好きには不祥がつきまとう   作:庭顔宅

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2/21壊死からの地生 ホシグマside+α

地面から手が生えだす。それを中心として地面がこぼれ落ち、穴が開く。その生えだした手は上に上昇し続ける。そしてその大きく黒い角と顔を地上に現す。

シュヴェルだった。

上昇が終わったと思ったら、シュヴェルは180度回転して穴に向かって指を指し、肘を起点として指を頭に持っていった。

 

「シュ……ヴェル……?」

 

頭で考えるより先に声が出てしまった。この穴は天災によるものであろう。その黒い柱の足場だってシュヴェルのアーツとして考えたら納得がいく。

 

なぜ天災がここに来た。シュヴェルはやることが出来たといった。つまりこの天災を予測、もしくは予知したのか?どうやって……いやそれより何故そんなことが……わからない。

 

シュヴェルがゆっくりとこちらを向く。その顔は今にも泣きそうで悲壮感に溢れていた。

 

「……!」

 

声にならない悲鳴が出た。

 

気がついたときにはシュヴェルは穴から生え出た一本の触手に腹を切り裂かれ落ちていった。急いで声を上げながら穴に駆け寄る。

 

「シュ「GUURUUUUUUUUUUURAAAAAAッ!!!」」

 

その声は穴から出た言語にならない雄叫びによって阻まれた。

 

穴まで3メートル。武器を構える。そして近づいて状況を把握しようと身構えたとき、穴からシュヴェルが飛び出てきた。

シュヴェルは私たちの事なんて気にもしないで、視線は穴の中に釘付けになる。そしてすぐさま一歩引く。

 

GEEEEEEEGUUUUUUUッ!

 

地面の土を抉りながら化け物が飛び出る。外見は犬だ。ただし尻尾が五本あって普通の犬の10倍者大きさ。そして赤い石のような物質が体全体を覆っている。

 

その赤い犬が飛び出てきた瞬間、その上にその赤い犬の頭を叩き潰せそうなほど大きなハンマーが出現した。そして振り下ろされる。

 

赤い犬はそれに抗えず、穴の中へと落ちていく。

シュヴェルは一歩前に出て穴の中をうかがおうとする。

 

しかし、間をおかずに赤犬がまた飛び出てくる。

 

「ッ!」

 

驚いたことに赤い犬の頭は凹むどころか、ひび一つ無かった。

そして赤い犬の触手でシュヴェルは腕を切り落とされた。だが赤犬の頭上に作られていたハンマーでまた穴の中に叩き落とされる。

 

 

「ッッ!?」

 

切り落とされ地に落ちたはずの腕が突如としてシュヴェルの腕の部分へ飛んでいき、元の通りに腕が引っ付いた。

 

「ッ、、待てェッ!」

 

「あッ…ぶないわね!」

 

突如として地面から生えだした黒い柱に対応できず、遠くまで吹き飛ばされる。その瞬間、シュヴェルが穴のかに飛び込むのが見えた。反応する前に穴を中心とした障壁が現れる。

 

理解が出来なくなってくる。あの怪物は何で、どこから出てきた。もよや最初からそこに居たとでも言うのか…切り替えろ。やれることをやれ。

 

ホシグマが般若を強く握り、障壁に走り出す。そして振り下ろす。またもやかすり傷しか出来ない。

 

いったいどう動くのが最善だ?導き出せ、最良の結果を。求め出せ、何をするのが正解だ?いったい何が出来る?

 

そのホシグマの手には血が一滴、二滴と垂れ流れていた……

 

* * * * * スワイヤーside * * * * * *

 

随分と弱くなったわね。

 

スワイヤーは吹き飛ばされながらそんなことを考えてしまっていた。

 

あのクソガキが地面から出てきた時も、赤い犬っころが出てきた時も、クソガキの腕が切り落とされた時だって軽口が出るどころか、声一つ出なかった。

 

あのクソガキのせいでほんと酷い目にあうわ……でも退屈の無い日々だったわ。

 

そんなことを思いながら体勢を立て直す。そんな時、横からだ誰かが走り去る。それはホシグマだ。般若を構えながら走る。

 

それを見て頬が上がる。

 

アタシも動かなきゃ行けないわね。

 

ポケットの中の無線機を取り出し、チェンに連絡を取る。

 

「チェン!!今どこに居るの!?……うるさいわね!非常事態よ!さっさと働きなさい!……ア?*龍門スラング*!!………

 

これもあれもそれも!後チェンと話さなきゃいけなくなったのも全てあのクソがキの責任よ。あとでこってり搾り取ってやらないとね。ちょうどお小遣いもあるからね!あちこち連れ回してあげないと!たしか女装させるのが良いってホシグマが言ってたわね。ホシグマにそんな事を言わせる女装とやらを見せて貰いましょうか!!

 

スワイヤーは動き出す。その顔はいつもの顔に、いやそれ以上に何かを企む悪魔的な笑みだった……

 

 

 

 

「それで状況はどんな感じだ?再確認しようか。説明してくれホシグマ」

 

それを言うのはチェンさんだ。辺りには続々と龍門近衛局の兵士達が集まりつつある。

 

「まず被害は吹き飛んでマンションの一階に突き刺さった車だけだ。」

 

「ええそうね。」

 

スワイヤーがウンウンとうなずく。

 

「そして次に流れだ。シュヴェルがアーツを使用。天災をせき止めた。その天災により出来た穴から赤い犬の形をした物が現れ、恐らくシュヴェルはそれと穴の中で戦っている。障壁は天災をせき止めた物と同じであり、私では僅かな傷しかつくれないほど頑丈だ。その障壁も恐らくシュヴェルが作り出した物だと仮定している。」

 

「あら?どうしたのかしら?そんな陰気臭い顔はどうしたのかしら?」

 

スワイヤーがチェンを煽る。たしかにチェンは驚いたような顔をしていたとホシグマは記録する。

 

「まずはうるっさい声をどうにかし「はいはい今は落ち着いてください。二人とも。」」

 

ホシグマの制止で争いはいったん止った。

 

「それでチェンさん。一体どうしたんですか?」

 

「ただ、天災が起きて何の被害がない実感がわかないだけだ。」

 

「はっ随分と悠長なこと。頭「スワイヤーさんいまは止めてください。」」

 

ホシグマはスワイヤーを怒鳴りつけるように制止する。そこにいつものような穏やかなホシグマはいなかった。

 

「わッワかったわよ。今回だけはお、大人しくしてする。」

 

そんなスワイヤーを心の中でそっとチェンは罵倒した。

 

「それでこれからどうしたら良いと思う?正直出来ることが無いと思うのだが?」

 

「……ぶっちゃけるわね……」

 

「実際そうだろ?原因は壁の中。それ以外で異変は何も起こっていない。で、その壁がとてつもなく固いと来た。出来ることなんて数えるぐらいしか無いだろ?」

 

「そうだわね……ホシグマ?アンタはどう思ってるの?」

 

「私としてはチェンさんに一度攻撃をしていただきたいのですが…」

 

「一撃か?連撃か?」

 

「鋭い一撃を。」

 

「よし。決まりだ。ホシグマ。カバーは任せるぞ。」

 

「了解。」

 

「ちょっと私は何をしたら良いのよ!?」

 

スワイヤーは今にも武器をもって壁に駆けつけようとしていた二人を止める。

 

「現場の指揮を任せる。」

 

「それはわかってるけど…むぅ………良いところ取りってわけ?」

 

「何が起きるかわからない。最低限の人数で最高の戦力が必要。それぐらいわかっているだろ?スーお嬢様?」

 

「アンタね……それ次言ったら*龍門スラング*よ。もういいわさっさと行ってきなさい。まともな結果残せなかったら許さないわよ…」

 

「ああ。任せろ。私は私が出来る最善をする。だからここは任せたぞ。」

 

「慰めのつもり?ほんと*龍門スラング*ね、アンタ。」

 

スワイヤーは振り返り作戦本部へと向かっていく。

 

「褒め言葉をありがとう。*龍門スラング*。」

 

チェンはそれとは逆に最前線へと向かっていく。

 

「待たせた。行くぞ。ホシグマ。」

 

「ああ。行こう。」

 

スワイヤーは一瞬だけ振り返り、二人の背中を追う。そこにはそれ以上にない相棒が居た。

 

……アタシでもわかってる。アタシには二人に並び立てるほど戦闘能力は無いって事ぐらい。どんなに努力したって同じ場所には立てない。

 

そこで顔を上げる。その顔は笑っていた。

 

だからって負ける気は無いけどね。

 

ドローンを展開して全体無線を付ける。

 

「アンタ達!再度状況確認!!一つも異変を逃すんじゃないわよ!!!」

 

二人と同じ場所には立てない。それは疾うの昔に知ったのよ!!別に同じ場所に居るためだったらそんなもの必要ない!

 

バックの中にある地図を机の上に広げる。片手には無線を持ちながら。

 

アイツらが足りない物をアタシが補うことでより最強のチームになる事をアタシは知った。

でも一緒にチームなる事なんてほんと特例中の特例なんだけどね……

 

スワイヤーは自傷気味に笑う。

 

さて、さっさと結果を残してチェンの地位を引きずり下ろしてあげないとね。

 

スワイヤーは笑う。それは悪魔ですら戸惑うほど悪質な笑みを浮かべながら。

 

 

* * * * * ホシグマside * * * * *

 

「カッン、カッン、」

 

チェンはその手に紅色の刀を持ち、壁に軽く打ち付ける。

 

「聞き覚えの無い物質だな。」

 

「いけそうか?」

 

「わからない。でも無理な気がしないな。」

 

「それは心強い。」

 

「それでは構える。」

 

ホシグマは速やかにチェンの左に控える。

 

「閃!」

 

チェンがそう叫び剣を振るう。そして一筋の光が放たれる。それは壁を貫通した。

 

「ッ!?」

 

ホシグマは笑っていた。それも好戦的な笑みだ。だがそれはすぐに戸惑いに変わる。

チェンが攻撃をした後すぐに前に出る。そして般若を構え警戒する。だが何も起きない。その代わりに開いた穴から中の光景が見えた。

 

 

すぐにその開いた穴は閉じてしまった。

 

「どうした!ホシグマ一度引くぞ。」

 

「あ、あぁ…」

 

そのまま作戦本部に撤退する。その途中でスワイヤーと会った。

 

「あら随分と早かったわね。やっぱり無理だったかしら?」

 

「穴は開けたぞ。」

 

「すごいわね。で?どのくらいの穴かしら?」

 

スワイヤーは下から見上げるように言う。実際わざわざ膝を曲げて、顔も曲げて物理的に下から見上げていた。

 

「そうだな…お前の心の器と同じくらいだな。」

 

「なんですって!!随分と大きな穴ね!」

 

「常人の1/10ぐらいだぞ?お前の頭の中は一体どうなっているんだ?」

 

「………」

 

「おや?どうしたんだ?いつもみたいにその達者な口を聞かせてくれないのか?」

 

チェンは胸を張り、少し背伸びして上から見下ろす。{今のは悪手だったな?スーお嬢様}とでも言いたげだ。

 

「無い胸を張るのは止めてくれないかしら?」

 

「ずいぶんと下品なお嬢様もいたものだな。」

 

「ホシグマ?どうしたの?」

 

チェンは珍しく勝ち越したと。喜びの顔を浮かべたが、ホシグマの顔を見てすぐに戻した。

 

「何かわかったのか?良かったら教えてくれないか?」

 

「いや大丈夫だ。少し考え事をしていただけだ。そんな事よりこれからどうする?」

 

「とりあえず。周辺は相変わらず異変は無かったわよ。」

 

「八方塞がりか……ホシグマ。もう一度特攻しないか?私の攻撃に合わせてホシグマも攻撃してくれたら壁を壊せる気がしたんだが、どう思う?」

 

「それで行こう。今から行くか?」

 

「少し報告を確認してから行こうと思う。」

 

「アタシの判断が間違っているって!!!」

 

「そうは言ってないだろ!!だいたいいっつもそのスピカー見たいな声を上げるのを止めてくれと言っているだろう!!ただでさえうるさいのに。」

 

「いったい誰のせいでこんな大声出していると思っているの!!?」

 

「大声と自覚しているならもっと自重したらどうだ!!?」

 

「聞こえないよりはましでしょうが!!………

 

スワイヤー達が少し離れる。そこでホシグマは再度穴から見た光景を思い出す。

 

穴の目の前にはシュヴェルがいた。あの大きく黒い角はシュヴェルしかありえない。それは間違いないだろう。でもシュヴェルは頭の上にラテラーノのように黒い輪っかがあった。そして背中にも黒い翼のような物があった。そしてあったはずの大きな穴がなくなって、代わりに黒い土台が出来ていた。

 

 

大体一月前のことを思い出す。

 

シュヴェルは大きく黒い角とは別に龍の角があった。それは淡く黒い光がシュヴェルの角を包み込む。そして仄かに白く光り、塵となり消えていった。

 

そして私は聞いた。

 

「シュヴェル、その角はどうしたんだ?どういう物なんだ?」

 

「アーツで作った。邪魔になるから消した。」

 

「なんで作ったんだ?」

 

「このフォルムが一番しっくりくるから。」

 

「じゃ消えて困ることは無いのかい?」

 

「力がすぐに使えなくなるし、感知しにくくなる。それ以外は問題無い。」

 

 

 

特別黒い輪っかがあることを驚ことは無い。

 

そのとき言っていたのはすぐに力が使えないこと、感知しにくくなるだけだった。今思い出して疑問に思った。感知とは何だ?なにを感知する?

……一つだけ心当たりがあった。天災。

力がすぐに使えないともどういうことだろう?なぜラテラーノの姿をしていたのだ?力の使える幅が変わるのだろうか?やっぱりわからない。いやこれはそこまで重要なことでは無いな。

 

やるべきこと……最初も確か龍門市街に飛んできたと言っていた。それは吹き飛ばされた…?隕石が爆発したとも言ってたな。天災がシュヴェルを襲っている?いやシュヴェルが天災を対処している?……情報がない。そんなことがあり得るのか、本人に聞いてみるしかないか…少なくともこの一ヶ月の間一緒に居たんだ。

 

出来るはずだ。

 

{いままでありがとうございました。}

 

出来るはずだ……

 

{いろんなものをたくさん貰いました。}

 

出来る……

 

{何も返せない僕を許してください。}

 

出来……

 

{やることが出来ました。}

 

出…来る……

 

{お別れです。}

 

………

 

{さようなら。}

 

………

 

「パッシンッ」

 

「ちょっとホシグマ!?どうしたのよ?」

 

ホシグマは自分で頬を力強く叩いた。

 

「活を入れていました。もう大丈夫です。」

 

その目はいつもより鋭く、知的なホシグマを忘れてしまいそうなほどだった。

 

「それでは行こうか。」

 

「ああ、行くぞ。」

 

もう終わった事を考えているなんて嘆かわしい。そんな事を考えるのはまだ早いはずだ。いま目の前に問題がある。そして解決をしていない。ならばそれだけを第一に考えろ。

 

そのたたずまいに冷静さは亡くなっており鬼族らしく好戦的で勇敢であった。

ホシグマは般若を握りしめる。般若に凝固した血が握りしめた手によって落とされた。それは迷いを消し落とすように、綺麗に剥がれ落ちていった。

 

 

 

 

「斬!」

 

先ほどと同じ光が壁に放たれる。そして穴を開ける。ホシグマは間を開けず、その開いた穴に向かって般若を振り下ろす。

 

「ガャン。」

 

壁が鈍い音を出しながら壊れる。だがホシグマの顔は驚愕に溢れる。壊れた壁の先には新たな壁があったのだ。

 

(般若よ、お前の父が込めた怒りの炎を、今こそふるえ!)

 

ホシグマは振り下ろした般若を振り上げる。壁は鈍い音を出しながら崩れ落ちた。その攻撃の衝撃は大きく、最初に壊した壁に影響を及ぼうほどのものだった。

 

最初に壊した壁も崩れ、その破片がホシグマに向かって落ちていく。それをホシグマはわかったていた。だがそんな事よりもと、中の景色に体を釘付けにされた。

 

「ホシグマッ!!」

 

チェンが手を伸ばしホシグマほ後ろに引っ張り込む。その勢いを消しきれず転び込む。

 

「痛いな。」

 

「ホシグマどうした!本当に大丈夫なのか!?」

 

チェンはホシグマを立ち上がらせながらそう言う。

 

「すまない。助かった。」

 

元気なく返事をする。それは自分が悪いことを認めて謝る子供のように。

 

「いったい何を見た?私には例の赤い犬のような物しか見えなかったぞ。」

 

「下半身を亡くした赤い犬に、上半身を亡くした黒い犬が見えた。」

 

「黒い犬?なんだそれは?」

 

「私も今初めて見た。恐らくシュヴェルだと思う。」

 

「シュヴェル…なぜそうなる?」

 

「言っていなかったが一回目の壁に穴を開けたとき見えた。シュヴェルの頭に黒い輪っかがあったんだ。黒い犬にも黒い輪っかがあった。」

 

「中には赤い犬とシュヴェルしか居なかった、だから必然的に黒い犬はシュヴェル。私はそう判断しよう。シュヴェルのアーツは思っているより万能なのだな。」

 

「赤い犬も元はシュヴェルの「推測の域を超えないことを広めるのはあまりよろしくないぞ。」…すまい。」

 

「いずれにしても…不幸で運が悪かったそれだけだ。」

 

「ああ……わかってる。それでも私は突き通す。」

 

どんな過去があろうとも私は仲間を守る。それだけだ。

 

「それではそろそろ次行くか。」

 

「次は止らず前に出るよ。」

 

「任せた。」

 

チェン構える。いざ切りつけようとした時、初めて異変が起きる。

 

一瞬で音も無く目の前の壁が消えた。

 

そこには黒いフードを身に纏い横を向いている人がいる。おでこには角が折れてしまった残骸のようなものがあり、目からは血涙が流れている。両手を胸に置き目を閉じている。

 

「……シュヴェル。」

 

ホシグマが呟くように言った。確信は無かった。でも可能性を考え動き出したのだ。

 

シュヴェルは一回身震いをした。それでもなお目を閉じたままでいた。三呼吸後、シュヴェルは頭だけをこちらに向けた。

そして目を開け、こちらを見る。

 

その目は赤かった。見開きこちらを見ている。口を半開けで、その表情からは悲しみと悔しみが見えた気がする。

 

「さあ、帰ろうか…いろいろやらなきゃ行けないことがあるけど、それが終わったら元の生活に………戻れるからさ……」

 

ここで止めないと二度と帰ってこない気がした。ここで動かないとそのまま消えてしまいそうだった。

 

だがその思いは叶わない。

地面の黒い土台が消えて、大きな穴が開いた。シュヴェルはその両手から何かをこぼれ落とし、落下していく。いつの間にかそこには赤い球体があった。それはシュヴェルより先に落ちていく。

 

「バァゴォォォォォォォォッ!」

 

穴が爆発をする。その余波で軽く吹き飛ばされ一瞬意識が飛んだ。意識が戻った瞬間腕のポケットからスカーフを取り出し、口元を覆い、後ろで結んで簡易的なマスクとして使う。

 

穴からは土埃が舞っていた。

 

今中に入ったら自分の身も危ない。それは本能的にわかっていた。

 

 

 

 

「ホシグマ!大丈夫!!チェンはどこ!?」

 

スワイヤーが駆け寄る。

 

「チェンさんはそこです。救助隊の準備をしてください。」

 

「待ちなさい!!」

 

ホシグマが動き出す前にスワイヤーがホシグマの手を掴む。ホシグマが振り返ると怒った顔をしたスワイヤーさんが居た。その後ろでチェンさんが担架で運ばれていた。

 

「なんですか?」

 

「アンタも休んでおきなさい!!」

 

「私は大丈夫です。それより周辺の警戒をしてください。捜索は私一人でします。」

 

「ァァァああああア!!もうわかったわよ!どうせもう何を言われたって従う気無いんでしょ!!アタシも手伝うわよ。」

 

「いえ「いいえもノーもありはしない!!」……わかりました。お願いします。」

 

「よろしい。」

 

スワイヤーさんは無線機を付ける。

 

「アンタ達!周辺の警戒をしておきなさい!こっちはアタシ達に任せておきな!!後!!地質調査道具を持ってきて!!」

 

そう言い切って無線機をブチ切る。そしてバックからマスクを取り出す。

 

「それじゃあ行くわよ!!」

 

そう言って先に飛び込んでしまう。ホシグマもそれに続く。穴の傾斜はそこまで激しくは無く、スムーズに降りることが出来た。

 

 

穴の底につく。そこからは等間隔で穴を掘っていく。半分終わった頃、一つの硬い感触がホシグマの腕を襲う。

 

その感覚を得た瞬間手で優しく、だけどもしっかりと掘っていく。

 

これは……

 

「ホシグマ!見つけた?」

 

「シュヴェルの持ち物です。このまま探しましょう。」

 

「了解。」

 

ホシグマは掘り出した物をスカーフの入っていた腕のポケットの中に押し込んだ。

 

その形は三角形の手に収まる程度の大きさだった。

 

 

 

 

そろそろ辺り一帯探しきった頃合い。スワイヤーの無線が入る。

 

「スワイヤーさん。地質調査道具を持ってきました。」

 

「よくやったわ。人が一人埋まっているかもしれないから探して。」

 

そう言って無線をきる。そしてホシグマに近づく。

 

「ホシグマ。後は専門家に任せて帰るわよ。」

 

「いえ、私も「ダメよ。」」

 

スワイヤーはホシグマを脇に抱える。

 

「ちょっと!?離してください!!」

 

「ダメよ。この程度ほどけない人にあげる慈悲は無いのよ!大人しく休んでおきなさい!」

 

「…わかりました……」

 

「よし、さあ帰るわよ。」

 

スワイヤーはホシグマの手を引っ張りながら地上に帰っていく。途中地質調査道具を持った近衛局兵士と入れ違いになったが、ホシグマは何一つ言わずに地上に帰っていった。

 

 

 

結局そのまま近衛局に帰った。そして今回の書類をまとめていた。

 

その書類が終わり、一息を着いていた。外から光は差し込まなくなっており、部屋の明かりがついている。辺りはもう夜だった。

 

「ふぅ…………」

 

椅子の背もたれから立ち上がり一つの報告を再度見直す。

 

 

「地質調査書………変動は見つからず……」

 

その下には簡単に計算された修復費が痛いほど0が飾られていた。

 

「ハァーーーーーー」

 

 

ため息を出し切って机に右腕を枕にしてへたれこむ。左手は机の上に先ほど見つけた小物をいじくっていた。

 

その小物は三角形の形に中央に花が掘られた物だ。

 

「ガチャ」

 

視線だけドアの方に向ける。この執務室に今日入る人物と言ったら、スワイヤーさんか

 

「どうした?そんなくたびれて。」

 

チェンさんだ。

 

「ちょっと。不貞腐れてただけですよ。」

 

「ふむ。それは良いが…もしかして書類を全て終わらせてのか?」

 

チェンは机の上の書類を1,2枚目を通して言う。

 

「後はここにチェンさんのサインだけですよ。」

 

左手でポンッと数枚程度の紙の束を叩く。

 

「すまないな。気絶してしまって。」

 

「別に構いませんよ。量は少なかったですし。」

 

「そうか。ありがとう。」

 

その数枚程度の紙の束を持ち、すぐそこのソファに座ってサインを書き込む。

 

「被害は少ないのに随分と金がかかるな……」

 

「あの穴がそれだけかかるんですよ……」

 

「だな。」

 

チェンは軽く笑う。そして静寂が舞う。それを切り崩すのはチェンだ。

 

「……どうだ?立ち直れそうか?」

 

「別にもう立ち直っていますよ。ただ……」

 

「ただ?」

 

「本当に彼の事を知らなかったなって…」

 

「別にそんなに落ち込むことか?」

 

「一緒に過ごしていましたけど彼の好きな物なんて何も知りませんよ。」

 

「何一つも?」

 

「そうですよ。」

 

「コミュニケーションが足らないな。」

 

「彼が私と同じ性格で可笑しいぐらいに心を読み取ってくるのが悪いんですよ。」

 

「相性バッチリってことか。」

 

またもやチェンは軽く笑う。

 

「ハァ…………確か有給余ってましたよね?」

 

「十分なほど余っているはずだが?」

 

「一週間ほどください。」

 

「何をするんだ?」

 

「ちょっと酔ってきます。」

 

「なんだと?」

 

チェンは驚きながらも動かしていたペンを止めホシグマを見る。

 

「それでは私もお供させて貰おうかな?」

 

「いいですけど…理性を保てると良いですね。」

 

「……では初日と最終日だけお供させて貰おう。」

 

「ちゃんと自分で飲むお酒くらい持ってきてくださいよ?」

 

「最高級の酒を持って行こう。」

 

「それで手を打ちましょうか。」

 

「交渉成立だ。」

 

チェンは声を弾ませながらペンを進め始める。

 

「よし。終わった。」

 

チェンは書類を見直しながら言う。

 

「それではまた明日。」

 

ホシグマはブローチを腕のポケットにしまい、立ち上がる。

 

「いやちょっと待ってくれ。」

 

チェンが出て行こうとするホシグマを呼び止める。そして机で軽く確認して、何かを書き込む。

 

「お待たせ。では行こうか。」

 

チェンはホシグマの腕を引っ張り部屋の外に出る。

 

「どこに行くんですか?」

 

「それは今から飲みに行くんだ。」

 

「今からですか?」

 

ホシグマは戸惑い脚がすくむ。

 

「休暇の申請は終わった。後で職員に取って貰うようにお願いしたから問題無い。」

 

「それならアタシも混ぜて貰いましょうか?」

 

「ゲェッ」

 

声のする方を向くとスワイヤーが仁王立ちしていた。

 

「飲みに行くんでしょ?アタシも混ぜなさいよ。」

 

「残念ながら朝まで飲むつもりだからお前の席はないぞ。」

 

「あら。運が良いことに明日は休日なの。それに明後日は有給申請を今さっきやってきた所よ。」

 

「準備が良いことで。盗み聞きか?」

 

「アンタね……いったいいつ盗みぎく時間があったと?………

 

「アハッハッハッハ。」

 

ホシグマはいきなり大笑いする。

 

「ホ、ホシグマ?どうしたんだ?」

 

「そ、そうよ?ホシグマ何か悪い物でも飲んだの?」

 

「いえ。問題ありません。さ、飲みに行きましょう!」

 

ホシグマはスワイヤーとチェンの肩を掴みながら脚を進める。

 

「今日は寝かせませんからね?」

 

ホシグマは姦しくも微笑む。

 

「上等だ。こんな*龍門スラング*お嬢様に負ける訳がないだろう。」

 

「ア?*龍門スラング*のヘッポコ龍女に負けると思っているの?」

 

 

 

その後三人を見たものは見ているだけでこっちまで酔ってしまいそうだと言っていたそうだ。

 

 

 




テンションは変えません 誤字脱字、アンチ、応援、ストーリー展開考案何でもござれ


落ち弱っわ

龍門編は後もう少しだけ続きます。

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