ウマ娘短編集   作:他人丼

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いいタイトルが思いつきませんでした


ネイチャと数年後

「ねぇ、水族館でも行かない?」

「いいな、行こう」

 

 いつもと変わらない休日、いつもと変わらない会話、いつもと変わらないデートの誘い。

 ネイチャとこうするのは何年目だろうか。

 彼女が卒業して、そして一緒に住むようになって、毎朝ご飯を作ってもらう。

 そんなありふれた日常のなんでもない休日、彼女とよくデートに出かける。

 遊園地で乗り物に乗ったり、温泉でゆっくりしたり、街を歩きながら他愛もない話をしてみたり。

 そんなことを何年も繰り返している。

 別にそれが嫌なわけじゃないし、むしろ心地よくてずっと続けばいいのにと思う。

 彼女はよく笑う。

 嬉しいときはもちろん失敗したときや悲しときでも彼女は笑顔ですごす。

 辛いときまで笑顔でいる必要はない、辛いなら辛いと言うべき。

 なんてことを言う奴らもいるが、辛いときでも笑顔で何がいけないんだろうか。

 彼女だって泣くときは泣く。

 それをしないのは泣き顔よりも、笑顔を見て欲しいからではないだろうか。

 俺は彼女の笑顔も悔しい顔も泣き顔も全部知った上で、やっぱり笑顔が1番好きだと思うのはエゴなんだろうか。

 

「ちょっとー聞いてますかー?」

「あ、ごめん考え事してた……」

「はぁ……アンタっていっつもそうだよねぇ……ま、いっか。晩御飯どうするよって話しね」

「ああ、それだったら向こうで食べよう。せっかくだしさ」

「りょーかい」

 

 そうして準備をして、水族館へ向かうのであった。

 

 

 

「いやぁ〜人が多いですなぁ〜」

「まあ休日だしね」

 

 休日の水族館となれば人が多いのは当たり前なのだが、今日はなにかイベントがあるようで一層人が多い。

 家族連れや老夫婦、デート中の学生などなど、多種多様な人が集まっている。

 

「ネイチャ、はぐれるといけないから手繋ごう」

「おや〜? もしかして手繋ぎたいだけじゃないんですか〜?」

「……悪いか」

「いやいや、アタシも繋ぎたかったから、ね?」

 

 そう言って2人で手を繋いでゆっくり水族館を回るのであった。

 

 

 

「おや?」

「あれって……迷子か……?」

 

 しばらく水族館を巡っていると1人で泣いている子供を見つけた。

 周りを見ても保護者らしき人物はいないのでおそらく迷子だ。

 

「どうしようか……ってネイチャ!?」

「ねぇ大丈夫……? あちゃーやっぱ迷子かぁ……うん、大丈夫だよ。アタシと一緒にお母さんとお父さん探そうね」

 

 俺がどうするか聞く前に子供に駆け寄ってあやしていた。

 

「うん、大丈夫。ほら、手繋いであっちの方探しに行こっか」

 

 子供の手を繋いで歩く彼女は、まるで母親のように見えた。

 1人で向かわせる訳にもいかないので一緒に迷子センターに向かった。

 

 

 

 

「本当にありがとうございます!」

「いえいえ、当然のことをしただけですよ」

「おねーちゃんありがとー!」

「はいはい、次は迷子になったらダメだからね」

 

 館内放送をしてしばらくすると、母親が迎えにきてえらく頭を下げるものだから少し戸惑ってしまう。

 別に迷子がいたら保護してあげるのが普通だと思うが、確かに親からすれば我が子が居なくなってそして見つかったのだからここまで感謝するものなのかもしれない。

 

「おねーちゃんばいばーい!」

「はーい、ばいばーい」

 

 子供は手を振りながら、母親は頭を下げながら去っていった。

 

 

 

「ネイチャはさ」

「んー?」

「いいお母さんになりそうだよな」

 

 先程の迷子センターでのやり取りを思い出してふとそんなことを言ってみる。

 

「いや、なんでよ」

「いや、なんとなく」

「あはは、なにそれ。てかそもそもお相手がいませんっちゅーことでね」

「ならさ」

 

 また彼女が笑顔で茶化すので、歩くのをやめて自然と言葉が出てきてしまう。

 

「俺が相手になってもいいかな」

「へ……?」

「ネイチャのその笑顔をずっと、1年後、10年後、死ぬときまで見たいんだ」

「え、ちょっ、え?」

「だから、俺と結婚してくれ」

「あ……えと……」

 

 突然そんなことを言ったからか彼女の顔は真っ赤になって、目を白黒させている。

 

「ダメ、かな……?」

「いや、結婚するってのはいいんだけどさ……いいんだけど……」

 

 どこか歯切れが悪く、何かを隠しているようなことを言われる。

 もしかしてなにかやってしまったのだろうか。

 

「アタシたちまだ付き合ってすらないんだよ……?」

「あ……」

 

 完全に忘れていた。

 毎日ネイチャといるのがもはや当たり前になっていて、付き合うはおろか告白したことすらなかったのだ。

 

「えっと……どうしよっか?」

「いやどうするって、そこはアンタが決めてよ」

「じゃあ……」

 

 なんて言えばいいんだろう。

 お見合い婚でもなければ普通は付き合ってから結婚するもので、俺はあろうことかそれを飛ばして結婚しようと言ってしまった。

 ならそれをなかったことにすればいいのだ。

 

「ナイスネイチャさん、俺と付き合っていたことを前提にして結婚してください」

「……っぷ、あはは! 何そのプロポーズ!」

 

 やはりまずかったようだ。

 言い終わって考えてみれば訳の分からないプロポーズをしてしまった。

 

「ま、でもアンタらしいか。いいよ、結婚しよっか」

 

 よかった、なんとかなった。

 

「じゃあ、これからもよろしくお願いします……」

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 当たり前から1歩先に進んで、それもまた当たり前にしていこうと言葉は発しないが2人で誓った。

 

「あ、指輪とか用意しなといけないな」

「それじゃあ今から見にいきましょー! ね、アナタ」




ネイチャの解像度もっと高めていきたい

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