また君と、今度はずっと   作:スターク(元:はぎほぎ)

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土曜:皿割って発狂
日曜:唐突な眠気で気絶

結論:休日でストック溜まらず!残り1話!!
ヤベェって(焦り)


獅子苦悩

「会長さんの様子がおかしい?」

 

ツルちゃんの相談に、私は身を乗り出して問い返した。同時に、同期の皆の緊張感が陰で高まる。皆が皆、前の件で会長さんへの警戒が高まっているから。

そんな彼女の様子がおかしいともなれば、何か企んでいるのではないかと。信用が疑念に、完全に反転してしまったんです。

 

「そうなんですよ…一見普通なんですけど、よーく観察したら窓から空を眺めている時間が前と比べて10%ぐらい増えていたり、何をするでもなく鏡の向こうの自分を0.2秒くらい睨みつけたりしたり、そんな事がちょくちょく見られるっていうか」

「……それ、もしかしなくてもツルちゃんの勘違いでは?」

「違いますよぅ!テイオーさんの調査結果とも完全に一致しましたもん!」

 

ルドルフファンクラブが二人!来るよ皆!!というツッコミは寸での所で呑み込めた。よ、よく見てるんだねツルちゃん……。

と、おふざけはここまでにして。

 

「会長さんがその有様ってのも激レア案件だな。タイミング的にオレの件かぁ…?」

 

現状一番問題なのは、これ。クロちゃんがこの場にいる事。

ツルちゃんが相談を持ち掛けるのって基本“同期の皆”になるから、必然的に彼女も混じっちゃうんですよね……今回はその中でも、少しだけ関わりの深いクラシック組に絞ってグラスちゃんとエルちゃんがいないのは不幸中の幸いというか。

………いやいやいや!クロちゃんと会長の接点がまた出来かけてる時点で普通に最悪の事態ですよ!?

 

「クロさんは何か知ってるんですか?」

「前に中庭で呼び止められたんだけどさー」

「関係ないですー!」

「絶対無関係。確実に無関係よ!!」

「私の今日以降の昼寝時間を賭けても良いから!!!」

「どうした急に」

 

という訳で、キングちゃん達で畳みかけるように話題転換!!勘付かれる前に話を逸らします。

キングちゃん、セイちゃん!スリップストリームアタックを仕掛けましょう!!

 

「会長さんだって人の子です!きっと体の調子が悪いんですそうに決まってます!!」

「1か月もずっとですか?会長さんはちゃんと自己管理ができる人です、有り得ません!」

(まぁ会長さんならそうですよね…)

「俺が呼び止められたのも丁度その頃合i

「恋煩いじゃな~い?私がフラワーと再会s、じゃなくて初めて会った時もそうなったもん」

「ずぅっと会長さんの周りを調べてましたけど、異性関係に以前からの変化はほぼありませんでしたよ?脈がありそうなエアグルーヴさんやメジロラモーヌさんとも依然変わり無しです!」

(ぅゎツルちゃんマジか)

「シリウスの姐貴と何かあったりした?」

「半月前に生徒会室に入っていくのを見ました。そこから更に雰囲気が暗くなった感じがあります、微妙にですが」

「うーんやっぱりコレってオレの案件っぽk」

「そうよ!きっとシリウス先輩かその取り巻きの子達で何かあったんだわ!このキングもそういう事で時折呼び出されるもの」

「や、有り得んぞキング。仲間達は最近はシリウス先輩から暫く大人しくする事を厳命されてるから、彼女達がそれを破るとは考えにくい。皆心の底から姐貴に心酔してっからな」

(シリウス先輩が取り巻きを制御してるって事?)

(会長さんと下手に軋轢生んでクロちゃん案件が拗れるのを防ぎたいのかもねぇってそれどころじゃないよスぺちゃん!このままじゃ…!)

 

う~ん、困りました!やっぱり会長さんが調子を崩してるのは十中八九クロちゃんに関係する事みたいで、だからこそこのままだとクロちゃんがこの案件にストレートに首を突っ込んでしまう!また会長さんと接触してしまう!

どどどどうしよう…ひとまず飴を舐めて頭を落ち着けましょう。ん?セイちゃんも欲しいんですか?要らない?いや舐めてる場合じゃないのはその通りなんですけど、まず糖分補給しない事には回る頭も回らないというかえーっとどうしましょう実際早くしないと手遅れにえーっとえーっとえーっと……

 

「クロさん?」

 

…キングちゃん?

 

「お?何ぞ」

「あなた、なんでシリウスさん一派の近況をそんなに詳しく知ってるの」

「……あ゛っ」

 

うわー。うわー、うわー…!

 

「私達に内緒でまた入り浸ってたでしょヘッポコー!!!」

「わやーっ!?だって尊敬してんだもんー!!」

 

キングちゃんが怒った!こうなった彼女は怖いんだよね…いや恐怖とかじゃなくて、例えるとお母ちゃんに叱られた時みたいな強制感というか!

その証拠に、クロちゃんも思わず席を立って逃げ出すしか無い。

 

「待ちなさい!あなたは自分がどれだけデリケートな存在なのか分かってないのよー!!」

「だって教えてくれないんだもんしょうがないだろー!」

「だったらそこに直りなさい!1時間ぐらい懇切丁寧にキングが説明してあげるから!!」

「やだーっ!!キングの1on1講義は恐れ多いぐらいありがたいけど束縛やだーっ!!!あと多分もっと姐貴との接触制限されるからヤダーッ!」

「当たり前でしょう———!!!」

 

瞬く間に消える二人の背中。それを見送って、私たちは次の一言を呟くしか出来なかった。

 

「「「キング母さん……」」」

 

 

 

「で、話は戻るんですが」

「あっ、戻すんだ」

 

そりゃそうでしょうセイちゃん、だってチャンスなんですよ?クロちゃんがいない内に話を進められる、絶好の。

この機に、ツルちゃんがクロちゃんの前で会長さんの話題を出さないくらいに色々聞き出しちゃいましょう!という訳でツルちゃん、詳細お願いします!

 

「あっうん。えーと、コレはつい昨日に生徒会室に行った時の話なんだけどね……」

 

 

 


 

 

 

「衝動、というものに心当たりはあるだろうか」

 

同時刻。ルドルフは生徒会室にて、ソファに座る人物に向けて語る。

 

「……いや、君にそれは愚問だったな。最もそれを、場合に依れば歴史上の誰よりも知るであろう君に」

 

相手は答えない。ただ黙して次の言葉を促すのみ。

その沈黙を是として、皇帝は唇から音を紡いだ。

 

「君は意外だと思うかもしれないが…そうでもない?まぁそれはそれとしてだ。どうやら私にもあったようなんだよ、狂おしい程の欲求というものが。それも…ウマ娘の本懐たる走り以外で、だ」

 

もちろん我が理想の事ではない。これは衝動ではなく理性からくる物だからね……と、そう前置きするルドルフ。その眼には、かすかに動揺が(かげ)る。

その対象は、自分自身。その内面。

 

「出会った瞬間に狂おしく思った」

 

思いを馳せるは、あの夕焼けのグラウンド。

 

「見染めた瞬間に眩く眩んだ」

 

瞼に浮かべたのは、一等星(シリウス)に食らいついたあの末脚。

 

「見つけた瞬間、離すまいと執着した」

 

思い出させたのは、ようやく見つけた背中。

振り向かせて見えた、何の悪意もない無邪気な顔。

 

 

「だって、仕方が無いじゃないか」

 

 

言い訳だ。分かっている。

 

 

「夢を見るんだ」

 

 

分かっている。

 

 

「見てしまったんだ」

 

 

分かってる。

 

 

「彼女が、凱旋の門を1番にくぐる夢を」

 

 

分かっているだろう。

 

 

「私ができなかった夢の続きを……っ」

 

 

分かっているなら。

 

 

「だから、私は………」

 

 

何故。

 

 

「私は……ッ」

 

 

何故。

 

 

何故やめられない?

 

 

 

ドンッ、という音だった。ルドルフが、その拳で机を強く殴った音だった。

相手は動じなかった。ただ静謐に、次の言の葉を待っていた。

 

「笑ってくれ。私は一時の欲望に任せて、自分の大義を捨て去ろうとしたんだ」

「…」

「全てのウマ娘の幸福を目指す者が、壊れた夢を中等部の娘へ一方的に押し付けるその姿!ああ滑稽だっただろうな、シリウスは努めて冷静だったが内心、この無様に笑いが止まらなかっただろう!!」

 

止まらない、あふれる自己嫌悪は止め処無く、その口を突いて出てくる。

ルドルフは、既に限界だったのだ。

 

「挙句の果てに最後だ!その相手に『走りで決めよう』と諭される始末!我ながら笑ってしまいそうだ!!」

「……それの何がおかしいと?」

「考えてもみてくれ。肉体年齢の差が6つ以上にもなる、まだ本格化どころかデビューも迎えてない子供にそう言われたんだぞ?走りで私が負ける訳が無いだろう!!」

「……あぁ」

「そんな()()()()()()()()()()!押し付けていたんだとあの瞬間、自覚させられたんだ!!このシンボリルドルフは……!!!」

 

こんな醜態、これまでの人生で経験した事は無い。あのトゥインクルシリーズ晩年のアメリカ遠征、現状の現役最後のレース以来は。

そして一番ひどいのは、それを自覚してなお自分を止められない事だ。次に彼女を———クロスクロウを見てしまった時、同じ過ちを繰り返しかねなかった。それほどの衝動が、今も胸の内で渦巻いていた。

 

「なぁ、これはシンボリ所属でもなく生徒会関係者でもない君にこそ聞きたい。君の目に、今の私はどう見える。今もなお理想を目指す皇帝か。それとも自らの感情に手繰られる道化か。どっちだ」

「……正直なところ、よく分からないわね。少なくとも、今目の前にいる会長さんはいつもの会長さんに見えるわ。珍しく弱ってるのは分かるけれど」

「…そうか。そう、だろうな」

 

皇帝と言われていれば反発した。道化と言われれば傷付いていた。どっちにしろ益の無い質問だと自覚し、そして無茶ぶりのごとく答えを求めた己を恥じる。

深まる自分自身への呆れを胸に、ルドルフは背もたれに体重を預けた。視界に入った“Eclipse first, the rest nowhere.”の表題が、今は虚しいばかりだ。

 

 

「追い打ちをかけるようだけれど」

 

そこに投げかけられた客人の言葉は、淀んだルドルフの思考に波紋を呼ぶ。

そんな、鈴の音の一滴だった。

 

「貴女がどうなるか、周りからどう見えるかなんて、()()()()()()()()()()()に懸かってると思うの」

「…っ、」

「理性で大義を、欲望で夢の欠片を。それが真逆の物なのだとしたら——どちらを選んでも、きっと未練が残るわ」

 

だったら、と一つ置いて彼女は告げた。

 

「せめて、納得する方を。貴女の後悔が少ない方を考えるしか無いわよ。()()()()()()()()()()()

「……手厳しいな。だが確かに、その通りだ」

 

全ての選択は自己責任。そこに他者の人生が懸かっているなら、猶更の事。

そう捉えてルドルフは立ち上がった。客人に会釈し、その足を扉へと向けて。

 

「……もうしばらく、一人で考えたい。愚痴に付き合わせてすまなかったな」

「気持ちは痛いほどわかるもの。これはアドバイスだけれど、そういう時は走ったら気持ち良くなるわよ」

「いやリフレッシュにはなるかもしれないが、君の言う『気持ち良い』はちょっとレベルが違うというか…いや、参考にさせてもらうよ」

 

そうやって、出ていく直前。

 

「会長さん。今の話は、他のヒトには話した?」

 

最後に交わした言葉は。

 

「ツルマルツヨシに少し漏らしてしまったよ。衝動についての問いかけだけ、ね」

「なら、そこで踏み止まった姿こそが今の『皆から見えた貴女』じゃないかしら。皇帝も道化もなく、今の貴女は皆に慕われるに足る“生徒会長”よ」

「……だと、良いんだがな」

 

摩耗したその心に、果たして届いたのだろうか?

主のいなくなった生徒会室に取り残され、サイレンススズカは一人微笑みを浮かべるのみ。

 

 

その瞳に、静かなる光を灯しながら。

 

 

 


 

 

 

「衝動ねぇ~……」

「はい。でも私には何の事なのかサッパリ分からなくて、手を(こまね)いてる内に『何でもない、忘れてくれ』って誤魔化されちゃって」

(セイちゃん。これってつまり、会長さんがクロちゃんを追いかけるのは…)

(すれの人たちが言ってたように、前世での血縁由来の運命とかなんだろうねぇ。問題はその詳細な根源が何か、って事)

(ううん……比較対象として、シリウス先輩がクロちゃんをどう思ってるのかも知りたい所ではあるんだけど)

「あのー?二人とも、私を置いてコソコソ話しないでー?」

「ああごめんねツルちゃん。えぇと、どこから話したものかな…」

 

「ちょちょちょちょっと皆さん!失礼しますよーい!?」

「おっ、ネイチャ先輩じゃないですか。おっすおっすー」

「スカイちゃんおいっすー、じゃなくて!アンタ達の力が必要なの、来て!!」

「何かあったんですか?」

 

「キングちゃんとシリウス先輩が喧嘩始めちゃった!!」

「「「!?」」」

「んでそれとは別にグラスちゃんがウチのテイオーを追い回してんの!!」

「「「なんでぇぇぇ!?!!?」」」

 

 

会議は踊る。そしてその間にも、時はお構い無しに進み続ける。

待っては、くれないのだ。




ところで話は変わりますが、Internet Explorerってもうすぐ終了するらしいですね。今までありがとうございました、お疲れ様でした
ちなみにエクスプログラーさんの名前の元でもありました(エクスプローラー
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