また君と、今度はずっと   作:スターク(元:はぎほぎ)

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何とか奇跡的に出来た埋め合わせの1話です。ご査収ください
そして、前回の件に対する言い訳を改めてここに記述します。

先日6/2の11:19に投稿した掲示板回ですが、消しました。好きだと言って下さった方々、誠に申し訳ございません。
実は最近、ウマ娘編の掲示板回を書く度に自分でもクオリティに対する不満を募らせていまして。それに対する見て見ぬ振りをして来た結果、今回の話で幾人かにそれをズバリ言い当てられた形と相成りました。正直、恥ずかしくて堪りません。
今回の件は作者の非常識とオルフェノ君の掘り下げ不足に端を発したと考えており、これらがある程度解決するまで……というか、作者が自分に満足出来るまで当該話を封印とさせて頂きます。楽しみにして下さった皆様、スタークが自分で胸を張って訂正・再公開出来るようになるまで、今暫くお待ち頂ければ幸いです。
なお、これは主因作者の自己満足にあり、コメント欄での指摘は飽くまでキッカケに過ぎない事を再度留意して頂けたらと思います。応援・指摘問わず感想は自由!大歓迎ですから!

付随して、前回紹介した「オボロ」さんと「白い虎」さんからクロスクロウのファンアートをこちらに掲載し直します。
お二方、どうもありがとうございました!!


【挿絵表示】


【挿絵表示】


この2枚がオボロさんからです。


【挿絵表示】

これが白い虎さんからの寄稿絵です。


※今回の話で物語は特に進みません


競走馬編-閑話休題②
FA?


『兄さま!』

 

 

声がした。

 

 

『兄さまはさ、将来どうなりたい?』

 

 

生意気で、負けず嫌いで。

 

 

『ぼく?うーん、ぼくはねぇ』

 

 

そして、懐かしい声だった。

 

 

 

『皆のヒーローになるんだ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『助けてよぉ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ、カハ、ァッッ……!?」

 

いつもの通りの覚醒だった。もうかれこれ30年強は経つというのに、未だになれない自分が忌々しい。おかげで安眠の記憶は、もう忘却の彼方に消えてしまった。

…いや。()()生を受けてからは“無い”と言って良いだろうか。

 

「…今日は。いや違う明日は……」

 

ああそうだ。皆とピクニックに行く日だった。今日中に支度しないと。ライス達が弁当を楽しみに待っててくれてるんだから。

早起きしてよかった。今日1日、存分に腕によりをかけられる。

 

「悪夢の唯一良いところだ」

 

自分の癖に感謝して、冷蔵庫にしまってあった食材を取り出しキッチンへ。同部屋は遠征で不在、気を使わなくて良いのもありがたい話である。

ライス、ブルボン、バクシンオー。全員で交換できるようにオカズはバラバラで行こうか。お揃いにする事も考えたが、それだと俺の肩身が狭い。R2I2って何だよ。BNWに準えるんならRRIの三文字に抑えろよ。

 

———あっ。

 

「牛肉が足りない」

 

ローストビーフに使おうと思っていたのが皆無。なんて事だ、こんなミス久しぶりだ。買いに行かなければ。

確かこの時間帯だと、そこそこ遠いけど業務用スーパーが開いてたか?

 

「ライスの笑顔に比べれば安いな」

 

たかが走って片道1時間がなんだ、こっちは前世で3000m以上の距離で掲示板を外した事が無いんだぞ。やってやる。 R (ロボ) R(ライス) (委員長)に並ぶもう一つのIは伊達じゃない。と思いたい。

そう考えながら、寮長の目を盗んで美浦を抜け出した。東の空が白んですらいないほどに早い明朝の事だった。

 

 

 

 

流石に舐め過ぎた。タクシー使えば良かった。

汗だくの身体でそんなことを考えながら、ようやくたどり着いた目的地。が、しかし。

 

「はいタッチ―!!」

「バリヤーだもーん!」

「バリア無効タッチでしたー!!!」

「うわぁ…」

 

駐車場、だけでなく店の前まで広がって駆け回る子供達。それもウマ娘。

見守る保護者も周囲にいないまま全速力で駆け回る彼女らは存在そのものが危険だ。しかも立ち位置的に、スーパーに入る為に私はその危険地帯を突っ切らなければならないときた。

 

「おーい、子供たち―」

「「「ワイワイ」」」

「いったん落ち着いてくれー」

「「「キャッキャッ」」」

「ダメか…」

 

遊ぶのは良い、だがウマ娘の身体というのは存在そのものが凶器だ。見た所、いざという時に止めれる人もいないし、誰かにぶつかっただけで事故になる。

そうなる前に警察に連絡するか…と思った。

 

「あー、ごめんねーお姉ちゃんさん」

 

そんな事を考えた、その時だった。

隣。栗毛の幼いウマ娘。

いつの間に?

 

「すぐ止めるからさ、ケーサツは勘弁してー」

「え……」

 

見上げてニヘラ、と笑ってきたその顔を見ていたら。

“風”。

 

「こらーっ!!!」

 

黒い、風。

 

「うわー、クロねえ!」

「なーにやってんだ、遊び場所は考えろって言っただろ?人様に迷惑かけちゃダメっ!」

「「ごめんなさーい!!」」

 

宣言通り一瞬で、一声で子供たちを制した、黒髪のウマ娘。

知っている。

俺は君を知っている。

 

「ホッ。すみませんねー、ちゃんと注意しておきますんでー」

「……」

「あれ?おねーさーん?」

 

知っている、知っている、知っている。

でもなぜ君がここにいる。

いやいる事自体に不思議は無いんだ。ただ、会えて嬉しいんだ。

 

「クロスクロウ」

「あーどうも。ウチの子分が失礼し…あれ?名乗りましたっけ?」

 

間違いない。君だ。

あの日、湯煙の向こうで出会った君だ。

だが———その事を向こうは、覚えていないようだが。

 

 

 

「…少し、話せるか」

「んーと、スーパーで買い物しながらで良いですかね?立ち話もなんですし」

「問題ない。助かる」

「あざますー。フレア、ガキ共を頼むわ」

「オッケー。待ってるよー」

「また後でねー!!」

 

 

 

「お姉さん、トレセン学園のウマ娘だよね。結構遠い筈だけど、どうしてここに?」

「安い所を選んだだけだ。そういう君こそ、なんで小学生なのにこんな早朝に」

「オレも同じく、安い所の安い時間帯選んだだけですよ。おっこのニンジン安いじゃーん」

 

そう言いながらカゴに格安商品をポイポイ放り込む姿はどこか手馴れて所帯じみている。だが何故だ、君はまだ世話“される側”の年頃の筈だろう?

 

「買い物は親に任せれば良いじゃないか」

「や、これは俺の家族じゃなくてアイツらガキ共とフレア達の分なんで」

「……君が面倒を見てやっているのか」

 

思い出してみれば、どの子も身なりはあまり綺麗じゃなかった。そうか。確かに君はそういうヤツだったな。

俺が尊敬する君は、()()()()()()だった。

 

「変わっていなくて安心した」

「いやぁ、オレが逆に依存してるだけですよ。こうしないと気が済まなかったというか…ん?変わってない?」

「何でもない。忘れてくれ」

 

聞きたい事が沢山あったが、この状況じゃどうしようも無い。下手に突くのも野暮という物だろう。

……なぁ、クロスクロウ。

 

「君は…運命を変えられると、そう思うか?」

「……場合によるのでは?」

「いやそれはそうなんだが」

 

質問が悪かったな。いや、そもそもこれは最後の一押しが欲しいだけだ。

俺の我儘に付き合ってくれ、後輩。

 

「変えなければならない運命を前にした時…君はどうする。その身を投げ出せるか?」

「それで誰かが助かるなら」

 

……。

ああ……!!

 

「ありがとう。ありがとう、クロスクロウ」

「えっどうしました!?俺何かしましたか?」

「違う、違うんだ。ああ、やっと、やっと」

 

 

覚悟が、出来た。

 

 

 

 

翌日。その日はよく晴れた。青空の果てに宇宙すら見えそうで、桜が舞うのがよく似合う空色だった。祝福されたかのような日だった。

 

「ラストさんの料理は絶品ですね!!!!!母の桜餅に匹敵します!!!!!!!!!ハナマルです!!!!!!!!!!!!」

「カロリー量、ピッタリ規定内と推定。流石、の一言を進呈しましょう」

 

ああ、そうだよ。そうなんだよクロスクロウ。

こいつらを守りたい。

その笑顔を守りたい。

その為なら、傷付こうが地に臥そうが構いはしない。

 

「いつもありがとうね、ラストさん…!」

「気の済むまで食えよ、ライス」

 

あわよくば、またお前に「兄さま」と揶揄って呼んで欲しかったけれど。

艶やかな青鹿毛を撫でられ、目を細めるライスの顔を見ていたら。そんな身勝手な欲望は空の彼方に吹っ飛んでいったのだった。

 

 

 


 

 

 

ラストアンサー

ラストアンサー(英:Last Answer)は、日本の競走馬・種牡馬である。

勝ち鞍は1995年の宝塚記念・ジャパンCなど。

誕生日は3/5で、ライスシャワーと同じ牧場にてほんの数分先に出生。当歳時の二頭はまるで兄弟のように仲が良く、別々の厩舎に離された後もレースで顔を合わせるたびに鼻を突き合わせて暫く離れなかったという。




今日はライスシャワーの命日だったんですね。書き終えて投稿してから、Twitterのニュースを見て初めて知りました

淀のステイヤーを、忘れない

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