僕と騎士と武器召喚Ⅱ   作:ウェスト3世

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プロローグ

 吉井明久が阿修羅を倒し、王都フミヅキは多大な被害を被りながらも平和な時代を迎えることとなった。

 平和とは言っても戦争が起きた後というのは必ずと言って良いほど不景気が訪れる。だが、それからのフミヅキの立ち直りは早いもので、ほんの数年で経済は回復していった。確実に平和に向かい一歩一歩前進していることを誰もが感じていた。

 しかし、彼らはこの時知らなかった。このとき人間界という世界に歪みが生じていることを。

 この歪みを作った原因人物は吉井明久に敗北した悪神阿修羅である。そのわずかな歪みが生じたせいで、人間界には多数の悪神、悪魔が現界してくるようになる。

 そう、皆が阿修羅を倒して終わりだと思っていた。だが、そんなことはなくて、あの人間界最大とも思えるあの闘いは最初で最後のように思えたが、あれは始まりに過ぎなかった。

 大勢の悪魔、悪神が人間界を自身の世界にするために浸食し始める。それに少しでも反抗する者は殺され、彼らに勝てない、もしくは崇拝する為に悪神、悪魔に従属する悪神信仰者と呼ばれる人間も現れ始める。

 徐々に人間界は浸食されていき、人類は衰退へと向かっていた。

 

 吉井明久が阿修羅と闘い、20年という月日が経とうとしていた。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 瞼を閉じると今でもあの光景が鮮明に甦ってくる。

 まだ、それは私がまだ七歳の頃で、記憶が朧げではあるけれども、決して忘れてはいけない記憶だった。

 その日の天候は雷雨。空を見ても青空など一つも見せないどす黒い空が広がっていた。また、夏にも拘らず、その日はうす寒かったのを覚えている。

 王都フミヅキの町民は必死な形相で逃走していた。理由は王都に悪魔が現れたのこと。

 それは普通に考えれば有り得ないことで、普通に考えれば、それは現実味に乏しい出来事と思うだろう。しかし、今、その有り得ないことが目の前で起きている。そして、その悪魔に殺された人間が居る。

 人間の世界が、悪魔と悪神に侵略されるようになったのは、ある悪神がこの世界に出現した際に、本来人間界とは人間が住む世界で、それ以外の者は受け付けない世界なのにも拘らず、悪神が無理やりこの世界に現界した為に、人間界の空間の何処かが歪んでしまった。その歪みが発する場所から、悪魔、悪神が現界するようになった。

 それまでの私は優しい父と母の愛情に包まれながら育った。本当に只々幸福で、この生活がずっと続くのは当たり前であると思っていた。

 だが、運命は残酷なほどに、人の幸福を奪い取ってしまう。そんな運命が私は恨めしくて仕方ない。

 王都に現れた悪魔は炎を使う悪魔で『炎を身に宿す悪魔』(イフリート)と呼ばれている。炎の色も暗黒に塗り替えてしまいそうなほどの漆黒で王都中が漆黒の火の海の中だった。

 そんな中、フミヅキの中でも頂点に君臨する国家騎士達はその悪魔に刃向っていた。その国家騎士達も今の視点からすれば、前任の国家騎士達である。

 中でも黄金の聖剣と白銀の宝剣の二刀剣技を扱う男性と、紅い燃えるような妖刀を扱う女性中心にイフリートに刃向っていた。

 二刀を扱う男性は悪神を滅した英雄だった。だから、皆が彼が敗けるはずないと信じた。

 しかし、現実は違う。その英雄は押されていた。血を吐きながら、それでもこの王都全ての者達を護るために闘っていた。

 そして英雄は二刀を持っていた筈だったが、やがて彼は片方の腕が、黒炎によって燃やされてしまう。

 そんな彼を見て私は遂に我慢できなくなり、その英雄の元へと駆けようとする。

「お父さん、お母さん!」

 必死な形相で叫ぶ。皆が逃走する中、私だけが戦地に赴いている。それが間違っているのは分かっている。分かっているが、嫌だ。父と母が闘っているのにどうして私は見ていることしか出来ないのか?そう考えるのが嫌で前へと走った。

 だが、父と母がそれを望んでいないのも幼いながらも理解していた。だから父は言った。

「来るな!来たら君は死んでしまう。君は何があっても生き延びるんだ。」

 続いて母も、

「行きなさい。私はアナタを、皆を護れるなら喜んで命を捨てる」

 その時の表情は英雄ではなく何処にでもいる父と母の顔だったと思う。

 だが、そんな言葉を聞いて納得は出来なかった。内心ふざけるなと思った。そんなの幸せではない。私の幸せの必須条件として父と母が生きていることなのに。どうしてそれを分かってくれない?

「嫌だ、嫌だッ、嫌だァーーーーーーーーっ」

 近くにいた騎士が私の体を抱え、その場から後退する。

 私はその騎士に抵抗しようとしたが非力な私の力ではどうにもならなかった。みるみる父と母の姿は小さくなっていく。

 そして、その後戦いは二日間にも及んだという。

 そして、イフリートを何とか滅することが出来た。しかし、国家騎士は七人居た中の五人が死に、二人が重傷を負いながらも生き残った。

 死んだ五人の内三人は遺体がちゃんと残っていた。しかし、二人は遺体が残っていないのだという。

 その二人が私の父と母であると聞かされた時、私は酷く後悔した。私もあの戦場で一緒に死ぬべきだったと。

 七日間声が枯れるほど泣いた。寝ることも食べることも全て忘れて泣き続けた。

 七日過ぎると、泣き飽きて父と母の遺品の前に立つ。黄金の聖剣と白銀の宝剣、紅い妖刀。

 私はそれらの武器を取る覚悟をする。父と母と同じ修羅の道を歩むことにする。

 そして十年経った今でも私はそれらを握り続ける。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 悪神に対抗するには高い霊力も必要とされた。その為に、巫女、陰陽師、聖職者といった神に仕える者が重用されるようになる

 今はもう居ないが、ある霊力が高い巫女が居た。普通、巫女は結婚はせず、神に仕える者なので俗世に反転することはない。

 だが、彼女の神社は代々子孫がその神社を統括する権限が与えられているために、どうしても子を産む必要があった。そしてその子は当然、女が生まれる。

 それは巫女の呪いというもので、巫女から生まれる子は全員女子で男児は絶対に有り得ないことだった。

 だが、その巫女の生んだ子は女ではなく男だった。確かに巫女の霊気を宿しているものの、その子供は男だった。

 だが、それ以降は一向に後継ぎが出来ず、その男児は結局巫女として育てられる。そして幾度も他の巫女から町民から蔑まれたような目で見られた。それでもその男児は母から愛を受けていたので、巫女としてすくすく育っていった。

 だが、ある日、その母は殺された。誰かは分からないが殺された。

 その時、少年は自分の唯一心の拠り所だった母を失い、その日から憎悪を宿し、生きるようになった。

 ある時、自分の良き理解者となった少女に出会ったりもしたが、その少女も悲惨な最期を遂げ、結局、孤高を歩くこととなった。

 

 ―――孤独な十七年をオレは生きてきた―――。

 

 

 

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