また君と、今度はずっと   作:スターク(元:はぎほぎ)

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いつかノイジースズカとディープインパクトとスペリオルワンダーの馬時代の逸話も書かなきゃなぁ、と思いつつも中々筆が伸びてくれないスタークです


【第24話】神託!

「ノイジー!普段あまり食べられない物が手に入って喜ぶ気持ちは分かるが、私達はウマ娘なんだぞ!他人の為にも自分の為にも、こんな混雑した場所で無闇に走り回るな」

「ごめんなしゃい……」

「うぐううううっ」

「ノイジーちゃんはともかく、なんで俺も座らされてるんすか?」

「まぁついでだな」

「ついでっすか!?」

 

参道から少し逸れたスペースで、クロがノイジーちゃんを膝の上に乗せて先輩に叱られている。その様子を私達は、少し離れたベンチから眺めていました。

私とスズカ先輩の間には、丁度ヒト2人分の間隔。

 

「……」

「……」

「………っぁ「あの」……」

「………」

「……どうぞ」

「いえそちらこそ」

「いえいえ…」

「「………………」」

 

分かっています。スズカ先輩は何一つ悪くない。というか、私と彼女の関係性においては私以外悪い人がいない。

前世でクロを取られると思った事。クロの死因が彼と思った事。どちらも、根拠の無い八つ当たり。私がボクの鬱憤を消化出来ないまま一方的に叩き付けただけ。

だから私に彼女を避ける理由も権利も無い……というのを、頭では分かっているのだけれど。正直、合わせる顔すら無いのが実情で。

彼女についてスペさんから「前世の記憶の有無は不明」と聞いてるのも相まって、こちらから無闇に接点を持つ気には未だなれないでいました。もし記憶があったら、今この空間が気不味いなんて話に留まらなくなってしまいます。

 

「クロスクロウ、お前もノイジーと似た事が言えるんだぞ。同級生達は学業をキチンとこなしてから練習に励んでいるのに、片方を放棄するなど言語道断だ!他の子達に申し訳なく思わんのか!!」

「ごめんなさい……」

「謝罪は口ではなく行動で示せ!会長の気をこれ以上煩わs……」

「ママ……ノイジーがわるかったから、クロクロさんをしからないで」

「うぎゅううううっ!!許す!!あっいやダメだ許す訳にはいかん!!」

「先輩!中断しましょう!!ノイジーちゃんを抱えたままじゃ真剣(シリアス)に聞けませんっ!!!」

「真面目に聞かんかっ!」

「でーすーかーら!一旦ノイジーちゃんの説教と自分の説教、どちらを先にするか選びましょうって言ってるんですよ!!」

「クロクロさんのおひざの上がいい……」

「「うぐぎゅううぅぅぅううっっ!!」」

 

いずれにせよもう少し……いやもうちょっと時間掛かるかな……の辛抱。陽気なクロさんと、場を引き締めてくれるエアグルーヴ先輩、そして可愛いノイジーちゃんが戻って来てくれれば潤滑油になってくれるだろう。今はきっとそれで良い。

それで、きっと──

 

「私の従姉妹なの」

「……!」

 

そうやって黙したのが隙となったのだろう。スズカさんがとうとう、切り込みに成功してしまいました。会話の成立です。

 

「元々はエアグルーヴと一緒にお参りする予定だったんだけど。あの子がどうしてもここに来たいって言って、両親の予定がダメだったから私に任せられたのよ」

「なるほど。では、エアグルーヴ先輩をママと呼んだのは……」

「前に会った時からすっごい懐いちゃって。両親はお父さんお母さんって呼ぶのに、なんだか変よね」

 

道理で、と頷いてから改めて見る。しかしどういう事だろうか、彼女の顔立ちはスズカ先輩とエアグルーヴ先輩の両方の面影が重なるように垣間見えていた。

………十中八九、ノイジーちゃんは両先輩の()()()()()だ。

 

「でもお似合いですよ。スズカ先輩が妻でエアグルーヴ先輩が夫……ノイジーちゃんを間に挟むと、とても絵になりそうです」

「そうかしら?じゃあ私、彼女達にちゃんと見合えるよう頑張らなくちゃ」

「……」

 

やはりこの程度のかまかけでは微塵も引っかかってくれませんか。夫妻を逆にすれば何かしらの訂正を挟んでくるかと思いましたが……これは天然?それとも計算尽く?

まぁこの程度でバレる、もしくはバラすようなら既にスペさんが見抜いているでしょうけれど。

 

「そう言うグラスちゃんは、クロスちゃんとどうなりたいのかしら?」

「──そう、です、ね」

 

思案に耽っていると、返されてきた問い。思いがけず吃っての応答となってしまう。

(ボク)とクロ。この関係性に、友達以上の名前を付けれる日が来たら。それを想像するだけで、顔が緩───

 

(……あ、れ)

 

───まない。

想像、出来ない。どうして?

 

(なんで。だって私はクロと一緒にいるこの時をずっと夢見て、ずっと生きてきて、なのに)

 

どれだけ頭を捻っても、出て来るのは()()クロと私の姿。そこに成長は無く、また未来も無い。

ウマ娘は部分的に不老とはいえ……これでは、まるで。

 

「今が一番幸せって感じね」

「っ!」

「私もそうなのよ。頑張らなくちゃって言ったけど、()()()()()()()()()()()とすら思ってしまってる。具体的にどう頑張ればもっと良くなるのか、皆目見当もつかないもの」

 

スズカ先輩が言った事が全てでした。今が幸せ。今のままならいつまでも……という、“停滞”。

弱くなっていた自覚はありました。最後の有馬記念から、このグラスワンダーに芯など無く、消えたクロを求めて右往左往する……死んでないだけの肉塊。

そしてこの世界でクロと出会えて、元に戻れた気でいました。でもそれは単なる錯覚に過ぎなかったんだと突き付けられたんです。

ウマ娘ともあろう者が、足を止める選択をするなど────!

 

「うっ……!」

「だ…大丈夫?」

「はっ、ぁ……すみません。少し、深呼吸させてください」

 

肺に酸素を、新鮮な血液を全身へ回すように。急激に遠くなった気を引き戻すように、青褪めた脳に活力を取り戻させます。数秒ほどのその努力が功を奏し、狭窄していた視野に景色が戻りました。

でも、何も問題は解決していません。

 

「……スズカ先輩も、そうなってるんですか」

「色々あるけど、レース方針とかが挙げられるかしら。今の戦法のままなら二冠まで狙えそうなんだけど。実は私、()()()()()()()()()()()って思ってたのよ」

「……貴女が?大逃げ以外を?」

 

思考を落ち着かせるべく投げた問い、その答えに思わず瞠目しました。

前世、サイレンススズカは稀代の大逃げ馬。かつてマンボが「世界級」と評したその走りを、先輩は今世でも十全に発揮し、今年のクラシック筆頭として名を馳せています………その強さと恐ろしさと底知れなさは、私の内にも深く刻み込まれていますから。

そんな彼女が、今になって先行策?どうして?…という疑問が、言葉だけでなく顔にも出てたのでしょうか。

 

「ふふっ。不思議がるのも無理ないわ」

「あ、すみませ──」

「良いのよ。もちろん大逃げの方が間違いなく勝ち易いし、私自身“このまま大逃げ一本で良いかな”って思ってたぐらいだもの」

 

そんな疑念に微笑みで答えてくれながら、先輩は「でもね」と言葉を続けました。

 

「あなたを見て、考えが変わったわ」

「私を、ですか」

「幸せを謳歌するのはとても良い事。今手元にあるそれを全力で味わうのは大事……でも、いつかそれが終わるのなら」

 

幸せの終わり。考えたくもない可能性。

それでも、それを見据えて彼女は告げる。

 

「終わる前に、踏み出さなきゃって。そう言いたくなったの」

「……!」

「で、他人(あなた)にそれを言うなら、まず自分の行動で示さなきゃって。そう思っただけ」

 

つまり、デビューを控えた彼女は……先行策を試すつもりなのだと。トゥインクルシリーズの大一番の一つで、それを。

自分の最大の武器(おおにげ)を一旦封印してでも、博打の道を行くのだと。

………なら、私は。

 

「いやぁ〜参った参った。ノイジーちゃんの体力は底無しですな」

「でしょでしょー!ノイジーね、つよい子・かぜの子・元気な子なの!!」

「そうだろうとも!良いかノイジー、お前は最強なのだ。いつか私は大地をも魅了する太陽になってみせるが、お前はそれを越えて全ての(そら)を虜にするんだぞ。その過程で邪魔する奴らは(ママ)が蹴散らしてやるからな」

「うん!」

「いや期待値バグってますやん。自分でママって言っちゃってますやん」

「何か言ったか問題児──戻ったぞ、スズカ」

「イエナニモー………おうグラス。お待たせ」

「ううん。3人の様子を眺めてるだけで楽しかったわよ」

 

やがてクロ達が戻って来る。空きスペースで他の人の邪魔にならない程度にノイジーちゃんを遊ばせてあげたらしく、付き合った末に肩車している彼女とエアグルーヴ先輩の額には僅かながら汗が輝いていました。それに誘われるように、スズカ先輩も前へ。

……私は。

 

「スズカ先輩」

「へ?」

 

気づけば呼び止めて、こう言っていた。

 

「先行策で重要なのは、周囲への注意を怠らない事です。自分の世界(りょういき)を全力で発揮するのではなく、如何にライバルの気勢に()()()させるか……呑んでも、呑まれるな。それをお忘れなきようお願いします」

「!……肝に銘じるわね」

 

スズカ先輩が運命に導かれるのならきっと、私達はまた戦う事になる。あの毎日王冠で、そして有馬記念で。

そんな敵に、しかしアドバイスを贈ったことを後悔はしませんでした。

現状に甘えず、一歩踏み出す大切さ。それを思い出させようとしてくれた善意には、善意で答えなければ牡馬(おとこ)が廃る。

例えそれが、苦手意識を払拭出来ない相手だとしてもだ。

 

「仲良くなったー!」

「そーなの?いやぁ良かった良かった」

「まぁ、そういう事で」

(……まだ、堅くて当然よね)

「どうした?」

「ううん、何も」

 

クロに肩車されたノイジーちゃんを除き、4人で並び参道へ。その道中でクロの横顔を見ながら、見えなかった未来へ思いを馳せました。

 

……スズカ先輩は、不透明な未来へ歩き出した。なら私は?

 

「そういえばグラスワンダー。夜間訓練には結局参加するのか?」

「夜間訓練?なんですかそれ」

「一言で言えば山籠りね。2年生はそのカリキュラムがあった筈よ、自由参加の応募制だけど。クロスちゃんは知らなかったの?」

「多分見忘れてましたねぇ……サーセン」

「そうですね。参加してみようと思います、良い機会ですし」

「あっじゃあ俺も行ってみようかな。今から応募って出来ます?」

「山キャンプ?ノイジーもー!」

「すみませんクロさん。今回は私だけにさせてください」

「ノイジー、お前は入学してからな」

 

見つめ直す機会が必要かも知れない。夜間訓練に限った話ではなく、日頃から己の芯という物を。

私にとってクロがどういう存在であるか、私が彼女とどう成ってゆきたいのか。

その見えない未来へ、どう踏み出していけば良いのか。それを探る事を始めなければ。

 

「やったー!なんかスゴイ吉が出たよー!!」

「良かったわね。私は……『芸は身を助く』らしいわ。中吉ね」

「ほう。私も悪くはないな、小吉だ」

 

そんな思いを後押し、いや急かすように。

 

「グラスはなんて出たんだ?俺は大吉d……おぉうふ」

「…こういう年もありますよ。備えられると考えれば、むしろ朗報ですから」

「うぅむ。何かあれば相談しろよ、グラス」

「わわ、ノイジーも助けるから!」

「……」

 

凶。

今年で良かった。来年や再来年でなくて良かった。

けれど今から動かねば、未来が()()なるぞ、と。そう言われた気がして、ぎこちなく笑う他無かった。

 

「ちなみにだけど、クロスちゃんはどうなの?」

「とりあえずグラスと分かち合って相殺したいぐらい良い引きでした。内容はええと……『棚から牡丹餅。身の丈を超えた誉』とのこと」

「ぎゃくにこわぃ………」

「「「確かに……」」」

「ねぇこれホントに大吉っすか?」

 

 


 

 

おみくじ以外は最高の初詣だった。総括するとそんな感じだった。

グラスは綺麗だったし神様にはしっかり二礼二拍手一礼できたし、スズカ先輩にも挨拶できたしノイジーちゃんも可愛かったし後それとえっと……エアグルーヴ先輩に叱られたのは自責点なのでノーカン。身から出たサビサビの実。

 

(んじゃ、ご利益が続いてる内にひとっ走り行ってきま~)

 

そうやって一日を思い返しながら体を(ほぐ)しつつ進む校舎。そのままジャージに着替えるべく更衣室へ向かおうとして……いつの間にか、中庭に出ていた。

 

(……んぁ?)

 

おかしい。更衣室は逆方面だ、迷ったか?迷って出たか??幽霊か。

なんて思うと同時に三女神像が目に留まる。オイオイ、元旦とはいえやけに神様と縁がある一日だな今日ってヤツは。

 

「ついでにこっちも祈祷しとくかぁ」

 

無闇矢鱈に祈って神様と縁を作りまくるのもそれはそれで厄ネタ、とは聞くものの。俺はウマ娘なので既に三女神とは縁があるしええやろ、の精神で歩み寄る。像は像に過ぎないので反応などある筈も無し。

ところで何祈ろうか。大國魂神社でお参りした時と同じでいっか。俺含む皆の大願成就!全員の無病息災!宮崎家の家内安全!宮崎グループの商売繁盛!あと俺達の職を支えてくれてる人達へ向けて五穀豊穣に大漁満足、まぁ日本生まれ日本育ちだから皇室弥栄(こうしついやさか)と国家安泰も祈っとこ。かしこみかしこみ。

 

(ダーレーアラビアン様ゴドルフィンバルブ様バイアリーターク様、ついでに他の神様仏様に聖四文字様!最悪の場合は俺自身差し出すんで、それで便宜の一つでも諮って下さるとめっちゃ助かります。どうか御一考のほdわぁ!?」

 

異変が起きたのはその時だ。敬意があるんだか無いんだか自分でも分からない、そんな罰当たりな祈祷を捧げたその瞬間。

三女神像が光を放ち、俺ごと周囲を包む。跳び退く猶予などある筈も無く、呆気なく俺の五体は呑み込まれ───

 

 

 

気が付いたら、目の前に綺麗な芦毛のお姉さんがいました。誰?誰なの!?怖ぇよぉッ!!




何が始まったかって?アプリをお持ちの皆さんならご存じの筈
そう、育成初手の因子継承だね!!
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