「うう~ん……ここは…あ!」
ストーリー通り墜落した飛行船は、既に壊れて動かなくなっていた。
その上ゲームと違い、周りには初めからモンスターだらけ。
スライムやカバシラーのような弱いものでも生身で受ければ重症…まではいかないなりに無傷ではすまないだろう。
可能な限り見つからないよう、私は飛行船に乗った。
パイプは折れ、箱は荒れ、椅子もぼろぼろ。
当然誰もいなかった。
(ここにはいない…原作通りなら…)
飛行船を出て辺りを見渡す。
本来ならホーガンさんが来るはず。
この世界がゲームではなく現実である以上、イベントスイッチなんてものはない。
しかしホーガンさんが無事に飛行船を確認に来るのは変わらないだろう。
しばらく待ってみよう。
―――――
……来ない。
一時間程待っても誰も現れない。
あまり飛行船に留まる時間もないのだ。
原作通りなら船長は……
とにかく急ぎ船員を探さなければ、最悪誰も助からない。
ストーリーを知ってる私は最悪どうすればいいか分かる。
しかし他の皆はそうはいかない。
平原にあるモグラの巣穴…
彼らの中でそこにたどり着く可能性があるのは、かろうじてルボローさんだけ。
既にいるであろうGJさんは私(主人公)が急がなければ捕らえられるだろう。
まあ原作通りならドン・モグーラが解放してくれる…ことに賭けよう。
あそこに行かなければ私でさえ島の脱出は出来ない。
何より…機械が使えなければ、モンスターを仲間に出来ない。
正確には出来るが、管理出来ずに反乱が起きるのが関の山だろう。
あの施設は餌やりや環境調整もしてくれるのだから。
生身で島の探索は無謀この上ない。
やはり誰かと…ホーガンさんか船長のどちらかと合流しなければ、私にさえ希望がない。
「……」
(ホーガンさん…)
巫女らしく、神頼みしか私には出来なかった。
―――――
幸い食糧は飛行船の箱にかなりあった。
数ヶ月なら食糧の心配はなさそうだ。
それと一つ幸運なことがあった。
原作でもそうだが、モンスターが一匹だけ残っていた。
しかし原作とは違い、残っていたのは…
「モーモン…?…シャルロットちゃん!?」
そのモンスターはシャルロットだった。
キストーラさんが可愛がっており、ストーリー中勝手に出歩き回る問題児…
そしてこの島に来た元凶…といっても本人は悪くない。
それに来たことはこの世界の人々にとっては幸運なことだ。
しかしシャルロットがここにいるということは、キストーラさんは雪原で、一人危険な放浪をしているということ。
(あれ…?そういえばシャルロットちゃんって…)
ゲーム上レベル20同士の同名モンスターを配合すると、強モンスターという個体が出来る。
更にその上、レベル50で強モンスターを配合すると、最強モンスターという個体が生まれる。
スライムやキメラのように、下級の中でも最弱の部類の限られたモンスターのみ、この個体になれる。
しかしその性能はかなりの変化が生まれる。
それこそ名の通り最強に…
このシャルロットというモーモンは、キストーラさんのペットというだけでなく、最強モーモンだったはずだ。
仲間になれば、この子程頼もしい存在もないだろう。
皆のために…キストーラさんのために、力を貸してくれないだろうか。
「…シャルロットちゃん…ううん。――。力を…貸してくれる?」
この子はキストーラさんの横にいた。
ただここに待避しただけなら、システムの影響もない。
出入りも自由に出来るはず。
本人の意思によるが…『彼』は協力してくれるようだ。
「よろしくお願いします。」
誰かが戻った時のために書き置きだけして、私はシャルロットとともに密林に向かった。
まずはルボローさんを…ホーガンさんを助ける。
「行きましょう!」
『キューッ!』
一応ネタバレ防止の――です。シャルロットについては原作知らないと分からないですからね。