編入初日から栄えあるダービーウマ娘に生徒会長の座を推された件について。
「いやいやいやいやいや」
今思い出しても思わず首を横に振らざるを得ない。というか解せない。流石に荷が重過ぎるっ。
勝てる訳が無い!シンボリルドルフは伝説の超生徒会長*1なんだぞ!!潰される……選挙しようものなら俺潰されるぅ……!
「クロちゃん、どうしたの?」
「スぺちゃん、今からマルゼンスキー先輩に挑めって言われたらどうする?」
「勝ちに行くけど?」
「ぅゎっょぃ」
身体じゃなくて心が強い。やべーぞ心身ともに今の時点で負けてちゃ世話無ぇ、お先真っ暗だ!ってのはまぁ置いといて。
「縁ある先輩から、それに近い頼み事されてさぁ。どうしたモンかなって」
「は?そいつ誰?私から“お話”しとこうか?」
こっっっっわ!?ちょっ待って怖ッ!覇気って呼べばいいのか、とにかく威圧感がスぺちゃんを中心にもう蟻地獄みたいな様相かましてるんだが!頼む落ち着いて、そんな大きな問題じゃねぇから多分!!
もう俺じゃなくてスぺちゃんが
「誇張に誇張を重ねた例え話だから!落ち着いてくれ」
「でも、クロちゃんに無茶ぶりするような奴の存在なんて許しておけな———」
「それよりさ、ほら次体育だろ?
「——っ」
そう、次はこの晴れ渡る寒空の下で運動の時間だった。必然、俺もスぺちゃんもトレセン印の赤ジャージに着替えてグラウンドに向かっている。
つーか手が冷てぇ。ここもほぐしとかんとな、スぺちゃんはどう?
「……僕が忘れる訳、無いじゃん」
「?」
「私がストレッチを、忘れる訳無いでしょ?」
一瞬見えた、影を落としたその表情。でも俺が疑問に思うより速く、すぐに元のスぺちゃんに戻ってしまう。
問い掛けようかと一瞬思案して、俺が選んだのは
それにしてもだ。
「…なんか人多くね?」
「トレーナーの人達もいるね」
「チラチラ見られてんだけど」
「見られてるね」
そう言うと、スぺちゃんはなんと視線を遮るように俺の一歩前に踏み出した。やだイケメン、惚れちゃいそう……!!
なんて戯言は良いんだ。問題はどうしてこんなに注目されてんのか、その根源的な理由に尽きる。俺なんかしたっけ?したわ。グラスちゃんとキングちゃん泣かせてたわ。
「うわ、土手まで見物客でいっぱいだ」
「勘弁してくれ……」
「我慢しよう、クロちゃん。重賞にもなれば観客はこの比じゃないよ」
「ぐぅ」
ぐうの音だけが出た。逆に言えば、それ以外何の反論も許されないド正論だって事。あー辛いなー!!*2
ええい、逆転の発想だクロスクロウ。この有様なら、選抜レース出走やチームへの応募をするまでも無くトレーナーが見つかるかも知れねぇんだから得だろ?少なくとも今はそう思う事にしよう、俺の精神衛生上その方が良い!
その時。
風が吹いた。
「「———ぁっ……」」
ふうわりと、栗色の花が目の前に咲いた。
風に波打つ艶やかな長髪。土手を降りたグラウンド、そこへ一足先に辿り着いていた同級生の少女。その後ろ姿に、俺もスぺちゃんも一瞬動けなくなる。
やがて、彼女が振り向いた。俺達を目にして微笑んだその姿に、これが見返り美人か、と現実逃避すらしていた。
「ジャージ。似合ってますよ、クロちゃん」
「……グラス、だって」
「まぁ、嬉しい——スぺちゃんもお疲れ様ですね」
「なんて事無いよ」
熱でのぼせたようになって、上手く言葉を出力できない。その間にも会話は進み、当の彼女は会釈と共に
「では、今日はよろしくお願いします」
とだけ告げて、足早に歩き去ってしまった。ポツンと取り残され、俺は立ち尽くすだけだ。
「綺麗になったでしょ」
「……引くレベルで」
スぺが小声で耳打ちしてきた事でようやっと再起動。見惚れによる紅潮やら旋律による蒼褪めやらで顔色が目まぐるしく変わってるのを自覚しながら、何とか平静を取り戻した。
いや、元から綺麗な子だとは思ってたけど。それ込みにしたって、数年を経ただけであそこまで化けるか……!?
「グラスちゃんね、とっても人気なんだ。ほら、今も彼女に釘付けになってる子がいっぱいいる」
「言われてみりゃ確かに」
改めて周囲を見回すと、チラホラとグラスちゃんに向けられる熱視線。クラスメイトからだけじゃない、目を凝らせば土手の上の観衆からだって。
でもその中に在って尚、彼女は揺るぎを見せない。ただ静かに佇み在る。それがどれ程難しい事か、ついさっきまで落ち着きを失っていた俺には痛い程良くわかるんだ。
「皆———とは言わないけど、結構狙われてるんだよ。あわよくばグラスちゃんを自分のモノにしたい、またはグラスちゃんのモノになりたいってね」
「……へぇ」
ウマ娘同士での恋愛ってか。言い換えりゃ、グラスちゃんはそりゃもうモテにモテてモテまくってると。
別に珍しい話じゃあない、ウマ娘同士のカップルってのは社会でも割と見るんだ。なんなら悠真のおやっさんの会社にもいるし。だから普通だ普通。それ自体は気にする事でもない。当事者にならない、その限りは。
「クロちゃん」
「ぅーん……」
「
「……は?」
意味が分からなかった。弾かれるように横を見れば、試すようなスぺちゃんの顔。じっと俺の瞳を覗き込んでくる、紫電の光に染まった視線。
「私、ワンチャンあると思うなぁ。クロちゃんとグラスちゃんならさ」
「お前………」
「ずっと不満そうな顔してた。グラスちゃんが“そういう”目で見られるの、嫌なんじゃないの?」
どんどん見透かしてくる、隠し事を許さない暴きの光。これはもう誤魔化しようも無さそうだった。
———けどな、スぺちゃん。お前が何を考えてそんな事言ってるのかは知らないけど、
「嫌だよ」
「じゃあ」
「だから、
「…!」
グラスちゃんをそんな目で見たくない。外見ばかりに惹かれるような、そんな無様な真似だけは絶対に。
だって、俺の知るグラスは、きっとあの日のまま変わらないから。
「泣いて俺を求めてくれたグラスだ。それに応えるなら、もっと他にあるだろ?」
わんわんと涙を流し、なりふりなんて構わずに俺を掴んでくれたグラスワンダー。速くて、強くて、でも俺に弱みを見せてくれたグラスワンダー。
ずっと俺を呼んで、待っててくれた。そんなグラスワンダーには、グラスちゃんには、グラスには。
「俺にしか出来ないやり方で、報いたいんだ」
自分で言ってて気合が入った。声音に熱が乗る、紛れも無い俺の本心だと自分自身に保証してくれる。これが俺の生き方で生き様だって示してくれる!
後はそれを、自分だけでなく他者にも見せつけてやるだけだ。特にグラスとスぺ、お前らにな……!
「———そういう君だから、僕達は大好きなんだよ」
スぺちゃんの最後の呟きは、クラスメイトの騒ぎ声に溶けて聞こえやしなかった。
「次―。グラスワンダー、クロスクロウ、でてこーい」
いや、グラスに見せつけてやろうとは確かに思ってたけどもだな。流石に早過ぎるだろタイミングが!
「“グラ”と“クロ”で五十音的に直近、出席番号も隣同士な時点で分かり切ってた事でしょう。気張りなさい!」
「負けたら盛大に笑ってあげましょうかねぇ?」
「急接近のチャンスだよ!ファイっ!!」
ええいキングちゃんもスカイちゃんもスぺちゃんも好き勝手言ってくれるなぁ!というかスぺは何でそんなに俺とグラスちゃんのカップリングを推すの!?CP厨なの?!俺はお前の性癖が心配でならねぇよッ!!?
「クロスクロウ、話聞いてたか?」
「すみません全部すっ飛びました」
「あらあら……私達がこれからするのは、600mの併走ですよ」
グラスちゃんに窘められてようやく自分の事に注意が戻った。そうだ、600m。つまりは3ハロン、ウマ娘がトップスピードを維持できる距離だ。こりゃ確かに、ウマ娘個々人の能力現在値を図るにゃうってつけの種目だわな。
あ、グラスちゃんが先生に褒められて尻尾を静かに揺らしてる。可愛い。
「って、それどころじゃねぇだろ」
これは機会だ。俺の位置が今どこら辺か、そしてスぺちゃんやグラスちゃん達はどれほど遠くにいるのかを知る為の。
要はスタートライン。出来れば近くあって欲しいような、でも遠くに君臨しててほしいような、複雑な気分でスタートラインに就いた。
「……よろしく」
「ええ、些か短いですが、良いレースにしましょう」
グラスも隣で同じように。相も変わらず平静で、それを揺るがしてやりたい気持ちが俄かに燃え立つ。お前が臨んだとおりに刻み付けてやりたい、と。
……そんな事を考えていたら。
「クロちゃん」
「何だ?」
口を開いたのはグラスちゃんの方から。それが以外で少々面食らって、隙になる。
「
諦める?
何を?
その疑問に脳を裂いた、次の瞬間だった。先生が旗を振り下ろしたのと、彼女が“消えた”のは。
————は?
(何……?!)
刹那、理解する。出遅れたと。
いや違う。俺が遅れたんじゃない、俺が遅かった訳じゃない!!
「嘘だろッ!」
ただ———速過ぎるんだ!!グラスの反応速度が!!
だってもう、背中があんなに遠い。開始コンマ1秒も経たねぇ内にもう3バ身は開けられちまったじゃねぇか!?
(追いつかねぇとッ)
俺だって既に蹴り出してる。プロの指導は受けれてないにしても、それなりの自主練だって積んでんだぞ……なんて自負すら粉々に打ち砕かれるほどの加速力の差だ。出だしだけでなくその後でも差が開いてくって!?
「待、て………」
出来る事なんか無い。あるとしても、ただ無様に叫ぶことぐらい。
「待て…よッ———!!!」
縋りつくように、へばり付くように。
怪物に踏み潰された足跡の中で、惨めったらしく。
「あー終わった」
周囲から数々の溜め息が聞こえてきた。予想通り、期待外れ、そんな落胆の声。
「グラスワンダーの奴、今回は威圧抜きだったな」
「選抜戦の時は酷かったですもんね。まさか自分以外の全員を
「いやまぁ実際にはレースですらないたかが体育なんだから、今回は威嚇する事自体そもそも有り得なくはあるんだが」
「つまりこの差は純粋な実力が表出した物だ。見たところクロスクロウのペースは例年の平均を前後する程度……だがこの世代には彼女達がいる」
「重圧抜きのグラスさん相手にこの有様じゃ、スペシャルさんとかにはどう足掻いても敵いそうに無いか」
口々に投げかけられるその言葉に、俺の理性は同意する。現在150mで折り返し地点を通過、差は既に目算5バ身にもなっていた。これが同族の子達に“幕府”と崇められるウマ娘の実力、これがトレーナー達に“黄金の世代”と囁かれるウマ娘が齎す現実だ。学園に来たばかりの子が匹敵し得るだなんて、幻想にも満たない戯言に過ぎない。
「悪くないけど、時代を間違えたな」
彼女達さえいなければ、と。逸材の輝きを前に吐かれる、ありふれた常套句である。俺だってそう思った。
同時に、思いたくなかった。
「クロス……クロウ」
その名を口にする。手に持っていたバインダーを歪ませるくらいに握り締めていた自分に、俺は気付かなかった。
負けて欲しくない。お前の劣勢が、自分の事のように悔しい!なんでだ?!
「頑張れ……!!」
「さて、ここら辺かな」
セイウンスカイが嘯いた。
「
キングヘイローが目を尖らせる。
「……このまま終わる筈が無いよね、クロ」
そしてスペシャルウィークが。
飽くまで、信じ切った笑みを浮かべて。
———出来る事は、ある。
無い訳が無ぇ。無いなら探せ。泣き言吐くな。
もう半分も無いんだ。弱音垂れてる暇があったら探せ、無い物を探せ!
それでも、無いなら。
(
削り出せ。
絞り出せ。
足りない何かを埋め合わせろ。大丈夫、俺なら出来る。何回もやってきたろ?今回も同じように、だ。
ほら。
体を前に倒せ。膝が胸を叩くぐらいに突き上げろ。
蹴り出す方の脚もだ。ちゃんと全部の筋肉をばねに出来てるか?腿から脛、踵、土踏まずから指まで全部推進力に変えられてるか?
そうだ。
(出せッ)
それで良い。
(出し切れ!)
それこそが、俺だ。
(出し尽くせッッ!!!)
その1歩は、笑って踏み出す。弱みなんて見せないように、曝け出して突かれる事の無いように。食いしばった歯の間から蒸気機関みたいに息を吹き出して、けど今のお前相手じゃそれでも足りないかもな。
けど、ああ。
「————!!」
振り返ったお前が浮かべた、その言葉無き笑顔に。
確かな手応えを感じれただけでも、価値はあったなって。
結果?聞かねぇでくれよ、大敗だ大敗。差の拡大こそ止めれたものの、詰める事は終ぞ叶わなかった。
いやー参ったね。やっと最高速度に達した時にはもうゴールしてんだもんグラスちゃん、必死こいてるこっちの身にもなって欲しいっての。まぁこれで彼我の力量差はある程度把握できたから、今後の目標とか立てる時にいい指針にはなる……筈。とりあえず無駄にはならんだろう、うん。
んでもって今、何してるかというと。
「グラスちゃーん」
「何ですか、クロちゃん?」
「そろそろ起きても良い?」
「ダメです。先生に言われたんですから、ちゃんと休まないと」
「ちぇっ」
膝枕されていた。グラスちゃんに、木陰で。何を言ってるのか分からねーと思うが以下略。
いや経緯は簡単な話で、走り終えた俺がやたら体温高くなってたらしく、それを見抜いた先生からグラスちゃんの付き添いでちょっと休めって言われただけなんだよね。俺はまだ存分に走り回れるつもりなものの、教育のプロに目の前で言われちゃ流石に従わざるを得ない訳で。
……でも、グラスの顔が近いこの環境は。むしろ心拍数上がって、下がる体温も下がらないというか。首に当ててる保冷材も最早効果なしというか。
「速かったですよ」
俺の顔を覗き込む、海色の
「……慰めが必要なぐらい、弱って見えた?」
「逆です。気を抜けば喉を裂かれそうな鋭さで、怖かった」
「圧勝しといてよく言うよ」
「本心ですよ?今先を行ってるだけだからこそ、追われる怖さも身に染みていますから」
それに、と言われ撫でられる頬。俺の存在を確かめるような手つきで、労わって。
「貴女に追われるのは、怖くて恐ろしくて——この世で一番、楽しいですから」
トドメの一言。あーもう、堕ちる。グラスちゃんに堕とされる。俺の性癖をどうしたいんだよ、このままじゃお前に溺れちまうぞ。そんなに俺を求めちまったら、俺、もう人生総てを捧げちまうぞ?良いのか??
「なんか、ある?」
「へ?」
「して欲しい事とか、ある?」
せめてこの場だけでも、何か返させてくれ。じゃないと居た堪れなくて立ち上がれないから。
そう提案すると、グラスちゃんは暫し黙考。いやそんなに重い提言をしたわけじゃないんだが。変に重大な頼み事されても困るぞ、そりゃ頼まれたら何でもするつもりだけどさぁ!
「……グラス」
「?」
なんて素っ頓狂な喚き声を内心で上げてる間に、考えが纏まったようで。
「グラス、って。ちゃん付けじゃなくて、呼び捨てにしてください」
「良いのか?」
「それが良いんです」
なぁんだ、そんな事。俺としてもなんか呼び捨ての方がしっくり来てた所だったんだ。
それでお前が喜ぶなら、喉が枯れるまで幾らでも。
「グラス」
「……~~~~っ」
「グラス?」
「あっ、何でも、ないんです。
頬が赤くなってるように見えるのは錯覚?お前まで熱中症になるのは不味いだろ、儘ならねぇなぁ……あっそうだ!
「俺も呼び捨てにしてくれよ!」
「えっ」
えっ、じゃないよ。片方が呼び捨てなのにもう片方がちゃん付けだなんて、なんか気持ち悪いじゃん?そこは出来れば平等にいきたいんだよ俺は。
「クロスでもクロでも、何ならクロウでも良いぜ。そういや“黒助”って呼ばれてた時もあったっけなぁ」
「いや、その、いきなり
「あ、ダメなら忘れt」
「待って!ちょっとだけお時間を」
無茶ぶりだったか、と撤回しようとした口を止められる。嫌な感じじゃなさそうだけど、何か躊躇う理由でもあったんだろうか?
いずれにせよ、頼んだ側の俺に強く出られる道理なんて無い。グラスの決意が固まるまで待つ、待つ、待つ。
……やがて。幾十秒を経た桜色の唇から、その音は紡がれた。
「———ク、ロ…」
「お!」
「…さんっ!!」
ズコーッ!
「ちょちょちょい!!そこでなんでやめちゃうの!なんなら“ちゃん”よりも遠ざかってない距離!?」
「だって、だって!ボk——私があなたと対峙するだけで、どれだけ色んな想いを我慢してると思ってるんですかッ?!」
「初耳なんだが!!?」
梯子を外された俺は苦笑い。グラスも涙を、今度は喜悦ゆえの雫を目尻に
ふと吹いた風に栗毛の髪が浚われ、俺の視界に青空が取り戻される。その中に二人、笑い声が融けていく。
(ったく、借りを返す為に頼みごとを聞いたってのに)
気付けば俺の方からも頼み事して、結果は元通りのプラマイゼロ。我ながら何やってんだかと、小一時間ほど問い詰めたくなってくる。
でもしょうがないじゃんか。だってグラスの笑顔が、見たかったんだから。
「あー……儘ならねぇ!!」
前途は多難。壁は多く、超えなきゃいけない限界も多数。
でも、
「……すげぇ」
もう周囲に人はいない。最後の最後にクロスクロウは、確かに見物客の認識を変えた。鬼人と呼ばれるグラスワンダーのトップスピードと同じ速度に至った、その姿で。
けどそれは「もしかしたら重賞を狙えるかもな」という程度の物。確かに、蓋を開ければグラスワンダーの圧勝である事には変わり無く、立ち上がりの遅さを見ても彼女達に勝てるとは本来思えない。
でも俺の目は、もう“本来”からだいぶ離れてしまったようだった。
「あの、走り……!」
欠けてる。何かが足りない、その状態でクロスクロウは張り合ってみせたんだ。なら、その欠落さえ埋められれば。
「クロスクロウは……勝てる!!」
根拠の無い確信。どれ程冷静になろうとも捨てられないそれを胸に抱き、内頭を振り絞り続けた。
何が足りない?フォーム?体幹?パワー?否、本格化直前のこの段階におけるそれらは揃っていた。問題はそれらの噛み合い方がチグハグだった事……か?俺のこの分析が正しいのかも分からない。イライラしてきた。
「ああっ、くそっ!!」
ここで怒っても意味が無いなんて分かってる、けど!せめて俺が、俺がアイツの穴を埋めれる存在なら。
もしお前が俺にとっての“銀色”なら───!
「トレーナー顕彰、第25条」
その声が誰宛のものか、最初は分からなかった。
でも、万人を呼び止めるその存在感に、俺の身体は静止を余儀なくされていた。
「“トレーナー業に携わる者は、レースに直接関係しない学校教育にみだりに介入してはならない”……覚えがあるだろう?」
言われて気付く。衝動に任せ、柵を乗り越えようとしていた事に。
何してんだ、俺。
「ごめん、早まるところだった」
「そう落ち込まないでくれ。私とて、遮る物が無ければ寄って行ってしまっていたかも知れないからね」
「……君が?」
シンボリルドルフが?こんな未熟な俺と同じ行動をしていた、と?
問いを投げる前に、彼女は踵を返してしまう。自身の
と、その時。皇帝は立ち止まり、こちらへと視線を遣って。
「同じ光に魅せられたんだ。仲良くしようじゃないか、
「……!」
名前を言い当てられて、またも硬直。今日は何から何まで、一から十まで圧倒されっぱなしだ。
「……俺は……」
シンボリルドルフが去った土手で、立ち竦む。背中には体育授業に励むウマ娘達の声、その中にはクロスクロウのそれも混ざってるんだろう。
「俺がするべき事は……何だ?」
夢見た光の正体。それに近付いた高揚と、不確かな不安の中で迷う。
銀十字の光に眩んだ目で、それでも道を間違えない為に。
スペたん「クログラ最高って言って下さい」
デジたん「クログラ最高!イェイイェイ」(※裏でスペグラ物の同人誌を執筆中)