「外道・輪廻天生の術……!」
「っ……インドラ様! 私のような者のために、御命を捨てるなんて……!」
「ふ。後は任せたぞ……
「インドラ様? ……インドラ様! インドラ様ぁぁぁ!」
はい。そんな感じで小芝居を挟み、羽衣天女(肉体)は生き返り申した。
外道・輪廻天生の術。それは輪廻眼の六道の力の一つである。
輪廻眼の『外道』は生と死を司っていて、死者蘇生を可能にする。生きている生身の人間しか行使できない禁断の術ではあるが、『外道』には他にも様々な力が付随していた。
例えば六体のペインの体に刺さってる黒い棒。原作終盤でオビトやマダラが使っていた黒い棒。あれは外道の術の一種で――俺は個人的に『六道棒』なんて安直な呼び方をしているが――生者に突き刺したらチャクラの動きを撹乱し身動きを封じ、死体に刺したら遠隔操作で制御できるようになる。更に外道魔像の口寄せも出来るのだ。
輪廻天生の術は、穢土転生とは違い、完全な死者蘇生を可能にする。代償として術者は死んでしまうわけだが、特に問題はなかった。ぶっちゃけ俺の体のスペアはクローンで腐るほど作ってる。仮に今のインドラの体が死んでも、別のインドラ・クローンに乗り移ればいいだけの話だ。しかもこの術を使っても輪廻眼は失明するわけじゃない。実質ノーリスクで使えるのである。
が、肉体の在庫は叩き売り出来るほどあっても、無駄に捨てるのも馬鹿らしいので、うずまき一族のクローンに輪廻眼を移植、霊化の術で乗り移り術を発動し、効果を発揮する直前に霊化を解除。うずまき・クローンに輪廻天生の代償を肩代わりさせた。これぞ卑遁・身代わりの術――忍術でポピュラーな身代わりの術も、卑遁の性質変化を加えるだけでこうも凶悪になるのである。
なお俺の作っているクローン体は、身体的な異常は全くないものの、製造してからずっと眠らせているので自意識は赤子並だ。霊化の術で乗り移るのになんの苦労もしない。
俺はインドラ・クローンの体を整形して『太刀風インドラ』の外見に似せると、木分身に霊化の術で乗り移らせ操縦させる。コイツが中ボスだ。天女はインドラを信奉する最強の僕ポジである。
太刀風インドラに搭載している眼球は、右目に昔の写輪眼ガチャで引き当て産廃として死蔵していた炎遁・加具土命。左目に天照だ。これだけだとヘボいので、一足先に見つけ手に入れておいた幻の霊剣『草薙剣・十拳剣』と、霊器『絶対防御・八咫鏡』も装備させた。
十拳剣と八咫鏡はうちはイタチが入手していた物だ。十拳剣は突き刺した奴を幻術世界に永遠に封印する代物で、最強の剣と謳われている。八咫鏡は忍術や幻術、体術と問わず反射して跳ね返す最強の盾である。ごめんねイタチ、特に十拳剣は対俺特攻の武器だから予め確保することにしてたんだ……君の手には渡らないけど悪く思わないでくれ。
これだけあれば中ボスとして上等だろう。俺の木分身にも本気で戦えと命じてあるし、柱間とマダラとその他の戦国産精鋭忍者を相手にしても、充分立ち回れるはずだ(勝てるとは言ってない)
後はそれっぽく儀式を進めるフリをしながら待つだけ。こちらの陣営は俺と俺と俺しかいないし、集めておいた尾獣達の自我は縛ってあるから、実に寂しい光景になっている。
というか尾獣を見ると思うのだが、六道仙人も酷な真似をするものである。
十尾のチャクラを9つに分け、それぞれに名前を与える? なんて惨いことを……仙人が聞いて呆れるぜ。こんだけ強大なチャクラの塊に自我を与え、永遠を過ごさせるなんて頭おかしいだろ。俺なら絶対ゴメンだな。暇すぎてずっと寝てるかもしれんぞ。
尾獣は災害だ。死んでも何処かでひょっこり復活する。インターバルは長くてもいずれは復活する以上、真の意味では死ねないのだ。いずれ心が腐り散らかす可能性も無きにしも非ずだろう。
……それはないか。尾獣は自然の一部みたいなとこあるし。でも復活するのは辛いぞ。いっそ本当に自然の一部にしてやるのが温情だと思うのだが。例えば俺が傀儡にしているみたいに、自我を縛って喜怒哀楽もない意思持たぬチャクラの塊にするのだ。そしたら何も憎まないし愛さないし執着しない、ただの現象に昇華させられるってなもんだ。これなら時間の流れも辛くあるまい。
そんなわけで、俺は捕獲した尾獣全ての自我を縛ってある。何も考えさせない、何も感じさせない、ただ漠然と幸せだなーって感じる夢心地だけ与えてあげている。幻術に縛られている不快感を取り除くなんて、流石は俺。アフターケアも万全とか理想の上司かな?
外道魔像は物欲しそうに尾獣達を見ている……気がするが、それはさておくとして。俺は表向き月の眼計画を進行している。こうしているとやっぱりと言うべきか、黒ゼツがどういうことかと聞きに来たが――飛んで火に入る夏の虫とはこのこと。十拳剣で封印してやった。
なんか言っていた気がするけど無視だ無視。あーあー何も聞こえませーん。一応テキトーぶっこいとこう。――お前はしくじった、柱間に存在を知られていたぞ。このままだと危ないから、絶対に安全な幻術世界に保護してやる。安全になれば出してやるさ――
まあ出す予定なんてありませんけどね。十拳剣からの出し方も知らんし。なんなら忍界には危険がたくさん転がってる、安全なんて今後百年はありません。
「……お?」
木分身は日常的に多用している俺だが、改良して普段はリンクを切れるようにしていた。幾ら慣れてるとは言っても、百体ほどの木分身とリアルタイムで情報を共有していたんじゃ頭がパンクするからだ。よって木分身側が本体にリンクを繋げるか、不慮の事態で消滅してしまった場合に木分身の経験がフィードバックされるようにしていた。本体からはいつでも接続可能である。
たった今、
流石は本体。これでセカンドプランは最後の段階に入る。後は木分身A部隊の隊長である俺がミスらなければ計画は大成功するだろう。油断も慢心もしない、絶対に上手くやってみせる。
――ちなみに扉間に使った別天神は、一度使うと十数年から数十年もリロードに時間がかかるのだが、柱間細胞があれば再発動可能になるまでの期間を短縮できるらしい。
柱間細胞ってホントになんなの?
術や血継限界の研究をして、理解を深めるほど意味が分からなくなる。
一応俺も何代も前のアシュラ転生体の遺体を手に入れて、アシュラ細胞と名付けたものを培養しているし、インドラの体に取り込んでいるが、柱間細胞ほどの出鱈目さは発揮していない。
同じアシュラ由来のチャクラのはずなのに……この差は一体……?
ともあれ、アシュラ細胞と神樹由来生物である俺本来のチャクラを合わせれば、別天神は半年で再発動可能になるのは確認済みである。お手軽にバンバン使えるのだ。実験もやり放題とは言わないが必要なデータは充分に揃っている。別天神はまさに最強だと言えた。
しかし最強だからといって、それを盲信するわけでもない。
俺の集めたデータ、元々あった知識でそうだったからって、破られない保証なんてないのだ。世の中に絶対無敵の力なんてないのである。何かの拍子に解除されましたと言われても俺は驚かない。だって別天神を掛けた相手はあの扉間だ。身内に柱間もいるし、その時
よって扉間の人格を弄ったり、ステータスにデバフを掛けたりはしない。ただ一つのお仕事を熟してもらった後は解放する。安全確認、ヨシ! 元々扉間くんには生きてて貰いたいからね、なんならエドテンの事があっても処されないように、大筒家からも根回しをしよう。
後は……テキトーに儀式をしているフリをしながら、忍同盟の面々が攻め込んで来るのを待つだけだ。黒幕気取りらしくもなく、なんだかワクワクしてきたぜ! インドラ・クローンの体と、尾獣九体と羽衣天女。普通に考えたら勝ち確だが、相手には戦国産うちはと千手、マダラと柱間がいる。これだけでまるで勝てる気がしないから凄い。
特に柱間だ。彼奴、先日ついに仙術を会得しやがった。隈取から予想はしていたが、蝦蟇でも蛇でもなく蛞蝓系列の仙術を修行していたが、習得までたった一日だし、実戦レベルにするのに半日も掛けていなかった。化け物かな? しかも対尾獣も想定して真数千手まで開発している。コイツはホントになんなんだろうね。意味が分からないよ。
仙術を身に着けるまでほぼ互角だったマダラを大きく突き放す実力だ。マダラもうちはの石碑を読み解き、イズナと万華鏡写輪眼を交換し合って永遠の万華鏡写輪眼を手に入れて頑張ってる。完成体須佐能乎も手に入れた。だけど柱間には遠く及ばない……陰陽揃っている九尾を従えてやっと勝負になるぐらいの差がある。もう全部柱間だけで良いんじゃないかな……?
コイツのせいで中ボス戦も予定を変更させられた。中ボスの太刀風こと大筒木インドラ(偽)を用立てたのは、柱間と戦えるレベルにするためと言っても過言じゃない。天女と尾獣たちの相手は、マダラとイズナをはじめとした、原作の忍が可愛く見える忍同盟だ。
俺はこの時代を『MADARA』と呼んでいたが、これじゃ『HASHIRAMA』じゃないか? 別に良いんだけどね。柱間との実力差に気づいたマダラが焦るだろうからオールオッケーである。
そうして色々やっていると、ついにその時が来た。
俺がどこまで柱間を相手に戦えるか……試せるのは今回限りだ。
忍の神と遊べる最初にして最後、唯一の機会。折角だから無駄にせず殺す気でやってみよう。
――風の国に宣戦布告をした火の国の軍勢は、直後に国境を跨ぎ侵攻を開始する。
風の国はこれを受けて主力を前線に送り込む。風の国の首都が防備を薄くしたのを見て、忍同盟の面々は火の国が約定通りに動いたことを知り、敵国首都へと侵入していった。
首都の地下への入り口は大名の居城にある。情報を奪取してきた潜入班の先導のもと、彼らは長い階段を下って広大な地下空間へと辿り着いた。
広い。地下に入った時は特異な結界でも張られているのかと疑ったが、そうではなかった。
風の国は砂漠地帯が多い、にも拘らずこの地下空間に熱はなく、見渡す限りの虚無的空間が広がっているばかりだ。地平線の彼方まで殺風景で、遮蔽物もない。まるで宇宙空間のようだ。
――此処は
「……どう見ても、『地下に大きな空洞がある』とは言えんな。事実を過小に報告するのはどうかと思うぞ」
肝っ玉の太さでも大物らしく、柱間は特に圧倒された様子もなく嘆息する。
そんな柱間の態度で我に返った猿飛サスケが言った。
「いや……我らが初めに来た時は、こんな空間など無かった」
「ほう? であれば、月の眼計画とやらの影響か……?」
マダラは興味深そうに返すも、確証を得ることは出来そうもない。想像を超えた光景を前に忍同盟は愕然とさせられていたが、足を止めて考察している場合ではなさそうだからだった。
遥か遠くに九体の獣がいるのを発見したのだ。
そして白眼を持つ日向一族の当主スパナが、白眼を発動するや焦燥も露わに言ったのである。
「っ……前方10キロメートル先、羽衣天女と太刀風インドラを発見! 奴らの様子がおかしい! これは儀式……か? 九体の尾獣からチャクラを抽出している! 今すぐ止めねばマズイぞ!」
「足並みを揃えている場合ではなさそうだな。……先に行くぞ、イズナ」
「気をつけて、兄さん!」
万華鏡写輪眼を交換し合い、永遠と化した瞳力を手に入れたうちはマダラが言うと、完成体須佐能乎を具現化させる。尾獣に匹敵する巨大な鴉天狗の如き須佐能乎に、忍同盟は息を呑んだ。
これが初お披露目である。その威容に誰しもが目を瞠るが、イズナと柱間のみ特に驚いていない。イズナは慣らし運転に付き合い既に見知っているからであり、柱間は完成体須佐能乎を超える物を生み出せるからだ。故に柱間は即座に飛翔しようとするマダラへ言えた。
「マダラ! オレも連れて行け!」
「――良いだろう、お前なら足手まといにはなるまい」
完成体須佐能乎の肩に飛び乗った柱間に、マダラはニヤリと笑って飛び立った。
空中から高速で目標まで向かう。
余りの速さに誰も追随できず、両雄は忍同盟に先んじて仇敵と敵首魁を視認した。
風の国の大名、太刀風――改め、大筒木インドラ。近未来的な騎士甲冑の如き、スリムなフォルムの漆黒の甲冑を纏い、顎当てを付け長い白髪を纏めた初老の怪傑。
そして、二人にとって共通の仇敵にして、互いを除けば最強の宿敵と言える羽衣天女。真紅の浴衣の上に黒塗りの当世具足を纏った姿は、マダラ達も見たことがないものだった。いつも敵を舐め、捕食対象としか見ていなかった怪物らしくなく――本気の戦装束である。
マダラにとって、初見のインドラなどどうでもいい。憎悪と戦意、殺気は天女に向く。対して柱間は自身を見詰めるインドラの目に気づき、真剣な面持ちとなった。――互いの敵がどちらか、何も言わずとも分担されたのである。マダラが天女を。柱間がインドラを。
殺す。
インドラは高速で飛翔してくる完成体須佐能乎を見て、満面に喜悦を浮かべて言った。
「――
須佐能乎の肩から飛び降りた柱間と対峙したインドラが、邪悪な笑みを湛える。千火の戦いの切っ掛けを作った依頼の時に会ったきりであるはずの男の言葉に、柱間は困惑した。
「どういうことだ。オレを待っていただと?」
「左様。俺の計画に貴様の存在は不可欠だったのよ」
意味深な言葉である。釣られる柱間だったが、マダラは冷静だった。彼の万華鏡はチャクラの動きを見て取り、インドラが会話による時間稼ぎを図っていると看破したのだ。
現に狂戦士としか言えないはずの、邪仙の頭目たるあの羽衣天女が、大人しく開戦の瞬間を待っているではないか――この事から天女がインドラの忠実な僕なのだと勘付いた。故に、戦闘狂の資質を持ちながらも、冷酷な戦術眼をも有するマダラは迷わなかったのである。
「貴様の存在を初めて知った時は歓喜に打ち震えたぞ。貴様のその木遁――それこそが俺の計画に欠けていた最後のピース。貴様の力を成長させるために、俺は一度は終息に向かいそうだった戦乱を再び起こしたのだ」
「何!?」
「フフフ……長生きはするものだ。千年の時を超え――こうして悲願を成就させる時が来た。恒久的な世界平和のために、この世の地獄を網羅する必要があった……千手とうちはの対立を我が下僕であるゼツを用いて煽り、表世界と忍界に戦の火種を作ったのだ」
「貴様……全ては貴様の仕組んだ事だとでも!? 貴様の月の眼計画とはなんだ! 地上に住む者全てに幻術を掛けるというのは真か!?」
「そうよ……その通りよ! 全ては我が悲願、そして全ての人間、未来のためである! いずれ宙の彼方より襲来する敵を迎え撃――」
瞬間、会話の隙を突きマダラの蒼き須佐能乎が太刀を振るった。
尾獣に匹敵する巨体が振るう巨大な太刀は、ここが自然の中であれば幾つもの山をも両断する破壊力を秘めていた。この一撃で天女諸共インドラを殺すつもりなのだ。
だが尾獣すらまともに受けたらタダでは済まないその一撃が――インドラに直撃する寸前に
「話に割り込むとは無粋な。やむを得まい、天女……やれ」
「了解、インドラ様。敬愛する我が主人!」
インドラの左手を基点に、漆黒のチャクラを纏う大盾が現れる。霊器たる絶対防御、八咫鏡だ。それがマダラの太刀をも食い止めるに留まらず、その威力ごと跳ね返したのである。
天女は儀式の祭壇の近くにいる。
その祭壇に手を触れるや、尾獣の内一体が藻掻き、彼女の肉体に吸収されていく。それを急行しながら遠くから見ていたうずまきアシナが仰天していた。あれは我が一族秘伝の封印術! と。
取り込まれたのは全身を甲殻で覆われた巨大な亀。
またたく間にその力を掌握した天女が残忍な笑みを浮かべた。
――三尾・人柱力、羽衣天女――
膨大なチャクラを手に入れ、三尾の力を手に入れた天女は全身を異形化させる。手に入れたばかりの尾獣の力を完璧に制御して、三本の尾を生やしながら同時に仙人モードをも発動させたのだ。
隔絶したチャクラコントロール技術を要する、羽衣天女だからこそ可能にする現象である。
マダラの太刀の威力が跳ね返され、生じた爆風で距離を取らされた柱間は友の攻撃を咎めた。
「マダラ! あのまま聞いておれば敵の狙いが分かったかもしれんのだぞ!」
「黙れ! どうせ殺す敵で、潰す計画だ! 知ったところでなんになる! それに悠長に話している暇などあるまい、前を見ろ柱間! 来るぞッ!」
後少しで尾獣達のチャクラが一点に集まり、よからぬ事が起こりそうだったのだ。マダラの攻撃はそれを中断させるためであり、彼の判断は決して間違いではない。
舌打ちしたが、柱間もまたマダラの正しさを認めた。意識を戦闘に切り替える。人ならざる姿となった、異形の肉体――されど以前の醜さはなく、寧ろ美しく崇高な怪物となった天女は、黒い当世具足を三尾の甲殻と同化させた。機能性と機動力を損なわず、ただでさえ桁外れだったパワーを肥大化させたのだ。神速を以て飛び上がった天女の背には甲羅じみた翼、それを羽ばたかせマダラに飛びかかるや、三尾の亀の甲殻を棍棒として形成し、更に異形の仙人モードにて肘へブースターを生み出し、ジェット噴射しながら須佐能乎を得物で強打する。マダラは本能的に須佐能乎で防御するも、余りの怪力に吹き飛ばされる。
「うちはマダラ。君は私が殺してあげる。インドラ様の為に――食べないで、グチャグチャにしてドロドロにして潰れた魚みたいにしてあげるよッ!」
「ッ……面白い、尾獣の力を手に入れたところで、このオレには届かんことを教えてやる!」
山の如き巨大な鴉天狗と、人型のサイズでありながら互角にぶつかり合うマダラと天女。
人の域を超越した激突を尻目に、インドラは柱間と対峙した。
「――やはりうちはマダラは有象無象ではないな。俺の天女が一度は敗れたのも頷ける」
「……奴は、オレとマダラが仕留めたはず。なぜ生きている?」
「さあな……それよりお喋りに興じていて良いのか? じきに俺の目的は達成できる……体を出来るだけ綺麗な形で手に入れたい。大人しく殺されてくれ。それが世界のためだ」
「それは出来ん相談だな……ッ! 貴様、その目は!」
「何を驚く。とうに知っていたのだろう?」
インドラの眼が、赤く染まる。基本巴ですらない、万華鏡写輪眼だ。
「うちはの体を幾つも手に入れた……これはと思う細胞を年月を掛けて取り込み、数百年の研鑽の末に辿り着いたのだ! 我が肉体は最早殆どがうちはのソレよ。故に――こんな真似も出来る!」
「………!」
斯くして出現するのは、漆黒の須佐能乎。それもマダラ同様の完成体。気配を感じて視線を向け、目を見開いた隙に天女に殴り飛ばされたマダラを横に、柱間は両手を合わせて瞑目する。
どうやら初めから本気で掛からねばならない敵のようだ。
敵が友であれば逡巡し、全力を出すのを渋っていたであろう柱間だが、相手が友でもない純粋な敵とあらば出し惜しみもない。彼の貌に一瞬にして隈取が現れる。彼は知覚していた。ここは自然の気配が完全にない、木遁の力は微かに減衰する。真数千手を出すには少しの溜めがいるが、その少しを待っては貰えないだろう。故に切り札を出すのは最後のトドメ。それまでは――
「仙法・木遁――木人の術!」
振り下ろされてくる霊剣・十拳剣。最強の剣とされる草薙剣の中でもなお、最強と号される両刃の大剣を生身で受けたらマズイ。柱間ですら封印は免れないだろう。故に彼の選択した術はこれだ。
マダラ、インドラの完成体須佐能乎に匹敵する巨躯の木人。それを僅か1秒未満で完全に生み出した柱間は、十拳剣を木人の片腕で容易く受け止めた。そして反対の手で殴り掛かるも、それは八咫鏡で受け止められる。黒き天狗と仙人の木人、互いの頭部から柱間とインドラは視線を交わした。忍の神に、邪なる思惑を隠しもせず、敵は嘯く。
「雑兵共は手隙の尾獣共に任せる。チャクラの殆どを抜き終わったガラクタ共だが、雑魚の相手には充分よ。俺達の間に邪魔は入らん、さあ――遊ぼうか、千手柱間。俺に感じさせてくれ……!」
うちはマダラ、対、羽衣天女。
千手柱間、対、大筒木インドラ。
――忍界に於ける戦国時代。その最後にして最大の戦いが開演する――