タイラントワームの攻撃方法は至極単純。
体を大きく振り回すのみ。
後はドルマ系統の魔法だが…
(レベルが低い個体なら…ドルマ以上はないはず…)
あの巨体が全身をうねらせて攻撃してくるこの光景は、リアルに見たくない物だった。
ミミズの気持ち悪さとかではなく、圧倒的恐怖感と、体格差による絶望感。
まあ見慣れてるシャルロットちゃんからすれば、回避も難しくないのだろう。
それに基本的に大きい分遅いのだ。
引いてから振るまでに三秒、到達までに二秒…五秒もあればどうにでもなる。
シャルロットちゃんは飛べる上、体が小さい分避けやすい。
彼が戦う以上、私は離れていればいい。
援護兼囮として少しでも攻撃(投石)していれば、あの最強のモーモンは…
「キュー!」
必ず倒してくれる。
モーモンの攻撃手段は噛み付くだが、巨大な相手には効果はなかったのだろう。
最初からずっと体当たりしていた。
魔法はない。
技もない。
なら小さい体で出来る攻撃は体当たりのみ。
しかしてその威力は普通じゃない。
渾身の体当たりを繰り返し行うことで、ついにタイラントワームの体は倒れ込んだ。
「やった…?」
「キュー…」
『仲間』を倒さざるを得なかったからか、彼は黙祷を捧げていた。
「…お疲れ様でした。」
「キュー~…」
疲労に崩れるモーモンの身。
彼はマダムの愛玩動物。
故にレベルは1だったはずだ。
その身でタイラントワームと戦ったのだ。
いくら普通のモーモンじゃなくても、流石に保たないだろう。
「ゆっくりお休み下さい。本当に…お疲れ様でした。」
彼の事情を知っているからか、無意識にそんな風に言っていた。
ただただ、彼の哀愁纏う姿を支えたいがために―
―――――
眠るシャルロットちゃんを抱え、慎重に飛行船へ戻る。
正直休みたいし、単独での行動はかなり危険だが、そうも言ってられなくなった。
タイラントワームの目覚めが予想以上に早かったのだ。
この世界のモンスターは、一個体一個体が実に強い。
基本的にモンスターの死亡はないのだ。
例外は勿論あるし、必要なら留めを刺すが、こんな巨体は、留めすら刺せない。
だからタイラントワームもただ気絶していただけで、時間が経てば目覚める。
それは分かっていたことだ。
しかし早かった。
少なくともシャルロットちゃんより早かった。
一刻も早く逃げなければ、倒された恨みを晴らすべく、道の真ん中で戦闘を行う必要がでてくるかもしれない。
密林から近いとはいえ、飛行船は頑丈。
タイラントワームが来ても、なんとかはなるだろう。
そもそもそれぞれのエリアを担う巨大モンスターが、エリアから出ることはない。
その設定が生きているなら、きっと大丈夫だろう。
そう祈りながら、声にならない悲鳴を上げ、私は全力で
密林を駆け抜けた。
―――――
道中あらゆるモンスターに追い立てられた。
幸いなのは私の走る速度に追い付けるモンスターがパンサーだけだったことだ。
ベビーパンサーなら石ころでも怯んでくれる。
キラーパンサーは運よく遭遇しなかった。
とにもかくにも私達は飛行船にたどり着くことが出来た。
「はぁ…はぁ…ぜぇ…やっと…着いた…」
道中ほぼ全力疾走。
しかもモーモン抱えて走るなど、何の修行だろうか。
因みにモーモンの平均体重など知らないが、猫くらいはあった。
一日の疲労とは思えない程に疲れた私は、飛行船の椅子にシャルロットちゃんを置き、倒れ込むようにして自分も椅子に身を投げた。
―――――
「…ん…ん…?あれ…?もう朝に…!?」
辺りが明るくなったと思ったが、私がいたのは飛行船ではなかった。
見覚えのある一室、椅子に腰掛け本を読む男性、ごちゃごちゃとした物置小屋のような店。
「香林堂…?」
いつの間に私は帰ってきたのだ。
いやそもそも何故ここなのだ。
「おや?目が覚めたかい?」
「は、はい…何で私はここに…」
「ここに来たのは君で『四人目』だ。流石に説明が面倒だねぇ。」
「えっと…」
「省くつもりはないよ。それじゃあ説明しようか。」
―――――
霊夢編十八話参照
―――――
「それじゃ、何をご所望かな?」
「と言われても…」
あるのはガラクタばかり…一応ここにあるのは私に必要なものだけらしいが…数が多い。
しかしそこには私にとって絶対に必要なものも混ざっていた。
「!これは…!?」
「ん?その指輪かい?それは…」
「『スカウトリング』!」
「…どうやら、一番必要なものは見つかったらしいね。」
「はい!流石にこれは絶対必要なので…」
「そうかい。じゃ持っていくといい。改めて聞くけど、それでいいんだね?」
「はい!」
「では…またね。」
そう言い彼は香林堂ごと姿を消した。
いや…私の意識が消えたのだろう。
急に視界がぼやけて倒れたようだ。
目が覚めるとそこには、私の顔を覗き込むシャルロットちゃんがいた。
説明長いので香林堂については霊夢編参照で。端的に言うと物々交換でアイテム貰える店です。