GOD EATER 〜Crack Record〜 作:世紀松
「僕等が大きくなったら一緒にアラガミのいない世界を作ろう!それでアラガミがいなくなって平和になったら冒険するんだよ。この世界を僕達2人で!」
これは…覚えてる…小さい頃の記憶だ。自分と自分と同じくらいの年齢の少年が笑顔で笑っている。
「約束ですよ。私はいつか極東にいって、もう一度貴方に会います。その時まで、これを貴方が持っていてください。」
これも…覚えてる…自分がロシアに居た時によく遊んだ少女との記憶だ。
…名前は…なんだったか…でもあの時貰った物は今でも持ってる…
……無い⁈毎日肌身離さずに身につけていたお守りが無い。
それに少し頭が痛い。辺りから鉄と油の匂いもする。
段々、意識がハッキリしてきた。
「…ここ…は…」
「お目覚めのようだね。 大神ガロ君。」
部屋の上の隅の方にあるスピーカーから中年男性の声で目を覚ました…どうやらここは外部居住区ではないらしい。
「あんた…誰だ?何で俺の名前を知ってんだ…」
「私かい?私は、ヨハネス・フォン・シックザール。ここフェンリル極東支部の支部長を務めさせてもらっている。
そして、何故私が君を知っているか…私は、君の父である大神博士とは研究仲間の間柄だったんだよ。」
「…アイツの…」
「もちろん、君が彼にどのような事をされてきたのかも、君の力についても知っている。」
「…で、だからどうしたってんだ?親父の昔話でもしたくて俺をわざわざこんな部屋に監禁したってのか?…違うだろ?」
「フッ、話が早くて助かる。」
シックザールが指をパチンと鳴らす。そして次の瞬間、ガロの目の前に大きなケースに入った剣が現れた。
「君には今から、神機使いの適合試験を受けてもらう。」
目の前に現れたケースを見ながらガロは「やっぱりな」心の中で言う。
「…因みに、イヤだといったら?」
「イヤだと言うのなら…」
シックザールは再び指をパチンと鳴らす。しかしガロの目の前に現れたのはケースではなくガロを取り囲む様に配置された複数の銃だった。
「⁈」
「死んでもらうしか無い。」
複数の銃口がこちらに向けられている。…ガトリング銃とでも言うのだろうか、一つに6つは銃口がある。これを瞬時に避けるのは無理だろう。
「……拒否権は無しか…まぁ、いつかは捕まると思ってたけどな…で、俺はこれからどうすればいいんだ?」
「話のわかる人間は好きだよ」
ガロの周りのガトリング銃が地面に姿を消していく。
「覚悟ができたらそのケースの中の神機を握ってくれ。」
「……」
ガロは無言で目の前にある神機に向かい歩く。そして、何のためらいもなく神機を右手で掴んだ。
その瞬間ガチャンと音がしてガロの右手が固定される。
「ぐっ⁈あぁぁぁぁぁぁああああっ!」
右腕に何かに喰われるような激痛が走る。
それが1分くらい続き、右腕が解放される。
右腕には神機使いの証である赤い腕輪が取り付けられていた。
「はぁ…はぁ…痛ってーな。」
ガロは神機を片手で持ち上げるとその場でブンと一振りした。
「おめでとう。これで君も我々の仲間だ。今、君の持っている神機は後で整備班に回しておくから、そのまま置いていってくれて構わない。出口はそこのドアだ。」
カチリとドアの方から音がする。ロックが外れたようだ。
「…はいはい了解。」
ガロは返事をして、出口のドアに歩いて行く。
(…スラム街育ちと言うからどんなものかと思えば、意外と素直じゃあないか…これなら戦力としては大いに使えそうだ。)
「これから、人類の平和の為に頑張ってくれたまえ。」
「……」
その言葉を聞いた途端ガロは足を止めた。
「おい、テメェ…シックザールとか言ったよな…」
「ん?そうだがどうかしたかね?」
ガロは神機の元向かいに再び歩きだす。
そしてその前で止まったかと思うと、適合したばかりの神機を掴みスピーカーに向かって投げつけた。
バァァン‼︎と音がしてスピーカーは木っ端微塵に破壊され、神機の刀身が壁に突き刺さる。
「……これは何のマネかな。」
「……さっきからテメェの上からな態度には頭にきてたんだよ…人類の平和の為とか何とか…」
「これだけは言っておく。テメェはさっきから俺の事を物分りがいい奴だとか何とか言ってるが…勘違いしてんじゃねぇぞ。俺は、俺の為にしか戦わねぇ…」
「…後で後悔しないこったな…俺をさっきガトリング砲で殺しておくべきだったってな。」
ガロはヨハネスにそう言い放つとスタスタと部屋から去って行った。
「…フフフッ、ハッハハハ…面白い。では見せてもらうとしよう大神ガロ、君がここで何を壊し何を護るかを…ね。」
〜エントランス〜
適合試験から2日後、ガロは神機使い達が集まるエントランスに来ていた。とある人物から呼び出されたからだ。
(…落としたよな…やっぱ。)
「よっ!新入り。身体はもう大丈夫か?」
ガロが例の落とし物の事を考えていると1人の男が話しかけて来た。黒い髪に背中にフェンリルのマークが入った軍服。手に持っている吸いかけのタバコが、いかにもゆるそうな雰囲気を漂わせている。
「…あんたが俺を呼び出した奴か?何の用だ。」
「そう睨むなって、俺は雨宮リンドウ。お前の上官に当たる。お前をアナグラに運んだのも俺なんだぜ?」
なんなんだこいつは…
「…そりゃどーも…で、わざわざ礼を言わせる為に俺を呼んだのか。」
「いいや、仕事だからだ。これから任務だ。お前も一緒にな。つまりお前の初陣って訳だ。」
「…そうか。」
「それと…ほれっ」
リンドウが何かをガロに投げる。ガロはそれを受け取る。
「…これは⁈」
リンドウが投げた物。銀色に輝く小さな指輪はガロが無くしたと思っていたものだった。
「やっぱお前のだったか。目の色変えて…そんなに大事な物なのか?」
リンドウがガロにたずねる。
「こいつは……大事な物なんだ。多分、俺の命と同じ位…」
「…そうか。もう落とすなよ…」
「…俺の名前は大神ガロ。一応名乗っとく。」
「おう、これから一緒にやってく仲間だからな。よろしく頼むぜ期待の新人君よ。」
リンドウはガロに手を差し出し握手を求める。
ガロも無言でその手をつかんだ。