……では、新入りを祝って、カンパーーイ!!」
「「カンパーーイ!」」「乾杯」
そこは龍門市街の居酒屋。今日は新入りの歓迎会という理由をつけ、近衛局のエリート兵士たちが酒に明け暮れようとしていた。その中央にいるのは新入り、名無しAと今回の宴会の幹部たちだった。そして端の方に一人の鬼がいた。
別に鬼の形相とか、鬼みたいに怖いのでは無く実際に鬼なのだ。
右の額に一つ、肌色の角に先端は黒色。さらに右頬には一筋の切り傷が現れていた。何より目立つのは背中に背負っている三角形型の盾だ。名をホシグマという。
「新入~初めてにしてはなかなかいいじゃない~」
「なれるのも時間の問題だなぁ~」
「まぁで、なんでこの隊に申請したのか~」
中央では酔っ払ったじじいどもの、面倒くさい尋問が始まっていた。新入にとっては朝まで気が抜けそうにない宴会の始まりだ。
しかし残念ながら、このじじいどもは日頃から酒をたしなむタイプの大人だ。残念ながら新入は結局酔い潰れて物理的にも精神的にもすべて、ぶちまけることが決まっているのだ。
それを微笑ましい情景を兄弟のように見守るホシグマがそこにいる。静かに、しかし大胆に酒をたしなんでいる。客観的にこの鬼が常連であり熟練であることは火を見るより明らかだった。
今日も終わることのない宴会が始まる。運が良いか悪いかは分からないが、明日この隊は休みだ。最後に新入には南無三とでも唱えておこう。
時は過ぎゆき、徐々に寝る者も現れ始めていたころ、未だに新入とその愉快なおじいさんたちは未だに起きていた。今回の新入はこちらも優秀だったようだ。
そのとき突如声が鳴り響く。
「全隊に次ぐ!謎の飛行物体接近中。直ちに避難誘導を!!」
その声を聞いて鬼があたりを見渡す。皆はすでに起きており、装備の確認をしていた。その状況を見たホシグマが満足げにうなずいて声を上げる。
「A班は東、B班は南、C班は私についてこい。」
「「「了解」」」
そこにいる皆の心はすでに一つになっていたようだ。新入はもうどこにいるかは分からなくなっていた。
すでに外に出て、大通りを走り始めていた。
辺りから避難を誘導する声が聞こえてくる。そこに突如そこに轟音が鳴り響く。
「ゴァァァン」
鈍い音が辺りに響く。ホシグマは士気を上げるように叫ぶ。
「仕事だお前らッ行くぞッ!!」
避難誘導が終わった頃、ホシグマに話しかける陰があった。
「姉御、変じゃないですか?」
愉快なおじいさんその2が話しかけていた。
「あの一回から攻撃みたいな音はもうしませんし、もう終わったんですね?」
実際あの一回限りで特に変化は無かった。避難誘導も終わり、一体どうしたものかと考えていた。
「どちらにせよ待機だ。休憩でもしているといい。小官は高いところに行く。」
「へい、お供しますぜ姉御。」
当たり前だという感じに愉快なおじさんその2がついてきた。軽々と町中を、階段を登行き、町を見渡せる場所に移動していた。
空はまだ夜だが、町のあちこちに光は灯っている。なのに辺りから声はしない。不気味だ。むしろこっちの方で問題が起きたのではと思うほどには違和感を感じる。
じっと辺りを見渡し続ける。しばらく立った後無線から、報告が飛んでくる。
「報告。謎の飛行物体が一度墜落した後変化はない。市民を戻しても問題無いと判断しました。このまま変更点はありません。くれぐれも巡回隊は警戒を崩さないように。以上。」
……だそうだ。今日はお開きにするか?」
「それが良いんじゃないんですかね。姉貴。」
「じゃみんなには伝えておいてくれ。その代わり私が会計をしてくる。」
「ヒューヒューさっすが姉貴!みんなにはしっかりと伝えておきますんで、任してくだせぇ~。」
そう言いつつ愉快なおじいさんその2は飛び降りる。そして道を走り抜けていく。
ホシグマは苦笑ししつつ、多分きっと二次会をするんだろうなと思った。
階段から降り、宴会場への支払いが終わって家に帰ろうとしていた時、急に電話が鳴った。
『もしもし、私だ。』
『もしもしどうかしましたか』
『あぁ問題があってな。鬼族の子供が一人で迷子になってしまって』
『この避難誘導に関係ありますか?』
『ああ任せられるか?』
『はぁでは後でちゃんと教えてくださいよ。』
『ああ分かった。またな。』
『では。』
まったく、チェンさんは厄介ごとを持ってきてくれたようだ。
まずはスラム街に探しに行きますかね。
しかし鬼族の子供がこんなところまで……親がわざわざこんなところまで捨てに来るわけが無いか。ではなぜだ?……家出か。予想しても意味が無いか。さっさと探しに行こうか。
そう思い、脚をすすめる。
スラム街に着いた。あらかた探し回ったが、それらしき者はいないし、誰も見ていないようだ。
次はどこを探しに行こうか。
そう思い足を止めたとき。後ろからちょこちょこと近寄る存在を感じた。
警戒しながらもすみやかに振り返るとそこにはミスチェーがいた。
ミスチェーはスラム街の孤児院にいる女の子で、聡明で明るい。孤児院のみんなの人気者だ。その人気は孤児院だけに収まらず。働いている店で看板娘となり、みんなのアイドルとなっていた。
そんなミスチェーが不安そうな顔をしながらここにいる。
「どうしたんだミスチェー?こんな時間に、危険はいなくなったから安心して寝るといいよ。」
微笑みながらミスチェーの頭をなでる。そしてミスチェーの顔がほころぶ。辺りが花畑が見える。これ以上に安らぎはほとんどないと思う。
そばらくたった後、ミスチェーは(ハッ)と何か思い出すような顔をし、声を上げる。
「ホシグマさん!!そんなことより孤児院前の通りの突き当たりに誰かがいるんです!!」
「それでどんな人だったか覚えているか?」
表情を元に戻し、質問を始める。別にこのスラム街に人が増えることはそこまで珍しいことではないが、さっきの避難のこともある。これはハッキリとさせないと行けないことだ。
「えーと、黒いフードを被っていて、角があったわ!あとは小さかった!」
「ふむ……どれぐらい小さかったんだ?」
「私と同じくらい……かな?」
ふむ、ミスチェーの身長は確か140cmだったはずだ。それと同じくらい……もしかして……
「ミスチェーありがとう。その人は孤児院入り口から見えるんだね?」
「うん!少し遠いけど見えるよ!」
「分かった。それじゃあ途中まで送るよ。」
そう言いながらミスチェーの手をつなぎながら歩く。まるで遠足に行く子供のようにミスチェーはルンルンと歩いて行った。
時間がたつのは早かった。あっという間に孤児院入り口につき、ミスチェーを帰す。ミスチェーは最後に思いっきり手を振り孤児院の中に入っていった。
気を切り替えて、道の突き当たりを見る。そこには月の光に照らされながら、一つの黒いフードが居座っていた。
あぐらをかき、顔を沈めこんでいる。
動くことは無く、ただ堂々とそこにいる。
ホシグマは歩くようにゆっくりと近づく。
どこまで近づいても動く気配はない。
あっという間に残り2m程まで近づいた。ミスチェーの言うとうりに小さい。そして黒いフードか大きな角がはみ出している。
「そこの人。」
たった一言。返事はない。
「そこの黒いフードの人。」
今度は明確に個人的に呼びかけた。それでも起きない。
寝ていると仮定して、フードをめくろうと近づく。そのまま何の抵抗もなくフードを触り、めくろうとするとき異変に気づく。
フードがめくれない。かすかには動くのだがそれ以上は動かない。まるで鍵がかかっているように動かない。
これ以上はこの人を起こしていまうと思い、めくるのをやめる。
せめてもと、顔を覗き込む。そこには額の中央から私の腕位あるんじゃ無いかと思うぐらいに大きい角があった。
そしてフードの厚みが厚い。まるで空洞があるかのように見える。どちらせよ、この顔の大きさから考えてもこの空洞は大きすぎる。まるで何かを隠しているかのように。
これ以上分かることはない。
起こそうと思い。声をかける。
「起きろ。」
起きない。
今度は肩を揺らす。
それでも起きない。
「起きろ。」
そう言いながら大きく揺らす。
起きない。
いっその事と思い、両手で持ち上げて上下左右に振り回す。
それでもまったっく反応がない。
どうした物かと考え込んでいたときだった。
そういえばチェンさんが迷子のお知らせが来ていたのを忘れていた。少年を下ろし、チェンさんに電話をかける。数コール待っても電話に出ない。
どうやら何かあったようだ。メールに{迷子の鬼を見つけた。寝ているから保護をする}と送る。
そして、この少年を背負う。土の匂いがする。悪いにおいではない。
家に帰るために歩を進める。今回は大きな問題はなくて良かったと思った。
一つ問題があるとするのならこの少年がとてつもなく軽い気がすることだけだった。
テンションは変えません 誤字脱字、アンチ、応援、ストーリー展開考案何でもござれ
別に失踪したわけではございません。書き溜めをしていたわけでもありません。
はい、精進します。無駄に時間かけてすみませんでしたァ。