………こ、…こは、」
目の前には白。いや袋?
爪を立て引き裂こうと痛む胸を押さえつけながら腕を動かす。袋は簡単に引き裂かれた。外へと這い出る。外は真っ暗だ。明かりはない。空気が薄い。たくさんの袋があって床が見えない。すぐ側の袋の中から血の匂い。数は一つだけではなく、動きもない。おそらく私と同じだ。
アレはここに気絶してくる前
・・・・
嫌な予感はあった。
この数十日間の間、毎日シュヴェルの部屋に遊びに行っていた。だけど今日は違った。
いつものようにシュヴェルの部屋へ向かう途中だった。
ジャスミンが突然「シュヴェル君は体調が悪いようだ。今日は帰ろう。」そう言ったのだ。少し様子がおかしい気がしたけど昔私が体調を崩したときも研究員の人もそのような感じだった気がした。
ジャスミンはそのまま私の部屋へ戻るかと思ったら別の部屋に案内された。
その部屋の扉をくぐった瞬間、胸に痛みを感じた。そして全身の力が抜けていき、地面に倒れた。首すら動かせない。だけど目の前には私と同じ状況だと思う人たちがいた。
目に光が無い。動きもなくて死んでいるみたいだ。その人たちはたき火みたいに一カ所に重ねられて、火の代わりに赤い液体が流れ出て、水たまりを作っていた。
「おいおいさすがに雑すぎだろ?」
「別にいいだろ?まだまだいるんだ。それよりお前はもう仕事は無かったよな?袋詰めしろ。」
「えーーなんでお前一人しかいないの?」
「対象が多すぎるんだよ効率重視だ。効率!」
「その効率とやらで物の運搬ができてなかったら意味ないだろ?」
「うるさいなぁどうせ汚れるじゃん。わざわざ区切りを作って血はせき止めたんだから掃除は楽だろ?」
「はぁめんどっくさ……コントロールのほうが楽だったのになー」
「はっはざまぁ。」
「それで運搬は誰がするんだ?」
「二名いる。荷車だ。運搬は全部あいつらに任せる。」
「そうですか……なあ俺ってクビかな?」
「知らねぇよ。とりあえず働け。」
「へいへーい。」
そこからの会話は聞こえなかった。それか会話はしていなかったかのどちらか。
ジャーシンスの意識は深く落ちていった。
~~~
次に目が覚めたのはここ。
ジャーシンスは辺りを見渡す。暗くて遠くまでは見えないがそこまで広い空間では無い。
そしてこの袋。これはゴミ袋だ。昔研究員の人から聞いたことがある。名前は忘れた。たしか一週間に一度ゴミを焼却するらしい。コストが掛かるから月一でも良いのにと愚痴っていたのを覚えている。
「……うん。」
少しだけ胸の痛みが治まった。
傷は一カ所。胸の中央をザックリと。それ以外の傷はなかった。私を処分した研究員の人の雑さに感謝しよう。
私はすぐ側の袋を引き裂く。その中には人がいた。
目を閉じて鼻に集中する。
匂いをかぐ。
血のにおい。血のにおい。血のにおい………だめ。血のにおいしかしない。
「……!」
足音がする。上に誰かがいる。三人……いや一人は初めからいた?
鼻の集中を耳に回す。それでも会話は聞こえない。だけど少し言い争っている感じ。すごく嫌な予感がする。
「ッ!」
ジャーシンスはジャンプする。足場が悪くて狙っていた方向へには飛べなかったが充分な距離を飛べた。壁に爪を突き立て壁を掴む。急に動いたせいで胸が痛む。右手で胸を掴み、痛みをまぎわらす。
そして四秒ほど後。
耳障りがする機械の音をたてると同時にゴミが床に消えていく。真っ赤で真っ赤な熱にゴミが姿形もなく消えていく。その熱はジャーシンスがいる場所まで届いていた。
七秒後。また耳障りがする機械音と共に熱っ苦しい熱が床に消えていった。
ジャーシンスは安心したせいだろうか?腕の力が抜けていき、重力に従って床へ落ちていった。受け止めてくれたのは少しだけ冷たくて硬い床だった。
そこでジャーシンスは気を失った。
~~~
次に目が覚めたのは上から柔らかい感触を受けてからだった。
不思議と目はくっきりとした。だけど胸が昨日より痛む。
柔らかい感触は袋だった。血のにおいはしない。袋は一つだけではなく、九つあった。私の上に落ちてきた袋を触ってみたが柔らかい布のようだ。
目の前にある袋を触ってみる。
……硬い?
袋を引き裂く。中からはいつも食べていた棒とスープが入っていた。ぐちゃぐちゃに混ざって不味そうだが無いより全然良い。
棒をかじる。
棒はいつものように味がない。スープは床に流れ貯まった。ジャーシンスは犬のように舌でスープを舐める。
スープはほんのり味がする。その味は優しくて枯れた喉が潤っていく。
ジャーシンスは胸が痛むことすらも忘れてスープを飲んでいた。
~~~
あれから六回袋が落ちてきた。その中には毎回棒とスープが入っていた。最初からスープが入っていることがわかっているなら袋を器にできる。
だからスープはたった一度以外こぼすことはなかった。
だけど袋はどんどん落ちてくる。その袋をかきわけ上へ登っていかないと袋に埋もれてしまう。いつしか体力は落ち、胸の傷は我慢できないほど痛くなっていた。
「……」
足音がする。二人。今度は言い争っている感じがない。嫌な予感はする。だけど動ける気がしない。
目を閉じる。
・・・・・・
うるさい。
・・・?
うるさい。
・・・・・?・・・・・
うるさい。
雑音がする。どうでもいい声が聞こえてくる。私をジャーシンスと決めた人がいる。私を私と見ない人たちがいっぱいいる。ぁ……熱い。
背中がガクンとした。
袋と一緒に落ちていく。
最後くらい良い夢が見たかった。
「ジャーシンスに合わせたい人がいるんだ。少し不安だけどきっと仲良くなれると思うよ。」
そう紹介されたのは鬼だった。シュヴェル。私と同じ化け物の一人。そしてたくさんの化け物の中でたった一人、たった一人だけ仲良くなれた人。
ずっと遊びに付き合ってくれて、嫌な雰囲気も出なくて、ずっと床に寝転がっている変な人だけど、疲れたらお腹を貸してくれて、すごくアーツが楽しい人。
………まだ、一緒にいたかったな…」
…………また背中がガクンとした。
次の瞬間にはジャンプした時と同じ圧力を感じた。
ジャーシンスは圧力が収まって、周囲を見渡す。
周囲は暗い。一週間前に見た光景と同じだ。
「え?」
床を見た。床一面が黒い壁だった。黒い壁だけがそこにあった。辺りを精一杯見渡す。目をこらして見る。だけどそこには思い人はいなかった。
ジャーシンス失望した。いったい彼は何がしたかったの?なんで今さら?なんで黒い壁は消えてない?
考えても考えても答えは見えない。もうわからなかった。
目を閉じる。仰向けで両手をお腹に置いて息を整える。胸が痛い。もう考えていることがまとまらない。もうこのまま寝てしまいたかった。
圧力を感じる。ゆっくりと黒い壁が上昇している気がした。
このまま何処へでも連れて行って…
メリメリメリ
変な音する。目が熱い。いや明るい?
ジャーシンスは目を開く。目の前には光があった。久しぶりの光でまぶしくて背けたかったけど背けなかった。
目の前には光があった。まるで地獄への入口みたいに歪にこじ開けられた扉の先から光と共に黒い箱を従え白衣を着た化け物が目の前にいた。
テンションは変えません 誤字脱字、アンチ、応援、ストーリー展開考案何でもござれ
イメージは固まりました。
ですが執筆する時間と腕が足りません。
へるぷみー