好きには不祥がつきまとう   作:庭顔宅

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2/3壊死からの地生 ホシグマside

珍しくホシグマは息をするのを忘れていた。

 

だってそこにはあり得ない光景が見えた。

 

まだ幼い少年がこちらを見ている。

 

だがその目に幼さは無い。

 

下からゴツゴツとした尻尾が、自分の身を守るように背中にそびえ立つ。

 

その頭には腕ほど大きい鬼のような角が一つ額から生えている。そしてわずかに後ろに二つの普通ほどの大きさの龍のような角が生えていた……

 

 

「どうかした?」

 

首を少し傾け、少年が言う。すこし驚きすぎた。

 

「いや、なんでもない。」

 

ホシグマは動揺を隠すように椅子に座る。

 

「シュヴェルも座ると良い。」

 

スッとシュヴェルも座る。何を話して良いか分からない。とりあえずシュヴェルのことから聞くしかないか。

 

「……シュヴェルはここで何がしたいんだ?」

 

「……なにもない。」

 

「本当にか?」

 

「うん。」

 

「じゃ何が出来る?」

 

少し考えるかのようにシュヴェルは瞬きもせず止まる。

 

「計算?戦うのは難しい。料理は多少は出来る。」

 

計算に料理、、それなら

「じゃあお店で働かないか?そこにはミスチェーって知り合いがいてね。信頼できる場所だ。」

 

「…………」

 

今度はとても時間がかかったが、きちんと答えが帰ってきた。

 

「働く必要は無い。」

 

働くという概念はあるのか。その上で働かないと選択するのか、、

 

「それではおいしい物が食べられないよ?」

 

「必要ない、多少稼いだ程度で価値はない。」

 

その言葉に嘘は感じないが何かある気がした。この方向で攻めてみようか。

 

「住む家とかこの辺りの立地とか全部私が支援するし教えよう。」

 

「必要ない。」

 

また同じ返事だ。でも今度はかすかに目が揺らいだ気がする。

 

「じゃあこの家を使うと良い。私は基本的に家には居ないからな。」

 

「ッ、必要なぁい。」

 

言葉が戸惑った。隙を見つけた。ここぞとばかりに詰める。

 

「嘘は止めると良い。」

 

威圧を込めて言う。

 

シュヴェルは体を震わせた。震える声でつぶやく。

 

「信用できるような者では無い、」

 

「私が出来ると信じた。ならば出来る。」

 

シュヴェルはこちらの目を見る。その顔に先ほどの覇気はもう無い。

 

「迷惑の塊で男でバカで何も知らなくてただ飯食らいだ……」

 

「だからこそお店で働けば良いさ。別に今すぐ働く必要も無い。仕事が合わなければ他の仕事を探せば良い。」

 

「……迷惑ばっかりかけると思う……」

 

「子供はそんなことを気にせず大人に迷惑をかければいい。」

 

表情が変わらない。思考がショートしているのか考え事をしているのか。シュヴェルは俯く。視界の端に光が現れた。視線を向けると台所の小窓から光が漏れ出していることが分かった。朝が来たようだ。

 

「ふつつか者ですがよろしくお願いします、!」

 

視線を戻す。シュヴェルはさらに頭を下げていた。見えていたはずの大きい角がフードで見えなくなるぐらい頭を下げていた。その声には覇気が戻ってきている気がした。

 

「……ああ…よろしくな。」

 

ホシグマはシュヴェルの頭を乱暴になで回す。シュヴェルはアワワとつぶやいていた。実際体勢が悪くてブルブルと震えていた。シュヴェルは顔を起こしたがその表情もアワアワしているように見えた。

 

 

少しだけ時間がたち落ち着いたようでまたお互いは椅子に座る。シュヴェルはフードをしっかりと奥まで被っており、表情は全く分からない。

 

「後で、ミスチェーを呼んでくるよ。そのあとお店に挨拶に行こうか。」

 

「はい。」

 

すでにいつもの何を考えているかよく分からない落ち着いた声に戻っていた。

 

 

突然バイブレーションがなった。発信場所はホシグマからだった。場所を確認すると電話機からだった。

 

その内容はチェンが{今から行く}とのことだった。多少の心配をしながらもそのことをシュヴェルに伝えようと思った。

 

「どうやらチェンがこの家に来るみたいだ。」

 

「分かったよ。」

 

予想外の反応が来た。少年は特にアクションを起こさず座っていた。心の準備が出来たか、覚悟を決めたかはたまた私が守るという約束か。何にせよ嬉しい出来事には変わりなかった。

 

 

「コンッコンッ。」

 

規則正しい音が玄関からする。どうやらチェンさんが来たようだ。私は迎えに行く。

 

「いらっしゃい。」

 

「ああお邪魔する。」

 

ドアを開けるとチェンさんが居た。なんとなくいつもより顔がこわばっている気がした。

 

「どうしたんですかチェンさん?」

 

「いや、どう説得したものかと考えていただけだ。」

 

なるほど。それは難題だ。私だって説得できる光景が目に浮かばない。

 

「こんなところで考えても意味がありませんよ。とりあえずまずは中へ。」

 

「分かった。」

 

そう言いつつ招き入れる。私たちが中に入ってもシュヴェルは湯気が見えなくなったホットココアを飲んできた。いや中身がもう無いが飲んでいるふりをしているようだった。

 

「チェンさんこちらへ。それではホットココアを作ってきましょうか?」

 

チェンさんをシュヴェルの反対側に案内する。一直線にチェンさんは動き椅子に座る。外見には表れてはいないが緊張しているようだ。

 

「頼む。」

 

「分かりました。シュヴェルもいるか?」

 

「ぁはい、お願いします。」

 

その言葉を聞いて、机の上の私とシュヴェルのマグカップを取り、台所に向かう。新たにマグカップをもう一つ取り出しホットココアを作る。電気ケトルの中のミルクはまだ温かいままだった。多少は量は少なくなるがそれでも十分な量のホットココアをお盆にのせ持って行く。

 

シュヴェルとチェンはなにも言葉を交わさずにただ座っていた。その様子を見た私はお見合いかな?と心の奥底で思った。

 

 

 

 

 

 

 

 




テンションは変えません 誤字脱字、アンチ、応援、ストーリー展開考案何でもござれ

まさか3つ目に突入するとは……自分でも思っていなかった。
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