前回のあらすじ:スペグラ圧迫面接 to YKSE
【第13話】無頼!
『クァーッ!カァーッ!!』
前略。マンボが帰ってきた。
エルの飼鳥、前世では確か……人間はヨウムって呼んでる種類の鳥だったかな。
『コァ!キァーー!!!』
で、私とグラスによって他三人の記憶が半ば強引に取り戻されたその夜。エルの荷物と共に寮部屋へ入れられていたマンボは、同室相手としてエルと共に来たグラスと接触し、一時パニック。
それを経て、私たち五人に対して他の子とは明らかに違う反応を示すようになった。記憶を取り戻した
そしてそんなマンボは少し前、かつての仲間たち——シーラ達を探すべく、しばしの間トレセンを離れて旅立っていた。その間にクロが編入してきて、リギルの選抜レースがあり、行末が出てきて、僕たちはてんやわんやだった……という次第。
そのマンボが、帰ってきた。エルとグラスの部屋の窓に、昨晩帰ってきたんだ。
「帰って来たのはいいんだけどさ」
うん。喜ばしいんだけどね?久しぶりに顔を見れて嬉しいんだけど、ね?
『アーーッ!!』
「エル、分かる?」
「ごめん、詳しい事はさっぱりデェース」
今のマンボさぁ。ヨウムじゃないんだよね。
「鷹なんだよねぇ……」
「コ…コンドルデス」
「いや凄く鷹だよコレ」
「orz」
そこで反論されても、ってな具合にスカイの追撃で撃沈ならぬ墜落したエル。それを横目にマンボへ視線を移せば、気まずげに目をそらされた。鷹になった事に関してどうにも後ろめたいように見えるけど、それに関して責めるつもりなんか毛頭無い。
無いけど……割と困った!
「やっぱり難しそうですね」
「うん。マンボからの視点も参考にしたかったんだけどなぁ」
「まぁ良いじゃない。こっちが人間の体になったんだから、遠隔での連絡手段にはもう困らないもの。今世ではマンボには休んでもらいましょう」
『!!クーァッッ!』
「わぶーっ」
「「「「キングーッッッッ!!??」」」」
キングが出した妙案、しかし乗っかるのに先んじて他ならぬマンボ自身が強襲!哀れキングは顔面を羽根まみれにされてしまう。
なんとか引き離した時には、飛び掛かりで面食らい目を回す少女の姿。それを見て何故かドヤ顔*1を披露するマンボに、今度はグラスが問い掛けた。
「マンボ君も、手伝いたいんですか?」
『カーッ!!』
「当たりみたいだね」
羽を広げて鳴くマンボに肯定の意を見出し、皆して顔を見合わせる。キングの言う通り、マンボの助けが必須である事は現状特に無い。
けどその善意は、確かに僕達を癒してくれていた。クスッと、誰かが漏らした微笑が皆に伝播したのがその証拠。
結論は出たということで。
「じゃあエル、マンボに人語教育お願いね」
「ケッ!?初手難題とはたまげマスねぇ、いえドンとこいデスが」
「ボクも手伝いますよ。ほら、教材の用意とか」
「あっそれは私がやるからグラスは休んdムグゥ」
「グラスさんが動いた瞬間に介入する悪癖はやめなさい!」
「傍目から見てもそれは甘やかし過ぎでしょ~」
「ぐむむ」
「聞こえてますよー」
『
「あ、今のだけは何言いたいか分かりマシタよマンボ」
きっと前世でも、皆が一堂に会してたらこんな雰囲気になっていたであろう談笑。ここに
「——有馬記念はどうする?」
「「「「『—————!』」」」」
皆が、目の色を変えた。
「さてクロス!一つ提案があるっす!」
「おうおう何ぞや」
タッグ結成の翌日。俺の各種適性なり何なりの再確認で一頻り走った後、行末から投げかけられた呼び声。今後の方針について建設的な話でもするのかと、いそいそ駆けつけてみれば。
「有馬記念、近いよな」
「──そーなの?」
「そーっすよ!?」
やっべ、身辺に注力し過ぎてすっかり忘れてたわ。そういやもう年末か、時が経つのは早いもので。
で、有馬記念が何?
「見に行こう!」
「……ふむほむ。ちな意図は?」
「先輩の、それもシニア期の実戦を直に見る経験は絶対に糧になるから。何より場の空気は知っておいた方が良い」
「いや一応GⅠレースを観戦した事はあるぞ流石に」
「
ふむぅ。三理ぐらいある。
んでもって断る理由も無い。ここから行かない奴いる?いねぇよなぁ!?
……と、なるとだ。NARUTOだ。鳴門海峡だ。
「つかぬ事を聞くけれども」
「おう何すか」
「俺以外にも連れてく事って出来る?俺と同じか、ちょい下の子供とか」
見せてやりたい。親のいない、そういう大舞台へ連れて行ってくれる人のいない
これは、その絶好の機会だ。
「うーん、俺の車になら……子供6人くらいまでいけるっすよ」
「助かるぜ、丁度そんぐらいだ!」
持つべきモノはやはり
「何してんの?」
「秘密〜」
「あらつれねぇの」
「まぁそれはそれとしてだ」
気にすべき事があるだろ、俺の個人的な習慣なんかよりもさ。
ほら。“シャドーロールの怪物”。
「……有馬記念は忘れてたのにそれは覚えてるんすね」
「言うなぃ」
「本当に戻って来るんだね」
桜の瞳が鋭く光る。目にした訳ではなく、背中に刺さる違和感からそう確信した。
私は答えない。ただ無言で、肯定を示すだけ。
ただ、靴紐を結えていた指が、微かに強張る自覚があった。
「……そう。本気なんだ」
ポジティブな反応でない事は確かだ。ローレルは、私の
「なんで?」
次いで、疑問。
「どうして?」
至極不可思議である、と。
「ブライアンちゃんは
「………」
その通りだ。言い返す言葉を私は持たない。他ならない、私を
故障から私は変わった。変わる以外の道を選べなかった。手にしていた強さと、引き換えに。
「もう良いじゃない……もう苦しむあなたを見たくないの」
「っ……」
「あなたの輝きを、これ以上自分で曇らせないでよ……っ!」
私は確かに、弱くなったんだ。
「そうだな」
それでも、だ。
それでもなんだ、ローレル。
「だが、私の輝きは私の物だ」
このままじゃ終われないんだよ。
「どうしようと、私の勝手だろう」
強がり。精一杯のそれを、言った側から自嘲する。どのツラ下げて、と。
ローレルの返答は間を置かなかった。
「そう」
「ああ、そうだ」
「じゃあ良いよ。
春天の焼き直しだと、今度こそそれで終わりだと。言外に告げられて、それを境に背後から気配が消えた。緊張でまごついていた指が、靴紐を結び終えたのは時を同じくして。
………終わり、か。
(私の“終わり”は、どこだ?)
最高点に到達した時か。
例えば、三冠を為したあの時。
例えば、シニア勢を捩じ伏せ、アマさんと逢瀬を交わした有マ記念。
数あった転機か。
例えば、炎症を自覚したあの時。
例えば、マヤノと追い合った阪神大賞典。
醜態を晒した時か。
例えば、何一つ立て直せないまま無様を見せた秋の盾。
例えば、ローレルによって完全に打ち負かされた春の盾。
例えば…何一つ掴めなかった、高松宮杯。
終わりを迎えた。終わらされた。終わっていた。
一体どこが、“マシ”だったのか。何度も考え、眠れない夜さえ過ごした。
だが、私はまだ
そこに残る事を選んだ。自分の意思で。己の選択で。
ならまだ、終わりじゃない筈だ。私の中では、何かが終わらず続いてるんだから。
「そうだろう、なぁ」
立ち上がれば影が伸びる。自らを追い立てるように、責め立てるように、忘れるなと。
克服した筈のそれが、また怖いけれど
「勝者だろ、お前は」
ああ、そうだな。
分かっている。記憶から語りかけてくるお前が誰なのか、何者なのか、もう忘れてしまったが。
「忘れるものか」
お前の遺した想いだけは、忘れはしない。