進む先すら見えないほど濃い霧を抜けたら、そこには村があった。一見、少し珍しい建築方法なだけで普通の村に見える。だけどここから見える範囲にいる人々の衣服は、とても綺麗に見えた。何かの祭りなのだろうか。
やはりあまり現実的ではない事を体験したからだろうか。目の前の光景が異形に見える。もしかしてこれは幻覚ではないかと思ってしまうほどに。
「なぁ、これって夢か?」
「前兆は全く見えませんでした。」
「私もだわ。」
山を登って下ったら霧が晴れて、村が現れた。先ほどの出来事を説明すると、たったそれだけの事だ。それなりに戦闘経験を積んだはずの三人が全く気づかないなどあり得ない。
この村の特徴といえば、山に囲まれている。そして山ほどに大きい大樹がある。ぐらいだった。
地形に関しては、似たような景色を資料で見たことがあった。だが少なくとも大樹は普通に成長したものではないだろう。
さらに言えば霧だ。たとえばその霧が扉のような役割を働き、私たちをここに案内したと仮定すると、すんなりと説明がつく。
だけど問題は、誰が、何の為にといったところか。
「ここで考えていてもわからないわ。私はあの村に立ち寄るべきだと考えるのだけど。」
「回り込まれているってこともまだ無いでしょう。さすがに速すぎます。食糧補給という意味も含めて、行くべきだと思います。ズィマー、どうしますか?」
「あなたの判断に任せるわ隊長。」
「…確かにここで止まってても意味がねぇな。さっさと行ってさっさと帰ろう。団体行動、いつでも撤退準備はしておけよ。」
「「了解。」」
ズィマーを先頭として村に向かう。
山を越えて強めの風が吹く。大樹が揺れ、その葉がユラリと落ちて行く。手が届くほど近づいたその葉は私の手よりも大きい。その葉は地面に触れる前に塵となり消えていった。その光景を見てなぜか末期の鉱石病が思い浮かんだ。
3人は街を突き進む。多少視線は感じるけども嫌なものは無かった。食料や水も買うことが出来た。
簡単な探索と簡潔ながら情報収集したところ、異常性が見えてくる。
まず明るすぎる。聞いたところ何か祭典があるという情報はなかった。普段の生活にしては活気がありすぎる。そして村の大きさからしてあり得ないほど充実している。
食料に関しても、娯楽に関しても。酒場もあるということには驚いた。
だけどそれほど充実しておきながら地面は土だ。
やはり普通ではないとしか言いようが無い。だがおかしな事を聞いた。
パルシアなど、私たちが向かっていた街が周辺にあるらしい。これに関してはよくわからない。だがそれが本当ならすぐにロドスの連中と連絡が取れそうだ。
そしてルルイエ様という人がいるらしい。ここのトップ。街の人の反応といえば、宗教よりも盲目的だと思った。それにおかしな事を言っていた。
どうやらルルイエ様は鉱石病を治せるらしい。
ふざけるな。
反射的に飛び出しかけてたその言葉は唇ですり潰した。
街の人がその人を崇める理由はそれらしい。あと女子供種族を問わず接してくれるやら、生きる選択肢をくれたやら方便が得意なようだ。
だがその人のおかげでこの村は存在しているのだろう。そのおかげで一時ながらも充分な休憩と補給ができた。もう用はない。早急にこの場を後にするべきだろう。
私たちが来た方向をそのまま進むように大樹がある方へ向かい、通り過ぎる。
大樹はやはり大きい。大樹の根元は広場のようで、子供達が遊んでいた。ここでも不思議な光景で、大小さまざまな根が遊具や腰掛けの役割を果たしていた。
そんな光景を横目に進み続ける。そこには森があった。
すぐ側には子供達の遊び場があるというのにこの森には人が全くいなかった。背後に笑い声が聞こえてくる程度で、酷く静かだ。またもや小鳥の鳴き声一つ無い。
森を抜けると、そこには湖だった。湖には見たことがない花っぽい何かが沢山咲いている。そして中央には家があった。村とはまた違う建築方法。
湖の周辺には木はない。そのまま山に続いていた。
ここまで来たら驚きはしない。
いままでの事を考えるにあの家はルルイエ様のだろう。人が全くいないことを考えると来てはいけない場所のように感じられる。
湖を迂回しようと、2人と意思素数しようと後を向いたら、目を疑う光景だった。
イーチスナとロサの後に誰かがいた。黒光りする鎧を纏った何かだ。顔は兜で隠れて見えない。だが何より特徴的なのは空に浮き、まるで鎌のような細長く大きな武器を2つを手に持ち、まるで鳥のような翼があることだった。
何かを考えるより先に動き出す。
「避けろォ!!」
飛び出しながら斧を振り下ろす。目の前の鎧はそれに合わせるように、鎌のように曲がった刃の曲線の部分でいなした。そしてもう片方の鎌で横になぎ払われた。
ズィマーは攻めること無く、体勢を立て直した。
「いきなり酷い者だな。」
落ち着いた様子で鎧がそんなことを言う。なぎ払った鎌とは別の鎌は追撃の準備を終わらせたままだった。
「いきなり出ておいて何だテメェ?」
「襲ってきた分際で何を言っているのだ?」
どうやら敵意がないのか、警戒すらされていないのか鎌は元の場所に戻されていた。
再び見るとここの村の異常な所を凝縮しても足らないほど異常だと感じだ。鎧については言うことはない。ただ一点翼だけ、その翼があるだけでその感覚は拭えない。宙に浮いているという事実さえ霞んでしまう。
その鎧の腕の2倍はある翼、それほどの翼を持つ種族など存在しないはずだった。
テンションは変えません 誤字脱字、アンチ、応援、ストーリー展開考案何でもござれ
うーん危機契約……
ほぼリィン単騎で18等級はたまげたなぁ……ぶっ壊れキャラって怖い/信頼度周回助かる