アサルトリリィ 鉄腕の乙女   作:ぺもんちょふ

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甲州撤退作戦を忘れるな


甲州陥落

月明かりが照らす10月の秋空。

少し肌寒い秋の空に火花が舞い散る。

 

「花火!こっちは持ちそうもない!早く灯さんを!」

「分かってる!お姉ちゃん行くよ!」

 

Charmと呼ばれるリリィが扱う武器を片手に髪の長い少女を抱え込む。

 

「待って花火ちゃん!私のことはいいから!早くみんなを連れて逃げて!」

「うるさい!黙ってて!」

 

赤ん坊を抱っこするかのように左手で支え、人類の敵と言われるヒュージとは反対方向へと走り出す。

少しだけ走りにくいが、マギの力によりいくらか緩和されている。

 

「もうすぐ百合ヶ丘のリリィが来てくれる!それまでお姉ちゃんは絶対に守るよ!」

「花火ちゃん…」

 

 

姉は約2年前の『甲州撤退作戦』により、左足が不自由になってしまった。

スキラー数値が50ギリギリ、もしくはそれ以下の"リリィの出来損ない"と世間では呼ばれている甲州第一高校の中でも桁違いの高い数値とレアスキル『カリスマ』持ち、高い身体能力を併せ持つ姉であったが今は車椅子なしでは生活できないほどになってしまっていた。

だが、Charm開発技術にも長けていた姉は足が不自由になってからもスキラー数値の低い私達の為に自らが手がけた新たなCharmを開発してくれた。

そんな私たちに、いや世界に必要な人間を必ず守り抜かねばと必死に走った。

 

「もう少しで避難場所に着く!飛ばすから舌を噛まないようにね!」

 

と、勢いよく走り抜けようとした矢先。

目の前にはヒュージの姿。

 

「あと数百メートルなのに…。でも一体だけ。それなら…」

 

抱えていた姉を大きな木の幹に座らせる。

 

「ちょっと待ってて。すぐに片付けるから」

「花火ちゃん…。ううん、頑張って…」

 

何か言いたげな顔をしていた姉だってが言葉を飲み込んで妹の言葉を信じる。

 

「大丈夫!必ずお姉ちゃんを助けるから!RS起動!」

 

制服のポケットからマガジンを取り出しCharmに装着する。

カシャン、カシャン、カシャン。

マガジンの中に搭載されている自分のマギを込めて作られた弾を装填する。

するとCharmからシュウと煙がたちこめてきた。

 

Reload System。通称RSは自らのマギを込めた弾丸をCharmに装填し、爆発的なマギの力を一時的にCharmに送り込む姉が考え出したシステムである。

スキラー数値が低い私たちがヒュージに対抗しうるための1番の肝となっているシステムでもあるのだ。

 

カランカランと空の薬莢が地面に落ちる。

それと同時にCharmを真っ赤な炎が包み込む。

『焔の陽炎』

自らのマギをヒュージに対抗しうる灼熱の炎へと変換するレアスキルである。

 

「はぁぁぁ!!!!」

 

ヒュージ目掛けてCharmを振り落とすが弾かれてしまう。

『焔の陽炎』は高いスキラー数値、高度なマギを持っているとヒュージを熱で溶かし、戦闘不能まで追い込める。

だが、花火のリリィとしての能力だと宝の持ち腐れなのだ。

しかしレアスキルを使わないともっと容易く弾かれ、下手をしたらCharmが折れてしまう。宝の持ち腐れでも使用する他ないのだ。

 

「くっ!やっぱり私じゃ…。ううん!絶対に倒すんだから!」

 

弱気になりそうな心を殺し、一目散にヒュージ目掛けて二撃目をお見舞する。

3度目、4度目と繰り返しようやく職種のような部分を破壊することに成功した。

 

「きゃぁぁぁ!!!」

 

姉の叫び声が甲州にこだました。

慌てて姉の方を見ると小型のヒュージに襲われているのが見えた。

急いで姉の方へと向かおうとしたが対峙していたヒュージに足止めを食らう。

 

「ステルス型かっ!」

 

姉は護身用に持っていた自作の小型Charmで応戦していたが状況が悪すぎる。

 

そして最悪は起こった。

花火の目の前で姉が刺されたのである。

腹部を貫通していた。

 

信じられなかった。

 

守ると約束したのに。

 

そして姉に気を取られていた私はヒュージにCharmを弾き飛ばされた。

そのCharmは腹部を刺された姉のすぐ真横の地面に刺さる。

 

だが、弾き飛ばされたのはCharmだけではなかった。

 

「え…」

 

そのCharmには

 

姉から貰ったミサンガがついた

 

よく見知った

 

まるまる1本の

 

人間の右腕だった

 

 

 

肩から下が燃えるように熱い。

そこで私の視界は真っ暗になった。

 

 

 

 




不定期につらつらと描き続けていきたいと思っておりますのでよろしくお願いします。
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