私は藤原千花と言います。
私にはお兄ちゃんが一人だけいます。
私と九歳も年が離れているから同じ学校に通う事はなかったし、幼い頃は近づきがたい感じもあったからお兄ちゃんに話し掛ける事が出来ないでいた。九つも離れてたからかもしれないけど、お兄ちゃんはとても大人っぽく見えた。話し掛けることすらも躊躇っちゃうほど。
でも、話しかけたいという想いは年月が経つほどに増していった。豊美姉さんや萌葉はお兄ちゃんと普通に話せていたけど、私だけはいつになっても話しかける勇気が持てなかった。
そしてその時は急に訪れた。
私はお兄ちゃんと二人で買い物に行くことになった。
買い物と言っても私の服を買うために買い物。最初は萌葉に付いてきて貰おうと思ってたけど、友達と遊ぶ約束があると言って朝からどこかに出かけてしまった。
それだったら一人で行こうかなぁと思っているとお兄ちゃんの方から誘ってくれた。その時は嬉しかったけど正直、かなり気まずかったし、会話も長続きしなかった。今までまともにあんまり話したことがないのに急に話せるようになる訳ではないと改めて感じた。
でも、買い物を終えて帰る時にこのままじゃダメだと思って、お兄ちゃんに自分の気持ちをしっかりと伝えることにした。このままの関係でお兄ちゃんがいつか一人暮らしを始めちゃったら今みたいに話せるチャンスがなくなるかもしれない。
それは嫌なので自分の気持ちを伝えるとお兄ちゃんは「兄妹っていう関係なんだし、そこまで気負わなくていいよ。話し掛けたいタイミングが話し掛ければいい」って言ってくれたのでそれからは今まで話せなかった分を補うように話し掛けた。
たまにお兄ちゃんがちょっと面倒そうな顔をするけど、私はもう止まらない。私はお兄ちゃんと話せることに幸せを感じてしまった。
今までこんなに幸せなことをしてこなかったことを後悔したけど、これからは好きに話し掛けて遊んでもらえるんだからいいかな。
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今日はいつもよりも笑顔が三倍マシな気がする。だって今日は楽しみなことがあるんだもん。
「どうしたんですか?」
「え、どうもしてないですよ」
「なんか今日はいつもよりも笑顔が眩しい気がするのですが」
「それはもちろん、そうです!!だって今日はお兄ちゃんが迎えに来てくれるんです!これがテンション上がらずにはいられませんよ」
お兄ちゃんが迎えに来てくれるなんて初めて。今日は家族でお料理を食べに行くからお兄ちゃんを迎えに行かせるとパパが言ってた。正直、料理なんかよりもお兄ちゃんが迎えに来てくれるのが嬉し過ぎる。
「藤原さんのお兄さんですか?」
「もちろん、そうです!」
「藤原さんはお兄さんのこと好きなんですね」
「大好きです!!お兄ちゃんほど素晴らしい人はいません!!」
「そ、それほどですか」
「それほどです。うちのお兄ちゃんは世界で一番なので!」
かぐやさんは私の勢いに負けて、ちょっと押され気味な感じだ。
でも、本当に世界で一番の人です。
これだけは疑いようのない真実。
お兄ちゃんぐらいできた人はこの世にいない。正直、お兄ちゃんの所為で私たち姉妹は男性に対してのハードルがかなり高くなってしまっているところがある。
お兄ちゃんは嫌でも遊びに付き合ってくれるし、買い物にいけば必ず荷物を持ってくれたり、テストで良い点を取って店に行くと褒めてくれたりと私たちのやって欲しいことを全てやってくれる。逆にお兄ちゃんがいればいいとさえ思っている。
なので、お兄ちゃんにはずっと誰とも結婚しないで家に居て欲しい。お嫁さんが出来ちゃったらその人ばっかり構って私たちのことを構ってくれなくなると思うし。
「お兄ちゃんは私の全てです!」
「そ、そうなんですね……」
それからも私はかぐやさんにお兄ちゃんの魅力を語りつくした。