好きには不祥がつきまとう   作:庭顔宅

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2/8 壊死からの地生 主side

ホシグマですらすっぽりと、はまってしまいそうなコートを着て居るが、それでは隠しきれない筋肉がチラチラと見えていた。

 

「やあ、グレイブさん。この子が言っていた子だよ。」

 

ホシグマの一言にグレイブがようやく書類から目を離す。眼力は強くないがそれ以外(筋肉)がゴツすぎて怖く感じる。

 

「こんにちは。君がシュヴェルか?」

 

「はい。シュヴェルです。」

 

「採用。さぁ採寸をしようか、」

 

グレイブが立ち上がり、俺の前に来る。俺の二倍ぐらいの身長だ。見上げすぎて首が痛い。

ただ気になるのは採寸だ。なぜ採寸を?

 

「採寸って?」

 

「オーダーメイドの衣装がうちの仕事服だ。それ以外は許さない。ここに来るまでに見ただろう?白黒の服を着ている子たち。あんな感じだ。」

 

あーね。つまりメイドさんになるのか。裏方で地味な作業したいなぁ。はぁ陰キャにはきつい。コスプレは分かる。でも接客、お前はだめだ。

 

「それじゃホシグマ任せるぞ。」

 

グレイブは巻き尺をホシグマに手渡すとそのままこの部屋を出て行こうとする。

 

「なんで?」

 

「それはどういう意味だ?」

 

二つの視線が突き刺さる。声に出ちゃったかぁ。でもなぜホシグマさんが?自分で採寸出来ますけど?

 

「なぜホシグマさんに?」

 

「そりゃ俺が男だからだ。」

 

どゆこと?……いやまて。男すなわちグレイブ。メイド。二人の女性従業員。

完全に理解したわ。

 

「僕男だよ?」

 

二つの視線が突き刺さる。こんどは目を見開いている。ずっとフードで顔を隠してたからしょうが無いね。それにしてもホシグマさんもか。女だから同居を許したのか、、さようなら。すべての桃源郷。こんにちは。スラムの民。

 

「ああ、ふむ。んー……んん……ーー」

 

なんか長考してる。怖くは無いがドキドキする。

 

「男の子か、」(小声)

 

「ホシグマ女装するなら雇うぞ。」

 

「それはシュヴェルが決めることだ。」

 

「あーそうだったな。シュヴェルどうする?」

 

そんなの決まっている。女装の対価は桃源郷だ。退路なんて最初から無い。

 

「これからよろしくお願いします。」

 

頭を深々と下げる。ほんと尊敬してますぜグレイブの兄貴。

 

「それが採寸するからフードを脱いでくれ。」

 

さっさとフードを脱ぐ。その下は薄着だ。特に肌寒いとかは感じない。温かさは感じたんだけどな。全く訳が分からない。

 

「ッッ………」「あ、」

 

ん?既視感。息をのむ感じと、ホシグマさんの素っ頓狂な声。珍しい。それは何でだ?

 

グレイブがホシグマの方を見る。

 

「これじゃ裏方しか出来ねぇぞホシグマ。」

 

「………」

 

まじ?やったぜ。でも「なんで?」

 

声がまた出てしまった。二つの視線が突き刺さる。こんどはあり得ない者を見るみたいに。

 

「その見た目じゃ客がよってこないかもしれないからだ。」

 

「じゃどうしたら良いの?」

 

見た目……この見た目ダメなの?鬼に龍だよ?かっこいいじゃん。

 

「そうだな。その角を隠せたら出来るかもしれないが、どこかでボロがでる。そこで終わるだろうな。」

 

しょうがない。郷には入れば郷に従え。龍の角……バイバイ。また~あう~ひまで。

 

淡く黒い光がシュヴェルの角を包み込む。そして仄かに白く光り、塵となり消えていった。

 

「ッッ。」「ッッッ、」

 

二つの視線が突き刺さる。今度は警戒した目だ。

 

どうした。なぜまたそんな目で見るんだ?………あ。角を作っている事ばれたわ。終わったいやまだ。何も終わってない。アーツで作っただけだ。悪いことでは無い。よしこの角は力の源的な触媒的な物にしよう。

 

「ホシグマ……ちょっとこっちに。シュヴェルは待っておいてくれ。」

 

グレイブはホシグマをつれて部屋の外に出る。重たい鉄の扉が閉まる。それはシュヴェルがこの部屋に孤立することに他ならなかった。

 

はぁ……慢心ダメゼッタイ。

いや初期設定から無理だったよパトラッシュ。

 

 

音もせず扉が開く。ホシグマだけが帰ってきた。時間的に10分も経っていないだろう。

 

「シュヴェル、その角はどうしたんだ?どういう物なんだ?」

 

こっちもただ時間を過ごしただけじゃ無いんだよ。ちゃんと設定を考えていた。

 

「アーツで作った。邪魔になるから消した。」

 

「なんで作ったんだ?」

 

「このフォルムが一番しっくりくるから。」

 

「じゃ消えて困ることは無いのかい?」

 

「力がすぐに使えなくなるし、感知しにくくなる。それ以外は問題無い。」

 

「………」

 

「シュヴェルすまないがまた少し待っていてくれ。」

 

ちゃんと伝わったかしら?そうであることを願うだけですな。それはそうと、どうしようか……暇だ。

 

またシュヴェルは一人となった。

 

 

 

こんどは鉄の軋む音が聞こえた。扉が開く。グレイブとホシグマが帰ってきた。

 

「シュヴェル。これからはその状態のまま過ごせるか?」

 

「それぐらいなら……」

 

ロマンを現実より優先してはいけない。これは必要な犠牲である。まってろいつか……いつか必ず………

 

「それじゃ採寸するぞ。シュヴェル。デザインは任せろ。」

 

「お願いします。」

 

グレイブはその巨体に見合わない素早い動きであっという間に採寸を終わらせた。

 

「それじあ明後日から、この店に来てくれ。朝7時くらいには来て貰えたら良い。最初は仕事を覚えるところから始めるぞ。」

 

「はい。よろしくお願いします。」

 

「グレイブさん。ありがとうございます。それでは。」

 

「おうよ。まぁいつでも来いよホシグマ。」

 

 

そのままその部屋を後にする。ホシグマを先頭に階段を出て行く。そこにはラミカが後片付けをしていた。

 

「ずいぶんと長かったわね。一応聞いておこうかしら、結果はどうだったの?」

 

「採用してくれましたね。」

 

「やっぱりね。」

 

楽しそうに笑う。なぜだろうか、印象がクールな人から、よく笑って仕事も出来る最強の先輩に見えてきた。

 

「その前に一つ言っておくことがある。グレイブさんからも連絡があると思うけど言っておくよ。」

 

「あら?一体どんなことかしら~」

 

「この子は男の子だ。」

 

ラミカの表情が固まる。そしてピキッと音がした気がする。だがすぐ戻る。

 

「男の娘?」

 

「男の子。」

 

「女の息子?」

 

「男の子。」

 

「女の子?」

 

「男の子。」

 

そこで会話が途切れる。ラミカの思考回路がショートしてしまったように。

 

ラミカさん壊れちゃった。顔が動かない。表情筋が動いてない。

 

「男の娘!」

 

いきなり目がキラキラとし始めた、、この人はいくところまでいっている人だろう、、

 

「男だといっているんだがな……」

 

「分かっているわよ。これからよろしくね、、そういえば自己紹介がまだだったわね。後で改めてやると思うけど、私はラミカって言うの、ラミカって呼んでね?」

 

まだ目をきらめかせている。身の危険をさすがに感じてくる。

 

「シュヴェルです。シュヴェルと呼んでください。よろしくお願いしますラミカさん。」

 

「ずいぶんと硬いわね。まあいいわこれからよろしくね!シュヴェル君。」

 

ラミカがシュヴェルに近づく。片手を伸ばしながら近寄ってくてくるから握手をするためだと思っていたが、途中でもう片方の手も伸びてきた。

身の危険を感じ反射的にホシグマの後ろに隠れる。そこにラミカの腕が交差する。

 

あっぶね。あともうちょっとで抱きつかれてたわ……よける必要あったっけ?………判断力が足らんぞ若造め……

 

「あうひどい……交流を深めようと思っただけなのに。」

 

そう言いながら追い回してくる。しばらくぐるぐると、ホシグマの周りを回っていた。ラミカはフェイントなどを織り交ぜるが、シュヴェルの反射速度には意味が無かった。というか、失敗を生かせてないぞシュヴェルよ。

 

挨拶は終わった速やかに帰宅を希望しますホシグマ大佐。

心の中でそう思いつつ目線を送る。帰ってくるのは

 

「ほどほどにするんだぞラミカ。」

 

そう言って一歩後ろに下がる。

 

裏切りですぞホシグマ大佐ぁっぁぁぁぁ

 

本来あるはずの侵入不可領域、それが無くなることに対応できなかったシュヴェルは見事にラミカにハントされた。

 

「肌モチモチじゃない。髪も柔らかくて良いにお……グレイブの匂いがするじゃない!!上書きしなきゃ。」

 

まずはハグ。それに飽き足らず、見た目通り軽いシュヴェルは抱っこされ、ほっぺをすりすりされた。追い打ちに頭をなで回される。

 

他に追記することがあるなら控えめでもちゃんと柔らかく、とてもほっぺがモチモチでした。雨の後のアスファルトのような刺激的な匂いに林のような落ち着く匂い。これは中毒性があります。

 

どれくらい経ったか分からないぐらいには満喫したころ、ホシグマさんの制止によってその甘ったるい空間は止まった。

 

「そろそろ止めておけラミカ。」

 

そう言いつつシュヴェルをラミカから奪い取ったのはホシグマでした。

ラミカの腕の中に居るシュヴェルを自らの腕の中に持ち運び、そのまま下ろした。

 

たった一瞬だったが勢いは十分だったためその豊満をよく感じ取れました。一瞬でも他のことに気を取られていた自分が恥ずかしいです。あのただボーとしていたくなるような自然の匂い……最高でした。

 

頭がまだホワホワする~

 

「……大丈夫か?」

 

覚醒したときにはホシグマの顔が目の前にあった。まつげの数も数えられる程の近さ、反射的に驚いたのか、恥ずかしいのか、いまいち分からないがとりあえず後ろにのけぞるという結果があった。

残りの数少ない理性で返事を返す。

 

「はお、ただいま戻りました。」

 

まだ夢心地のようだ。だがそんな変な返事にホシグマとラミカは頬がほころんでいた。美女の笑顔は金取れるって本当だと思ったわ。

 

「それでは帰ろうか、シュヴェル。それではまた今度。」

 

「また明日ねシュヴェル君!ホシグマもまたね。」

 

「さようなら。また明日お願いします。」

 

厨房を出る。カウンターはすでに電気が消えており、窓から見える外も暗い事が分かった。すでに辺りは夜だった。

 

{ファルシオン}を出ると聞き覚えのあるバイブレーションが鳴る。発信もとはもちろんホシグマだ。

 

「すまない。」

 

そう言い、少し離れるがすぐに戻ってきた。何を言っているかは全く分からなかった。さすがエリートオペレターだろうか。口の動きだけでなにをいっているか分かるようにないたいです。

 

「シュヴェルすまないが一人でかえってくれ、これは鍵だ。ご飯は適当に食べていてくれ。」

 

そう言い去った。手元にあるのは軽く投げ渡された鍵、それだけだ。

 

鍵……鍵………同居?……やったたあっぁぁぁぁぁぁぁぁああぁあああッッッ

まだ残っていましたかありがとうございます。ホシグマ様。へへ完全勝利のBGMが聞こえるぜ。夢の桃源郷がここにはあった。それじゃ帰りますか………

 

満面の笑みだったはずの表情が急に真顔に戻る。

 

俺が今まで通った経路を確認しようか、ホシグマ宅 → 龍門近衛局 → ファルシオン

ホシグマ宅からファルシオンまでの経路を知らないんですが……

 

空間把握能力はあるから多分なんとかなるでしょ。わざわざ龍門近衛局まで行くの面倒くさいわ。直線で行こうぜ!直線教

 

 

これは災いか、運命か、シュヴェルは自分主人公補正なるものがあるかもしれない転生人生だったのを忘れていた。だからこれから起きることを想像すらしていなかったのだろう。その身体能力を持つこともあって、警戒という言葉が存在しなくなっていたようだ。

 




テンションは変えません 誤字脱字、アンチ、応援、ストーリー展開考案何でもござれ
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