敵の後頭部に直撃する。
しかし怯みはしたもののまるで効いていない。肩を怒らして
頭でバウンドした槌は其のまま私のところに飛んで来た。
「やはり『赤色』が………内面から皮膚を強化しているか…」
戻って来た光の槌をキャッチしながら言った。
「投げた武器が戻って来るなんて……私のスペルの強化版みたいね」
私の槌を横目で見ながら、レミリアが興味も無さそうに言った。
「自分のスペルを弄られて、悔しいか……」
「もう気にはならない。赤を殺せば異変は全て解決するのは判ったから」
自分でスペルを解除し、手から光の槌が消す。
「お前も、結局殺すけど」
「なら……其の時まで尽力するまでだ!」
今度は展開した四本の爪から赤い光を纏う。アームがレミリアの爪よりかなり伸び、其の分リーチも増す。
遠距離の効果が薄いなら…直接叩くまで。其に紅い攻撃なら、攻撃を無効にする事は出来ない筈だ。
「此でも喰らえ!!」
私はオリジナルから譲り受けたスピードで素早く接近し、四本の爪を次々に突き立てようとした。
直接攻撃は流石にたまらないのか、敵は素早く爪をかい潜って後ろに下がる。
「!チッ……!!」
すぐさま中心にあるガトリングを向けた。そして激しい銃撃音と共に、大量の銃弾が
赤い軌道を描いて飛んで行った。
だが其の時、目標の姿が忽然と消えた。
「!??」
銃弾は今まさに的が存在していた場所を通過し、後ろの金属のシャッターに包まれた培養槽を
叩いた。
ワープをしたかのように見えるが、間違いない。予想通り知流達が使う時を操る能力を使用した。
私は直ぐに霊夢のほうを見た。だが、紅い霧に結界で必死に対抗する霊夢と、同じく消えた敵を
捜すアリスの姿しかなかった。
「背中を合わせろ!!」
私達に狙いを定め、不意打ちする事を危惧した私はレミリアに後ろを取られない様に指示した。
「!私に命令するな!!」
そう言いながらも彼女は其の言葉に従ってくれた。其の状態から、私達は敵の姿を捜す。
何処だ……?逃げた訳ではあるまい……何処にいる……?
いた。部屋の一番奥、七人の配下の大量のサンプルが浮く培養槽の、更に奥にあった袋小路の壁を見ている。
「彼処にいる!追うぞ!アリスは其のまま騙し討ちに備えていてくれ!!」
私達二人は其処に向かい、敵を追い詰めた。
だが其処で私は不審に思った。行き止まりにいれば、圧倒的に不利になるのでは……?
更に壁を見ているから、此方に背までむけている事になる。
いったい何のつもりだ……?
其の時、敵は壁の床あたりに付いていた排気口の蓋を掴み、幼児のなりとは思えない怪力で
引き剥がした。
「!?」
そして振り返ると同時に其を此方に投げてきた。
耳鳴りかと疑う程の空気を切る音。凶器と化した蓋が回転しながら高速で迫って来る。
不意を突かれた…避け切れない……!先頭にいた私は機械の腕でガードをしようとした。
「『身代わり人形』!!」
すると声とともに盾を持った金髪の人形が数体、私の前に飛び出し、其の蓋を受け止めたが、回転の勢いで弾き飛ばされた。
だが其により蓋も勢いを殺され、私の足元に落ち、回転が止まった。
「さっき、助けてくれたらしいわね!?」
其の声に振り返ると、アリスが吹き飛んだ人形達を糸で引き寄せていた。
「其の礼よ!貸し借りは無くなったわね!?」
そう言って、左目でウィンクした。
何だろう…其処で私は何故か……『何故か』考え始めた。
右目ではなく、左目でウィンクした……つまり右目は開いてる。
其は即ち、失った私の右目の代わり…という事か?真意が判らない。
此処等辺りの事は赤に教育という名の調教はされていない為、理解が出来なかった。
「何処見てるの阿保!!逃げられるわよ!?」
其の横からのレミリアの怒鳴り声にはっと、前をに視線を戻す。
だが其の時は既に、敵は開けた穴の中に姿を消していた。
RC-08-B MASTEA
~蒼魔塞 紅月の研究所 最奥部
「……まったく…助けられたと話した途端に、動けない私を放り出して……」
私達は直ぐに其の穴の周りに集まっていた。発生源がいなくなった為か紅い霧もすぐに晴れ、
霊夢もぶつくさ文句を垂れ流しながら此方に来ている。
「こんな処に排気口か……」
「此処を通って行ったみたいね……隠し部屋でもあるのかしら……?」
私は片膝をついて中を覗いた。
「?どうするの?」
霊夢が訪ねる中、私はアームをたたみ元に戻した掌から赤い光を懐中電灯の様に放ち、
中を照らした。
「……一人ずつしか入れなさそうだな……」
「なら、ほふく前進で進んで追いかければ良いわよ!」
「!待て!」
赤い光を消しながら、私はしゃがもうとする霊夢を押し止めた。
「何故よ?」
「狭い通路の中では、身体が小さい相手の方が素早く立ち回れる。もし、ほふく前進の
状態の間で襲われたらひとたまりも無いぞ」
そう言って私は考え始めた。
「誘っているのかもしれない……罠かもしれない……」
「なら、私の上海達を先行させるわ。其でどうかしら?」
アリスが人形を数体、自分の周りに浮遊させた。そして再びウィンクするのも見逃さなかった。
「……其が良いな」
其処で人形を操るアリス、私、霊夢、レミリアの順番で通路の穴に入っていった。
アイツを必ず幻想郷の解き放ってはいけない……此の要塞の中で必ず、仕留めなければならない。
其の思いを心に留め、狭い通路を進んでいたが……
「……!痛!!……止まるなら宣告して貰えないか?お尻が……」
「御免、つい…慎重になってるから……」
「…シャンハーイ」
「早く進んでよ!吸血鬼でサンドイッチされるのは嫌よ?血生臭そうだし……」
「……人形遣いよりはボリュームは無い」
「聞こえてるわよ、レミリア……!」
……緊張をほぐす為か、素で出ているのかは判らない緊迫感のない会話が小声で交わされ、
少し心の強張りをほぐせた私である。
如何でしたか?
最後……今作ではアリスは完全にネタ扱いですね。良い意味でも悪い意味でも…
おまけにマステアに変に新たな感情を吹き込む始末です。
次回は実験体との戦いを、場所を変えながら引き続き御送りしていく予定です。
それでは、次回もゆっくりしていってね♪