『うちはマダラ・ラスボス化計画』   作:飴玉鉛

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本日二度目の投稿なので、前のも読んでおくれ。


閑話

 

 

 

 

 

 

 仮面の男がいた。

 

 深い絶望を知り、此の世こそが地獄であると悟った、黒髪の男だ。

 

 しかし地獄の底で未熟な少年だった男が出会ったのは、()()()だった。

 

 己の一族に、里に、不朽の名を刻んだ伝説の英雄。

 

 地獄を見て。地獄を見た。果てに唯一の願いへの道を歩む救世主――

 

 救世主は語った。

 

 己に残された時間では、何も成せない。故に全てを男に託す、と。

 

 男は救世主に多くを学んだ。

 

 戦う術を。忍の業を。六道仙人以来の、本物の奇跡を成就させる計画を。

 

 否――六道仙人如きと比較するべくもない、唯一の救済の術を、だ。

 

 男は呟いた。

 

「リン――君の居る世界を――」

 

 創る。

 

 浄土計画。救世主は己のエゴの塊を、自嘲しながらそう名付けた。

 救世主は己を嘲笑ったが、男は笑わなかった。

 逆だ。救世主のエゴこそが男の目指す楽園。

 地上に遍く全ての悲劇に終止符を。世に蔓延る戦火に雨を。死した者を慰める、鎮魂歌を。

 成し遂げるのだ。必ず。この手で。

 

 救世主は救済への道を示した。

 

 道を歩く力と知恵を男へ授けた。

 

 男は九尾の人柱力となる。救世主の眼を通して地獄を平らげる。

 遺した意思を、託された想いを、預けられた大願を果たすために。

 

 ――地獄を見た。――その果てに。――希望の種を。――芽吹かせる。

 

 男は歩み出した。

 

 

 

 男――うちはマダラ(オビト)は彼のシンパに接触した。

 

 

 

 嘗て長き旅路の最中、マダラが救った水の国の女大名だ。

 マダラ(オビト)は誰も信用しない。信頼しない。計画を果たすまで。

 故にまず真っ先に、その女が()()()()()()()()()()()()()調べた。

 結果は白。体は完全に凡庸。チャクラ量も最小。如何なる術の痕跡もない。

 輪廻写輪眼は()()()()()()。故に、この女は使えると判断した。

 

 男は女にだけ、自分はマダラの子孫だと告げた。名も教えた。うちはオビトの名を。

 その上で彼女に頼む。マダラへの恩を返す為に、力を貸してくれと。

 女は――老齢に達していた女は微笑んだ。

 嘗てマダラ様が仰っていた、と。いつか会う時が来るかもしれないと。

 今が、その時なのですね――そう呟いた女は、オビトの手を取った。

 

 念の為。

 

 オビトは輪廻写輪眼の力で、女の精神世界に侵入し記憶を見た。

 嘗て暗殺の危機から救われた女の記憶に、ハッキリとマダラの姿がある。

 女は誰にも操られていない事。彼女が純粋にマダラを慕っていた事を知る。

 オビトは頷き、告げた。

 水の国の傘下にある霧隠れの里を掌握する。そのために策を練ろう。

 

 ――やがてオビトは、四代目水影の座を得た。八魚トビと名を偽って。

 

 トビは霧隠れの里を水影としての強権を振るい、更に瞳力も駆使して改革を断行した。

 血継限界を持つ者は、内乱に利用されるため迫害されている?

 有害な思想だ。迫害を強制的に取り締まり、血継限界の持ち主を保護した。

 度重なる内乱を鎮圧し、忍刀七人衆を傘下に付けた。

 中でも使えると判断した干柿鬼鮫を腹心とし、その下の桃地再不斬を登用する。

 雪一族の生き残りの少年を。霧隠れに一族単位で戦いを挑んできたかぐや一族を。

 前者は保護。後者は幻術で支配下に置いた。

 

 着々と力を蓄え、その上で計画を練る。

 此処までは、救世主の計画の概要を沿った。

 しかし救世主は最新の情勢を知らない。

 故に此処からは救世主の意向と計画の概要に沿うのを軸に、独自に動く必要があった。

 四代目水影・八魚トビに、()()()が接触してきたのはそんな時だ。

 

 男は()()()と名乗った。黒髪の美丈夫である。

 

 彼は己が少数精鋭の傭兵集団『暁』の頭領であると言い、戦争屋として抜け忍を積極的に掻き集め傘下に置いている事を告げる。トビは仮面の下で眉を顰める。

 彼の左眼にある輪廻写輪眼が、帝釈天の悍しいチャクラを見抜いたのだ。

 この場で殺すべきかと思案するトビの意を汲み、鬼鮫と再不斬がそれぞれ大刀・鮫肌と首切り包丁の柄に手を添える。トビはそれを止めた。左眼が疼いている……この男には何かがある気がした。

 トビは帝釈天に問う。お前は何者だ、と。

 肩書は既に聞いている。故に訊ねたのはより本質的なものだ。

 男は笑った。

 

「――俺は、()()()()()()()()()()だ」

 

 瞬間。トビは帝釈天に幻術を仕掛けた。

 金縛りで身動きを封じ、精神世界に飛び込む。

 するとトビは見た。男の内にある全てを。

 

 帝釈天は、大筒木インドラの()()()だった。

 

 自らの計画が頓挫しインドラが死した場合、転生するための器として用意したモノ。

 様々な忍の血を配合した、人工的な一族の末裔。

 大筒木インドラの父、六道仙人やチャクラの始祖カグヤ、更に大筒木という宇宙から来た化け物達の概略。インドラはカグヤを復活させ、チャクラを集め、自身たちをも脅かす宇宙の化け物に対抗しようとしている。この事をトビは知った。

 

 ――鵜呑みにしない。

 

 誰も信じていない。何も信じていない。ただ一人、ただ一つ以外は。

 故にトビは参考にするのみとした。

 帝釈天はインドラの転生体候補だという。しかし帝釈天がインドラその人である可能性もある。

 転生を済ませた後かもしれない。自分を欺こうとしているかもしれない。

 疑っている。何があろうと信頼しない。

 だが看過し得ない情報もあった。インドラ転生体候補の一族は、他にもあるというのだ。

 

 幻術を解いたトビは、帝釈天に問う。その一族の名は、と。

 

 帝釈天は幻術を掛けられた事に不快そうにしたが、従順に告げた。

 

 ゼツ、そして華道、と。

 

 華道。聞いたことがある。知らぬはずがない。

 木ノ葉隠れの伝説の三忍の一人だ。そしてその娘は木ノ葉最強の忍と名高い飛び華道である。

 だがゼツというのは初耳だった。

 それは何かと問うと、帝釈天は恐ろしい事を告げる。

 

「ゼツという名の一族は本命の一族。その真髄は、()()だ」

 

 帝釈天は語る。己の悲願を。

 いつ、どこで、己が乗っ取られるか分からぬ恐怖と訣別したい。

 そのためにうちはマダラを探し続けていた。

 インドラに勝ち、滅ぼせるのはマダラしかいないと確信していたのだ。

 なぜだ? トビが繰り返し問うと、帝釈天は応じる。

 

 インドラの本当の名はゼツである、と。大筒木インドラの名を騙る偽者だ。大筒木インドラの本当の子孫はうちは一族のみであり、うちは一族の写輪眼が最後に辿り着くのは輪廻眼である。

 マダラなら輪廻眼を開眼させているはず、どれだけ歳を経ようと輪廻眼があるならまだ生きていても不思議ではない。マダラに助力を請いインドラ討滅の為に戦うこと――帝釈天の願いだ。

 何故、マダラが輪廻眼を開眼するかもしれないと思った。何故、トビの許に来た。何故、ここでそれを語る。トビは輪廻写輪眼で睨みつける。殺意も露わにして。

 

 大筒木インドラは、トビにとって最も邪魔な存在なのだ。

 

 マダラの半生に纏わる因縁。ゼツとやらが写輪眼を持っていたのはうちは一族から奪ったから。

 大筒木インドラを自称したゼツが六道仙人の兄弟であるにしても、驚異的な執念である。

 帝釈天は言った。己が詳しく事情を知っているのはインドラ――改め、ゼツ転生体候補として適性が高い自分には、ゼツの蓄えた知識が()()()()()()()からだと。

 ()()()()()()()()()()()()()。その上で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 帝釈天に、その知識――記憶が逆流してきている。だから此処に来たと帝釈天は語った。

 

「………」

 

 それが事実であると、トビは知ったばかりだ。帝釈天は今、()()()()()()()()()()()()()()

 本心を、本音を、思考をそのまま言葉としてトビに告げる状態にされているのだ。

 先手を取られているのかと、トビは内心臍を噛む。浄土計画を成就させるには、対抗馬となる月の眼計画が邪魔でしかない。ゼツだけは絶対に始末する必要がある。

 だが、流石はと言うべきか。忍界の闇に何百、下手したら千年近くも潜み続ける妖怪の狡猾さは恐ろしいものがあった。この男を始末するのは容易い、だが……しかし……。

 

 悩んだ末に、トビは決断した。

 

 帝釈天は生かす。信頼も信用もしないが、ゼツの動向の唯一の手掛かりでもあるのだ。安易に殺すよりも生かし、監視する方がいい。怪しい素振りを見せたら殺そう。

 利用してやる、とトビは告げた。帝釈天は頭を下げ、心から感謝する。我ら暁は、以後水影様に忠誠を誓い、如何なる汚れ仕事であろうと遂行してみせよう、と彼は言った。

 

 こうして、暁はトビの傘下に加わったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ふぅ。全力を尽くしました。手術は成功です!

 

 いやぁうちはオビト君は強敵でしたね……。いやマジで手強い。

 何が辛いってオビト本人を口では騙せないことだ。

 輪廻写輪眼ってなんだよ……なんであんなもん持ってんだよ……。

 原作終了後の映画かなんかで、うちはサスケはとある人物の記憶を探っていた。輪廻写輪眼があるならオビトにも同様のことが出来るはず、念には念を入れるべきだと警戒していたけど、本当に出来るとか反則ですよ? レギュレーション違反はやめてください! 

 だけどなんとかなった。それもこれも、オビトの()()のお蔭だ。いや、およそ全ての忍の心理的な死角かな? どいつもこいつもチャクラ、チャクラ、チャクラ。これが死角であるのだよ。

 

 度重なる人体実験の成果を出せて満足です。

 

 幻術、チャクラを介する精神世界への侵入、どちらもただ一つの冴えた遣り方を熟せば打破できるのだ。その方法とはズバリ、()()()()()()()()()()()()()である。

 長い研鑽により、俺はなんとか()()()()()()()()()()()()()()()()を改竄することが出来た。それにより偽りの記憶、感情を埋め込めるのだ。こうすれば、幾ら幻術を使おうが精神世界に潜ろうがお構いなしである。だって情報のデータベース自体が壊れてんだもん。

 ともあれこれで帝釈天は始末されなかった。……代わりに帝釈天は放牧というか、放し飼いというか、ラジコン扱い出来ない独立型NPCと化してしまったわけだけども、それはもう仕方ない。

 帝釈天の思考パターン、行動理念、記憶、感情出力方向、完全に全て把握している。コイツの動向を予測するのは赤子の手をひねるより簡単だ。コイツを通して情報を集めたり、流したりしよう。

 

 だけどアレだね。オリジナルにはああ言ったけど、オビトから信頼を勝ち取るとか無理っぽいですわ。だってアイツってば完全に閉じた目をしてるもん。ありゃ自己完結してる、使命に殉じる人間の目にしか見えねぇ。この手の輩の懐柔は不可能と言っていい。

 難しい局面だなぁ。どうしたらいいのかなぁ。都合よく帝釈天に情報を流して操ろうにも、オビトってば妙に視野が広い。本当に下手な真似、余計な事は出来ないと見るべきだ。

 うーん……どうしよっかなぁ。

 俺は悩みながらナルハタ・オリジナルの脳を弄る。いい感じに俺に関する記憶を消して、代わりのものを埋め込んで、辻褄を合わせた。これでエドテンも怖くないぞい。というわけでサヨナラ!

 景品として取っておいたナルハタだけど、所持してても特にいいことはなくなったので片付けておいた。マダラ君が起こしてくれることを期待して、あの世で待ってるといいよ。

 

 それにつけても今後を考えるのが大変だ。ナルト育成計画は、ぶっちゃけ最初の舞台さえ拵えたら成り行き任せだ。最初は強く当たって後は流れで、というプロレスみたいなもんである。

 これからどうしたもんか。オビトが水影にスムーズに就任できるように、陰ながら手伝ってあげたはいいものの、順調に軍備を整えるばかりの内政ムーブは見てても面白くない。どっかでオビトにも動いてもらいたいもんだけど……どうもオビトに今動く気はなさそうだ。

 

 鳴かぬなら、鳴かせてみせよう、ホトトギス。

 

 しゃあない。個人的には()()()だけなんだけど、インドラ改めゼツを登場させるしかあるまい。ゼツを始末して初めてオビトは動くだろ。動かなかったらそん時はそん時で別案を考える。

 ……よっしゃ、ここは一つ気合入れて仕事しますか。待ってろよオビト! 君の後顧の憂いを取り除いてあげるからな! お爺ちゃん頑張るから応援しててくれ!

 

 あ、ゼツ君、名前借りてるぜ(無断借用)

 

 まあ本人はゼツと名乗ることもなく消えたから構わないか。ごめんねぇ?

 

 

 

 

 

 

 

状況の打破のため吐き気を催す邪悪行為に手を染める、染めない(インドラが)

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  • 染めない
  • 構わん、いけ

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