好きには不祥がつきまとう   作:庭顔宅

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6/3 進出のアドバンス

不気味な空気が双方の間を流れていた。そんな中、先に動いたのは目の前の人だった。その人はただ目を閉じた。

 

モスティマはその内に動こうと思ったが、動くに動けなかった。その人を瞳を閉じているはずなのに、見られているという感覚が抜けなかったのだ。

 

そしてその人は目を開ける。まるで準備は終わったと言わんばかりに。

 

「こんにちは。」

 

小さな空間で放たれる言葉は小さな声でも反響し、響くようにエコーがかかていた。透き通るような声だと思った。だが彼女達を取り巻く環境からしては、とても似合わない声だった。モスティマは自然と妙な間を開けながら挨拶を返した。

 

「こんにちは。」

 

その言葉にその人は、満足したかのように軽くうなずいた。その様子を見て、モスティマは話の通じるタイプの人間なのではと思った。なので試すように声をかける。

 

「君は誰なんだい?今のはアーツなの?」

 

「誰?…残念ながらその答えはわからない。自分が何者なんてわかっていないんだ。アーツも同様にいまいちわかっていないんだ。」

 

特に変わる様子を見せず、もごもごと口を動かしていた。それで良く聞きやすい声が出せるものだね。

 

「うーーん。とりあえず敵では無いってことでいいのかな?」

 

「それは間違いない。」

 

「じゃあこのへばりつくような血の匂いはなんで?」

 

その力強い言葉と共に彼女はその人を警戒するような様子を見せた。だけどそんな様子に反応すらせず、またもや口だけをもごもごと動かした。

 

「決まりに乗っ取り、資格がない者は淘汰された。運が悪かった奴らだ。」

 

「私にはあったと?」

 

その人の言い分によると、あの鎖は別の何かと考えていいのかな。そういえばその鎖は何処に消えたんだろう?

 

「そうだ。そして決まりに乗っ取り、願い事を叶えよう。」

 

「願い事?」

 

決まりに願い事。私は占い屋にでも来てしまったのだろうか。

目の前の人は不思議な雰囲気だったが、それは言動にも当てはまることがわかった。

 

「助けたい人はいるかい?殺したい人はいるかい?やりたいことはあるかい?何でも良い。僕が出来ることで国を揺るがすような事で無ければ何でもやろう。」

 

急にうさんくさくなった。だけど不思議と嘘って感じもしなかった。

 

「…遠慮しておくよ。特にやりたいことも今はないし。」

 

それにやりたいことは自分でやるし。心の中でそう思った。

 

「わかった。いつでも言ってくれ。」

 

その人は特に機嫌を悪くすること無く、いつも通りの声音でそう言った。そしてそこで会話が途切れた。

 

モスティマは少し、いつでもの言葉の意味を考えて、これは願い事を言わないと着いてくるのだと思った。なので適当に言う。

 

「じゃあおいしいご飯を出してよ。」

 

「物理的に不可能だ。」

 

どうやらおとぎ話の妖精みたいなことは出来ないらしい。

 

「お願い事はいいよ。興味ないし。」

 

「別にそれでもいいが、願い事を言うまで着いていくことになるがいいのか?」

 

「以外と面倒くさいんだね。」

 

「決まりだからな。あとある程度までの内容であれば願い事と認めない。」

 

「それはまたなんで?」

 

「僕が君を気に入ったから。」

 

本当に面倒くさくなったモスティマは尋ねるように言った。

 

「……それじゃあ帰るよ?」

 

「好きにすると良い。」

 

「うん。」

 

モスティマはそう言って後ろ歩きで顔を合わせたまま、ゆっくりと歩く。するとその人も歩き出した。そこでモスティマは足を止めた。そしてその人も足を止めた。

 

不審に思ったモスティマは尋ねた。

 

「どうしたのかな?まだ何か用事があるのかい?」

 

「僕には何も無い。ただ願い事を待っているだけ。」

 

「本当に着いてくるつもりかい?」

 

「ご所望なら姿は消すが?」

 

それは言葉通りの意味だろうか。視覚的に消すのか、物理的に消すのか。まぁそんなことよりも

 

「そのお願い事やらが叶うまで着いてくるつもりなの?」

 

「願い事のことさえ覚えていれば良い。姿を消す。気配も消す。全ての存在感を消す。意識しても僕のことを認識できないようにしてあげるよ。」

 

「面倒くさいね。」

 

そしてよくわからない人だ。

 

「残念なことに君は気に入られちゃったからね。諦めることをおすすめするよ。」

 

その言い方だと自分の意思とは別にと聞こえてくるんだけど。これは本当に面倒くさい人に見つかっちゃったってっ感じだね。

 

「君、名前は?」

 

「…それじゃカセロ。」

 

「ソレジャカセロ?変な名前だね。」

 

「それじゃはただの言葉だ。カセロ。それが名前。今決めた。」

 

「決めた?元々の名前は無いのかい?」

 

「同じ名前は味気ないじゃ無いか。」

 

「それって必要?」

 

「存在感を残さない上では必要だね。」

 

「ふーん。」

 

過去にも私みたいに絡まれた人はいるってことか。

 

「ま、いいや。じゃ存在感消してね。」

 

「わかった。」

 

その人はそう言う。だが言ったきり動かない。

 

「どうしたの。姿を消せるんじゃ無いの?」

 

「物理的に不可能だ。1度離れてくれたら出来る。そのまま元の目的に戻るといい。」

 

視覚的に消すみたいだね。

 

「それじゃあね。」

 

「呼べば現れる。好きにするといい。」

 

モスティマはその言葉を別れとして、洞窟を出て行く。

車は無事だった。そのまま乗り依頼の場所に向かった。

 

 

 




テンションは変えません 誤字脱字、アンチ、応援、ストーリー展開考案何でもござれ

今回のイベントストーリーは私を再びアークナイツの沼へ嵌めた。

実はライン生命って表向き研究会社の裏で大悪の秘密結社的立ち位置だと思ってました。

皆様は公式ホームページでコミックをご覧になられましたか?あれは素晴らしい物です。

そしてつくづくこの作品を出すのはアークナイツが完結してからだったなと思いました。認識の違いとか読み込みの甘さとかいろいろもろもろです。
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