色々と浮気して、やっと出来ました
【あらすじ】
ローレルの湿気でブライアンがヤバイ
ついでにスカイの湿気でクロスもヤバイ
【2025-1-15】
フレアカルマの台詞を加筆
私にとってのナリタブライアンとは、まさしく鮮烈な光そのものだった。
影も踏ませぬ怪物。怖い物なんてないみたいに芝を蹴飛ばして駆ける彼女は、クラシックを蹂躙するその姿は、ものの見事に私の網膜を灼いてしまって。もう二度と消えてくれそうにない。
私だって、一緒に走りたかった。
同期として、今同じ場所に立てなくとも、同じ地平にいるんだぞって示したかった。ううん、自分でそう思い込む事で、故障に喘ぐ自分を勇気付けてたんだろう。
怪物となった貴方に傷を付けて。それ以上に、付けられたかった。絶対の勝利を示すあなたは、私の希望だったから。
でも。
「ブライアンちゃん」
「「……っッ」」
あなたはもう
絶対勝者じゃなくなったあなたに、ターフに出て最初に話す相手を選ぶ権利なんか与えるものか。真っ先に駆け寄ろうとするヒシアマちゃんを押し退けて、強引にでも割って入ってやった。
……テレビで眺めてた頃は、お似合いの二人だとすら思ってたのに。
「やっぱり来たんだ」
「ダメだったのか?」
「うん。でも、やっぱり痛い目見ないと分かんないみたいだから、もういいや」
自分でも何言ってるのか分かんない。それを自覚できるぐらい酷い事を言ってるのは分かる。でもブライアンちゃんを前にすると、どうしても止められない。
「じゃあ頑張ろうね。ここまで無駄な努力、お疲れさまでした」
「待ちなよアンタ!いくら何でも───」
「いいんだアマさん。私は気にしてない」
「けど……!!」
去っていく私、怒るヒシアマちゃん。その騒ぎを聞きつけて駆け付けたマヤノちゃんが、チラリと一瞥してきたのにも気付いてる。言葉は無い。
そこに込められた意味も、もうどうでもいい。
「……無駄な事してるのは、一体どっちなんだろうね」
これじゃ誰が惨めなのか分かんないや。あなたにはどう見えてるかな、スカイちゃん。
「来たぜ~」
「連れてきた~」
「クロ、スカイ!待ってたよ……君は?」
「フレアカルマです、クロの誘いで来ましたー。よろしく」
「いやしかし中々いい場所確保したな。こりゃ観戦が捗る」
「有馬記念だもの、席取りに余念は無いは無いわよ」
「……見逃せるわけがありませんから。
「エルも……ここで走りたかったデェス」
(ん?俺らまだデビューすらしてなくね??)
「ブライアンさん、アマゾンさん!ローレルさんと何かあったの?」
「よくあるレース前のじゃれ合いだ。気にするな」
突撃してきたマヤノの頭を引き剝がす。前々からコイツの距離感はおかしい、のでガシガシ頭を強めに撫でながら押し返してやった。
「でもローレルさん、すっごく辛そうだったし」
………そう、だろうな。
「……あのバカ。何でそうやって、自分を傷付けてまで……」
「言うな。私の責任だ」
「そうやってしょい込むんじゃないよ!アンタは我侭なクセに我慢しいなんだから」
「よく分かってるじゃないか、さすがはアマさん」
「こっちは真剣なんだよ!」
茶化して胡麻化す間もなく、アマさんの顔がズイと寄った。互いが互いに目と鼻の先。
「アタシは……アタシは、嬉しいんだよ。アンタがまだ走ってくれる事が」
「…アマさん」
「でも同時に──あぁ、これじゃローレルに人のこと言えない。こうも思っちまってるのを否定できないんだよ、
私の現状を私以上に理解していると言えるのは、おハナさんを除けばアマさんだけ。チーム練習での私を、そこから離れてリハビリする私を、献身的に支えてくれたのが彼女だ。
だからこそ、理解してしまっている。
「なぁ、ブライアン……!」
夕焼け色の瞳が揺れていた。無理するなと、
だが。そうじゃないよアマさん、違うんだ。
「
「……!」
ここに来たのは、アンタ達の希望に報いたいからだけじゃない。むしろ……
なに、いずれにせよ誰か他者から押し付けられたものじゃないんだ。自分でバラ撒いてきた因果を、業を、自分で引き取りに来ただけのこと。
それが済むまでは、終われない。
「私は嬉しいよ?また全力のブライアンさんと走れるんだもの」
そう言ったのはマヤノだった。
「今のブライアンさんの実力がどうかなんて関係ない。ただ本気か、そうじゃないかだけ。私はそれに同じ本気で答えるだけだもん」
「……それで頼む。手加減なんかしてくれるなよ」
「当然!頼まれたからには轢き潰す勢いで圧勝しちゃうからね~」
「アンタって奴は……全くもう!」
その宣言に後押しされたように、アマゾンがまたもやマヤノの頭を乱暴に撫で回した。二度に渡る狼藉を受け、橙色の長髪が走る前から乱れてしまっていた。
一頻りそれをしてから、また夕焼け色の瞳が私を捉える。不安と心配の色は未だ濃く、だが先程よりは確固とした覚悟を秘めて。
「分かったよブライアン、例の通りに
「最初からそう言ってるだろう」
「だから!その上で……!」
それでも最後は縋るように。信じ切れない私を、それでも信じたいと、そう言いたげに彼女は。
「
……分かってる。
そうさ、誓うぞ。お前達の想いに、私の矜持に、これまで助けてくれた……そして負かしてきた奴らの祈りと呪いに……!
「この右耳飾りに懸けて、な」
「──アハッ。その
「受け売りだ。なんでも
「ん~……意味が分かりそうで分かんなくてやっぱり分かりそうだから、今は保留で!マヤは男気とか似合わないし」
「つれん奴だ」
「でもブライアンさんからの珍しいお誘いだし、ブライアンさんが勝ったらマヤも考えてあげる!!」
「じゃあアタシも……いや、やっぱりタイマン一択だなアタシは!」
「アマさんは確かにそっちの方が良い。私が保証する」
ゲートに入るまでの和やかな会話、だがファンファーレが鳴ればそれもお終いだ。傍から見ればぬるま湯の馴れ合いに見えるんだろう、なんなら怪我する前の私もまたそう思っていただろう。
ローレル、お前の視線を感じる。怒りを孕んだ軽蔑の視線、これもまたそうだ。
けれど、これが無ければ私はここまで戻って来れなかった。高松宮杯で折れてそのままだった。もうこの繋がりと暖かさを無下にはしない、出来ない。弱くなったと笑わば笑え。
この弱さを抱えたまま、私は頂点に舞い戻ってみせる。
きっとブライアンちゃんは
彼女の背中を見て、私はそう予感した。
「ライスはどう思う?」
「うん。同じだよ、マーベラスさん」
だよね、だよね。だってあの目、あの顔⭐︎
「とっても
自負がある。底から這い上がって、栄冠を掴もうとする
だからマヤノも一層惹かれてるんだと思う!あんなの前にしたら私、私もう……⭐︎★⭐︎
「あのブライアンを超えたいなー★⭐︎超えたら私、もっともっとマーベラスに……」
「───っ」
「……ライス〜?」
でも興奮してたら、いつの間にかライスが暗い顔。その視線の先は……ローレル?
「どうしたの?」
「──ううん、なんでもないよ。ただ……」
「ただ?」
「やるべき事を、決めたんだ」
それだけ言って、ライスはゲートに向かってしまう。ポツンと取り残された私は首をかしげるばかり。
でも……それがライスにとって
「マーベラスサンデー、頑張るよーッ!★⭐︎★⭐︎」
『お姉さま。お姉さまならきっと、こうしたよね……』
「わぁ~」
「始まるよ!!」
「ねぇ、今の……」
「聞こえたよ。微かにだけどなんとか」
「こらガキども、行儀よくしろっす」
「良い子にしてないと帰ったら言いつけちゃうよー?」
「悪いな行末、フレア。次は俺が面倒見とくから休んでくれ」
「いやいや良いっすよ、それよりクロスはレースに集中で!じゃないと何の為に来たのか分かんなくなっちゃうっすから」
「確かに」
「この時の為にオイラが来たようなモンだしね。どーんと構えててよー」
「ぐぬぬ……スマン、二人とも」
「右耳飾りで漢気って…ブライアン先輩、意味わかってるのか?」
「待って下さい、今“受け売り”と言ってました」
「さて全ウマ娘入場だ。お前ら、誰が一番かっこいいと思う?」
「なりたぶらりあん!」
「かっしょくのおねーちゃん!」
「ちっちゃいせんとーき!」
「おっぱいのおおきいこ」
「元気っすねぇ良いっすねぇ。ってオイ待て最後」
「つまり、私達とブライアン先輩以外で、
「で、どしたんエル。話聞こか?」
「アッ、イエナンデモナイデス」
ゲート体制完了。年を締め括る大一番、その時を全員が待ちわびる。
出走したウマ娘も、現地の観客も、中継でそれを眺める市井も。一年の決着を待つ。
カウントダウンは無い、だが予感があった。5秒。
4、3。
2、1。
ガシャン。鉄が戦慄いた。
ナリタブライアンが、ヒシアマゾンが、マヤノトップガンが。集った勇士が迸った。
「「「おおぉぉぉおおおおッっ!!!」」」
途端、沸き起こる歓声怒声が彼女らの背を押す。中山の直線を駆け、クロス達の眼前を過ぎ去っていく。
「すっげ……!!」
その熱気、熱意。圧倒の一言。クロスクロウは文字通りに気圧されていた。
強がる心が口角に現れ、引き攣り歪む。これがGⅠ、これが有馬、これがレース!!
これこそが──ウマ娘競争の真骨頂!
(ここなら、)
紛れもなく、皆の視線を受ける場所だった。皆の期待を一身に背負える場所だ。
(ここで、
それに応えられたら。
……それはどれほど、有意義な事だと言えるだろう。
クロスクロウは煮え滾る。点火を待っていたガソリンが今、発火点に向けて着々と熱を籠らせていた。
色々久しぶり過ぎて多分キャラ崩壊もヤバイ。サーセン