また君と、今度はずっと   作:スターク(元:はぎほぎ)

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やっっっと筆が進んだ……毎日王冠に入れる………
ルドシリBL検索で現実逃避する時間は終わりだ!(なお新生活への準備)


競走馬編-約束のトライアングル
【Ep.23】夏休!


『はぇー、世界が』

『そう!変わったんです、ぶわーって!!』

 

後日。検査で異常が無い事が確認された俺は、厩舎に帰ってスペと合流。ダービーのおさらいをしていた。

で、スペ曰く、スカイを差した瞬間に何やら見えてる景色が変わったとの事。夜空いっぱいの流星、気付けばその力が自分のものになったらしい。

 

………おい。

 

固有(シューティングスター)じゃねーか!?』

『凄いんですか?』

 

凄いも何も、お前……えっウマ娘の力って馬の時も使えんの!?グラスとかも精神一到してくんの!??まさかそれが今後標準になるとか言わねぇだろうな、勝てる気しねぇ…!

 

『う、うーんと。正確に言えば、お前が至ったのは領域(ゾーン)だ。多分。きっと。メイビー』

『僕は馬ですけど』

『象じゃなくてゾーンな。要するにアレだ、時代を作る競走馬が必ず入る“限界の先の先”……って、昔の偉い馬(ルナ皇帝)が言ってた気がする』

『ほほう。クロはそこに入ってたからあんなに強かったんですね』

『いや至ってないけど』

『えぇ!それなのにあのレベルの活躍してたんですかぁ!?』

 

どの口が言うか……ダービーの最終直線、まるで追えなかったじゃんかぁ。

いやマジで、あの時のスペには現状じゃどう足掻いても勝てる気がしない。理論上かつ事実上無理と断言出来る。勝つには命を賭ける必要があるってハッキリわかんだね、ウマ娘転生の為にも絶対やらんが!

 

『これはウカウカしてられませんね。クロが領域に入っても負けないように、精進します!』

『やめてくれよ……(絶望)』

 

見事世代最強になった親友兼ライバルから最大級の警戒宣言を頂きました。こ無ゾ(これ無理だゾ)

………ん?

 

『どうしました?』

『いや、うーん。ちょっと待ってろ』

 

現実逃避気味に視線を外に向けたら、何やら一瞬キラリと光る物が。あの。これ、まさか。

 

『ちょっと出るわ』

『えっ、怒られません?』

『多分それどころじゃない』

 

前の放馬騒動以来、鍵が微妙に厳重になったけどこの程度なら問題ない。上手い事首を回し、歯と舌で解除。馬房の外に出る。

のっしのっしと歩いて、行き着いたのは向かいの柱。その上部の凹み。

 

『よっこいしょっと』

『その立ち方、後ろ足に負担がかかりませんか?』

『今だけ今だけ』

 

口を突っ込んで……んーと、よっこい…しょ!

出たぁ(ドラえもんバトルドーム並感)!

 

『ウスイさん達が備えた物じゃないですか』

『いいや、違うな』

 

だったらあんな場所に隠しておく必要が無い。もっと堂々とやってるだろうに。

あーあ。どうやらオグリキャップの件で、まだ懲りてない奴がいたらしいぞ。

 

ペッ。吐き捨てたのは、カメラ。

つまり───

 

『盗撮だよ、スペ』

 

 

 

 

 

「大問題や」

 

舐められたモンやな、俺らも。

そう思いながら目を向けたのは、テーブルの上に置かれたカメラ。馬房から抜け出したクロスが見つけた奴や。

見回りしてた厩務員が脱走したクロスとその側に放られたカメラを発見して、同時に近くの柱の窪みから何かが引き摺り出された痕跡も確認しとる。

 

「マスコミでしょうか」

「さぁな……けど、心当たりとしては皐月の直前の取材しか思い浮かばん」

 

今思えば、取材クルーの1人があの柱付近で不審な動きをしとった。今更思い出すなんて、俺もまだまだやなぁオイ!クソッ!!

 

「報いは受けさせる」

「臼井」

 

連絡と同時に飛んで来たコイツは、我が物顔で事務室に居座りながら……同時に、般若のような表情を浮かべて言いよった。

 

「件のマスコミへ、真偽を問えば済む事だ。嘘はつかせない、つける状況になどさせない」

「どうするっていうんや?」

「宮崎商事は既にその親会社へ出資している」

 

……。

 

 

えぇ(困惑)。

 

 

「巻き込む範囲が大き過ぎひんかそれ!?」

「第一の爆弾!スポンサー契約解除ッッ!!!」

「何回爆発させるつもりやねん!」

 

負けて死ね、とか何とか叫びながら本社に電話しようとするのを慌てて制止。いやマジで自分の娘と再会してからクロスへの対応変わったなコイツ!?

 

「まぁ警察には通報しましたし、宮崎さんの方から真犯人に対しての制裁も少し穏便にやって頂くとして……どうしましょうか、クロスとスペシャルに関しては」

「せやなぁ」

 

犯人が確定してない状況で、ここでこのまま調教するのはちと難しいモンがある。

と言っても、この時期に調教をストップすんのもなぁ。いわきの競走馬リハビリテーションセンターは前に使ってしもたから足つくやろし、調教を引き継げる避難場所なんて他には……

 

 

あっ。あるわ。

 

「どこだ?予約なら任せろ、金でゴリ押し出来るぞ」

「やからアンタはすっこんどれ言うとるやろがい!!」

 

 

 

 


 

 

 

早めの夏休みだそうで。

車でゆらり、飛行機でぶらりと運ばれて。

 

『久しぶりですね、乗るの』

『だな』

 

飛行機に乗るなんてマジで久しぶり、というかノーザンファームから移送された時以来なんじゃね?離陸時はやっぱり興奮しちゃうけど、メーデー案件は勘弁でよろ!

 

『でもどこに行くんでしょうか』

『飛行機使うって事は、基本海を越えると考えて問題無いだろ』

『うみ?』

『塩っ辛い水が陸より大きく広がってる場所の事』

 

そっかぁ、スペは見た事無いんだよな。というか、競走馬が海を目にする事ってあるのか?

 

『……飲んでみたいなぁ』

 

ヤバイ。俺は今、スペを海に焦がれたエレン・アルミンみたいにしてしまったのかも知れん。将来、そこには馬の自由を目指して地ならしするスペの姿が!!

って言ってる間に飛行機着陸。ホッ、墜落しなかったようで何よりですな。

………ん?

 

『なぁスペ。この空気の匂い』

『へ?……む、なんか懐かしいですね』

 

開くコンテナ。広がる青空。

ああ、これは。間違いない。

 

『ノーザンファームだ……!』

 

 

“競走馬”としての俺が、始まった場所。

 

戻って来るだなんて思いもしなかった、俺の第二の故郷……!

 

 

 

 

 

「久しぶりだな、エクスプログラー1995とキャンペンガール1995……いや、クロスクロウとスペシャルウィーク」

『久しぶりだなぁ緒方のおっちゃん!』

『オガタさん、こんにちは!!』

 

いやぁ、かれこれもう約1年か!ちょっと老けた?なんつってな、冗談だよ!!通じてねぇだろうけど!

 

「お前達の活躍、テレビで見させてもらってるよ。あの二頭がダービーで競い合っただなんて夢のようだ」

「二頭とも、親父に推した甲斐があるってもんです」

「こら臼井君、調子に乗らないよう」

「えへ」

 

臼井の息子さんの方もオッスオッス!元気そうで何よりだよ。それに俺が臼井調教師のところに行けたのも君のお陰だからな。マジで感謝してるし、また会えて嬉しいぜ!!

 

「いやホント……お前らが中山の直線を突っ走る夢、現実味を帯びてきて嬉しいよ。ありがとうな、クロス、スペシャル」

『めっちゃ期待されてて芝』

『ウスイ君、僕も!僕も撫でてください!!』

「はいはい、スペシャルも一層甘え上手になりやがって〜」

 

スペもすっかり可愛いモードに入っちゃって、そのまま二人と二頭で厩舎にGO。うんうん、この空気感よ。

後はグラスがいれば完璧なんだけどなぁ〜!

 

 

『っ……!?この足音、って……』

 

 

「宮崎氏の変わりようにも驚いたが、何にせよこれで()()()だ」

「まさかこの並びをまた見る事になるなんて思いませんでしたねぇ」

「臼井調教師に問い合わせたよ、狙ったのかって。偶然とは面白い話もあったもんだ」

 

おお、二度と戻ってくるとは思わなかった馬房!俺が最初に入った“競走馬の”馬房じゃないか!俺の心の故郷はここと言っても過言じゃな……

 

ん?

 

「あ、緒方さん。こんにち……え?」

「清掃もうすぐ終わりま……へ?」

 

ほぇ?

 

「お疲れ様。今日は“お客様”が来ているよ」

 

お、お……お前ー!?

 

「クロぉ!元気にしてたかー?!」

 

育成牧場で俺を育ててくれた2人の片割れ!俺を育ててくれた2人の片割れじゃないか!なんでここにいんだ、あの牧場もしかしてとうとう破産したのか!?

 

「お前の活躍の煽り受けて、牧場の杜撰な体制がいよいよ表沙汰になったから世話になってられる状況じゃなくなっちまってなぁ。エクスも遺伝子解析とかで血統を確認するってんで引き取られちまって、相方はそっちに付いてったんだよ。で、俺はお前を引き渡した縁で緒方さんに拾って貰ったって訳」

『そりゃ大変だったな。なんか申し訳ない』

「でもニュースで聞くお前の快進撃、マジで元気付けられたんだ!ありがとうなクロ坊、これからも応援してるぞ!!」

『マジか!よーし。そこまで言われちゃ、俺っち死力を振り絞っちゃうぞ⭐︎』

『あの、クロ。そのニンゲンさんは誰ですか』

 

おおそうだスペ。彼が俺の育て親、お前にとってのティーヌさんが俺にとってのこのヒトって訳だ。育児出来なかった馬の母さんの代わりに、俺の面倒見てくれたって訳。

 

『へぇー……スペシャルウィークです。よろしくお願いします』

「おお、こっちもお辞儀した!賢いなぁ、偉いなぁ」

「クロだけでなくスペまで人間的所作を……?」

「………クロと接触した馬は知能が上がる………?」

 

まぁそんなこんなで、馬房に入れられる俺たち。久しぶりだなぁ、いやホント帰ってくるとは思わんかった!魂の故郷は落ち着くね!!

 

『あの頃と寝藁の位置も変わってない。臼井君も覚えてくれてたみたいだな、うんうん良きかな』

『僕の方も、まるで最後に出て行った時のままですよ。でも微妙に他の馬の匂いが残ってますし、急いで戻してくれたんでしょうね』

 

だなぁ。大事にされてるってハッキリわかんだね。

 

『それで、クロ。隣に気付いてますか?』

『はぇ?隣はお前だろ』

『いやもう片方』

 

何言ってんだスペ。まさかとは思うが、まだそっちにグラスがいると思ってるんじゃなかろうな?

アイツはアイツで自分と戦ってんだ、こんな所にいる訳が……

 

『…嘘でしょう?それに、スペさんまで………』

 

……え?マジ?

その声に急いで顔を出してみれば。そこに見えたのは、同じく顔を馬房から出してこっちを覗き込んでくる栗毛の顔。

久しぶりに見る、嬉しい顔。

 

『グラスゥ!?』

『クロ!!』

『気付くの遅すぎる……』

 

え、えー。無茶苦茶嬉しいけど、こんな事ある?“後はグラスがいれば完璧”ってさっき思った願いが即叶ったんだけど、逆に現実味が無ぇ!

 

 

 

という訳で始まった、俺達の夏休み。現実逃避気味に見上げた入道雲が、惑う俺を遥か高みから見下ろしていたのだった。




VSアンケートの活動報告ですが、返信出来てないけどちゃんと全部読んでおります。皆さんありがとうございます
実は元の案だとマルゼンが相手だったんだけど、皆さんの意見を聞いてるとそれぞれいい案だなと揺れておりまして……ただその中でもオルフェの場合、既にグラスという相手がいるのが考えもの
はて、オルフェにするならグラスに新しい相手を用意するべきか……?
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