っぱ、好きなんすねぇ!
お蔭でモチベが天井にブチ当たり申した。
う、美しい――
堪らず見惚れてしまった。
マダラの苦悩、親友との対決、そこに至る全てを見て感動した。
どんな絵画よりも芸術点が高い。まさにセカンドプラン『前作主人公ラスボス化』の極致だ。
自画自賛みたいでちょっとキショいが、この感動を誰かと共有したくなる。
けど流石にビビった。まさかマダラが柱間に勝つとは。しかも九尾の人柱力になるなんて。
あまつさえ老衰する間際まで開眼しないはずの輪廻眼を、柱間を倒して肩の肉を食った直後に開眼するとは……慌てて退散する羽目になったよ。輪廻眼なら精神生命体の俺も見つかってしまう。
伊達に歳を食ってない、逃げ隠れは俺の十八番よ。
輪廻眼を得たマダラには近寄れない。もう少し見てたかったけど諦めよう。あの様子ならマダラは絶対にラスボスになる。インドラの出る幕は……たぶんちょっとしかない。
さあ仕事だ仕事。
まだやり残しがある。
俺という存在に辿り着きうる要因は全て排除だ。
此処まで来たら俺は基本的に蛇足だからね、あってはならない存在だと自負している。
手始めに大筒家にあるナルハタの遺体を使う。あれほどの作品を使い捨てるのは勿体ない。リサイクル精神豊富の俺としては、今後とも活用していく所存だ。
まずはインドラくんと接触した。阿と言えば吽、俺のしようとしている事に合わせてくれる。
インドラくん二代目本体は、卑遁・身代わりの術で外道・輪廻天生を行使。拘束した状態のナルハタを蘇らせ、自我すり潰しの刑を敢行。――が、意外! ナルハタは幼稚園児並みの精神年齢のくせして、幻術にも拷問にも耐えてきやがった。麻薬もシャットアウトである。
流石は頭うちはだぜ。愛の力かな? 物理的にも頭うちは――脳内に特殊なチャクラが分泌されてるから麻薬が効きにくいのかも。今更ながら新発見だ、人生って学びの連続なんやなって。
まあいいや。たとえ耐え切っても消耗は免れない。弱ったところで俺が乗り移る。ナルハタの魂は精神世界の奥深くに封印だ。原作でナルトの体に九尾を封印していた感じのイメージである。
封印術がうずまきの専売特許だと思うなよ。こちとら天敵の封印術対策に、その手の研究は欠かしていなかったのだ。封印術の腕前ならうずまき以上であると確信している。封印術・屍鬼封尽なんか目じゃない強度の封印を、特にリスクなく行使できるレベルなのだ。
精神世界で娘を檻の中に入れる。九尾すら出られない封印だ、愛の力でもどうしようもない。素晴らしいセカンドライフのプレゼントだ! 受け取ってくれよ! いずれマダラにも会わせてあげよう、なんなら俺自体をぶっ飛ばしてもいいぞ! 出来るもんならな!
――普通に出来そうで困るのがNARUTO世界だ。まあそん時はそん時よ。
ともあれナルハタ二世として活動させてもらう。外道棒は脊髄から摘出しておいた。インドラくんのお茶目心に振り回されたくないし、こっから先はお互い不干渉でいくからね、仕方ない。
インドラくんからは幾つかの餞別をもらってお別れである。きっとあっちはあっちで特等席を用意して物語を観戦していくのだろう。便利な体で羨ましいぜ。こっちは初代本体なのにナルハタ穢土転生防止の安全弁しなくちゃなんないのにさ……こんなのってないよ。
なおナルハタは扉間にエドテンされてない。あの時に先んじてエドテンされてたら詰んでたが、流石にそんな事をしたら扉間は弁解する暇もなくマダラにブチ転がされている。
うちは夫婦のおしどり夫婦っぷりは有名だったからね、リスクは冒せなかったわけだ。さしもの扉間も微妙な時期だったこともあり自重したらしい。
お蔭で助かったぜ。いや扉間ならマダラが生きている内はそんな真似しないと分かってたけど、終末の谷の戦いの後ならエドテンを試みる可能性は無きにしも非ずだ。故にナルハタの墓は何処にあるか分からないようにしてる。ぶっちゃけるとそんな
ない物は見つけられないって戦法よ。
生前に出ている遺伝子情報も抹消した。これで扉間がナルハタをエドテンしようとしても無理、俺の見落としがあってもエドテンは出来ない。ナルハタ二世として俺がいるのだから当然だ。ただエドテンに失敗したという点だけで、扉間は何かに勘付くだろうが――時既に遅しである。大筒木インドラ(偽)が何かをしたと勘繰り、対策を練るのが精一杯だろう。
だって木ノ葉の政権はガタガタだ。こっちに手を出す余裕なんかないと断言できる。
マダラはうちはの英雄のままだし、千手は名声に傷がつきまくってる。うちはを追い落としたのは千手だと、誰もが勘繰ってる上に、とうのうちは一族は完全に千手を憎んでいるままだ。
嫌われてない英雄の里抜け。真の初代火影はマダラだとずっと言い続ける勢いだ。英雄に纏わる悲劇も知ってるし、有力な千手閥のうずまきもうちはに付いている。柱間も扉間も苦労するだろう。
なお、マダラからチャクラを分けられ、どうなるかとヒヤヒヤしていた柱間は、マダラから付けられた傷が何故か癒えず――いや、自責の念か何かで敢えて癒やさなかったのかもしれないが――そのまま衰弱している。これなら遠くない将来普通に死にそうだった。もしかしたら綱手姫誕生まで保たないかもしれない。別に良いんだけどね。そんなのどうでもいいし。
俺にとって一番用心しなきゃなんないのは、ナルハタの遺伝子情報を渡さないこと。
こちらは完全に達成したと思っている。
だが万が一扉間が俺の見落としを発見した場合に備えて、俺も対策を練っておくことにした。
さておき、肉体がナルハタという女になったのだ。『俺』は他にいることだし、こちらの一人称は『私』で通していこうと思う。こういうのはなりきる気持ちが大事だろう。
私がインドラくんから貰った餞別は、古丹空間に繋がってる時空間忍術の巻物だ。飛雷神のマーキングを応用した形である。これで何時でも写輪眼を確保出来るので、イザナギも使い放題。インドラくんの遺伝子を継いでる体だし、私本来のチャクラがあるから他人には真似できないイザナギ印の若返り術も使い放題だ。永遠の美を残すぜ。ナルハタはマダラの女だからね。
いつか来たる約束の日に備え、記憶中枢から物理的に私に関する記憶をぶっこ抜けば安全安心の感動的再会を果たさせてやれるだろう。そんな機会が来るとは思わんけど、ラスボスが主人公に勝ってしまった場合の保険、ご褒美だ。こういうのは用意しておくに限る。
――そう。主人公、主人公である。
私はマダラをラスボスにした……というか、ラスボスになる為のレールを敷いた。
だがラスボスには絶対に必要な存在がある。それはラスボスと対になる主人公の存在だ。ラスボスを用意したのに主人公には何も無しだなんて、そんなの片手落ちもいいとこだろう。
よって私の次の仕事は主人公育成計画だ。やり甲斐があるぜ……!
今現在、私が主人公にしようと目論んでいるのは、うずまきナルトだ。というか主人公に一番相応しいのは次代アシュラのナルトしかいない。流石の主人公ヂカラだぜ……お前がナンバーワンだ!
もしかしたら次代アシュラがナルトという名前にならないかもしれないが、まだ生まれてないので仮称『ナルトくん』と呼んでおこう。
主人公育成計画、こればっかりはインドラくんには出来ない仕事である。万が一、億が一にも尻尾を出すわけにはいかないインドラくんは、原作終了後まで身を隠し続ける必要がある。そこでこの私という存在が活きるのだ。――ナルハタ二世の私にしか出来ない計画、素晴らしい主人公の為にも頑張るぞい。インドラくんも応援してくれよな!
私はNARUTOが大好きだ。主人公のナルトも大好きだ。マダラと同じぐらい好きである。
手は抜かない。全力で仕事に取り掛かるぞ。
あとフィナーレまでの暇潰しにもなるしね(本音)
手始めに木ノ葉に潜り込む事から始めたいが、そのためには邪魔な扉間が死ぬのを待たないといけない。だってどんなに里がガタガタでも、立て直して盤石の体制を築くぐらい可能だ。扉間なら。
原作での内政の手腕は神だ。うちはの処遇も完璧と言える。ダンゾウとかいう老害さえいなければ、うちはは里中の尊敬を得たまま警察を続けられる立場を確立したのは流石としか言えない。よって扉間が生きてる内に木ノ葉に潜入するのは自殺と一緒だと断言できた。
まあ原作ほど完璧には出来ないだろうけど、それが逆に功を奏しそうだ。火の意思ならぬ卑の意思蔓延る木ノ葉の民度が、扉間が完璧な仕事を出来ないことで弱まっているからである。
バタフライ・エフェクトのせいで色んな歪みが出ている。迷惑な話だ。おのれインドラ!
ともかく油断大敵。扉間が死ぬまでは大筒家に匿ってもらおう。一度幼女にまで若返り、シュテンの娘という身分に滑り込んだ。おっほっほ、これで私もお姫様ですわよ!
せっかくだしお姫様ライフでも楽しみますかね……。でもお姫様らしさって何よ? よく考えたらお姫様したことない……これもまた新鮮! エンジョイあんどエキサイティング!
とか思っていたけど、お姫様の暇なこと暇なこと。なーんもすることない。こんなんじゃ私お姫様したくなくなっちまうよ。インドラくんに用意して貰ったポストだけどいらねぇですわよ。
うー、暗躍したい。計画進行させたい。これがワーカーホリックという奴ですのね。
ナルト育成計画でも考えておこう。黒幕気取りで色々やった私だけど、ナルトは真っ当かつ王道のレールを敷かなきゃだ。というかナルトの鋼メンタルをどうこう出来る気がしない。
マダラはうちはだけあってメンタルが隙だらけだったからね。サスケも難易度は低い。むしろマダラよりちょろいまである。反面、ナルトは鋼の心を持ってるから、下手な真似したら尻尾を出してしまうだろう。だってクソみたいな環境で育ってもアレだったんだし。
ナルトは落ちこぼれの皮を被った天才だ。幼少期のクソみたいな環境のせいで、色んなとこが未発達のまま、一番才能を伸ばせる時期を棒に振ったのが痛い。
ナルトは天才だ。影分身の術を独力で巻物を見ただけで身につけ、九尾のせいでチャクラコントロールが覚束ないのに螺旋丸を覚えられるレベルである。風遁螺旋手裏剣もだ。影分身修行をしたとはいえそれは驚異的だろう。故に私はナルトを人柱力にはさせない。
やっぱり初期能力は重要なのよ。素のスペックが低かったらラスボスには勝てまい。かといって人柱力特有の力がないのも痛いが、そちらを補填する策はある。上手くいかせる自信はあった。
ナルトは確実に生まれる。
ナルトは予言の子だ。ネタバレ反対派なので内容は知ることがないように気をつけていたが、一応ナルトが生まれるかどうかだけは確かめておいた。予言はナルトの誕生を示唆している、なら運命的に考えてナルトだけは絶対に生まれる。安心して計画を練れるってもんだ。
私はそんなナルトの為に沢山のことをやるつもりだ。今は木ノ葉に入れないので、今の内に外で出来ることをやろう。お姫様ライフしてたら退屈過ぎてそこらの庶民で遊んでしまいそうだ。
女の体を利用して、子供を量産するとか、有力な一族の忍を誑かして入り込むとか、そういうことが出来たら楽なんだけど……この体はマダラの妻だからね……そんなことをしたら美しい物語が美しくなくなってしまう。美の巨人としてそれだけは看過できませんな。だからこの手は使えない、ならば私がゼロから固めていくしかあるまいて。お姫様の立場を利用するのだ。
身分を隠して市井に紛れ込み、茶屋の看板娘をしよう!
理由は特に無い。考えれば考えるほど、本当にやれることがなかったのだ。悲しいなぁ……もう大人しくしているしかない。大人しく計画を練っておくだけにしておこう。
――扉間が死んでからが本番だ。木ノ葉の人間になる手立てを、今一度洗い直す。
(待っててね、ナルトくん。私が行くよ)
私はまだ見ぬ主人公を想って、にこやかに笑った。