それはそれときて久々にブログ君も登場します
あとスランプです。ストック尽きるまでには区切りのジャパンC回へ辿り着きたいなぁ……
【Ep.35】見据!
『いやぁ、クソ強かった』
『そんなにか?』
『そんなにだったぞ。マンボもそう言ってたじゃん』
俺達とは違う道を選んだクロスは、前から取り沙汰されていた強敵──サイレンススズカと戦って来たらしい。その結果は、同じく走ったエル・グラス共々敗北と。
そんな彼は今、俺の隣で一緒に走っていた。
『俺は秋天、キングは菊花。スカイに要注意しとけよ』
『分かっている。一番情熱を燃やしているのはアイツだからな』
……だからこそ、解せない。
『なぁ、クロス』
『なんでぃキング』
『何故、菊花に来ないんだ?』
皐月・ダービー・菊花が
なのに、なんで。
『……なんで、と言われるとなぁ』
問うと、返って来たのはあやふやな返事のみ。それが少しだけ腹立たしい。
だって……お前らしくないじゃないか。スペシャルもスカイもお前に勝ちたがってるんだぞ。執念を燃やされたら、それに応える性分の筈だろう、お前は?
『そう言うキングは、俺に対して特に執念は無い感じだな』
『道はそれぞれだからな。この質問だって、お前の選択を責めるつもりなんて全く無い』
そう、ただ疑問なだけだ。本当に疑問なんだ。
答えてくれ、クロス。
『……なぁキング』
そして告げられたのは、質問返し。
『キングは、レース中に立ち止まれるか?』
『は?』
意味が分からない。選択肢なんて無いだろう、それ?
『止まる訳無いだろ』
そんな事してみろ。人間達に迷惑が掛かる、だけの話じゃない。
立ち止まられた他の馬はどうなる?例え一番になったとして、「アイツが止まらなかったらどうなるか」という仮定を背負わされ続けるんだぞ。
そんな
『……そっか。そうだよな、うん』
クロスは、そう言って。
『そうだよキング、お前が正しいんだ……』
最後に呟かれたそれは、小さ過ぎて俺の耳には届かなかった。
「……凄い」
クロスクロウの走りを見た。
あんなに離されてたのに。
あんなに置いてかれてたのに。
「凄い……凄いよ、クロスクロウ!」
一瞬で、あそこまで追い詰めた。
追い抜きかけた!
「ねぇ、見た?見ました!?私達の馬が、あんなに強く駆け抜けましたよ!」
「お、おう」
反応薄いですよ臼井さん!!あっこれ駄洒落じゃないですから!
でも凄い、あんなクロスクロウ初めて見た!格好良い!乗りこなした生沿さん凄い!!
強い!
「だが、負けた」
……は?
「負けは、負けだ。クロスクロウと生沿君は勝てなかった」
「何言ってるの?」
勝ち負けなんてどうだって良いじゃん。あそこで一番輝いてたのはクロス達だよ?
「私達が褒めなくて誰が褒めるのよ!」
「お前は何かに敗北した友人に、同じ事が言えるかッ……!?」
その声は決して大きくはなかった。でも重くて、強くて。
初めて聞いたそれに、私は完全に臆した。何よ。急に、何よ……?
「負けを褒めるな。それはそいつの“限界”を決めつけるのと同じだ」
「限界……?」
「お前にはこれ以上期待してないと。これ以上の努力は無駄だと、言っているのと同じだからだ」
何バカな事を、と以前の私なら返していただろう。でもそうしなかったのは、覚えがあったから。
もし友達が、大事な試合に負けた時。
大切な何かを懸けて、そして失った時。
私は何と声を掛けられるだろうか。
「そんなのは、慰めですらない。愚弄だっ」
もしくは、私が何かを失った時。それを心の底から悔しがっている時。
凄かったよ、だなんて慰められて、どう思うか。
善意が、反転して聞こえはしなかったか?
「クロスクロウは!生沿君は!!こんな所で終わる馬なんかじゃない!」
力任せにフェンスを叩く父親の姿に、とうとう二の句も告げず私は押し黙ってしまった。そんな肩に置かれたのは、無骨な職人の手。
「臼井さん…」
「悪いが宮崎の言う通りやで、美鶴の嬢ちゃん。この
「でも……こんなに、歓声…」
「あぁ、だからこそや」
「じゃあなんで!」
そう言葉を投げると、彼は。
「信じてやれ」
ただ、そう告げる。
「送り出した俺らに出来るのはそれだけや」
「信じる?」
「見てみぃ。生沿もクロスも、微塵も頭を下げとらん」
言われてみれば、彼らは下を見ていない。顔を上げて、どこか一点を見据えていた。
臼井さん。彼らは、何を?
「“次”や」
「つぎ?」
「次のレースや。死なへん限り次のレースは回ってくる。しょぼくれとる暇なんてあらへん」
「………」
「そんな奴らやからこそ、俺たちは夢を賭けるんや。ホースマンは労力という形で、客は馬券という形で」
「じゃあ私は…?」
臼井さんが無言で指差したのは、彼自身の胸。それだけで、私は充分理解出来た。
あぁそうか。信じるって、そういう。
もう一度、ターフを見る。先程見下ろしていた生沿さん達の姿が、さっきとは違って見えた。
強い視線が、虚空を貫いていた。
立ち上る気迫が、その身を一回りも二回りも大きく見せていた。
(クロスクロウ……生沿さん………)
自然と、胸の前で手を握り合わせていた。信じて、祈った。
どうか、次こそ彼らが報われますように。次がダメでも、その次で。
それを繰り返した、いつかの未来で。
こんにちは!ベンケイです。(^O^)
さて今日は毎日王冠!先日行われたGⅡレースのおさらいといきましょう。
……え?毎日王冠はGⅠ?嘘つくな?
いやまぁ……はい。その通りだと思います。なんたってグラスワンダーとエルコン、そしてサイレンススズカにクロスクロウまで揃い踏みした訳ですからね。
………いやおかしいでしょ!?( ゚д゚;)
重賞馬どころじゃないですよ、稀代の名馬が何頭集まってんですか!それもそのうち二頭が最近話題のススズにクロクロですよ?!
これはもう毎日王冠主催にGⅠじゃない事へ反省を促すダンスを踊らねばなりません。
なんて冗談は置いといて、台風の目となった馬達を紹介していきましょうか。
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今日も今日とてブログを投稿し、僕はようやく一息ついた。
幼い頃、仲良くして貰ってた近所の大学生のお兄さんから「実験プログラム」という物を譲り受けてもう何年か。「ウケると思ったんだけどなぁ、
「競馬が好きで始めた
僕はオグリキャップに端を発する第二次競馬ブームの申し子だ。オグリだけじゃない、タマモクロスにスーパークリーク、イナリワン、バンブーメモリーにゴールドシチー。そしてそれを駆る騎手達に対する人々の熱狂にアテられたクチだった。
あれから10年近くが経ち、テイオーやビワハヤヒデなどの名馬を見てきて。それでも徐々に下火になっていく競馬人気に歯痒く思っていた。
いや、良いんだ。下手に流行ればファンの治安が下がる。好きな人達が好きな馬を愛せる現状がベストなんだ……と、思おうとした。けど、時代を彩ったそれぞれの疾走が、人々の記憶から消えていくのがどうしても受け入れ難かった。ずっと覚えていて欲しい、讃えられて欲しいと願わずにいられない。
そんな時。あの悲劇が起こった。
阪神淡路大震災の翌年。京都競馬場で行われた宝塚記念。
ライスシャワーは走った。走ってくれた。走ろうとしてくれた。
あの走りが忘れ去られるなんて、あってはならない。
気付けば、プログラムを手にパソコンと向かい合っていた。使い方は懇切丁寧にも案内音声が組まれていた。流行るという予言だけ信じて、手段は選ばなかった。
今を生きる馬達を。過去に輝いた馬達を紹介する。それをたくさんの人に見てもらおう。その一念だった。
そんな折だった。あの新馬戦を見たのは。
クロスクロウ。フレアカルマ。
光る物を持つサラブレッドだと思った。特にフレアカルマ、あの走りは芝よりも砂で輝くと感じた。その時は、ただそれだけだった。
でもコメント欄。子供にまつわるクロスクロウの逸話に、何かが引っ掛かり。
次走、アイビーステークス。グラスワンダーを懸命に追い続ける姿に惹きつけられ。
京成杯で確信した。
(朝日杯を勝つのは、クロスクロウだ)
いや、正確には違う。
(クロスクロウにこそ、勝って欲しい)
芦毛と呼ぶには漆黒過ぎる筈のその馬体に、オグリキャップを感じてしまったから。
メディアは既に目をつけていた。出生、馬主、グラスワンダーとの関係性──でも僕は単純に、走りに魅せられたんだ。
あの渾身の走りに、報われて欲しいから。
……クロスクロウを題材にした記事は反響が大きい、っていうのも理由にはあるけど(小声)。
そして彼は、勝ってみせた。
それだけじゃない。勝ち続けてみせた。
立て続けの二冠。燦然と輝く、朝日と皐月の栄光。
盛り上がる世間。囃し立てるマスコミ。利用する僕。増加する閲覧数とコメント。
これは、よもや。
ややもすると。
クロスクロウは、日本競馬を救うかも知れないのでは?
[クロクロ追っかけ]
凄かったですね毎日王冠!クロクロ、次こそは……!
⤴︎114 ⤵︎0
[競馬民]
サイレンスに勝てるとしたら彼だけですな
⤴︎514 ⤵19
[芦毛スキー]
競馬初心者ですが、生沿騎手が乗ったら動き変わりましたよね!
次走が楽しみです。
⤴︎198 ⤵10
[外丸応援]
エルコンドルパサーも乗り替わりで本調子じゃなかったっぽいのにあの走りだし、1998世代マジでやばいな!?
⤴︎63 ⤵2
[最近の趣味]
生まれを覆す走りに元気を貰った。頑張って欲しい。
⤴︎252 ⤵5
そうしている間にも、投稿された記事に投げられる熱。熱。熱。
良いぞ。世間の競馬への注目が高まっている。この流れに乗ろう。人々の記憶へその姿を焼き付けてくれ、クロスクロウ。
ダービーでは届かなかった。毎日王冠では惜しかった。
でも次こそは、君なら。
「永遠に心に残る爪痕を、刻んでくれ」
急に生えて来た天才プログラマーお兄さんは、今後出番はありません
というか「1998年にブログとか無い問題」を解決する為にねじ込んだだけだったり(白状)
今後登場する事は無いと約束しますが、評判悪ければ(というかスタークがそう判断したら)当該部分を書き直すかもです