GOD EATER 〜Crack Record〜 作:世紀松
『神頼み』
それは子供の頃、誰もが一度はしたことがある行為であろう。
サッカーのPKの時。野球の九回裏 逆転のチャンスの時。 高校や大学の合格発表の時。宝くじ。 その他もろもろ…etc
誰もが思っていた。神に祈るのは大切なことだと。
誰が思っただろうか、その神が50年後の未来では人類の敵となってしまう事を…
これは祈る神無き時代の話。
***
フェンリル極東支部 外部居住区
『対アラガミ装甲、亀裂部分より破られました!アラガミが侵入して来ます‼︎』
突然の事だった。その放送の直後、居住区全体にサイレンが鳴り響いた。
表情を変え逃げ惑う人々。けたたましく鳴り響く緊急サイレンの音と、人の波が交差する。
その人の波を泳ぐように雨宮リンドウと橘サクヤは駆け抜けていった。
「アラガミはどっちの方向だ⁈」
「東方向、1キロ先に三体。西方向、700メートル先にも一体。オウガテイルとコンゴウと思われます!」
極東支部オペレーターの竹田ヒバリの声が通信機から聞こえる。
「了解‼︎サクヤ、西の方は頼む。俺は東の方に行く。住民の安全が最優先だ!」
「わかったわ。リンドウも気をつけて。」
それだけ言うとサクヤとリンドウはそれぞれの方向に走って行った。
〜外部居住区 通称 スラム街〜
アラガミに荒らされたのか、それとも元々なのだろうか、周辺の建物は所々壊されていた。
…しかしアラガミの姿は無い。
「こちらリンドウ。アラガミって何処だ?何もいないぞ?本当にこっちであってるのか?」
リンドウは辺りを見回し、よく確認するが、アラガミの気配は無い。
「そんな筈はない‼︎もっとよく探せ‼︎」
「あ、姉上⁈」
通信機から聞こえた声はヒバリの声では無く、リンドウの姉であり上官のツバキの声だ。
「リンドウ…姉上はやめろと言っているだろう‼︎」
ツバキの大きな声がリンドウの耳にキーンと響く。
「はい‼︎すみませんツバキ教官殿!」
「全く……リンドウ‼︎100メートル先にコンゴウの反応だ。近くに人の反応もある。」
「何⁉︎すぐ行く‼︎」
リンドウはすぐさま通信を切り、ダッシュする。
そして100メートル先に辿り着いたリンドウは目を疑った。
「なんだこりゃ…」
そこには2匹のオウガテイルの死体と1匹のコンゴウ。そして1人の少年が倒れていた。
「どういうことだ…まさかこいつがアラガミを…」
リンドウは倒れている少年を見る。
銀色の頭髪に白い肌。身体のいたるところに返り血が付いており、そしてその手には血のついた鉄パイプが握られていた。
「奇妙だな…とりあえず本部に連絡だ。」
リンドウはツバキに連絡を取るために通信機を使う。
「こちらリンドウ。姉う…ツバキ教官、ちょっとおかしな事が…」
「残念ながら、ツバキ君では無いよ。」
「支部長?」
リンドウの通信はツバキでは無く、極東支部支部長のヨハネス・フォン・シックザールに繋がった。
「一時的に通信をジャックさせてもらっている。まぁ…そんな事より、『特務』だ。リンドウ君、そこにいる少年をアナグラまで運んで来てくれ。」
「は、はぁ…でも支部長、そんな事の為にわざわざ通信をジャックしなくてもよかったのでは?」
「フッ…言っただろうリンドウ君。これは『特務』だと…ね。」
シックザール支部長はそれだけ言い残すと通信を一方的に切ってしまった。
「支部長のヤロウ…何か隠してるな…まぁ、支部長に言われなくてもとりあえずアナグラには連れて帰るつもりだったけどなっと。」
リンドウは少年の足を神機に乗せ、背負う形で少年を担ぎアナグラへと歩いて行った。
〜支部長室〜
「まさか、再び彼に会うことになろうとはな…」
誰もいない支部長室でヨハネス・フォン・シックザールは呟く。
「彼には申し訳ないが、極東支部の戦力として働いてもらおう。」
「彼の生い立ちを考えると心が痛むがね…」