好きには不祥がつきまとう   作:庭顔宅

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6/2 進出のアドバンス

進むたびに血の匂いが濃くなっている。そして暗さも増し、足音の反響音も大きくなってきていた。意外と小さな洞窟らしい。

 

想定通り、彼女がコツコツと歩いているとあっという間に洞窟の終わりが見えてきた。

一気に空間が広くなる。そしてその空間の形がわかる程度には明るくなった。だが光源が見えなかった。この洞窟全体が、ほんのりと明るくなっているようだ。

 

だが彼女の思考はそんなことよりも、そこに空間の中央にあった者に奪われた。

 

それは人のような者だった。

 

過剰なまでに鎖が全身を巻き付いている。その者は跪いていたが下半身が鎖で埋まるほどの量だった。だが腕と首の部分に肌色が見えたことで、辛うじて人ということがわかった。その者は小さかった。そして俯いている。しかも長い黒髪をしている。

なのでどんな顔をしているかわからなかった、だが大きく黒い角が額にあることはわかった。

 

その者は手枷で両手と天井が繋がれていた。

 

血の匂いは間違いなくこの部屋からした。だけど目の前の者以外にこの洞窟には物が存在していない。血の痕も存在していない。

 

彼女は試しにわざと大きな足音を出しながら一歩踏み出す。擦れるようにガッとした音が鳴った。だが目の前の者は微動だにしない。

 

彼女は近づいた。その者と1mほど離れてぐるりと回ってみる。横顔を見て、その者は瞳を閉じているということはわかった。息をしている様子は見えない。もしかして彫刻だったりするのだろうか。

 

彼女は好奇心でその者の手首と天井を繋いでいる鎖を触ってみた。

 

するとその触った場所から浸食するように鎖が砕け散り、小さな黒い粒へと姿を変えた。

 

彼女は目をその者に固定しながら洞窟の入口へ向かう。

 

小さな黒い粒は嵐のようにその者の全身を覆い被した。そして不自然に、外から突風が来た。

それに彼女は一瞬だけ目を瞑ってしまった。

 

彼女が目を開くと、鎖が存在していないその者が洞窟の中央に立っていた。全身を隠すように黒いマントを装備した、黒髪黒目で黒く大きな角を持つ人が存在していた。

 

彼女はひっそりと背中を汗で濡らした。

 

・・・

 

それは俺がルルイエでいつものように適当に過ごしていたときだ。

 

最近は自分で動くよりもアーツで作った人を動かす方を優先させている。もはやこの拠点にも興味が無くなりかけていたとき、3つ目に作った伝説作戦の罠にそれは来た。

 

最初は野党が来たなぁ……と思った。全く知らない中規模野党だった。

 

暗く光りすらない洞窟だ。自然に出来たとしたら不自然なほどに整っている。まるで丸底フラスコを横にしたような形だ。

 

その中央には人形のような者があった。それはアーツで作り、角をつけ、髪を伸ばし、彼そっくりに作られた意思を持たない人形だ。まるで服のようにその人形の全身には鎖が巻き付いている。鎖で足が見えない程度には量がある。そして手は片手ずつ枷で天井と繋がれて封印されている。という設定だ。

 

不幸な事にも、中規模野党はその人形に触ってしまったので物理的に消した。これを気に触らぬ神に祟りなしと言う言葉を心臓に刻んで欲しい。酒に酔っててなんて言い訳は聞かない。なむなむ。

 

そこで終わるはずだった。俺はまた別の事に意識を向けようとしていた時だった。

 

彼女がその洞窟に近づいてきたのは。

 

濁ったようにも見える天使の輪っかに天使の翼。そしてサルカズの黒い角。青い髪に、汚れながらも清潔感が見え隠れする黒と白を主張とした服装。そして短パンブーツに可愛らしくも美しい長いデビルのような尻尾。魑魅払いは最高だ。彼女の前では全ての人がスタン+移動速度を最低にされるだろう。さらには彼女の魅力の前には鼓動が早くなりアドレナリンが飛び出てくるだろう、そして逃げる事が出来ない範囲攻撃が襲ってくるだろう。

 

モスティマ (Mostima) [莫斯提马]

 

それが彼女のコードネームだ。

 

それに俺は急遽、伝説作戦を中止する。そして新たなルルイエを作り出し、側にいるイチカに旅に出る。もしかしたらすぐ帰ってくるかもしれない。そうじゃなかったらしばらくは帰ってこない。ルルイエは頼んだぞーと言いながら飛び出す。

 

俺は全力でその場所に向かう。

俺は成り代わらなければならない。その人形を消し去り、その場に俺がいないと意味が無いのだ。人形操作すれば実質モスティマと一緒だね、のような話をするやつは敵だ。面倒くさいメンヘラだ。そっと関係に壁を建設しておこう。

 

見ているだけでいい?YES!ロリータNO!タッチ?

 

なんだその陰キャは、ばっかじゃ無いの?あ、推しとあんなことやそんなことをしたいと誓った転生数日目の俺は死んで良いと思う。

 

別に見るだけならアーツ越しでできる。だけどこの目で見るとアーツ越しは天地以上の差があるんだ。つまり必然的に接触はしてしまう可能性がある。たった数時間かもしれない。だけどその数時間でもモスティマと共に過ごせるのなら、それでよかった。可能性が低い伝説作戦を捨てて確実得られる祝福の時。

 

つまりイーサン枠でいこうと言う話だ。

 

イーサンと違う点があるとすれば、俺のことなんか忘れる事を推奨するし、悪戯はしない点ぐらいだろうか?

 

まぁいい、たどり着いた。

 

アーツで良い感じの演出をしながら現れる。黒く小さな嵐が消える時、目の前にはモスティマがいた。

 

 

 

 




テンションは変えません 誤字脱字、アンチ、応援、ストーリー展開考案何でもござれ

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