バトルは基本、本作の後半から。それまでゲロ以下の下水煮込み野郎の暗躍、詐術、黒幕気取りムーブをお楽しみくださいませ。
開演する――開演した。
したんだけど。
ボコボコですわボコボコ。
チャクラ量は互角。瞳力を入れたら動体視力とかはこちらが上。長年蓄積した色んな技術を出し惜しまずにやってるから技量も上。チャクラコントロールも術の多彩さもパワーも上で、なんなら機動力や最大スピードもこちらが上。負けてるのは再生力とスタミナ回復力ぐらいなもので、普通に考えたら俺の圧勝に終わっても不思議じゃないはずなのだ。
だがカタログ上のスペックでどれほど勝っていても、普通に勝てない。
なんの意外性もなく、ご都合主義の片鱗すらなく普通に負けてしまった。
なんでだ?
いや負けた原因は分かる。
これでも百年単位で研究者やってるし、そんな分析は箸を持つより簡単だ。
俺の敗因はずばり、俺の戦闘センスが柱間より格段に劣る凡夫だった事。これに尽きる。
柱間は木人の術でこっちの須佐能乎の攻撃を耐え忍び、木人から挿し木の術をガトリング砲みたいに連射し牽制、木龍で足止めとかしながら只管長期戦に持ち込んできたのだ。
持ち前のタフネスで俺の猛攻を凌ぎ、十拳剣だけは絶対に生身で受けず、負傷しても忍法・創造再生で回復、チャクラは仙人モードで常時満タン状態を維持。後はこちらの戦術を分析しつつ術を的確にガード。そうしてこちらが疲れ始めた頃を見計らい反撃開始だ。
仙人モードになってるからか性能が段違いの木人で俺の須佐能乎に鯖折りしながら拘束、更に封印術の『仙法・明神門』で鳥居を呼び出し身動きを封じてきやがった。そこから更に木遁・花樹界降臨でフィールドにスリップダメージを付与し、俺が須佐能乎から出てこられないようにした上で、自身は木人から離脱し数秒チャクラをチャージ――そして仙法の真数千手でトドメだ。
チャージタイムが五秒以内ってどうなってんの……? 唖然とする俺に、千の腕で五百対の印を結び、木遁規模の五大性質変化の術を流星雨の如く降り注がせて、八咫鏡に前面をガードさせて来た上で必殺の『頂上化仏』で横からタコ殴りだ。こんなん死ねるで……これが相手が友であるマダラじゃない時の、弱体化してない生前の柱間の本気の本気……まさしく忍の神ですわ……。
流石に一気にチャクラを使い過ぎたのか、肩で息をしているし辛そうだ。しかしチャクラは回復し続けているため、すぐに全快状態になる。うわぁ……こりゃ輪廻眼使ってても粘り勝ちされるわ。まるで勝てる気がしないぞ。こっちが柱間を殺すには不意打ちで即死させるしかないだろう。一応チャクラを使い果たして、回復し終わってない今なら殺せるかもだが、それも出来ない。
怪獣大決戦で、忍同盟がうちはイズナの万華鏡写輪眼を主体にして尾獣達を無力化している。万が一にもこちらが勝たないように、あらかじめ尾獣達からチャクラを抜いて弱体化させていたとはいえ、計算していたよりも早い決着である。おまけに三尾の人柱力となった天女もマダラに真っ二つにされ、火遁で消し炭にされていた。こっちの技術も写輪眼でコピーして、加速度的に技量を上げていくマダラの成長速度に対応できなかったのだ。
忍同盟とマダラに囲まれてるから柱間ぶっコロ狙うのは無理。仮に柱間が一人でも対応して来るんだろうなっていう厚い信頼が芽生えちゃってる。マジで柱間を九尾の人柱力にして、六道仙術を身に着けたら、単独で宇宙人どもをブチ殺せそうで笑えてくる。
分かってはいたけど、ホントに俺って戦闘のセンス無いわ。何百年も修行してるのにこれってマジで才能が無い。そのことを痛感したね。自信無くすわ。黒幕気取りは大人しく裏にいるに限る。
でも良いんです。柱間を化け物通り越して神様見てるみたいな忍同盟の畏敬の目。ライバルとの実力差を知り呆然としているマダラ。この状態に持っていけただけ充分よ。
「ハッ……ハッ……インドラよ、最早これまでぞ! 貴様の計画は潰える、観念して捕虜となる気はないか!」
降伏勧告してくれる柱間。優しい。……いや優しくないぞ。捕虜になったら尋問からの尋問さらに拷問コースを経ての山中一族の脳味噌クラックのコンボになる奴じゃん。
さては柱間、まだこちらが何かしてくると察知して揺さぶりに来たな? こんチクショー! 流石はエドテンを知っても「あまり良い術じゃない」で済ませる戦国脳だ! でも許しちゃう。
ズタボロで片膝を突いてる俺は、柱間の言葉に乾いた笑いを浮かべた。
「ここまでして尚、敗れるのか……口惜しいな、後一歩というところで躓くとは……だが認めよう、貴様らは強い。敗れた以上は潔く勝者を讃えてやる。おめでとう人間、おめでとう我が末裔!」
「……末裔、だと?」
「我が名は大筒木インドラ。即ち六道仙人たる大筒木ハゴロモの嫡子にして、チャクラの始祖カグヤの血を引く者である。故に始祖よりチャクラを貰い受けている貴様ら忍は、余さず全て我が血族に等しいのだ。時を経て些か枝分かれし過ぎているがな……」
言いながら立ち上がる。ボコボコにされて全身打撲、内臓破裂、片腕欠損など重傷の身だが、俺が動いただけで忍同盟からクナイと手裏剣が飛んできた。柱間との戦いを見ていたからか、怯えが混じってはいたものの、戦国産忍者らしく胴体に直撃させてくる。
うーん、見事!
投擲物の衝撃でよろめいて、出血しながらも続ける。滅茶苦茶痛いけど、痛いのは生きてる証拠だねってことで無視だ。というか肉体的な痛みで怯めるような精神構造をしていない。
たぶん死んでも死なないって知ってるからだろう。どんな痛みを受けても深刻にならないのだ。
「
俺が吼えると――種子状に変形して九尾の尻尾に潜んでいた木分身が、密かに人型に変化して輪廻眼を開眼。本体にリンクを繋げる。本体は状況を把握し万華鏡の瞳術『古丹』を解除した。
瞬く間に戦場となった古丹空間が閉鎖され、元の地下空間へと回帰していった。イズナの万華鏡の瞳力で無力化されていた尾獣は――その気になったらイズナの瞳力は振り切れるが――古丹空間に隔離したまま、忍同盟の面々を締め出してやった。
目の前の光景が突如として変化し、動揺した隙を突いて俺は印を組む。あたかも俺が古丹を発動したように見せかけるためであり、逃げるためでもある。俺の足元に古丹空間の入り口が開かれ、落下する形で離脱しようとしているのだ。
だが神威のような出鱈目な回避能力はない。柱間は素早くクナイを飛ばしてきた。
「逃さんッ!」
「ぐッ」
クナイは見事に額を掠めた。額から出血する。瞬間、柱間が印を結ぶ。見たことのない印だ。両手を組み右手の人差し指だけを立てた印――しかし俺はそのまま古丹空間に落下し、入り口は閉ざされる。これで逃げ切れた。
と、思うじゃん? 逃げれてないんだよな、これが。
柱間が最後にやったのは、飛雷神のマーキングをあのクナイから俺に移す術だ。名前は差し詰め転写刻印ってとこかな? 知らんけど。それにより俺の額にマーキングは移ってるから、扉間からの奇襲攻撃が来たら意識の外から一撃死をもらうことになる。
流石は卑影。別天神で指示を出す前に、話を聞き出しておいて良かったよ。エドテンの印も、エドテンされた側から契約を切る印も知れた。おまけに扉間が色んなケースを想定して、柱間にだけ今みたいな作戦を伝えておいたのも凄い。どんだけ策を練ってんだ。
だけど、既にそれも知っている。奇襲は奇襲たりえないし、元々俺は扉間に殺されてやるつもりだった。計画に変更はない、ちょっとだけすり合わせる箇所が発生しただけだ。
再び古丹空間が開かれる。今度は
大筒イブキに扮している本体が印を結んで、柱間達と遊ぶために用意していた木分身A部隊を全員消した。チャクラを自身に還元し手を伸ばすと、俺から万華鏡を抜き取り本体の輪廻眼と交換してくる。よしよし、後は計画通りに進めるだけだな。
「――転写封印。からの、イザナギ。後は任せた、これより暫く先まで
「了解。せいぜい楽しみな、本体」
俺の眼窩に移った輪廻眼に、本体の瞳力が転写される。加えてイザナギにより、本体の眼窩に収まった万華鏡が光を失った。用途は
これにより本体が死んでも俺や他の木分身は消えない。俺が本体だと現実を騙したのだ。つまりうちはインドラの本体が、同時に二人いる状況を生み出したわけである。
「柱間に言うべきことは言った。マダラに柱間の力を見せた。計画から外れているが
「ないだろ」
「――なら準備は整ったな。始めよう、俺の本当の計画を」
本体の眼。輪廻眼を万華鏡に戻し、古丹により異次元に移動する。
足元に開いた時空間に落ちていく最中に俺が見たのは――
千手扉間が刀を抜き、大筒木インドラと本体の首を刎ね飛ばしたところだった。
敵の首魁を取り逃がした。
まさかの作戦失敗に動揺する面々だったが、柱間は落胆していない。
あたかも何かを待っているかのように腕を組み、地下空間から動こうとはしなかった。
風の国の首都、その地下。地上は砂漠地帯であるのに、些か涼しい所だ。
こんな所にいないでさっさと敵を追う方法を考えよう、と忍同盟の面々は言う。
だが柱間はまだ待てと言うばかりだ。
そんな彼らから離れた所に、マダラは立っていた。
「柱間……いつの間に、あれだけの力を……」
千手柱間は幼い頃からのライバルだった。
マダラと対等に戦えるのは柱間だけで、その逆もそうだったはずだ。
だが、今は違う。永遠の万華鏡を手に入れ、瞳力を強めた結果手に入れた、完成体須佐能乎。これがあれば柱間にも勝てると高揚していた気持ちは、既にない。
仙術による木遁の強化。ライバルが見せた敵首魁との全力の戦いは、マダラをして自身を遥かに超えると認めざるを得ないものだった。
屈辱だった。マダラにとって、柱間は唯一無二の友。友であるからこそ負けたくない。単なる意地の問題だったが、彼はなんとしても強くなり、柱間のあの次元に上り詰めてやると闘志を燃やす。
彼の心に曇りはない。今のマダラは安定しているのだ。友に負けたくないという思いは、あくまでもうちはマダラ個人の意地の話であり、そこに屈折した感情はないのである。
故に、彼は虚を突かれた。
不意に胸元に違和感を感じ、懐に手を入れる。
――この時、うちはマダラの長きに渡る修羅道が、幕を上げた。
「ッ……義父殿――!?」
それは遠く離れていようと、対象の命脈を知る事の出来る紙片。
マダラが取り出したそれが燃え上がり、一瞬にして灰になったのだ。
驚愕したマダラだったが、同時に混乱していた。なぜ燃えた? 燃えた意味はなんだ? 燃え尽きた理由がすぐには飲み込めず、理解出来ない。
愕然と手の中の灰を、食い入るように見詰めるマダラの視界の隅へ――柱間の隣に、突如として扉間が現れるのが映った。
おお、扉間! 首尾はどうだ! 破顔してそう問う柱間に、扉間は手に待つ首を掲げる。
それは大筒木インドラの首だ。見事に敵の不意を打ち、討ち取ったのだと告げている。
これによりあの空間は消え去り、捕らわれていた尾獣もこの世界の何処かに現れたはずだと扉間は言う。後はどうとでもなるだろう、と。敵の首魁を討ち取った扉間の功績は大きいと誰もが認めざるを得なかった。
だが――扉間を見たマダラは、そんな話など聞いていなかった。
満身創痍の扉間は、奇襲は成功したが手こずったと言っているが――違う。あの傷は大筒木インドラに付けられたものではない。何故なら、
チャクラは精神エネルギーと身体エネルギーの二種に分類され、血液には身体エネルギーの陽遁チャクラが交じるものである。それ故に口寄せの術などでも、血を契約の媒体に出来るのだ。
そして扉間の浴びている血には――
「まさか――」
マダラは信じたくなかった。
故に何も言わなかった。
だって誓っている。愛する妻の父であり、敬意を払う主君であり、同胞である彼を助ける事を。
死んでいい人ではない。殺される謂れはない。そのはずだ。
有り得ない、有り得てはならない。そんな馬鹿なことは。
まだ確かめていないのだ、案外まだあの人は生きている可能性はある。
事実を確かめるまで堪えろと念じる。
マダラは必死に、己の内から湧き出ようとする憤怒と殺気を抑えた。
抑えたが。
男の中に、拭い難い疑惑が芽生えた。