チートじゃ済まない コラボ編   作:雨期

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今回はベヘモス様のとのコラボになります。ありがとうございました。


コラボ第8話

 最近うちの会社を義理の息子のユウト君に任せようかと迷っているところだ。いくらほぼ不老不死とはいえ、同じ人間がずっと会社を経営し続けるのも問題だろう。本音は老後をのんびりトレーニングでもしながら過ごしたいだけなんだが。

 

「社長、お客様です」

 

「今日のアポはなかったはずだが」

 

「はい。なかったので入れさせて頂きました」

 

「君は本当に有能だな。それで、誰が来たんだ?」

 

「今からお連れします」

 

 緊急の客とは珍しい。こう見えても大企業の社長だ。例え当日までアポがなくても一言くらい電話が来るものだがなぁ。

 

「どうぞお入り下さい」

 

「邪魔をするぞ要」

 

「随分と広い部屋じゃない」

 

「! リュウに霊夢! よく来たな。座ってくれ。あ、秘書君。誰もここに近付かないようにしておいてくれ」

 

「畏まりました」

 

「よく出来た人ね。咲夜みたい」

 

「うちの自慢の秘書だ。酒呑むか?」

 

「土産として貰っておこう」

 

「早速なんだけどお願いがあるのよ。聞いてもらえるかしら?」

 

「当然だ。何でも言ってみな」

 

 どうせ俺の仕事である書類関係のものは秘書君が代わりにやれるしな。何かあってもこっちを優先してどんな事でもやってやろう。

 

「娘の相談なんだ。親としてはお前が先輩だからな」

 

「竜華ちゃんだったか? まあ女の子は複雑だしな。恋愛なりなんなり色々とあるだろう。そういう事は母親が対応するもんだが」

 

「それならあんたに頼ったりしないわよ。実は零児が消えちゃったのよ。たぶんどこか違う世界に飛ばされたんだと思うのよ。私達は心配していなくてもあの子はね」

 

「あー、話が見えてきたぞ。つまりは零児君が消えたショックで竜華ちゃんに問題が起こったと」

 

「話が早くて助かる。不貞腐れて家に籠りきりなんだ」

 

 それこそ俺じゃあ何ともし難いな。零児君を連れてこない限り治らないんじゃないか? 零児君を連れ戻せばいいだろ。リュウなら簡単なはずだ。

 

「それはしないつもりだ。零児のためにもな」

 

「ふーん。まあ消えた零児君を心配しないって事は零児君も竜華ちゃんもそれなりの年齢だろうし、自主性に任せるのもありか。しかし連れ戻さないならどうするんだ?」

 

「一先ず外に出て、博麗の巫女として仕事をするようにしてもらいたいのよ。今のままじゃ人任せにするからね」

 

「ニート脱却か。うちの子は何だかんだ言ってもしっかり働いてるからそんな事やるのは初めてなんだが、一応聞くが、異変を起こしてもいいか?」

 

「異変を? 確かに大きな異変なら動くかもしれないな」

 

「人に危害を加えるような事はしねぇからさ」

 

「どうする霊夢」

 

「今後の幻想郷の事を考えると、いいんじゃない?」

 

「よし、決まりだな。早く幻想郷に行こうぜ。この異変にはみんなの協力が必要だからな」

 

 やるからにはとことんやってやんよ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「早く零ちゃん帰ってきてー」

 

 博麗神社では件の娘、竜華が畳の部屋でうつ伏せに倒れていた。別に何かあったわけではない。健康そのものだが、何もやろうとしないのだ。ブラコンの末路ここにあり。

 

「リュウさーん、どちらにいらっしゃいますかー?」

 

「? 衣玖さんどうしたの? お買い物に行ってたんじゃないの? あ、お父さんならお母さんと一緒にどこか行っちゃったよ」

 

「竜華さん! 大変です。異変ですよ! 人里に誰も居ないのです!」

 

「異変? それなら守矢にでも頼んで」

 

「何を言っているのですか! 博麗の巫女たるもの幻想郷に異変が起これ」

 

ーーフッ

 

「えっ? 衣玖さん?」

 

 説教を始めた父の従者の衣玖が突如として姿を消した事に竜華は目を丸くした。即座に思い付いたのは妖怪の賢者、八雲紫のスキマだ。しかしそこにスキマが使われた跡は感じ取れない。

 

「嫌な予感がする………………まさか、零ちゃんが消えたのも!」

 

 竜華は幻想郷の空を飛び、まずは衣玖が異変があったという人里に向かった。そこには確かに人の気配はない。更に幻想郷の様々な地域へと飛び回った。霧の湖に天界、友人の居る守矢神社や魔法の森。どこに行っても人は居なかった。

 

「お父さんやお母さんが居ない時にこんな大規模な神隠しが起こるなんて………………そうだ! 紫さんなら!」

 

 神隠しの主犯とも言われる彼女ならば何か分かるかもしれない。そんな考えを持って彼女の住むマヨヒガへと向かったが、そこも例外ではなく無人であった。

 

「そんな………………」

 

「お困りかい?」

 

「! 誰!?」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 衣玖が消えるほんの少し前の事。要は幻想郷にやってきて早々にリュウ、霊夢、そして八雲紫の力を借りて幻想郷中の住民をある空間に集めた。そこはすずかの機械によって造り出された世界であり、非常に快適だ。

 

「皆さん、本日は神隠し異変にご協力頂きありがとうございます。お食事や寝床は全てこちらで用意しました。ご自由にお使い下さい」

 

『わーーーーっ!!!』

 

「凄いわね。あ、これ美味しそう」

 

「そういえば衣玖が居ないが?」

 

「今から連れてくるさ。竜華ちゃんの前で消えた方が異変っぽいだろ。連れてきてからのフォローは頼むぜ」

 

「任されよう。しかしこの世界はバレないのか?」

 

「機械的なものだし、そういったものが少ない幻想郷なら気付かれにくいだろう。んじゃ、神隠ししてきますか」

 

 要は世界から出ると衣玖を待ち伏せするために博麗神社へ向かった。暫くすると慌てた様子の衣玖が博麗神社へと帰ってきた。彼女にはこの異変計画について伝えていないので神隠しに驚くのも当然だ。

 

「………………今だ」

 

 竜華と話している衣玖に高速で近付くと、高速で連れ去った。

 

「!? な、何者ですか! 離れなさい!!」

 

「俺ですよ」

 

「誰です!? 離すつもりがないなら棘符」

 

「だから俺です。一条要です」

 

「棘符『雷雲棘魚』」

 

「何故に!? アババババッ!!?」

 

 要に抱えられた衣玖が帯電状態となり、要は感電してしまった。それでも造られた世界の近くまでやってきた。

 

「いつかの電撃を思い出しますよ」

 

「どういうつもりです?」

 

「それはこっちで説明する」

 

「リュウさん!」

 

「要、頼んだ」

 

「頼まれた」

 

 衣玖を受け渡すとすぐに竜華を探しに、要は幻想郷を駆け巡った。それなりに広い幻想郷とはいえ、要からすれば学校のグラウンド程度にしか感じられない。その中で竜華を見つけるのはそう難しい事ではなかった。

 問題は彼女は要の顔を知っている事だ。リュウの知り合いでもある要が今回の異変の主犯と知ったならば、彼女は親の差し金と気付くかもしれない。しかし生憎と変装準備などしていない。このまま声を掛けるしかなかった。

 

「お困りかい?」

 

「! 誰!?」

 

 振り返った竜華の目を要はよく知っていた。自分の娘のすみれと同じ、好きなもののために暴走している人間の目だ。

 

「貴方、どこかで見た事がある気がするけど、誰も居ない幻想郷に突然現れたという事は今回の異変の主犯よね。零ちゃんを返してもらうんだから!」

 

「はい?」

 

「大結界『博麗弾幕結界』!!」

 

 竜華を中心に美しくも凶悪な弾幕が展開されていく。竜華自身は結界によってその身を守っている。だがその程度、要には守りでも何でもなかった。

 

「いきなり何すんだ」

 

ーーゴォッ

 

「!!」

 

 凄まじい風によって弾幕も結界も吹き飛ばされる。何が起こったのか一瞬理解が遅れたが、要の拳を突き出した姿勢を見て、拳圧だけで博麗の奥義の一つを吹き飛ばしたのだと理解した。

 

「君が思う通り俺が異変の主犯だ。それを伝えた上である条件を提示したい」

 

「何だっていい。貴方を倒せば解決するんでしょ?」

 

「そうなったら俺は舌を噛みきって死ぬぜ。まあ聞けよ。君が勝ったら君が探している人々の情報を提供する。俺が勝ったらある事をしてもらう」

 

「勿体ぶらないで言ったらどう?」

 

「嫌だね」

 

「そうなの」

 

 会話をしながら竜華は頭をフル回転させていた。どういうわけかあの男は弾幕を使わない。もしかしたら弾幕が使えなくて肉体だけを鍛え上げたのかもしれない。そうなると極めて面倒だ。何かを極めたものの強さは尋常ではない事を竜華は知っている。近付けば反撃を受け、弾幕は吹き飛ばされてしまう。

 色々と考えている竜華に要は一声掛けた。

 

「ほら、攻撃してこいよ。サービスタイムで反撃はしないでおいてやる」

 

「………馬鹿なの?」

 

「イエス。戦闘馬鹿さ」

 

「なら自分の馬鹿さをあの世で後悔なさい!! 夢想天生!!」

 

 膨大な数の札が要に襲い掛かり、爆発をする。あまりの爆発に周囲の物も消し飛ばされていくが、攻撃は延々と続く。しかも今の竜華は誰にも見えている透明人間のような状態のため、彼女の父などほんの一部を除き誰かが干渉するなど不可能だ。

 

「んー、そこそこ威力はあるけど、まだ足りないな」

 

「くっ、この化け物! それなら!」

 

 本当に反撃をしてこないと確認した竜華は距離を詰めて体術を繰り出す。掌底で顎を、回し蹴りで首を、貫手で喉を、正拳で心臓を、蹴り上げで股間を。一瞬でそれだけの猛攻を喰らった要はその場から1mmも動かない。

 

「流石だ。弾幕、体術、どちらも申し分ない。でもまだあるよなぁ?」

 

「夢想天生状態よ。貴方の攻撃が効かないならこれ以上見せる必要なんて」

 

ーーツーッ

 

 誰も干渉出来ないはずの竜華の頬から血が流れ落ちた。先程出たほんの一部の例外が目の前に居たのだ。

 

「まあ巫女としての力は見れたからいいけど、このままだと君の負けだな」

 

「ふ、ふふ、後悔するといいわ!!」

 

 光が竜華を包むと、その姿は先程までの美少女とはほど遠い白い竜に変化した。

 

「流石はあれの子だ。零児君も変身出来るのかな?」

 

《お前が零ちゃんの名前を呼ぶな!!》

 

ーーグシャアッッ

 

 巨大な竜になったというのに竜華の動きは更に速くなり、要を踏み潰した。何度も何度も何度も何度も、怒りを籠めて踏み続けた。

 

《ハァ、ハァ》

 

「ふーむ、戦いの中で血を流したのはいつぶりか」

 

《しぶとい!!》

 

「おっと」

 

 頭から血を流しつつもピンピンしている要に追撃の踏みつけが放たれる。それを要は両手でしっかりと受け止めた。

 

「もう反撃するけどいいかな? 返事を聞くつもりはないけど」

 

《! あぐッ!?》

 

 凄まじい衝撃をその身に受けた竜華だが、肉体へのダメージはかなり少ない。ゆっくりと立ち上がり要を睨み付けようとした彼女はある事に気が付いた。

 

《どこよ、ここ》

 

「山が見えたんで投げ付けたのさ」

 

《!》

 

 要の声が聞こえて反射的に裏拳を繰り出したものの、それも受け止められてしまう。

 

《山ってまさか妖怪の山? マヨヒガからここまでどれだけの距離があると思っているのよ》

 

「さあ? まあ1秒も掛からずに来れるならそれほどでもないだろ」

 

 改めて感じる要の化け物具合に流石に寒気を感じずにはいられなかった。しかし弟を想うブラコン魂が彼女を突き動かす。

 

ーーコオオオォォォォォォォォォッ

 

 竜華の口にエネルギーが集中する。何をするかは明白だった。

 

ーーカッ

 

 今の竜華に出来る最大限のブレス攻撃。レーザーとなって飛んでくるそれを、要は全力で殴り付けた。

 

「ふんぬっ!!!」

 

 レーザーと要の腕がぶつかり拮抗する。しかし徐々にだが要が押され、背後に下がっていく。

 

「ぐぬぬ」

 

《死ね!!!》

 

「断る! 武装・ORT!!」

 

 要の腕が人から異形のものへと変化すると、一気にレーザーを消し飛ばしたあその光景に、やっぱり化け物じゃないかと竜華はどこかずれた思考をしていた。

 

「これを使わせられるとは………ショック」

 

「何がよ、化け物」

 

「ん? 人に戻って戦えるのか?」

 

「人じゃなくなれば対等でしょ」

 

 さっきまでがそうじゃないか、と言おうとした要の口が止まる。竜華の黒い髪が白く、蒼い瞳はより鮮やかになっていくのだ。

 

「………………竜人、懐かしい」

 

 ポツリと呟いてから要はここにきて初めて構えを見せる。ここからは手を抜かないという無言の主張であった。

 

「色々やって疲れてるだろ。おねんねさせてやるよ」

 

 要は右の義手を取り外して天高く放り投げた。それが地面に落ちた時、二人は同時に動いた。

 

「テラブレイク!!!」

 

「ヒャッハァッ!!!」

 

 竜華は光弾による絨毯爆撃で高速移動する要が逃げられる場所がないほどに制圧するが、左腕の一振りで全てが凪ぎ払われる。

 

「そこ! 二重結界&カタストロフ!!」

 

 爆撃を凪ぎ払うために動きを止めた要を拘束するために結界が張られ、要の足元はどんなものも呑み込む底無し沼へと変化する。しかし要の体が一瞬膨張すると要は竜華の前まで移動してきていた。

 竜華は即座に回避に転じ、横凪ぎの攻撃を体を反らして回避して、勢いそのままにサマーソルトで顎を蹴り上げた。竜人状態となり強化された身体能力の前には流石の要もよろめいた。

 

「隙あり!! スーパーノヴァッッッ!!!!」

 

 やっと晒された隙を逃さぬように竜華は力を込めた手を要の胸元へと叩き付け、その力は要の内部で弾けた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 目の前では胸に拳大ほどの小さな穴を開けたあいつ、いえあの人が優しく微笑んでいた。

 

「あの可愛らしい巫女さんが随分と逞しくなったな」

 

 わしゃわしゃと頭を撫でられる。髪形が崩れるのは気になるけど、とても優しくてなんだか心が落ち着く。

 

「ごめんなさい要おじさん。頭が沸騰しちゃってた」

 

「! 俺を覚えていたのか。嬉しいねぇ」

 

「最後に思い出しただけだから。それより要おじさん、みんなは? 零ちゃんは?」

 

「みんなは俺が用意した場所で好き勝手やっているはずだが、すまんな。零児君は分からん」

 

 そっか。なら私の勝手な暴走でこんな事しちゃったんだ。あれ、でもなんで要おじさんはこんな異変を起こしたの? そもそも要おじさんが異変を起こさなければ私が勘違いする事もなかったよね。

 

「異変を何で起こしたの?」

 

「君が零児君が居なくなってから働かなくなったって聞いてな。これだけやれるなら普段から何かやるように言うつもりはないが、異変が起きたならしっかり働くか確認したかったんだよ」

 

「お父さん達が頼んだのね。もう」

 

「ははは、子供を心配するのが親心だよ。これからはなるべく神社の行事や異変の解決はやるんだぞ。頑張ったらおじさんが小遣いをやるから」

 

「零ちゃん成分がないとやる気でないもん。あ、もしかして要おじさんが勝ったら強制労働だった?」

 

「そう、大正解。まあ君が異変を解決するに十分な力があると判断した時点で負ける気満々だったけどね。さあみんなのところに行こう」

 

「きゃっ、引っ張らないでよー」

 

 あーあ、結局零ちゃんの手がかりはないのかぁ。頑張ったのに気持ち沈むなぁ。しかもあれだけ頑張って要おじさんの本気も引き出せなかったし。今日はやけ酒よ。




この後滅茶苦茶宴会した。
コラボしてくださったベヘモス様には感謝です。
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