しかし、それは意図もたやすく崩された
※機械生命体「俺ハ人間サ」の後に書こうと思っていた作品。我慢できないのと続きが上手く書けなかったからこちらで箸休めをしました
その為ヨルハの意義が微妙に変わっていたり他にもいろいろ……
本格的に続きを書くのはあっちを完結させてからになると思います
2003年より始まった人類の滅亡の危機。それを辛くも回避しレプリカント計画の完了と同時に地球は再び人類で溢れるようになった。滅亡の危機を乗り越え復興した人類が掴むもの。それは繁栄である。
魔法の大々的な活用と運用により3465年より人類は2003年時を超える大文明を形成した。そこにはレプリカント計画の功労者とも言えるアンドロイドの姿もあり人と人形は手を取り合い前へと進み始めていた。
しかし、それも長くは続かなかった。5012年。地球外生命体エイリアンが襲来。地球各地に降下を開始し人類の文明を尽く破壊していった。それに対して人類は人類軍と呼ばれるようになる統一軍隊を設立し対抗を始めた。その中でアンドロイド達は自らの頑丈さを生かして最前線で戦った。そんな彼らをサポートするように人類も戦ったが戦況は悪化の一途をたどった。
そしてエイリアンは更に自らの手足と言える機械生命体の建造を始め自らは戦場に出る事は無くなった。それに対して人類軍も戦闘用のアンドロイドを多数製造して戦線に投入した。人形と機械による代理戦争は数千年に渡って続いたがその間に人類の数は激変していった。そして、総人口が4割にまで減った時、人類は地球からの脱出を計画した。それは月にコロニーを建造しそこに避難するというものであり地球から機械生命体とエイリアンがいなくなるまで人類の滅亡を避けるというものだった。
この計画は直ちに始動し月面に無数のコロニーが建造され始めた。それと同時に月面上に人類軍の基地や工場の役割りを持つバンカーの建造も始まった。
5204年。総人口の8割が死んだ状況でコロニーの建造が完了した。これ以降人類は地球を離れ第二の故郷となる月面での暮らしが始まった。アンドロイド達は泣きながら地球を離れる人類を見て必ず地球を奪還すると決意を新たにした。これ以降アンドロイドの反攻作戦は苛烈になっていき一時期は機械生命体をあと一歩の所まで追い詰める事に成功した。
そして、11945年。エイリアンの侵攻から約5000年が経過した。未だに人類の地球帰還は叶わず機械生命体やエイリアンの殲滅には至っていない。それでも人類軍は諦めずに、勝利を願い今日も戦いを続けていた。
月面にある第303コロニー。そこは旧日本人が多数居住するコロニーであり総人口は1000前後。月面のコロニーの中では比較的巨大だった。
そんなコロニー内部では今日も変わらない一日が経過するはずだった。
「おい、聞いたか? 201コロニーが壊滅したらしいぞ」
「ああ、遂にか。あそこは月面表面のコロニーだからな。遅かったくらいじゃないか?」
303コロニーの中心部にある憩いの場では二人の男性が世間話に花を咲かせていた。生活の大半を機械がやってくれる為趣味を持ったり軍人としてバンカーに詰めていない限りやる事がなかった。その結果、噂話をする人の数は比較的多かった。
「ご先祖様が住んでいた地球。そこでの生活ってどんなもんなんだろうなぁ」
「それは俺も気になってるんだ。なんでも地球にいた頃はイエって言うものに住んでいたらしいぞ。それに動物とかを狩って焼いて食べてたらしい」
「焼いて? おいおいそんな事して大丈夫なのかよ?」
当たり前だが空気の無い宇宙空間に建造されたコロニーでは火気厳禁だった。故に彼らは火を使った事がなく焼いて食べるという事に一種の恐怖すら覚えていた。
「そこは心配ないんだよ。何しろ地球は酸素で溢れている。いくら燃やしても問題ないってくらいにな」
「マジかよ! そんなところなら住んでみたいかもな」
「それはアンドロイド次第だろ。俺達の地球への降下は禁止されているからな」
「だけど何時の日か地球に降りていくような奴が出てくるかもな!」
「そんな事をする馬鹿がいる訳ねーだろ」
「それもそうか!」
そう言って二人の男は笑い合った。しかし、この数時間後にこの話は真実となり全コロニーを震撼させる事になる。
『ホワイト司令。君たちにこの馬鹿を連れ戻して欲しい』
「はぁ……?」
ブラックボックスと呼ばれる新型駆動炉を搭載した新型アンドロイド“ヨルハ”の司令であるホワイトは人類軍の参謀本部議長からの指示に困惑した。50代くらいの男で鋭い視線を持つ参謀本部議長はその表情を崩して頭を抱える様な仕草をしていた。彼の頭を悩ませる非常事態が起こったという事だろう。
『二日前、第303コロニーから一人の青年が脱走した』
「脱走ですか?」
『そうだ。そいつは地球への憧れを持っていた。それで降下用の装置を自作して地球に降下した。そして成功してしまった』
「成程。ようはその人間を保護してコロニーまで送り届ければいいのですね?」
『そうだ。本来ならそんな馬鹿は見捨てるがギリギリ10代、18歳だったことから連れ戻す事が決定した』
これが40以上のおっさんなら見捨てるつもりだった。今の地球は人類が生きていける程優しい世界ではない。遅かれ早かれ死んでしまうだろう。
だが、これから人類を紡いでいくべき若者である場合保護して連れ戻す事が決まっている。今回は絶対保護対象である10代という事でこのようになったのである。
『ヨルハ部隊に頼むようなことではないがまぁ、あれだ。今後も
「分かりました。必ずや無傷で保護しましょう」
『すまない。保護した後は近くのレジスタンスキャンプからこちらに通信をしてくれ。周辺に装置を送る』
「了解しました“人類に栄光あれ”!」
『人類に栄光を』
命令を受けたホワイト司令は最後にそう言って胸に手のひらを乗せる独特な敬礼と共に人類を称える言葉を言う。参謀本部議長もそれに答え通信は切れた。格上の相手との通信を終えたホワイト司令は息をつくとこちらを見てくるオペレーターに指示を出す。
「聞いた通りだ! 急ぎ人間の位置を確認せよ」
「っ! 発見しました! 旧日本、関東部です!」
「そこには確か2Bと9Sがいたな。では二人に連絡を取り最重要命令として保護するように伝えろ!」
「了解!」
指示を出したホワイトはモニターに映し出された“Human”の文字を見て何かが起きそうな予感を感じるのだった。