「さて…もう一度確認してから向かってくれよ…遭難者の反古が先!狩猟は後!いいな?」
「何度目よ…分かったから…いい加減抉るわよ?」
「何を!?」
一体私を何だと思っているのか。
幻想郷で暮らす前ならいざ知らず。
今の私は仮にも人里の出入りを許される程度には人に優しく接している。
あの頃は花を取りに来る人間ばかりだったが、ただ見に来る者や種を欲しがる者ばかりになった。
それだけで私の心証は大きく変わったのだ。
私の前で、私の気に入った物を踏みにじる者以外には、基本的には温厚に済ませるのだ。
「遭難者がいたらキャンプに連れ帰ればいいのでしょう?分かったから、早く行くわよ。」
「あ…死体ならせめて埋めてやってくれよ…」
―――――
「ふっ!」
ポポという草食獣に、大剣を振り下ろす。
傘とは違い体を両断する。
これならティガレックスの尾くらいなら一振りで裂けそうだ。
あの鍛治師もいい仕事をするものだ。
(…そういえばカッチャも何か作って…)
カッチャの持つ新たな武器に興味を持ちつつ、私は山を登っていった。
―――――
「ここにもいないわね…」
とりあえず地図に区分けされた場所は大方探した。
未だにモンスターも遭難者も見つからない。
カッチャからの激臭も漂ってこない。
「後は山頂くらいね…」
ここにいなければいないのだろう。
―――――
「白い体毛に人と似た巨体…あれがドドブランゴね。」
見た所近くに遭難者の影もなし…
崖からでも落ちたか、はたまた欠片もない程貪られたか。
いずれにせよこの雪山に人影はなかった。
なんならカッチャと会うこともなかった。
どこにいるかは知らないが…
「遭難者の影はなし…狩りを始めていいわね?」
そう判断し、私は猿に飛びかかった。
もったいないが救助優先…僅かに生まれた私の人間性が、そう考えた。
故に即殺。
その体の硬度がどれ程あろうと、一撃で仕留めるための渾身の振り…
それは中心を外し、牙を折るに留まった。
「外した…?」
そうじゃない。
私の姿を見てもいないのに、回避行動を取ったのだ。
牙を折られた猿は、少し離れた場所でこちらを伺っている。
痛みや恐怖などないように、こちらを獲物と見るように。
「退屈しないわね…さあ…楽しませなさい。」
一際大きい雄叫びの後、体制を左右に振りながら迫る。
振りを構えた瞬間に横に飛び、振り抜いた瞬間飛びかかる。
ティガレックスとは比にならない知性…その動きは、隙を付く人間の動きそのものだ。
その上巨体と人体にはない腕力、不規則な動きと不意にくる攻撃。
知性ある相手のなんと…
「つまらないわね…」
知性があればあるほど、痛みに対する恐怖は、相手に対する警戒は、死に対する絶望は、戦いを恐れる要因となる。
故に、ここにあるのは対等な戦いや本気の殺し合いではない。
生きるために逃れる獲物と、目的のために対象を狩る…
正しく狩猟の光景だ。
私が求めるのはこうじゃない。
純粋な殺し合いだ。
「――!」
「……」
地面から氷を剥ぎ、塊にして投げつける。
その氷を、片手で受け止め投げ返す。
当然避けるだろう。
そして、どう避けようと…
「簡単に間に合うわ。」
足に狙いを定めて剣を振り下ろす。
綺麗に両足を捉え、相当な量の血飛沫を上げる。
もうろくに動けないだろう。
これで終わりだ。
剣を頭に向けて本気で振り抜く。
ドドブランゴの巨体は、完全に両断された。
狩猟完了だ。
―――――
しかし遭難者は全く見つからない。
やはり崖から落ちたか…もしかしたらカッチャが見つけているかもしれない。
一度キャンプに…そう思った時、猿の体から何かが転がしまり落ちた。
…腕だ。
指の方向から右腕だ。
見れば体内に肉片が見える。
やはり既に喰われていたようだ。
「…帰りましょうか。」
腕でも持っていけば証拠品には十分だろう。
私はキャンプへ帰ることにした。
その時だ。
雪が崩れる音と共に、上から何かが落ちてきた。
雪を弾き、その者を軽く受け止める。
「猫…アイルー…?」
本当ごめんなさい自分ゲーム好きだから手放せないです。