『うちはマダラ・ラスボス化計画』   作:飴玉鉛

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第33話

 

 

 

 

 

 ふわふわ宙に浮きながら、にこにことシスイ達の遣り取りを眺める。

 

 喧々諤々というほどではない。だけど皆はそれぞれの表情で訴えていた。

 

 ヒナタは怯えから。香燐は焦りから。ナルトは、思いの外冷静に――撤退を主張している。

 下忍三人にとって、いや木ノ葉に住む殆どの忍にとって、華道シズメは最強なのだ。単純な戦闘技術でも、扱う忍術でも、具える血継限界の数でもだ。それらを抜きにしても最優の誉れも高い、里を超えた国家の戦略をも左右する生ける伝説でもある。

 生きているだけで。

 存在しているだけで。

 名前を聞いただけで。

 他里を抑止し、警戒させて、部隊を撤退させるほどのくノ一。謂わば現代の忍にとってのうちはマダラ、『忍の神』千手柱間が『飛び華道』こと華道シズメなのである。

 そんな核兵器じみた存在が、無力化された。まだその真価を知らないナルト達よりも、木ノ葉隠れの里が受ける衝撃は大きいだろう。それほどまでに、飛び華道の名は強大なのだ。

 

 いやはや、我ながら出しゃばり過ぎだ。さっさと退場しないと……。

 

 とはいえうちはシスイは、『華道シズメ』の存在のデカさに寄り掛かるだけの忍じゃない。シスイ以外にもそうした忍は木ノ葉に意外と多い。木ノ葉の柱はシズメ以外にもあるからだ。

 例えば大蛇丸。ちょっと笑っちゃうけど、火影として大蛇丸は歴代の誰よりも有能だ。適性とか性質的な意味では三代目のヒルゼンみたいな、治世の能臣ぶりで及ばないまでも。現在の各国、各里の冷戦じみた緊張下で里の平和を保ちつつ、軍事力を増強しながら『強い木ノ葉』を堅持する事に掛けては比類ないものがある。大蛇丸なら戦争になっても頼もしい指導者を張れるのだ。

 他にもミナト、サクモ、自来也など、影クラスの忍は多く。『兇眼』うちはフガクを始めとするうちは一族、日向、山中、うずまき等、戦力は豊富だ。幾らシズメ――私が抜けても揺らがない。

 シスイもまたその支柱の一人である。私に寄り掛かる側の忍じゃないのだ。だから必然、シスイの意見は下忍たちとは違うものになる。

 

「お前たちの気持ちは分かる。だけどな、第一班の担当であるシズメさんがやる気でいる以上、随行員のオレに撤退を決める決定権はないし、これは失敗の許されない任務だ。だからお前たちの主張を聞いてやるわけにはいかない」

 

 当然で、冷静な判断だ。その上で出される結論も分かっている。

 

「とりあえず今はシズメさんの回復を待つ。その間、奴が襲撃してこないか警戒するぞ。シズメさんが起きたら飛雷神の術で木ノ葉に向かってもらい、応援を頼む。こう言うのは心苦しいが、下忍のお前たちは足手まといだ。シズメさんに連れて帰ってもらえ」

「なっ……!」

「はぁ……!?」

「………」

 

 うーん、正解! ベストアンサー!

 まるで面白みのない堅実で確実な意見だ。それ故に反論の余地がないぜ!

 だけど困るなぁ。そういう遊び心が欠如した、デキる忍みたいな判断は駄目だ。ほら、少年誌的なノリでいこうよ。気合と勇気と蛮勇が主人公にだけ許される特権なんだしさ。

 けどまあ、シスイの物言いに反感は抱いたみたいだけど、香燐は完全に納得している。『うずまきナルト』なら勢いだけの感情論で反論して、無理矢理にでも任務に参加しただろうが、上には上がいて特に上忍クラスにはまだ手も足も出ないことを理解してる『波風ナルト』は悔しげに歯を食いしばるだけだ。ヒナタは……普通にホッとしてる。もっと熱くなれよぉ!

 はっきり言おう。今のナルトは主人公っぽくない。これじゃ駄目だよなぁ? 実力は『うずまきナルト』を遥かに凌駕しているが、在り方が主人公に相応しいとはとてもじゃないが言えない。

 こんなナルトに誰がした? 私です! でもこれでいいのだ、今はね。私の育てたいナルトは古き良きジャンプ主人公じゃない、クレバーでありながら胸に熱い想いを秘めた、殺意マシマシの近世ジャンプ主人公である。耐え難きを耐え忍ぶが、それはそれとして強い意思で敵を殺せる忍者だ。そうしてこそ、まずは千手柱間に成れる。そしてその先に進化して漸く完成だろう。

 

 シスイの指示で周囲の警戒に当たる第一班。シスイも部屋の外に出て厳戒態勢で警備に当たる。意識のないシズメが襲われたら全滅必至だから警戒心が強い。

 

 さて。インドラは表舞台に上がった。後はオビトをどう釣り出すか、だが。オビト釣り出しには帝釈天を使う。というかそれしか伝手がない。とはいえ、今すぐは流石に無理だけど。

 ――カカシから盗んだ神威は複製済み。クローン技術を極めてる私達からすれば、体の一部のみを複製するのなんて容易いことだ。

 オリジナルは海の底だけどいずれオビトは回収するだろう。だってあの万華鏡写輪眼、オビトと視界がリンクしてる疑惑が強いからね。カカシが持ってないなら回収も躊躇わんでしょう。んで……カカシから写輪眼を盗む、なんて馬鹿でリスキーなだけの選択肢を取った理由は幾つかある。

 

 一つ。純粋に神威を研究したかったから。時空間忍術は未だに謎が多い、少しでも謎を解明する為にはサンプルが多い方が良いのは自明だろう。

 

 一つ。オビトに両眼神威になってほしいから。これは私の勘なんだけど、マダラを復活させる事をオビトは躊躇わない。なんなら今すぐにやっても構わないと思っているだろう。そうしないのは、マダラはあの世で愛する息子と妻といる、と思っているからだと想像がつく。悲劇的な結末を迎えた家族を、たとえ一時でも引き離すのは心苦しいのかもしれない。

 だが、オビトは必ずマダラを復活させる。というかさせる。マダラを復活させるには一度オビトを倒さないといけないわけだが、首尾よくいってもオビトは死なない可能性が高い。

 というのも、オビトは輪廻天生の術を使っても即死はしない。死ぬまでに、マダラがオビトの命を繋ぎ留めないとは思えなかった。だって……あのうちはマダラだ。本来のマダラは自然エネルギーを柱間から奪い取った際、仙術を一瞬で使いこなしている。浄土計画を進めるマダラは、長年の放浪の中で本来とは違い仙術を修めているし、本来よりも習熟度は上だろう。

 とすれば輪廻天生を使い死にかけてるオビトの寿命を伸ばすぐらいは能う。長くは生きられまいが戦闘を終えるまでは生きている可能性が高かった。その際、オビトはマダラへ素直に輪廻写輪眼を返すだろうし、その後にオビトには神威を持っていてほしかった。

 両眼神威とか無敵じゃん。と思いはするけど対処法は幾らでもある。なので問題ない。

 

 最後に、カカシに複製した神威搭載型万華鏡写輪眼を渡すため。

 

 盗まれたはずの写輪眼を――回収したはずの写輪眼を――なぜかカカシが保有している。今のカカシはまだ万華鏡写輪眼を使えない、天照になってることを知らないし、神威も知らない。カカシが気づく可能性はないのだが、オビトは違う。ここにインドラくんの関与を確信するだろう。すなわちインドラくんに神威の能力を知られていると理解することになる。

 私? 神威ね、良い能力だと思うよ。けど研究材料としてしか要らないね。万華鏡の固有瞳術としては破格の性能だし、文句なしに最強の一角だけども、対処法を知ってるから古丹があればいい。少なくとも物語を完結させた後に、大筒木や六道仙人相手に使うかな、というぐらいの考えしかなかった。だから普通に計略に使うのである。

 

 オビトを釣り出すのはもうちょい後。それまでインドラくんには中ボスとして君臨して頂く。木ノ葉の皆には非常に申し訳ないけど、今回でインドラくんを倒す予定はなかった。

 

 そして、六時間後。未だに眠ってる私を、シスイが起こしに来た。幽体離脱をやめて起床する。

 

「……駄目だ」

「なんでですか!」

 

 シスイから飛雷神で木ノ葉に飛んで、下忍達を帰らせた後、応援を頼み連れて来てくれと言われた私は拒絶する。意味が分かんなくて思わず大声を出したシスイに、私は険しい顔で言った。

 

「駄目、というのは正確ではないな。正しくは()()()()と言うべきだろう」

 

 封印術で抑制している呪印の影響で、チャクラコントロールが著しく乱れ、寸分の狂いすら許されない飛雷神の術を用いるのが不可能になっている。おまけに同様の理由で螺旋丸は使えても、そこに性質変化を加えるのも難しくなってしまった。――私がそう言うとシスイは絶句した。

 一応本当である。呪印は今も私をインドラくんに隷属させようとしており、その呪印の効力でチャクラの流れがメチャクチャになっているのだ。シスイは写輪眼でそれを確かめ、間違いないと悟ると言葉を失ってしまった。

 

「この状態に慣れれば、いずれは元の通りに戦えるだろう。だがそれは今ではない。よって撤退も救援要請も、即座に熟すのは不可能だ」

「………」

「シスイ。貴様だけでも木ノ葉に戻り、応援を頼むというのも手だが……」

「……そうした場合、その間シズメさんは? 下忍達はどうするんですか?」

「無論、インドラを追う。ナルト達を逃がすのもいいが、私と別行動をしている所を狙われ、捕らえられる可能性があるからな。すまんが私と来てもらうことになる。私と共にいるほうが安全だ」

「……今のシズメさんが、足手纏いを抱えたままインドラに勝てると」

「さあな。勝つつもりではいるが、負けるかもしれん」

 

 暗に、私が死ぬ時は部下も一緒だよ! と言うと。下忍達は緊張で体を強張らせてしまった。

 難しい顔で沈黙したシスイが判断に苦しんでいる。優しい私は助け舟を出してあげた。

 

「貴様が全力で木ノ葉に向かった場合、何日で辿り着く?」

「……不眠不休で走り続けたとしても、最速で二日です」

「流石は瞬身のシスイだ、私より半日も早い。二日で帰還できるならそうするといい。ミナトの飛雷神のマーキング術式を私は知っている、それを私のクナイに刻印しておこう。ミナトに会えさえすればすぐにでも応援を連れて来れるはずだが……行くか?」

「……貴女は、インドラを見つけたらどうしますか?」

「六時間だ。今頃どこかに向かっていよう、それを探るのに二日は掛かると見ていいし、それより早く見つけ出しても性急に手を出したりはしない。三日だ……今から三日は戦闘を仕掛けん」

 

 インドラが今も私達を探している可能性はある。あるが、それは言わない。

 そうであれば詰むからだ。シスイも言われるまでもなく理解している。

 勝算を計算しているが、結論は見えていた。シスイの持つ事前情報は年寄のお伽噺のみ。それとこの呪印や柱間の肉体を合わせて参考にするなら、このまま挑んでも全滅する。

 肌で感じただろう。インドラの殺気と、チャクラ量を。優れた忍であれば、それだけで実力差は痛感させられてしまうものだ。やむなくシスイは決断を下した。

 

「……今すぐに此処を発って、オレがすぐにでも応援を呼んで来ます、だから三日! その間だけは絶対に無茶をしないでください! いいですね!」

「ああ」

 

 そう言って慌ただしく部屋を飛び出したシスイを見送る。いってらー。

 さあここからが大変だ。タイミング次第で死人が出るぞ。オビトを釣る、インドラ=シズメの式を崩す、ナルトも育てる、こんだけの大仕事を同時に熟すのは難しいけどやるしかない。

 青い顔で黙り込んでる下忍達に、顔を向ける。皆! 頑張ってくれよな! 一応ここまでの修行の成果を出したら、応援が来るまで死なないように調整できるから!

 

 だから命令だ、死ぬな!(キメ顔)

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろマダラの時みたいなカタルシスを味わいたい……。
けど仕込みが足んないし、たぶんアレ以上は無理なんじゃないかな。
黒幕気取りはマダラの時に全力投球し過ぎたのだ……、
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