俺の体の元の持ち主を倒したアシュラ転生体が死んだ。
死因は奇しくも千手柱間と同じで、インドラの転生体に付けられた傷が元で衰弱し、そのまま帰らぬ人になってしまったのである。
現在は戦国時代ではない。うちはと千手の確執、対立はあるが、他の一族は一族単位で殺し合うほど殺伐としていなかった。敵性忍者の死体を調べたり、生きたまま解剖したりしないのだ。
だからだろう、アシュラ転生体は千手一族に普通に埋葬されていた。迂闊というか、警戒心が薄いというべきか……後世だったら愚か極まるが、今の時代だとそう珍しくもないのだろうが……。
お蔭で楽々アシュラ転生体(木遁仕様)をゲットできた。新鮮な死体だ、全身の細胞が壊死する前に、生きてる細胞を俺の全身に移植していく。驚くべきことに、アシュラ細胞は本人が死んでもまだ生きている部分が多く、俺の首から下はアシュラ細胞になった。
凄まじい侵食率で危うく樹に成りかけてしまったが、アシュラ転生体が死ぬ前にうちは一族の集落に忍び込み、確保していた写輪眼で『イザナギ』を使うことで拒絶反応を消し去り融合に成功。俺は完全に全身インドラ&アシュラ細胞のハイブリッド体になった。
木遁が使えるようになったし、中身の俺が神樹由来生物だったお蔭か、マダラすら開眼するのに長い時を要した輪廻眼も、アシュラ細胞を大量摂取しただけで手に入れられた。
クローン研究するための設備を一から造ることも考えると、向こう十年から百年は隠遁生活を余儀なくされるだろう。
時間だけは腐るほどある。研究が実を結ぶまで、クローン完成までうちは一族から定期的に写輪眼を盗むのだけ忘れなかったらいい。『イザナギ』で老化した体を若返らせるためだ。自身の死をもなかったことにできる『イザナギ』なら、老化を解消する程度は容易い。
……今思ったが、なんで原作のマダラは『イザナギ』で若返らなかったのだろう。
一度本当に死なないと計画の進行に差し障る何かがあったのだろうか? 黒ゼツに騙されていたから、一度は素直に死んだ……とは思いたくない。
考えられる事情は、マダラ自身の性格か。マダラはあれで規律に厳格で、本人は戦闘で禁術を使ったことがない。むしろ禁術を使う敵を諌めるような台詞を言う始末だ、『イザナギ』みたいなインチキは使いたくなかったのかも。しかもうちは一族の命とも言える写輪眼を失明させる瞳術だ、そもそも使うという発想すらなかったのかもしれない。流石はマダラだ。格好いい。
そんな拘りは俺にはない。……すげぇ格好悪いな俺。拘りのない悪役とかクソだクソ、やはりラスボスの器なのはうちはマダラしかいない。例え今の俺の肉体性能が六道仙人化してない輪廻眼マダラ並でも、俺自身に戦闘センスがなさそうな上、プライドも何もないのでラスボスを張る資格はないだろう。とはいえラスボスは無理でも黒幕にはなれる。そっちを頑張るぞ。
光陰矢の如し。何百年も生きてたら時間経過はマッハに感じる。
インドラを名乗るようになって――まだ誰にも名乗ってないが――約九十年が経過した。
研究設備を造るのに五十年、そこから四十年かけてインドラのクローンを培養した。
地下に創った秘密基地に、数百本の樹が乱立してある。空洞のある地下空間に森があるみたいなもので、その樹の全てにインドラ(アシュラ細胞込み)が成っていた。
傍から見たら凄い光景である。上半身が樹から生えてる全てのクローン・インドラが、物言わぬ物体として存在し、全てが万華鏡写輪眼を見開いた姿のままでいるのだ。これは凄く怖い。
『イザナギ』を使ってヨボヨボの爺から若返ると、失明した目を抜いて火遁で焼却。クローンの目を抉り、自身の眼窩に嵌めた。自分の目だけあってすぐに馴染む。この目は闇がよく見えるぜ。
俺ことインドラの万華鏡写輪眼の固有瞳術は、写輪眼ガチャSSRと評判の神威だった、なんてことはなく。神威の劣化版であるSR瞳術で名付けて『古丹』だ。神威はカムイと読む。古丹はコタン。カムイはアイヌの高位神格で、カムイコタンがカムイの住む場所という意味である。そこからこじつけて名前を付けた。能力は神威と似ていて、対象を異空間に仕舞ったり出したり出来る。
が、神威と違うのは、自身はすり抜け回避とかが出来ず、また睨んだ空間を抉りとることも不可能。古丹の能力は右目で神威空間っぽいのを開いて、左目で閉じるというもので、空間は開閉できるがそれだけだ。戦闘に使うのは非常に難しい。
戦闘用として見たら大ハズレのノーマルレア。だが暗躍に用いるとなったらスーパーレアといったところ。俺のスタンス的には大当たりだ。だって俺が戦うことなんて無いはずだし。
いやね、俺ほんと闘いたくないの。だってこの体は俺のじゃないし、研究を割りかしスムーズに進められているのはインドラの知識のお蔭だ。そんな俺が戦って勝っても、盗んだバイクで走り出した非行少年よりみっともない。無駄に
ひとまず研究が実を結んだので、この秘密基地も引き払おう。いつまでも同じ所にいたら、隠密特化の黒ゼツに見つかってしまう恐れがある。見つかるだけならいいが、最悪研究成果をネコババされる可能性もあった。それはいけない、原作が崩壊してしまう。
万華鏡写輪眼で古丹空間を開く。必要な機材とかインドラ・クローンの成ってる樹を、木遁分身で古丹空間へ持ち運んだ。影分身の術は千手扉間が開発する禁術で、俺はそれを再現しての開発は出来ていないが、より高性能な木遁分身は割と簡単に出来た。たぶん扉間は兄・柱間の木遁分身を見て、廉価版として影分身の術を思いつき開発したのだろう。
古丹空間を閉じる。
俺がやりたいことは『うちはマダラ・真のラスボス化計画』だ。そのための下準備を入念に、丹念に、完璧に熟したい。なぁに時間だけは腐るほどある、永遠の万華鏡写輪眼と輪廻眼の能力さえあれば、柱間たちの戦国時代までには完遂出来ているはずだ。
「火遁・豪火滅却」
原作知識を利用し、インドラの肉体の才能を利して再現した強力な火遁忍術にて、不要となった地下秘密基地を焼き払う。一片たりとも痕跡は残さない。黒幕気取りのクソ
俺はるんるん気分で旅に出た。これからは――火の国が建国されるまで修行の日々だ。戦闘を行なう気はないが、高位の戦闘力を持つのも黒幕気取りの嗜み。元々インドラはバカ強いが、ハードはよくてもソフトがクソザコナメクジなので修行は必須である。ソフトである俺がクソザコで、センスの欠片もない運痴でも、百年単位でじっくり修行したらそこそこいい線は行くと思う。
よぉし頑張るぞぉ――と、気合を入れたのが二百年前。
俺はいつの間にか建国されていた火の国の首都に侵入し、大名を写輪眼で洗脳した。護衛の侍は全て写輪眼の幻術の餌食だし、忍を雇ってなかったので潜入も洗脳も簡単だった。
流石はNARUTO世界、忍が最強で侍は雑兵だ。一部例外を除いて侍は忍の足元にも及ばない。なんでこんな奴らに原作の忍たちは従ってるんだ……? 普通に力で支配しても、幻術で支配下に置いてもいいだろうに……割と謎だ。まあいい、首尾よく大名を幻術の影響下に置けたのだから良しとする。暫くは大名を生かしておく。すぐ退場してもらうけど。
火の国の大名を退場させる前に、俺は俺で木遁分身に見つけさせておいた、あの原作キャラの君麻呂の祖先、『かぐや一族』の女を攫って写輪眼で誑かし子供を作った。インドラとしてうちはとは別の一族を作っておくのだ。まあ一族とは言っても、数は精々5人そこらの少数に留めるつもりだが。だって管理とか面倒臭いし……。
かぐや一族の女に産ませた子供は5人。男が3人で女が2人だ。うちはと名乗るわけにもいかないので、今後新しい一族には『
大筒木とかいう神樹の実の簒奪者どもを揶揄する名だ。
子供たちが幼い内に母親は処分。子供たちも入念に、幻術を交えての教育で洗脳。その上で傀儡にしていた大名の息子に娘を嫁がせ外戚になる。もちろん大名の息子も傀儡にしていた。
舞台作りは大変だ……心が痛む(大嘘)
さておき世代交代の時間はすぐに来た。大名が病死(大本営発表)し、息子が後を継いだ後、俺の孫とも言える嫡子が生まれて二十年後に俺の娘婿も病死(大本営発表)した。子供は1人しかいなかったので、必然的に俺の孫が大名になった。やったぜ。
幾ら血筋がよく才能が神懸かっていても、修行したこともない子供に幻術を掛けるなんて朝飯前だ。火の国の大名は苗字を『大筒』に改名し、乗っ取りに成功。ここからが本番である。
俺は傀儡一族と大名に命じ、戦国時代に突入する前に忍を雇わせる。その忍は、
彼らを専属契約で取り込み、火の国の重臣と同等の待遇を与える。うちはが千手一族とそれ以外の一族と争いを起こすとそれを全面的にバックアップし、恩をこれでもかと売りつけ続ける。
先祖伝来の主従関係を構築していけば、後にうちはマダラにも接触しやすくなるだろう。
火の国の大名『大筒家』は、『うちは一族』と百年単位で蜜月の時を過ごすのだ。うちは一族の主は火の国の大名一家なのだと刷り込んでいくのである。
ここまで来たら、俺がやることは殆どない。舞台作りはおおむね完了したと言ってもいい。
黒ゼツが『うちは一族はこっちが先に目をつけて利用してるんだから返せ』とか言いに現れたら、馬鹿めと言ってブチ殺してやろうと思っていたが……流石に俺の前に現れることはなかった。インドラ転生体とアシュラ転生体にしか用はないのだろう。
計画は軌道に乗った。俺はただ大筒家が増えすぎないように管理し、洗脳教育が破られないように見張って、大名の座を守り続けさせるだけでいい。容易いことである。
それからまた百年の時が過ぎ去り――忍界に戦乱の気配が漂い始めた。
切っ掛けは怨恨だ。忍界外で起こった国同士の戦争で、色んな忍の一族が雇われ、殺し合い、一度は終結した戦後でも家族を殺された忍の一族たちは、仇である他一族を深く憎んでいた。
うちは一族と百年単位で専属契約を交わしていた火の国は、忍界外で覇者となるも、無用な恨み辛みを買い過ぎた報いで、他国が連合を組み攻め寄せてくることもあった。お蔭でうちは一族も多方面から恨まれて、勇名を馳せるにつれて敵が増えていく。敵が増えると味方が得難いものに思えるのが人間だ、手厚く報いる火の国にうちは一族は忠誠を深めていっていた。
うちは一族が台頭すると、対抗するように敵勢力は千手一族を雇った。千手一族と戦いを繰り広げるにつれ、うちは一族も次々と犠牲になっていき、彼らは千手一族への恨みを強烈に募らせていく。
やがて国同士の戦争が完全に終結し、和平が結ばれても、忍界に渦巻く戦乱の気配は鎮まる気配がなく、彼ら忍は忍界で勝手に殺し合いの戦争を継続していた。黒ゼツ頑張ってるな。
これに対し、他の国はノータッチだ。表世界の国々にとって忍者は日陰者、迷惑さえ掛けられなかったら忍者同士で幾ら殺し合っても構わない。
しかし火の国だけは、変わらずうちは一族の忍界戦争に支援した。食い物、衣服、武器、薬、惜しまずそれらを与えたのだ。無論、よそに露見したら面倒なので秘密裏にである。
うちは一族はもはや大筒家に頭が上がらない。忠誠心は先祖伝来の関係含め絶対のものになっている。まあそれでも一族を守るために戦争は止められないようだが……それでいい。むしろマダラと柱間が生まれるまで戦争し続けてもらわないと俺が困る。頑張れ黒ゼツ。
黒ゼツを援護するべく、国をバックに置いてるお蔭で千手一族相手に優勢を保つうちは一族を、俺は陰ながら攻撃しておいた。負けて滅んだら困るが勝って千手を滅ぼしても困るからである。
後ろから刺す、寝込みを刺す、なんなら千手一族に混じってうちは一族の末端を刺した。とにかく殺し合いが続くように陰から刺し続けた。これが中々大変だったが上手くいったのでヨシ。
そんなこんなで仲良く喧嘩する忍界の皆。戦国時代は百年続いて――ようやく、うちは一族にマダラと名付けられた子供と、千手一族に柱間と名付けられた子供が生まれたのだった。
計画はいよいよ大詰め。後少しで、マダラのラスボス化計画は佳境を迎える。
――青年期に入ったマダラに、大筒家の女を嫁がせるのだ。