ウマ娘短編集   作:他人丼

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タイトルがほんと思いつきません


不安を煽れば

『もう関係を切ろう。俺は疲れた。君とこれから関わっていく自信が無い』

 

 深夜、なにか面白いものがないかとスマホでネットサーフィンをしていたところ、彼女のトレーナーから一通のメッセージがくる。

 

「おや、これは……ははーん、そういうことですか! これはいわゆる勘違い系連絡ですね!」

 

 最近トレーナーが担当ウマ娘に対して、契約解除するかのようなメッセージを送る一種のドッキリのようなものが流行っている。

 

「ふっふっふ、しかしデジたんにそれを仕掛けようとは……いいでしょう! 乗ってあげます!」

 

 そんな流行に誰よりも敏感なアグネスデジタルがそれを知らないはずがなく、どうせなら流行りの通りに気持ちを伝えてみようと思った。

 

『え……? なんでですか……?』

『アタシ嫌ですよ! せっかく、同志として今までやってきたんじゃないですか!』

『デジたんは絶対に嫌ですからね! トレーナーさんと離れたくないんです!』

『あの、返信してくれないんですか……?』

『本気じゃないですよね……?』

『ずっと同志って言ったじゃないですか……あれって嘘だったんですか……?』

『あの、返事もしたくないのでしょうか……』

『できれば……何がいけなかったか教えて欲しいです……』

『治すのでまだ一緒にいたいんです……』

『メッセージ、見てもらえると嬉しいです……』

 

「まあこんな感じですかね」

 

 突然の事で動揺して何が何やらわかっていない体を装ったメッセージを送る。

 

「まあ起きたら返信がきてることでしょう! も、もしかしたら告白されたり……」

 

 そんなことを考え眠りについたのであった。

 

 

 

 朝日が登り、眠りから覚めると一通のメッセージがきていた。

 

『直接伝えないといけないことがあったから放課後トレーナー室まで来てくれ』

 

 予想通りの展開にデジタルは微笑む。

 そしてここであることを思いつく。

 

(これは逆ドッキリのチャンスでは……!?)

 

 思いついた内容はこうだ。

 

 まずトレーナー室には不機嫌そうな顔で行く。

 そしてトレーナーがなにか言う前にこっちから契約解除の話を持ち出す。

 そうすればネタばらしをしようとしたつもりのトレーナーは驚くはずなので、追い打ちで契約解除の書類の準備をお願いしたところでネタばらしをする。

 

「よし、これで完璧ですね!」

 

 ドッキリが成功した時のことを思い浮かべ、ニヤニヤと笑いながら朝の準備を済ませて学園へと向かった。

 

 

 

「トレーナーさん、入りますよ」

 

 コンコン、とノックして扉を開け、トレーナー室に入る。

 

「ああ、よく来てくれたね……」

「まぁ、あんなメッセージがあったら嫌でも来ちゃいますよ」

 

 トレーナーはものすごく申し訳なさそうな顔をする。

 そんなに申し訳ないと思ってるならドッキリは向いてないと思うのだが。

 まあ今はどうでもいいことかもしれないどうせドッキリで本気ではないのだから。

 

「あのなデジタル、そのことなんだけどな……」

「そのことならもういいです。アタシもそうしようと思ってたので」

 

 ネタばらしが始まると分かった瞬間、デジタルは言葉を遮る。

 

「え……?」

「最近なんか避けられてるなーとか思ってたんですけど、昨日のあれで確信しましたよ。まぁ、趣味は同じですけど向かってる場所が違うんでしょうね」

「デジタル……」

「こんな話があるって知ってましたけど、まさか自分に起こるなんて思ってもいませんでした。もうどうにもできそうにないですし、近いうちに契約を解除しましょう。書類とかはお願いします」

「……そうか、わかったよ……」

 

 流石に少し言いすぎたかもしれない。

 ちょっと調子に乗ってしまって思ってもいない言葉を吐いてしまった。

 早く逆ドッキリだったということを明かさないと、そう思ったときだった。

 

「デジタルもそう思ってたんだな……」

「え……?」

 

 デジタルも、トレーナーははっきりとそう言った。

 

「薄々な、勘づいてたんだ。やっぱりお互いの為に契約は解除した方がいいよな……」

「お互いの為……?」

 

 デジタルの理解が追いつかず呆然としているのをよそに、トレーナーは1枚の書類を机に置いた。

 

「これ、もう俺の名前は書いてあるからデジタルが書いてくれれば、あとは出すだけで契約解除できるようになってるから」

「えっと……流石にドッキリですよね……?」

 

 書類をデジタルに渡しながらトレーナーは「まさか」と言いながら

 

「最近この手のドッキリが流行ってるみたいだけど、ウマ娘のパフォーマンスに悪影響があるかもしれないことを俺が出来るわけないよ……」

「えっと、あの……」

「吹っ切れたよ、そもそもトレーナーに向いてなかったんだ」

「そんな……!」

「最近もう勝たないで欲しい、仕事が増えるのが嫌だっていう気持ちが俺を押し潰しそうになるんだ……デジタルに、もっと、輝いて欲しいのに……!」

 

 かなり追い詰められていたのか話している途中で嗚咽を漏らし、涙を流す。

 

「……今日引き止められたら、もう少し頑張って見ようって、君に相談してまた一緒に歩んでいこうと思ってたんだ……いや、忘れくれ……もう、遅いよな……じゃあ、それに名前書いたらたづなさんのとこ持ってってくれ。それで全部終わるから。じゃあな」

「ト、トレーナーさん! さっきのって実はドッキリなんですよね〜トレーナーさんが落ち込んでる姿とか見たことないな〜って思ってつい出来心でやっただけなんで全部嘘です、嘘!」

「デジタル……」

 

 部屋から出ようとするトレーナーを慌てて引き止める。

 まさかこんな事態になるとは思っていなかったデジタルは半ばパニックになりながら弁明する。

 しかしトレーナーどこか諦めたような、満足そうな顔でこちらに近寄ってくる。

 

「ありがとうな……やっぱり君は優しいな……! でもな、もう我慢しなくていいんだ。さっき言ったのが本心で、今は俺を励ましてくれてるんだろう? もう大丈夫だから、心配しなくていいからな……! 今までありがとうなデジタル……! ごめんな……」

「あっ……」

 

 デジタルの頭にそっと手を乗せ、軽く撫でながらそう言ったあと、扉を開けてトレーナーは部屋を出ていこうとする。

 

「嘘ですよね……? 行かないでくださいよトレーナーさん……? 嫌ですよ……? まだ一緒に行くって言ったライブ行ってないじゃないですか……! ねぇ、行かないで下さいよ! 待ってください! やだ! まだ一緒にいたいんです! まだ語りたいことがあるんです! 嫌ですからね!? やだ……やだぁぁぁぁぁ───」

 

「───ぁぁぁああああ……?」

 

 トレーナーを追いかけようとした瞬間、上半身がベッドから離れる。

 

「え……? あれ、夢……? そうだ……!」

 

 枕元にあるスマホで慌ててメッセージを確認するが、そこには何も書かれていない。

 

「夢だったんですね……よかった、よかったぁ……ぅぅ……」

 

 安堵のあまり涙を流していると、同室のアグネスタキオンが何事かと心配して何があったかを聞いてくれた。

 

 この時デジタルは閃いた! 

 これは次の新刊に生かせる───

 

「なあデジタル、さっきも言ったけど俺は今の仕事を苦に思ってないしもっと頑張ろうと思ってるんだ」

「はい……わかってます……」

「それで君と一緒に出かけるのも全然構わないし、良くはないけど多少のスキンシップはいいかなって思ってはいるんだ」

「はい……」

「でもな、抱きつかれて、それでしっぽも足に絡められたら俺なんにもできなくて困るんだよ」

「やっぱりデジたんは重荷なんですか……?」

「いや精神的には重荷じゃないけど物理的に……いや、これは失礼すぎるよな、すまん」

「デジたん重くていいです……」

「まじかぁ……」

 

 ───かもしれないがそれはそれとして不安なので、その日は一日中トレーナーに抱きつくアグネスデジタルが目撃された。




次誰書きましょうか
今のとこ何個か思いついてるけどどれ書こうか迷います

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